ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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10.それは嫌だ!!

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 ど、どうしよう…………

 このままじゃ、絶対に殺される。一か八か、全部話して領地が滅びないように助力を乞うか……この領地が王子に取られて、一番悔しい思いをするのは領主様のはずだ。

「あ、あのっ…………! 領主様っ…………」

 口を開こうとした、その時だった。領主様の足元に、激しい光が現れる。捕縛の魔法の光だ。しかも、僕の魔法なんて比べ物にならない、強い光。

 不意をつかれた領主様は、床から伸びてきた幾つもの光の鎖に体を縛られて、その場に膝をつく。

 そして、背後に振り向いた。

 領主様の背後には、強い光を放つ魔法の道具を握ったベリレフェク様が、恐ろしいほどの無表情で立っていた。

「……貴様っ………………ベリレフェクっ……!」

 苦しそうにその名前を呼んで、領主様は、その場に倒れてしまった。

 え…………

 えっっ…………!!??

 今、何が起こったんだ……??

 さっきまで僕の前で僕に鞭を見せつけていた領主様は倒れていて、その背後には、魔力の光を放つ捕縛の魔法の道具を握るベリレフェク様が立っている。

 領主様が僕の方に夢中になっている間に、領主様の背後から、ベリレフェク様が捕縛の魔法を使ったんだ。それも、かなり強力な魔法。僕が廊下で魔法の道具を使っても失敗したような、下手くそな魔法じゃない。魔力の鎖で相手の体の自由とともにその意識まで奪うような、強力な魔法だ。

 だけど……なんでベリレフェク様が??

 王家からの使者が、なんでこんなことするんだ!??
 領主を背後から魔法で打って気絶させるなんて、いくら王家の使者でも重罪だぞ!!

「あっ……あのっ…………ベリレフェク様っ!??」

 僕が呼んでも、ベリレフェク様は僕のことなんか無視。代わりに、魔法で剣を呼び出した。それも、不気味な魔力の光を放っている。強力な魔法がかかった剣だ。

 え……え!??

 まさか、それで僕を殺す気か!?? なんで!??

 僕、何かしましたか!??

 焦る僕だけど、ベリレフェク様は僕のことなんて見ていない。じっと、領主様のことを見下ろしていた。

 狙いは領主様かっっ!?

「ベリレフェク様っ……!!!!」

 震えている今でも出せる最大の声で彼を呼ぶと、彼は面倒臭そうな顔をして、僕に向かって顔を上げた。

「……うるさいぞ。領主とともに殺されたくなければ、声を出すな」
「でっ…………でもっ……な、な、なんで領主様をっ……り、領主様がいなくなったら、この城がっ……領地が乗っ取られちゃうんです!! やめてください!!」
「俺がやめれば、お前はここで殺されるんじゃないか?」
「……っ!!」

 ベリレフェク様に鋭く言われて、僕はつい、返答に困ってしまう。

 領主様が目を覚ましても、僕は結局ここで領主様に拷問されて死ぬ……

「そ、そんな…………そんなことありません! 領主様、僕の話を聞いてくれるって……そう言ってくださいました!」
「そんなことを本気にしているのか? こんな暗い部屋に連れてこられて、裸で吊るされて鞭を見せつけられて? 話を聞く? こんな話の聞き方があるか。どうかしてるんじゃないか?」
「………………」

 僕だってそう思います…………

 だけど、だからって領主様を殺されるのも困る。だって、領主様がここからいなくなっちゃったら、この領地は第五王子殿下に乗っ取られてしまうんだ。

 …………ベリレフェク様、王家から命じられてここに来ている使者だったな…………

「あ、あの…………ベリレフェク様。その……まさか、これも王家から命じられて…………」
「…………お前……」

 ベリレフェク様の目が鋭くなる。

 僕を完全に敵として認識してしまった……そんな目だ。

 しまった…………変なこと言った!!

 例えば本当に王家から命じられているとして、そんなことを僕が知ってるって思われたら、絶対口封じに殺される!

 ベリレフェク様が、恐ろしい顔をして、僕に近づいてくる。

「お前…………まさか、何か知っているのか?」
「しっ……知らないっっ!! 知らない知らない知らないっっ!! 僕は、なーーんにも知りません!! た、ただ、あなたが王家から来たからそうなのかなーーって思っただけです!! 本当にそれだけでっ…………ただの僕の予想です!! 知ってるわけないじゃないですか!! 僕ですよ!?? ドジで馬鹿な僕ですよ!? 何も知ってるわけないじゃないですか!!!!」
「………………そうだな……」

 そう言って、ベリレフェク様は僕から離れてくれた。

 よ、よかった…………死んだかと思った。

 変なこと言わない方がいいな……これからのことも、絶対に。
 相手は王家から来た使者だ。下手なこと言って、企みに気づいたなんて思われたら殺されるっ……!
 僕は今裸で吊るされているんだし、ベリレフェク様が本気になれば、いつでも殺せるんだ。

 そして、簡単に殺せるのは床で倒れたままの領主様も同じ。これだけ僕が騒ぎ立てているのに、倒れた領主様は、一向に目を覚まさない。

「り、領主様…………」

 小声で僕が言うと、領主様は目を覚さないけど、代わりにベリレフェク様が僕に言った。

「俺の捕縛の魔法で捕らえた。その程度では目を覚さない。お前は黙って見ていろ」
「ま、待って……待ってください…………あ、あのっ……」
「黙って見ていれば、お前のことは助けてやる。俺にチャンスをくれた礼だ」

 …………礼? 僕が、領主様が殺されるチャンスを作ったって言うのか?

 ベリレフェク様が剣を握る。このままじゃ、領主様が殺されちゃう。

 だけど僕は今、吊るされて裸。これじゃ、何もできない。

 どうしよう…………

 このままじゃ、領主様が……

 そんなの、嫌だ。断罪とか、バッドエンドも嫌だけど、領主様がいなくなっちゃうのが嫌だ!!
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