誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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34.こんな奴の笑顔で


 床を濡らす僕を、フュイアルさんは、ソファに座って楽しげに眺めていた。

 耐えきれずに震えている僕の屹立に、足先で触れてくる。

「まだ漏らすのか……」
「ち、違っ……違うっっ! やめてっ……!!」
「違う? これだけ汚しておいて? ……あと一粒入れたら…………どうなるかな?」
「……っ!!」

 今ですら、もう溢れそうなくらい溜まっているんだ。そんなことされたら、僕の体は本当に、一切制御できなくなる。

「い、嫌だ……やめて……お、お願い……フュイアルさん…………」

 首を振って嫌だと告げたいのに、体が震えて動かない。

 怯えるばかりの僕に、そいつはニヤニヤ笑いながら近付いて来た。

 僕の首に、そいつの冷たい指が絡まってくる。

 もういっそ、このまま締め殺してほしかった。

 けれど、この悪魔のような男は、気味の悪い手つきで、僕の首を撫でてくる。

 撫でられているだけなのに、体がビクンビクンと震えた。

「……そんなに嬉しい?」
「ち、違う……違う…………ゆ、許して……フュイアルさん……」
「……こんなに硬くしておいて、まだそんなことを言ってるのか? 見ろ。下の方、もう溢れそうだ」
「これはっ……違うっ!! ひあああああーーーーっっ!」

 ガタガタ震えていた先に、容赦なく押し入ってきた光の粒は、すでに限界を迎えようとしていたものの中で、ゆっくり、じわじわと暴れだす。
 かあっと、屹立が燃えるような熱を孕む。
 少しでも気を抜けば、その熱は僕の中全てに行き渡り、僕を狂わせてしまうだろう。

 恐ろしくて、それでも籠絡されることだけは嫌で、僕は息を細くして、刺激を広げないように耐えた。

 荒くなっていく息遣い。

 腹が上下して、不自然な動きをしている。

 耐えるだけで精一杯な僕に、フュイアルさんは、わざわざ耳元に唇を近づけて、囁いた。

「そんなに息を荒くして……」
「ち、ちがっ……ううっ!! ああっっ……っ!」

 敏感な胸の先。そこを、フュイアルさんの冷たい二本の指が、ぎゅっと、さっきよりも強く摘み上げる。ぎゅうぎゅうとそこを潰され、そのたびに胸が熱くなる。焼かれているようだ。
 そいつの指の動きに合わせ、息が荒く漏れて、まるで全身を操縦されているみたい。
 摘まれるたびに熱が滲む。
 呼吸すら支配された口元から、だら、と涎が床に垂れた。

「そんなにいいのか? 俺の部屋を汚してよがるほどに」
「ち、が……あっ! はっ!! はああっ!! あっ!!」
「……浅ましい……俺に乳首を揉まれて、喘いで…………」
「い、いやあっ……!! やだっ……嫌だって言ってるだろ……っ!」
「まだそんなこと言ってるの?」
「あっ……ああ!!」

 ネチネチといじられた胸の先は、もう限界だ。そこだけでおさまらない快楽が下まで降りて、屹立を膨らませていく。
 悔しいけど、こいつの言っていることは本当で、もう今にも先から溢れそう。

「うっ……! やめて……出る……」
「出せよ。俺の目の前でだらだらといやらしく無様に漏らせ」
「いや……いやあっ…………やめっっ……やめろっ……」

 こんな男の前で、裸にされて縛られて弄ばれるなんて、耐え難い屈辱だ。絶対に射精だけはするものかと耐えているのに、溜まったものを吐き出してしまいたくて仕方ない。

 このままじゃ、本当にこいつの目の前で漏らしながら喘ぐことになる。そんなの、死んだほうがマシだ。

 燃え上がりそうな下半身に、神経を集中する。そんな様子を、その男は、立ち上がって楽しげに見下ろしていた。

 必死に耐える僕の震えている欲望を、そいつは足の先で刺激してくる。

「ほら」
「いやあああああっ……!! う、うう……ああっ……んっ!!」

 これ以上刺激されたら、本当に出してしまう。悔しいのに、無意識に求めてしまう。無様に揺れる僕の体を、そいつは嘲笑った。

「もっと腰を振ったらどう? 本当はイキたいくせに。醜くよがる姿がよく似合う」
「う、うぐっ……こっ……このっ……! 悪魔っ……あ、ああっ…………あっ!! あぅっ……!!」
「まだそんな口が利けるんだ……足りないか……?」

 そいつの足先が、また僕の先をつん、と刺激する。

「ふぅっ…………! んっ……!! あぁんっ……!!」
「もっとよがれよ」
「うぅっ……っ! はっ……んん!!」

 嫌味な男が、小さな刺激にすらよがる僕を、喜悦たっぷりな笑顔で見下ろしている。

 何度も足先でつんつんと触れられるその度に、身体中を痺れさせる刺激が広がって、必死に耐える僕を責め立てる。どれだけ体をよじっても手枷と皮のベルトが僕の体を締め付け、逃げられない。

