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番外編7.最終決戦
116.追いつかれそう!
しおりを挟む僕は勇んで廊下に飛び出す。すると、廊下の先にいた人が僕に振り向いた。え……あれ……まさか………………
振り向いた人は、黒の燕尾服に、黒い髪、恐ろしい顔で銀の短剣を握っている男。
「やっと出てきたな……クソ猫……」
うわあああああ! セリューだああああ!! なんでいきなりセリューなの!?
全身真っ黒のそいつは、手元の短剣をギラギラ光らせながら、ゆっくり、僕に近づいて来る。
「貴様のようなバカ猫でも、オーフィザン様が選ばれた相手……それに私が口を出すなどで過ぎた真似。あの方が選ばれたのなら…………そう考えてきたが……やはり貴様は認められんっっ!!」
「そ、そんな……」
「何がそんなだ!! だいたい、認める方がどうかしている!! もともと貴様はただの盗人だろう!! オーフィザン様が管理する敷地に勝手に入り込み、大切なものを盗み出し、破壊した上に、四六時中騒ぎを起こし、寝所にまで火を放つ者が、誰よりも尊敬する主人のそばにいるんだぞ! 誰でも反対する!!」
「う、うううー!!」
そんなみんなが頷きそうな意見を叫ぶなんてひどい!! セリューは意地悪だ!
だけど、もっともだからって、負けるもんか!!
「は、反対されたって、僕はオーフィザン様のお嫁さんになるんです!!」
「黙れええっ!」
ついに、セリューは短剣を振り上げ襲いかかって来る。
怖ああああ!! もう逃げるしかない!!
例えば他の人だったら、まだ話せる余地があったのかもしれない。だけど相手はセリュー。この人が僕を認めるなんて、生涯あり得ないもん!!
城の中を走り出すけど、セリューは僕を追いかける時、すごく足が速いんだ!!
「待てこの馬鹿猫!」
うわあああ! 捕まったら絶対に殺されちゃう!!
どうしよう!! せ、セリューが追ってこれないところに逃げよう! そうだ!! 窓から外に出よう!!
僕ら狐妖狼は、結構身軽。壁伝いに、下に降りることができるはず!!
窓を開けて外に出る。
結構高いな……だけど、セリューに比べたら怖くない!!
壁を伝うと、セリューはもう追ってこないみたい。
ホッとしたのもつかの間、ゾッとするような羽の音がした。
まさか、ペロケ……?
恐々、羽の音がする方に振り向く。真っ黒い羽を羽ばたかせ、僕の方に向かってくるのは、セリューだ!! わああああ! セリューに羽が生えた!
「な、なんで……」
「ここは魔法の道具を作る城だ。これくらいできる」
えええー!! そんなのずるいっ!! と、とにかく逃げなきゃ!!
焦ってすすもうとしたら、足を踏み外しちゃう。
わあああっ!!
バランスを崩した僕の体は、壁から離れて、地面に向かって落ちていく。もう落ちて死ぬんだと思ったけど、僕の手を空中でセリューがつかんでくれた。
「せ、セリュー……さま?」
「……」
なんで助けてくれるの? もしかして、セリューも、なんだかんだ言って優しい? 彼は、僕を庭に下ろしてくれた。
「せ、セリュー様……あ……ありがとうございます……」
「礼を言うな。クソ猫!」
「え……え?」
「オーフィザン様の下僕に死なれては、あの方に顔向けできない……しかし……」
そいつは再び短剣を振り上げる。
「花嫁にはさせんっ!! 諦めるまで嬲ってやる!!」
「わああああ!」
そんなもの振り回して、僕に当たったら死んじゃうかもしれないのに!! 諦めるまで嬲るって……怖いいいっっ!! やっぱりセリューはセリューだ!!
僕は庭を走って一目散に逃げた。普通なら走ったら僕の方が絶対早いのに、セリューは人間離れした足の速さで僕に迫ってくる。
もう追いつかれる!
あ!! そうだ!! 僕、あの尻尾、持ってたんだ!! オーフィザン様が僕をいじめた時の尻尾!! 盗賊達に捕まった時は、これが僕を助けてくれたんだ!! こ、これなら!!
僕は走りながら、後ろのセリューに振り向いた。
「セリュー様! お、オーフィザン様から……贈り物です!!」
叫んで、僕は尻尾を後ろのセリューに向かって投げる。オーフィザン様からの贈り物って言葉が効いたのか、セリューは大人しくそれをキャッチした。
「なんだ? これは……わっ!!」
やった!! 尻尾、セリューの服のボタン、外してる!! 今のうちに逃げる!! こんなことして、後で何されるか分からないけど、もう今逃げられればそれでいい!!
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