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番外編16.オーフィザン様とデート!
170.今日はお開き
しおりを挟む大きな使い魔の竜が、空から降りていく。城の庭には、いくつもランタンが灯され、柔らかい灯りに包まれていた。いくつもテーブルが並べられ、その周りには何人も人がいて、中には、国王陛下もいた。
陛下は、竜の使い魔に乗って降りていくオーフィザン様と僕たちに気づいたみたい。こっちに振り向いて、手を振っている。
「オーフィザン様……そ、そろそろ止まった方が……オーフィザン様!?」
僕が止めても、オーフィザン様、全然聞いてない。
僕らを乗せた巨大な竜は、庭に降りていく。
こ、このまま降りていったら、ぶつかっちゃうよ!??
竜の羽ばたきで起こる風で、いくつかテーブルクロスが飛んでいってしまう。それと一緒に、その上にあったティーカップもいくつも吹き飛ばして、竜は庭に降りた。
陛下が止めてくれなかったたら、周りにいた兵士さんたちが飛びかかってきていたかもしれない。
降りて来たオーフィザン様を見て、陛下が落ち着いた様子で言った。
「オーフィザン……どうした? 時間になったら迎えをやると、そう言ったじゃないか」
「中止だ」
一言だけ、キッパリと言われて、そこにいた面々は、みんな驚いたようだった。特に、多分オーフィザン様をずっと待っていたんであろう、陛下は。
「何を言っているんだ!! 中止だなんて……」
「悪いが、俺は今日、俺の猫とデートに来たんだ」
「クラジュか? そんなことを急に言われても困る。猫とのデートは後にしろ」
「俺には、猫とのデートが一番大事だ。どうせ貴様らは、例の猫じゃらしが目的だろう?」
「……………………」
陛下はいきなり黙り込んじゃう。周りの人まで、ほとんどが顔をそむけていた。どうやら、半数以上があの猫じゃらし目当てだったみたい。
目論見があっさりバレて怯える面々の中で、オーフィザン様と普段から接している陛下だけは、焦ることもなくオーフィザン様の前に出て来た。
「オーフィザン、落ち着いてくれ。何の話だ? 俺たちは、街と森の魔物の対策を立てるために……」
「森の方の警備は強化しておいた。すでに、この辺り一帯の森は調べ上げ、すべて駆除済みだ」
そう言って、オーフィザン様は、陛下に大量の書類の束を放り投げた。
「うわっ……これは……?」
それを一枚一枚確認して、陛下は、驚いて顔を上げた。
「まさか、本当に調べ上げたのか?」
「ああ。ちゃんと報告書も書いてやったぞ」
「…………し、しかし……」
「街の方も、すでに調べた。魔物の原因はこれだ」
そう言ってオーフィザン様は、焼けた絨毯の破片を放り投げた。
「魔物を呼ぶ絨毯だ。この男の屋敷へ運び込まれた荷物の中に紛れていたらしい」
オーフィザン様は、後ろにいたフイフットさんに振り返る。
フイフットさんは、陛下に向かって深々と頭を下げた。
だけど陛下の視線は、フイフットさんがギュッて抱っこしている、猫さんに注がれている。フイフットさんが、ずっと屋敷に住まわせている化け猫さんらしい。
キュウテにそっぽ向かれちゃったからか、陛下は、すっごく羨ましそうにしていた。
「…………しかし」
「あの猫じゃらしなら、もう作らない。あれがあるせいで、俺は俺の猫に泣かれたんだぞ」
「だが……どんな猫でも籠絡できるものなんだろう?」
「そんなことを言っているから、お前はお前の猫がいなくなったことにも気づけないんだ」
「は!? キュウテが!??」
「……本当に気づいていないのか?」
それを聞いて、陛下は慌てて城の方に走っていく。彼について、数人が走って行った。
そして、残された面々は走って行った彼を見て、ポカンとしている。
みんなに向かって、オーフィザン様が言った。
「今日はお開きだな」
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