18 / 45
18.俺もやる
しおりを挟む
城の庭はかなり広くて、城壁の向こうには深い森が広がっている。そこには、魔法の道具や武器には欠かせない素材が多く存在している。僕も仕事でよく行くが、この辺りは歩いているだけで楽しい。どんな強化をするかとか、そういうことを考えながら歩けるからだ。失敗することが多いんだけど…………
だけど、ベリレフェク様から頂いた魔法の道具……あれに防御の魔法の力を与えて、それからさらに強化すれば、きっとなんとかなるはずだ!! 領主様の拷問も怖くなくなる魔法……まずはこれを手に入れる!!
……そのはずなのに、なんで領主様と一緒に僕は庭を歩いているんだ!!
僕の反逆を疑っていてこれから僕を拷問する人と、なんで一緒に強化の素材を探してるんだっ……!!
こんなのバレたら、ますます疑われるんじゃ……いや、考えようによっては、チャンスか? 今こうして二人きりなんだから、これをチャンスだと思って、反逆の疑いを晴らせばいいんだ!!
……だけど、自信ないなぁ…………だって、僕にそんなことが出来るとは思えない。
緊張しながら、庭を歩く。もう日はとっくに暮れていて、暗い。こんなところを領主様と二人で歩くのなんて、初めてかもしれない。
なんで領主様、わざわざ一緒に来てくれたんだろう…………それに、ベリレフェク様が言った、僕が怯えているっていうのをひどく気にしているみたいだ。
なんで領主様が僕のことなんて心配するんだろう……
よく分からないけど……
とにかく、防御の魔法の強化のためのものを集めながら、領主様にかけられた、反逆の疑いも晴らす!! 僕はいつか、領主様の間者に抜擢されるくらい、領主様に信頼されるんだ。だったら、疑いを晴らすことだって、出来るはず!!
「り、領主様!!」
決意を込めて、僕は領主様に振り向いた。
領主様は驚いたのか、キョトンとしている。緊張しすぎて、声の大きさを間違えたらしい。
「……どうした?」
「あっ…………えっ……と…………こ、この辺り、強化に使える素材がたくさんあるんですっ……!! 僕もよくそれを取りに来ていてっ…………と、討伐のっ……役に立てるかなって思って……」
ちょっと反逆の意思なんてありませんよと、アピールしてみるけど、領主様は、そうかって言って、顔を背けただけ。
…………ほとんど興味を持ってくれてない……やっぱり反逆を疑われたままなんだ…………
どうしよう……
そんなことばかり考えていたら素材どころじゃない。頭を抱えてしまいそうになっていたら、領主様がいきなり立ち止まった。
「領主様?」
気づいて振り向いた時には、僕の方が少し前に出ていた。
立ち止まった領主様は、僕に向かって、一本の杖を突き出した。それは、僕の身長より少し長い、だいぶ古びているけど、大切なもの。
「僕の杖っっ…………!!」
手を伸ばしたら、領主様は僕にそれを渡してくれた。
確かに、僕の杖だ。どこも壊れていない。なくなった時のままだ。返してくれるのか?
