誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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27.僕に向けられた笑顔


 部屋の中は真っ暗で、誰かの呻き声みたいなものが聞こえた。

 男はニヤリと笑って、部屋の照明をつける。

「よく来たなっ!! 馬鹿な奴だ!!」

 叫んだそいつの声に応えるように、部屋の中央に、ぼっと火が灯る。
 そこには、一人の男が吊り下げられていて、足元から燃え上がる炎に炙られ、悶え苦しみながら傷だらけの体を逃がそうと足掻いていた。

 ぽつ、と僕の口から、彼の名前が自然と漏れ出る。

「……オーイレール……?」

 傷だらけで吊り下げられ、火責めを受けるその男は、今日はオフィスに現れなかったオーイレールじゃないか。

 背後で、僕をここまで連れてきた男が嫌な風に笑い、火は消えた。

「お前たちのことを聞き出そうとしたんだが、何も話さない。だから少し楽しませてもらった。もう死んだかな?」

 僕の足が勝手に走って、吊るされたオーイレールに近づいていく。

 あのオフィスで、僕にとうもろこしをすすめて笑っていた彼は、今は火傷だらけの体で、気絶していた。
 男が楽しんだ跡は、確かに、オーイレールの体に刻まれている。
 彼の体には、火傷でない傷もいくつもあって、それからは血が流れ、体はひどく腫れていた。

 腹の奥に灯ったのは、今まで感じたことのない、焼けるような感情だった。

 得意げに笑っている男に振り向いて、感情のままに撃った魔法が、そいつを弾き飛ばす。

 僕を縛っていた縄は、魔法で簡単に焼き切れて、オーイレールを吊るしている鎖も、驚くほど簡単に切れた。

 傷だらけのオーイレールをそっとおろして、何度か呼びかけても、僕に微笑みかけていた顔は大きく腫れていて、返事をしてくれない。

 彼は、倒れたままぴくりとも動かなかった。
 治療のための魔法をかけると、ほとんど傷は塞がらなかったけど、少しは助けになったのか、彼は目を覚ます。

「う……」
「動かないで……」
「……あぐっ…………トラシュか?」
「黙ってて……ちゃんと治療できてないから……」
「いって……ざまあねえな……情けね…………」
「……余計なことは言わなくていい。フュイアルさんが来ている。あいつのところまでいけば、ちゃんと治療してもらえるから」
「わり……頼むよ……」
「……別に悪くない。黙ってろよ」

 僕は、彼を担ぎ上げようとするけど、僕より彼の方がずっとでかい。重くて持ち上がらない。

「トラシュ……? 無理だって……小せえくせに……俺、自分で歩くから……」
「うるさい……大人しくしてろ……」

 なんとか担いで無理に歩こうとするけど、その場に倒れてしまう。

 ダメだ。まともに前に進めない。治療の魔法もうまく効かない。これじゃ外へ連れ出すこともできない。
 魔法で彼の体を浮き上がらせることはできるかもしれないけど、力の微調整が苦手な僕じゃ、高く上げすぎたり落としたりしてしまうかもしれない。
 すでに傷だらけの彼の体を、これ以上傷つけるわけにはいかない。

「ちょっと待ってて……フュイアルさん、呼んでくる」

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