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5.どっちの危機が先?
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まだ頭がふらふらしている。
一気に色々忘れていたことを思い出したようで、気分が悪い。なんだか頭も痛いし……
前世でも今と似たような感じの会社員だった気がする……そうだ! 最後は事故死だった。
散々ドジを重ねて、怒鳴られて嫌がらせされて、それで嫌になって、ぼんやりしながら歩いていたら、その辺の建物に頭をぶつけた気がする。フラフラしてたらまた頭をぶつけた。そんなことを繰り返して死んだ気がする……何してるんだよ、僕。
そしておそらく、ここは僕が前世でしたことがあるBLゲームの世界だ。
そして、僕は主人公とその攻略対象を困らせる、主人公にとっては敵の魔法使い。
この領地には、いずれこの国の第五王子、ランクデクトル様がやってくる。攻略対象の王子たちの弟で、彼は、この領地の惨状を早くから嘆いていたと言って、領主様を断罪するんだ。
領主様にはまだ伴侶どころか婚約者すらおらず、すでにご両親も亡くなられていて、ご兄弟もいない。領主様がここから追い出されて幽閉された後は、代わりに第五王子殿下と彼の側近たちがここの管理を任されることになる。けれど、前の領主に対する怒りは大きく、新しい領地の統治はうまくいかない。
攻略対象たちはそれを心配していて、弟の王子を手伝うために、いずれ主人公と共にこの城を訪れる。
そんな中、僕は幽閉先の荒地の屋敷にいる領主様に命じられて、王子たちの動向を探る間者として、この城に戻ってくる。
領主様は領地を取られたことを恨んで、王子たちの邪魔をするためにあの手この手を使うんだ。
そんな彼の手足になるのが僕。攻略対象に襲い掛かったり、彼らを誘惑したり、時には主人公に恐ろしい意地悪をして、王子たちの弱みを握り彼らを苦しめる。そして、最後には領主様とともに悪事がバレて断罪されて、悲惨な最後を迎えるんだ!!
主人公は、選択肢を選んで攻略対象たちとの信頼関係を築き、領地を救うことができれば、領民の支持を得て、この先王子の伴侶として認められていくための大きな一歩になる。
けれど、確か、選択肢を間違えると領地は魔物で溢れて国は最悪の場合、滅んでいたような気がする…………
ゲームがどうだったかすぐには思い出せないけど、そんな最後、嫌だ。
だけど、まだ攻略対象の王子たちも、もちろん主人公もこの城には来てないし、第五王子も領主様を断罪なんてしていない。
ゲームは始まる前なのかな……??
領主様はまだ領主様だし、僕だって間者じゃない。
とはいえ、僕はそれをじっくり考えている場合じゃない。
このままだと、僕はゲームが始まる前に領主様に反逆の疑いをかけられて殺される。
だけど、僕がここで死んだら、ゲームは始まらなくなるんじゃないか!??
突然色々考えだして黙り込む僕の顔を、領主様が覗き込む。
「…………おい……無能。どうした?」
「あ…………」
領主様に呼ばれて、僕はますます焦る。
このままじゃ、この領地は王子が管理するものになって、領主様は幽閉で、ここにいるみんなも、ほとんどが城を追われる。だからなんとかしなきゃならないんだけど……
僕、どうしたらいいんだ!?
え…………と……
また考え込んでいると、領主様は、じっと僕を睨みつけて言った。
「……訳の分からない奴だ。来い。黒幕を聞き出してやる」
「わーーーーっ!! 待って待って待って!! 僕を殺すと後悔しますよ!?」
「絶対にしない。死んでも構わん。こんな無能」
「無能って言わないでください! 僕、本当に何も知りません!!」
まずはこっちの危機からなんとかしないと……!
とりあえず領地も城も、特に今すぐ解決しないとなくなるような状態じゃない。
だけど、僕自身の方は今すぐなんとかしないと、このままだと反逆の疑いをかけられたまま断罪されて死んじゃう!!
