ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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7.話なんかできるもんか!

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 僕は、僕に剣を向ける兵士たちに囲まれて、領主様に連れて行かれた。

 ああーーーー!! どうしよう!!

 何かここを切り抜けるいい手を考えないと!!

 だけど、まだ記憶だって、ちゃんと戻ってないし……

 それでも領主様は、僕が待ってって言ってたって待ってくれるような人じゃない。僕の手枷に鎖をつけてそれを強く引いて、僕を城の奥の、普段誰も来ない暗い部屋に連れて行ってしまった。

 部屋に入ってこようとした兵士たちを領主様は止めて、邪魔だと言って追い払う。部屋のドアを領主様が閉めると、外で兵士たちが遠ざかっていく足音がした。

 これで、この部屋には、怯えて今にも泣き出しそうな僕と、ニヤニヤニヤニヤしている領主様、なぜかついてきたベリレフェク様の三人だけ。

 領主様、かなり怒ってるし、このままじゃ絶対に殺される……

 手枷までされたら、もう逃げようがない。

 なぜか部屋にいるベリレフェク様は、僕がどうなろうがどうでもいいらしく、部屋の隅に立って、そっぽを向いていた。

 このまま、殺されるしかないのか?

 ビクビクしていると、領主様は僕に振り向いた。

「それで? どういうつもりだ?」
「え…………」
「え……じゃない。何か、言いたいことがあったんじゃないのか?」
「えっ……!?」

 う、嘘……聞いてくれるのか!? 絶対にもう聞いてなんてもらえないんだと思っていたのにっ……!!

 今度こそチャンスが来たんだと思った僕の手枷の鎖を、領主様が強く握って引き寄せる。かと思えば、僕の手枷に天井から伸びてきた鎖が巻き付いて、そのまま強く引っ張られる。腕がちぎれちゃうんじゃないかってくらい強い力で引っ張られて、そのまま天井から吊るされてしまった。

「いっ…………いたっ……ぁっ……!」
「どうした? 何か、言いたいことがあったんじゃないのか?」

 あるけどっ……!! こんな状況で言えるかっ……!!

 鎖はどんどん僕を天井へ引き上げて行って、足を床につけることもできない。

「いたっ……領主様!!」
「なんだ?」
「あ、あのっ…………下ろしてくださいっ……!! き、聞く気、ありませんよね!?」
「あるぞ? ただ、貴様のようなバカを自由にしておくわけにはいかない」
「も、もう手枷もされてるし、絶対に何もできません!! せめて下ろしてっ……そうじゃないと話せません!! 領主様っ!!」

 喘ぎながら言うと、領主様は魔法で鎖を下げてくれた。なんとか床に足はついたけど、それでも手枷は外してもらえないし、こんな風に吊るされていたら、怖くて仕方がない。

 もう、涙まで滲んできた。

 捕縛の魔法の道具を投げつけた件、思っていたより怒っているみたい…………こ、このままじゃ、本当に殺される…………

「あ、あの……領主様…………僕……ほ、本当に、反逆しようなんて…………思ってないんです……」

 ガタガタ震えながら言うと、領主様は、短い鞭を握り、僕に近づいてくる。

「ひっっ…………!!」

 嘘だろ……そんなに怒ったのか?

「り……領主様っ…………!?? あのっ……」
「………………」

 なんで何も言ってくれないの…………!? 無言で鞭を持って近づいてこられたら怖いんですが!??

 すぐそばまで近づいてきた領主様は、僕の喉元に触れる。

「ひっっ…………」
「……怯えるな。打ちやすそうな首だと思っただけだ」
「怯えますっっ……う、打たないでっ…………」
「まだ打たない。打つのは、貴様の話を聞いてからだ」
「結局打つんですか!? そ、それに、話を聞いてくれる状況には見えませんっっ……!! つ、吊るさなくても……」
「貴様を自由にしておくと、俺が危険な目に遭いそうだからな」
「…………」

 それは確かにそうですがっっ……!!

 だけど、怖いものは怖い。吊るされて鞭をチラつかせる男の前で、話なんかできるもんか!!
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