びっくりして見上げたら、領主様は、どこか気まずげに顔を背けた。
「…………確かに、返したぞ」
そう言う彼を見上げたら、少し緊張した。
だって、まさか返してもらえるなんて、思わなかったからだ。
「あ、あのっ…………僕…………これ、い、いいんですか?」
「…………貴様が魔法に失敗すると、とんでもないことが起こるようだからな」
顔を背けたまま、小さな声で言われて、僕は苦笑い。確かに、勝手に死ぬところだったからな……
領主様、反逆を疑っているのに、よく助けてくれたなぁ……
杖だって、いいのか? 領主様、あれだけ返さないって言ってたのに。
「……あの…………これ、この領地を守るために必要なんじゃなかったんですか?」
「……今日の夜会で魔物退治を担う男に渡すはずだったが、今日は中止になった。新しいものを用意する」
「だ、だったら……僕に用意させていただけませんか!?」
「お前が?」
「は、はい! 代わりのものを用意しますと申し上げました!」
「それは聞いたが…………」
領主様は苦い顔だ。
あれだって、なんとなく言ったんじゃない。本当にそうしようと思ってたんだ。
こんな僕でも、討伐のための武器なら、いつも用意している。何度もちゃんと使えるか確認しているんだ。何より、この杖のことは、僕が一番よく知っている。
討伐のための力になれればいいんだけど……
ドキドキしながら、領主様の返事を待つと、彼は「分かった」と言ってくれた。
「次の夜会までに用意してみろ。使えるかどうかは、俺が判断する」
「……は、はい!! ありがとうございます!!」
「…………」
領主様は、黙り込んでしまう。もしかして、やっぱり反逆の疑いのある僕に任せるのは不安なのかと思ったけど、領主様は顔を背けたまま言った。
「…………悪かった」
「へっ……!??」
「……そんなに大切なものだとは知らなかった」
「あ……」
あ、杖のことか…………
領主様は領地を守ることを考えていたんだ。僕だって、そのために城に置いてもらっているんだし……
「……ぼ、僕っ……ちゃんと杖、用意します!! 待っていてください!!」
「誰が待つか」
「え……あ! そんなに長くお待たせはしません!」
「そうじゃない。俺も準備に立ち会う。一人では何をしでかすか、分からないからな」
「…………」
そうかも……だけど、領主様が手伝ってくれるなら、これ以上に心強いことはない!!
「あ……ありがとうございます! 領主様!!」
だけど、ベリレフェク様から頂いた魔法の道具……あれに防御の魔法の力を与えて、それからさらに強化すれば、きっとなんとかなるはずだ!! 領主様の拷問も怖くなくなる魔法……まずはこれを手に入れる!!
……そのはずなのに、なんで領主様と一緒に僕は庭を歩いているんだ!!
僕の反逆を疑っていてこれから僕を拷問する人と、なんで一緒に強化の素材を探してるんだっ……!!
こんなのバレたら、ますます疑われるんじゃ……いや、考えようによっては、チャンスか? 今こうして二人きりなんだから、これをチャンスだと思って、反逆の疑いを晴らせばいいんだ!!
……だけど、自信ないなぁ…………だって、僕にそんなことが出来るとは思えない。
緊張しながら、庭を歩く。もう日はとっくに暮れていて、暗い。こんなところを領主様と二人で歩くのなんて、初めてかもしれない。
なんで領主様、わざわざ一緒に来てくれたんだろう…………それに、ベリレフェク様が言った、僕が怯えているっていうのをひどく気にしているみたいだ。
なんで領主様が僕のことなんて心配するんだろう……
よく分からないけど……
とにかく、防御の魔法の強化のためのものを集めながら、領主様にかけられた、反逆の疑いも晴らす!! 僕はいつか、領主様の間者に抜擢されるくらい、領主様に信頼されるんだ。だったら、疑いを晴らすことだって、出来るはず!!
「り、領主様!!」
決意を込めて、僕は領主様に振り向いた。
領主様は驚いたのか、キョトンとしている。緊張しすぎて、声の大きさを間違えたらしい。
「……どうした?」
「あっ…………えっ……と…………こ、この辺り、強化に使える素材がたくさんあるんですっ……!! 僕もよくそれを取りに来ていてっ…………と、討伐のっ……役に立てるかなって思って……」
ちょっと反逆の意思なんてありませんよと、アピールしてみるけど、領主様は、そうかって言って、顔を背けただけ。
…………ほとんど興味を持ってくれてない……やっぱり反逆を疑われたままなんだ…………
どうしよう……
そんなことばかり考えていたら素材どころじゃない。頭を抱えてしまいそうになっていたら、領主様がいきなり立ち止まった。
「領主様?」
気づいて振り向いた時には、僕の方が少し前に出ていた。
立ち止まった領主様は、僕に向かって、一本の杖を突き出した。それは、僕の身長より少し長い、だいぶ古びているけど、大切なもの。
「僕の杖っっ…………!!」
手を伸ばしたら、領主様は僕にそれを渡してくれた。
確かに、僕の杖だ。どこも壊れていない。なくなった時のままだ。返してくれるのか?
