ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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17.俺が案内してやる

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 僕がこれから領主様に会いに行くはずが、領主様の方から僕に会いにきてくれて、僕は、震え上がることしかできなかった。

 だって領主様……絶対にまだ怒ってる。

 誤魔化してしまいたいけど、そんなことしても無駄なんだろう。

 もう全部正直に話すしかない……

「ちょっと……散歩に行こうとしてました。ベリレフェク様と……」

 彼の名前を出してしまって、ベリレフェク様は、ひどく嫌そうな顔をして、小声で言った。

「おい……俺を巻き込むな」
「え…………あ、す、すみません…………で、でも、ちょっと散歩に行くくらい……悪いことじゃないんだし……」
「散歩がいい悪いじゃない……分かっていないだろう。お前」
「え…………?」

 分かってるって、何を?

 なんのことなのかは分からないけど、ちゃんと話した方がいいよな……もう疑われるのは嫌だ。

「え……えっと…………防御の魔法の強化したくて…………外に魔法の道具の強化に使えそうな魔法の素材があったはずだから……それを探しに行こうとしていただけです……」

 素直に言うと、領主様はなぜか、ひどく苛立った顔をしていた。

「……ベリレフェクとか? 随分、仲がいいじゃないか」
「へっ……!?」

 仲がいい?? 僕と、ベリレフェク様が??

 僕、ついさっき脅されていたのに…………なんでそれで仲が良く見えたんだろう……

「え、えっと……」
「防御の魔法を強化したいのなら、明日取りに行けばいいだろう」
「そ、それはダメですっ……!! 今じゃないとダメなんです!!」
「今?」
「は、はい!! どうしても……今じゃないと意味がないんです!!」
「……なぜ、今なんだ……?」

 不思議そうな領主様。

 だって痛い目に遭いたくないんです!

 ベリレフェク様も僕を見下ろして、口を開いた。

「俺はただ、回復の魔法について教えていただけですよ。やけに怯えていましたし……本当に、それだけです。お迎えにいらしたのならちょうどいい。どうか、連れて行ってください」

 言われて、領主様は僕に振り向いた。

「怯えていた? 何かあったのか?」
「えっ…………えっと…………そ、そういうわけでは……ないんです。すみません……」

 まさか、領主様の拷問が怖かったんです! なんて言えないし……ベリレフェク様、余計なことを言わないでくれ!!

 ぼ、僕……どうしたらいいんだ……

 汗がダラダラ流れてきて、震えていると、領主様は真剣な顔をして言う。

「…………何か、恐ろしいことがあるのなら言え」
「えっっ?!??」

 言われたことに驚いて、領主様を見上げた。

 そしたら、領主様は本当に心配そうな顔をしている。

 もしかして…………

 本当に怯えた僕を気にかけてくれている……のか……?

「え…………えっと……」
「行くぞ」
「へ!? ど、どこに……」
「外へだ。防御の魔法を強化するのだろう?」
「あっ……あのっ…………」
「この辺りのことなら、俺の方がベリレフェクより詳しい。案内してやる」
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