【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編14.オーフィザン様と対決する!

150.城の中を逃げる

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 僕は、決意して歩き出そうとしたけど、すぐに後ろから追っ手の羽音が近づいてくる。ペロケが飛んできたんだ。

「バカ猫ーー!! 見つけたぞ!!」
「ぺ、ペロケ…………なんでここが分かったの……?」
「窓からお前の尻尾が見えてたの!!」
「え、ええっ……!?」

 そんなの、気付かなかった。窓から離れておこう……

 尻尾をおさえて、窓から離れる僕。

 だけど、そんな間にも、ペロケは持っていた大きな杖で僕のことを指差して怒鳴る。

「この泥棒バカ猫!! お前、オーフィザン様のご友人がお土産にって持ってきてくれたものを持ち逃げしたんだって!?」
「う……だ、だって…………それは……」
「また盗みなんて、本当に最低な猫! どういうつもりだよ!!」
「う、う………………だ、だってこれ……これがあると、僕、いっぱいこちょこちょされちゃうんだもん!! そんなの嫌だもん!! お願い! 見逃して!!」
「誰が見逃すかあああああ!! そんなの、言い訳になると思ってるの!?」
「だってだって、あの猫じゃらし、怖いんだもん! ペロケなんか、あれの怖さ、知らないくせに!!」
「知るかバカ猫!! お仕置きされるようなことする方が悪いんだろーー!! お前なんか一晩中オーフィザン様にこちょこちょされちゃえば…………さ、されちゃえば……お前なんかっ……! お前なんかああああ……」
「ペロケ?」

 どうしたんだろう……ペロケ、怒っていたのに、だんだん目を潤ませていってる。

 今にも泣きそうな顔で、ペロケは僕を睨み付けた。

「お、お前みたいな奴を……お前なんかを……夜な夜なオーフィザン様が可愛がっているなんて………………そのために……お前なんかをくすぐるためにその木箱をっ……!」
「ペロケ……?」
「うわああああん!! オーフィザン様あ……こんなゴミ猫のなにがいいんですかあああああ……」

 ついに泣き出しちゃうペロケ。ど、どうしよう……僕のせいだよね??

「ペロケ……ぼ、僕、その……」
「このクソ猫……お前なんか…………あれでくすぐられて死んじゃえばいいんだ……」
「ぺ、ペロケっ!? お、落ち着いて……」
「……その箱を…………こっちに渡せええええっっ!!!」
「わああああああ!!」

 ついにペロケが杖を振り上げる。うわああああん! やっぱりこうなったああああ!!

 僕は雨紫陽花さんの手を取って逃げ出した。後ろからブレシーもついてくる。

 こうやって僕を追いかけてくるのは、ペロケの日常。
 僕も、こんなペロケを見慣れているけど、初めてキレた彼を見る雨紫陽花さんは真っ青だ。

「な、な、なんだあの精霊は!?」
「ペロケはいつもああなんです! は、走って!!」

 雨紫陽花さんの手を引きながら、城の廊下を全力で逃げる。

 だけど、ペロケには羽があるんだ。ただ走って逃げてるだけだと、すぐに捕まっちゃう!

 それなら!!

 僕は雨紫陽花さんを連れて、鍵が開いていた部屋に飛び込んだ。そこは倉庫で、暗い部屋に棚がいくつも並んでいる。

 そこで僕らは息を潜めた。

 少ししても、ペロケの羽の音は聞こえない。

 撒けたのかな……

 隣で雨紫陽花さんが、小声で聞いてくる。

「く、クラジュ……あの精霊はなんなんだ?」
「ペロケは僕のことが大嫌いで、いつもああやって追いかけてくるんです……」
「いつも!?」
「しっ! 静かにっ……」

 廊下の方から、ペロケの羽の音がする。ゆっくり飛びながら、僕を探しているんだ。さっきペロケが持ってた杖、多分魔法の道具だし、何をされるか分からない。

 だ、だけど、僕だって負けない! 絶対に見つかるわけにはいかない! 普段ドジして逃げ回ってる僕だもん! ペロケなんかにみつかるもんか!

 息を殺して、ペロケが通り過ぎてくれるのを待つ。

 羽の音が近づいてくる。

 うううーーー!! 怖いーー!!

 僕の隣で、雨紫陽花さんもじっとしている。

 キレたペロケは見境がないんだ。雨紫陽花さんまで危険に晒しちゃうかもしれない。ブレシーだって、きっと怖いはず…………

 だけど、隣を見ても、ブレシーは平気そう。とてもペロケから隠れているとは思えないくらい、平然としてる。

 すごいなあ……いつも追い回されている僕だって、結構怖いのに。

 僕だって……ペロケなんかに絶対負けないもん!!

 決意したら体に力が入っちゃう。

 そしたらガリって、嫌な音。

 ドキドキしながら箱を握ってたせいで、箱に爪が刺さっちゃったんだ!

 すぐに爪を抜こうとしたら、びきって、嫌な音。

 は……箱にヒビが入ってるうう! 力を入れて握りすぎた!!

 慌てて箱を手のひら乗せる。箱には大きな傷ができちゃってて、そこから、灰色の粒が溢れてきた。

 わああああ!! どうしようーー! 中身の粉が漏れてるうう!!

 慌てて集めようとするけど、焦ってるからうまくいかない!!

 僕の様子に気づいた雨紫陽花さんが、僕にふり向いた。

「クラジュ? どうしたんだ……?」
「な、なんでもないです!!」

 とっさに答えて、こぼしたものを隠しちゃう。雨紫陽花さんは僕の足元に気づかず「そうか」って言って、ドアの方に向き直った。

 今のうちに粉を元に戻さなきゃーー!!