びっくりして見上げたら、領主様は、どこか気まずげに顔を背けた。
「…………確かに、返したぞ」
そう言う彼を見上げたら、少し緊張した。
だって、まさか返してもらえるなんて、思わなかったからだ。
「あ、あのっ…………僕…………これ、い、いいんですか?」
「…………貴様が魔法に失敗すると、とんでもないことが起こるようだからな」
顔を背けたまま、小さな声で言われて、僕は苦笑い。確かに、勝手に死ぬところだったからな……
領主様、反逆を疑っているのに、よく助けてくれたなぁ……
杖だって、いいのか? 領主様、あれだけ返さないって言ってたのに。
「……あの…………これ、この領地を守るために必要なんじゃなかったんですか?」
「……今日の夜会で魔物退治を担う男に渡すはずだったが、今日は中止になった。新しいものを用意する」
「だ、だったら……僕に用意させていただけませんか!?」
「お前が?」
「は、はい! 代わりのものを用意しますと申し上げました!」
「それは聞いたが…………」
領主様は苦い顔だ。
あれだって、なんとなく言ったんじゃない。本当にそうしようと思ってたんだ。
こんな僕でも、討伐のための武器なら、いつも用意している。何度もちゃんと使えるか確認しているんだ。何より、この杖のことは、僕が一番よく知っている。
討伐のための力になれればいいんだけど……
ドキドキしながら、領主様の返事を待つと、彼は「分かった」と言ってくれた。
「次の夜会までに用意してみろ。使えるかどうかは、俺が判断する」
「……は、はい!! ありがとうございます!!」
「…………」
領主様は、黙り込んでしまう。もしかして、やっぱり反逆の疑いのある僕に任せるのは不安なのかと思ったけど、領主様は顔を背けたまま言った。
「…………悪かった」
「へっ……!??」
「……そんなに大切なものだとは知らなかった」
「あ……」
あ、杖のことか…………
領主様は領地を守ることを考えていたんだ。僕だって、そのために城に置いてもらっているんだし……
「……ぼ、僕っ……ちゃんと杖、用意します!! 待っていてください!!」
「誰が待つか」
「え……あ! そんなに長くお待たせはしません!」
「そうじゃない。俺も準備に立ち会う。一人では何をしでかすか、分からないからな」
「…………」
そうかも……だけど、領主様が手伝ってくれるなら、これ以上に心強いことはない!!
「あ……ありがとうございます! 領主様!!」
70
あなたにおすすめの小説
推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。
オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。
ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?!
主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
表紙ロゴは零壱の著作物です。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である
竜鳴躍
BL
第二王子のジニアル=カイン=グレイシャスと騎士団長のフォート=ソルジャーは同級生の23歳だ。
みんなが狙ってる金髪碧眼で笑顔がさわやかなスラリとした好青年の第二王子は、幼い頃から女の子に狙われすぎて辟易している。のらりくらりと縁談を躱し、同い年ながら類まれなる剣才で父を継いで騎士団長を拝命した公爵家で幼馴染のフォート=ソルジャーには、劣等感を感じていた。完ぺき超人。僕はあんな風にはなれない…。
しかし、クールで茨と歌われる銀髪にアイスブルーの瞳の麗人の素顔を、ある日知ってしまうことになるのだった。
「私が……可愛いものを好きなのは…おかしいですか…?」
かわいい!かわいい!かわいい!!!
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる