ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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9.想像できない

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 確か、ベリレフェク様も、ゲームに出てきた。ゲームでも、ベリレフェク様はこんな感じだったなー…………

 冷静で、それでいて、平然と恐ろしい手を使う策士だった。

 ゲームの中のベリレフェク様も、主人公からしたら悪役。

 王家からの使者としてよくこの城を訪れていたベリレフェク様は、領主様が幽閉されたのち、王家に戻されて、その後、攻略対象の王子たちと共に再びこの城を訪れる。

 その時はいかにも王家の味方のような顔をして主人公たちの隣にいるが、裏では領主様の側についていて、腹の中では王家を裏切る気満々。

 この領地を守ろうとする主人公たちの邪魔をする悪役魔法使い……つまり僕の後ろにたまに現れるベリレフェク様は、僕に領主様からの伝言を伝えたり、僕に指示をしたりして、あの手この手で王子たちを陥れようとする。

 だけど、最終的には僕とは仲違い……独断で主人公や王子を手にかけようとして、返り討ちにあって断罪される。命は助かるけど、厳しい罰を受けて幽閉が決まってしまう。
 けれども、主人公の優しさに救われた彼は、王国で恐ろしい事件が起こったときに、その類まれなる回復の魔法の力で多くの民を助けて減刑され、最後には主人公たちとパーティを組む回復の魔法使いになる。バッドエンドでは斬首だったような気もするけど…………

 だけど…………

 ……ベリレフェク様が、僕と協力するところが、僕には想像できないなぁ…………

 僕なんかと協力しなくても、ベリレフェク様は一人で目的を達成できそうだ。ドジな僕と違って、ベリレフェク様は貴族社会で一目置かれるほどの優秀な魔法使いなんだから。

 というか……

 ゲームの中の僕だって、今の僕みたいにどじで間抜けな魔法使いじゃなかったような気がする。始終ローブを着てフードで顔を隠していて、怖い印象の悪役魔法使いだった。

 それが、今は涙目で暗い部屋に吊るされていて、今にも漏らしそう……

 なんて情けないんだ、僕。

 とはいえ、主人公でも攻略対象でもない僕らに関する情報は、ゲーム内ではあまり語られていない。

 ベリレフェク様が僕と仲良くするところなんて、僕には思いつかないし、領主様がみすみす王子に領地を取られたりするのかな?

 そのあと、僕が間者になって主人公たちの邪魔なんかしても、即失敗しそう。今みたいに転んで魔法の道具を暴走させて自滅していそうだ。

 それに、僕なんて頼りにしたことない領主様が、僕にそんなことを命じるとも思えない。

 だけど、この領地がまだ領主様のものだってことは、多分、主人公がここに来るまでにそんなことが起こるんだろう。どうやってそうなるのかは分からないけど、領地を取られずにいれば、領主様は領主様のままで、僕もベリレフェク様も悪役にならなくて済むはず。その上で、この領地や王国が滅ぶバッドエンドも回避しないと…………

 僕にそんなことできないような気がする……

 だってそもそもそんなことをする前に、今拷問されて死にそうだ。

 領主様は、僕の方に振り向いた。

「それで? 貴様はどうなんだ?」
「へっ……!?? ど、どうって…………」
「本当に、ただ誤魔化そうとしているだけか?」
「へ!!?? ち、ちがっ……違います!!」

 それは違う。

 まだどうすればこの状況を回避して、さらに領主様がいなくなって僕も悪役になって断罪される未来を回避できるか思いついていないから時間稼ぎをしているだけだ!

 ……あんまり変わらないような気がしてきた……

 だけど、そんなこと言ったら本気で殺される!! 悪役として断罪されるのは嫌だけど、ドジすぎて殺されるのも嫌だ!!

 だけど、あからさまに動揺した僕の前で、領主様の目がひどく冷たくなる。かと思えば、彼の魔法は僕の着ていた服を切り刻んでしまった。

「わあああっっ!!!!」

 いきなり服を刻まれて、悲鳴をあげる僕。肌を切られることはなかったけど、着ていたものは細かく切られてただの布のように床に落ちていく。

 なんでわざわざ服を破るんだ!? 話を聞くときに人は相手の服を破ったりしないと思います!!

 って怒鳴りたいけど、怖くてもう反論できる状態じゃない。

 こ、殺される……

 服の次は僕を切り刻むつもりなんじゃないか!??

「あ、あ、あの…………り、領主様…………な、な、なんで……服を…………」
「素っ裸の方が打ちやすい」
「ひっ…………」

 震え上がる僕に、領主様はやけに楽しそうに顔を近づけてくる。

「…………せっかくだ。存分に痛めつけながら打ってやる」
「あ、あのっ…………」
「その肌を鞭の痕だらけにして俺を楽しませろ。貴様の体は、打ちがいがありそうだ」
「り、領主様…………」

 打ちがいって何!!?? なんでそんなに楽しそうなの!??

 領主様は、じっと僕のことを見つめている。こんな風に、領主様が僕のことにだけ夢中になっているの、初めてかも知れない。
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