一気に色々忘れていたことを思い出したようで、気分が悪い。なんだか頭も痛いし……
前世でも今と似たような感じの会社員だった気がする……そうだ! 最後は事故死だった。
散々ドジを重ねて、怒鳴られて嫌がらせされて、それで嫌になって、ぼんやりしながら歩いていたら、その辺の建物に頭をぶつけた気がする。フラフラしてたらまた頭をぶつけた。そんなことを繰り返して死んだ気がする……何してるんだよ、僕。
そしておそらく、ここは僕が前世でしたことがあるBLゲームの世界だ。
そして、僕は主人公とその攻略対象を困らせる、主人公にとっては敵の魔法使い。
この領地には、いずれこの国の第五王子、ランクデクトル様がやってくる。攻略対象の王子たちの弟で、彼は、この領地の惨状を早くから嘆いていたと言って、領主様を断罪するんだ。
領主様にはまだ伴侶どころか婚約者すらおらず、すでにご両親も亡くなられていて、ご兄弟もいない。領主様がここから追い出されて幽閉された後は、代わりに第五王子殿下と彼の側近たちがここの管理を任されることになる。けれど、前の領主に対する怒りは大きく、新しい領地の統治はうまくいかない。
攻略対象たちはそれを心配していて、弟の王子を手伝うために、いずれ主人公と共にこの城を訪れる。
そんな中、僕は幽閉先の荒地の屋敷にいる領主様に命じられて、王子たちの動向を探る間者として、この城に戻ってくる。
領主様は領地を取られたことを恨んで、王子たちの邪魔をするためにあの手この手を使うんだ。
そんな彼の手足になるのが僕。攻略対象に襲い掛かったり、彼らを誘惑したり、時には主人公に恐ろしい意地悪をして、王子たちの弱みを握り彼らを苦しめる。そして、最後には領主様とともに悪事がバレて断罪されて、悲惨な最後を迎えるんだ!!
主人公は、選択肢を選んで攻略対象たちとの信頼関係を築き、領地を救うことができれば、領民の支持を得て、この先王子の伴侶として認められていくための大きな一歩になる。
けれど、確か、選択肢を間違えると領地は魔物で溢れて国は最悪の場合、滅んでいたような気がする…………
ゲームがどうだったかすぐには思い出せないけど、そんな最後、嫌だ。
だけど、まだ攻略対象の王子たちも、もちろん主人公もこの城には来てないし、第五王子も領主様を断罪なんてしていない。
ゲームは始まる前なのかな……??
領主様はまだ領主様だし、僕だって間者じゃない。
とはいえ、僕はそれをじっくり考えている場合じゃない。
このままだと、僕はゲームが始まる前に領主様に反逆の疑いをかけられて殺される。
だけど、僕がここで死んだら、ゲームは始まらなくなるんじゃないか!??
突然色々考えだして黙り込む僕の顔を、領主様が覗き込む。
「…………おい……無能。どうした?」
「あ…………」
領主様に呼ばれて、僕はますます焦る。
このままじゃ、この領地は王子が管理するものになって、領主様は幽閉で、ここにいるみんなも、ほとんどが城を追われる。だからなんとかしなきゃならないんだけど……
僕、どうしたらいいんだ!?
え…………と……
また考え込んでいると、領主様は、じっと僕を睨みつけて言った。
「……訳の分からない奴だ。来い。黒幕を聞き出してやる」
「わーーーーっ!! 待って待って待って!! 僕を殺すと後悔しますよ!?」
「絶対にしない。死んでも構わん。こんな無能」
「無能って言わないでください! 僕、本当に何も知りません!!」
まずはこっちの危機からなんとかしないと……!
とりあえず領地も城も、特に今すぐ解決しないとなくなるような状態じゃない。
だけど、僕自身の方は今すぐなんとかしないと、このままだと反逆の疑いをかけられたまま断罪されて死んじゃう!!
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