 だけど慌てたら今度は箱を落としちゃって、物音は廊下の方まで響いちゃう。

 すぐに、廊下から声がした。

「そこか……クソ猫!」

 も、もうダメだっ……!!

 だけど隣には雨紫陽花さんとブレシーさん。ぼ、僕が怯えている場合じゃない!!

 そうだっ……!

「あ、雨紫陽花さん! ブレシー!! こっち!!」

 僕は二人の手を握って、部屋の奥へ走る。

 いくつも並んだ棚の間を走って、一番奥の棚の裏へいくと、そこには大きな扉。これ、裏口なんだ。ここから隣の部屋に行けたはず!

「ここから逃げられるはずです!!」

 だけどドアは押しても引いても開かない。なんでーー!??

「鍵がかかってますね」

 ブレシーがそう言いながら、ドアの鍵穴を指した。

 か、鍵なんてついてたんだ……

 うわああああん! どうしようーー!!

「僕が開けてみます」

 そう言って、ブレシーが鍵穴の前に座って、小さな玉を取り出した。多分、魔法の道具だ。
 それから漏れた光が鍵穴に入っていく。

「少し頑張れば開くと思います」

 彼は大して怖がる様子もなく、鍵を見つめている。
 僕が初めてペロケに追いかけられた時なんて、怖くて泣いてたのに。

「ねえ……ブレシー……怖くないんですか?」
「怖い?」
「うん……だって、僕はずっと、ペロケが怖いのに……」
「うーん……確かに怖いですけど、僕には、他に怖いものがたくさんあって、そっちの方が怖いんです……」
「そ、そんなに怖いものあるんですか?」
「うーん……無茶苦茶なこと押し付ける時の陛下とか、さっきのオーフィザンとか。だから、僕は外の精霊さんはそんなに怖くないんです。クラジュは? 怖いですか?」
「うん……」
「……大丈夫です」

 ブレシーは僕の頭を撫でてくれた。

 も、もしかして、僕がビクビクしてるから、気を使わせちゃったの!?

「ご、ごめんなさい! 僕、大丈夫です!!」
「え……?」
「だってブレシーはお客様だもん! 僕が守ります!」

 ギュって手を握りながら言ったら、ブレシーは笑い出しちゃう。

 その時、僕らが入ってきたドアから、すごい音がした。どんどん激しく外からドアを殴り付けてる!!

「クソ猫!! ここか!! 逃げられると思うなよーー!!」

 うわああああん!! ペロケに見つかったんだああああ!!

 ど、どうしよう……

 もうすぐにでも、ドアは破壊されてしまいそう。

 うううーー!! なんとかしなきゃ!!

 こうなったら!!

 僕は棚にあったジョウロを手に取って、ドアに向き直る。

「ぼ、僕がペロケをとめます! 二人とも、その間に逃げてください!!」

 そしたら、雨紫陽花さんが慌てた様子で言った。

「く、クラジュを置いていけるか!! クラジュも逃げるんだ!」
「でも……」

 言いかけたところで、背後からかちゃんって音がする。

「開きましたー」

 振り向いたブレシーがそう言って、雨紫陽花さんが僕の手をとって、ドアの向こうに走っていく。

 ドアの向こうは薄暗い、さっきの倉庫と似たような部屋。だけど、これじゃすぐにペロケに追いつかれちゃう。

 な、なんとかしなきゃっ……!!

 焦りながら走っていたら、いくつも並んだ棚の影から人が出てきて、僕はその人にぶつかっちゃう。

「わあああ!!」
「いった……なんだよ! バカ猫か!!」

 僕を怒鳴りつけたのは、普段芝の世話をしているキャティッグさんだ。

「ご、ごめんなさいっ……! で、でもっ……! ペロケがっ……!」
「ペロケ? ……お前ら……また喧嘩か?」
「け、喧嘩じゃないです!! お、オーフィザン様がまたあの猫じゃらしを作るって言って…………そ、それでこの粉持って逃げて……」

 うわああああん! 焦りすぎててうまく話せない!!

 木箱を見せながら言うけど、キャティッグさんはため息をつく。

「なに言ってるかわかんねえよ……猫じゃらし?」
「だ、だって……オーフィザン様がまたあの魔法の猫じゃらし作るって言って……」
「は? あれはもう作らねえって、オーフィザン様がおっしゃってたじゃねえか」
「そうだけど……うわあああ! ペロケが来る!」

 焦るばかりの僕を前に、キャティッグさんはため息をついて、僕の手を引いて、奥に歩いていく。

「え、え? キャティッグさん?」

 彼は、棚の影に隠れるようにしてあったカーテンを開いた。その向こうには、小さな扉があって、キャティッグさんは、その扉を鍵で開けてくれる。扉の向こうには上に向かう階段があった。

「倉庫のものを運ぶときに使う階段だ。普段は魔法の道具調整している奴らしか使わねえ。ここから逃げろ。ペロケには上手いこと言っといてやる」
「え? え? い、いいんですか?」
「お前らが喧嘩するとろくなことにならねえんだよ!!! お前絶対、逃げてる途中でここにある物ひっくり返すだろ!!」
「……そんなことしません……」
「お前は絶対する。オーフィザン様に会ったら、あれはもう作らないように言っとけ。あの魔法の猫じゃらし、暴走すると庭まで飛んでって俺の芝生の上に生えるから嫌なんだよ」
「で、でも…………オーフィザン様、聞いてくれるか分からないです……」
「なんでだよ。聞くだろ。絶対」
「え……? な、なんで……」
「ほら、早く行け!!」
「は、はい!」

 僕は、雨紫陽花さんたちと一緒に、階段を上り出した。
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