 もう、おかしくなってしまったのか、逃げているはずなのに、僕は腰をねだるように振っていた。

「い、いやっ……! 嫌だっ……!! やあんっ!! やだああぁっ……やめて…………おねがいっ……! あっ……!!」
「いい加減認めなよ。快楽を求めるだけの俺のペットだって」
「だ、誰がっ……離せっ!! あっ……!!」

 フュイアルさんを見上げたら、僕の緊張が、一瞬、切れた。

 膨らみすぎたものの中から、ぽた、と一滴落ちる。

「う、あ、いやだ……ああ!」

 こんな奴にイカされたくない。耐えれば耐えるほど、悔し涙まで溢れて、僕はそいつを睨みつけた。

 けれどそいつは、僕を馬鹿にする笑みを浮かべ、僕の前に落ちたものをわざと踏みつけ、ソファに座り、汚れた足を僕の口元に突き出してくる。

「見ろ。こんなに溢れさせて……本当はイキたいんだろ?」
「うるさいっ!! お前なんかにっ……誰がイカされるもんか! このっ……悪魔っ! 僕を離せっ!! 家に帰るっ!!」
「まだそんなこと言ってるのか?」

 少し、そいつの眉が不機嫌な形に歪む。

 そして、媚薬の粒が僕を取り囲む。

 こんなにも恐ろしい光景を、僕は初めて見た。

 ガタガタと震えて上下の歯がぶつかり合い、静かな部屋に震える音が響いた。

「あ、いや……嫌だ……」
「そんなに嫌?」
「やだって言ってるだろっ!! お願いっ…………」
「そんなに嫌なら、拘束を外してやってもいい」
「ほ、本当にっ!?」
「手枷を外してやるから、俺の前で這いつくばって奉仕しろ。死ぬまで」
「はっ!? し、死ぬまでっ!?」
「永遠に俺に飼われろ。約束できるなら、鎖を外してやる」
「い、嫌っ……!! 嫌だっ!! 誰がっ……!!」
「……」

 フュイアルさんが、くいっと招くように指を振ると、僕の周りを取り囲んでいた光の粒が近づいてくる。

「ひっ……!!」
「強情なトラシュは好きだよ……じっくりと、痛めつけながら調教することができる」
「い、嫌っ……! 嫌だっ!! 嫌だあああああああーーーーっっ!!!」

 泣き喚く僕から、フュイアルさんは笑いながら離れた。僕を取り囲んだ媚薬の魔法を見せつけるように残して。

 光の粒の一つが、僕の先の近くでフラフラ飛んでいる。そして泣いている僕の中心に触れた。

「ああうっ!!」

 散々痛めつけられたところを、さらに破壊するような快楽が生まれる。
 もう焼けて壊れてしまいそうな刺激が、中まで無理やり押し入ってきて、背中が仰け反る。
 髪からは汗が散って、それにすら気づけないくらいに、拘束された体を暴れせながら、僕はただひたすら泣き喚いて、快楽から逃げようと足掻いていた。

「いや!! いやだっ……いやあああっっ!! やめてっ……!! あ、あうぅっ……!! ゆ、ゆるしてえっ……っ!!」
「まだまだ……ほら!」

 無情な男が、僕の欲望の先に媚薬を押し込む。

 ガチャガチャと、僕を縛る鎖が何度もなる。
 いつのまにか、全身に絡みついた皮のベルトの跡ができていた。その痛みすら、全く感じなくなっている。

「いやっ……ああうっ…………! うっ……あっ!! いやあ…………あっ……あうぅぅぅ……も、もうやめて……やめてっ……!!」
「まだ音を上げるには早いぞ。ほら! 次だ!」
「いやああああっ……!! 許してええっ……!!」

 もう、理性も尊厳もズタズタだ。
 力の入らなくなった口から涎が床にポタポタ垂れて、情けないシミができていく。
 涙で顔もぐちゃぐちゃなのに、僕を陵辱する男に懇願することしかできない。

「おっ……お願いっ……も、もう、許して……何でもするからあ……言うこと……聞くからああ…………」
「その口のきき方、なに?」

 ピシッと、そいつの持ってた鞭がしなり、僕の背中を打つ。鋭い痛みに、僕は悲鳴を上げた。打たれたところが赤くなって、じわじわとした痛みが全身に広がる。

 それなのに、打たれたところが熱い。そこから全身を流れる血が脈打って、痛いはずの刺激までもが、体を高揚させている。

 ぴくん、と先が揺れた。

 涙が滲んで、落ちていく。

 そのはずなのに、何度も中心の先がピクピク揺れる。

 こんなの嘘だ。僕の体がおかしい。
 それなのに、そう考える理性すらもう僕には残ってなくて、この際、苦痛でもいいから、僕をこの溜まりすぎた欲望から解放してほしかった。

「うっ……うう…………ごめんなさい……言うこと、聞きます…………なんでも、言うとおりにします……だから……許してください…………」
「……いい子だ……」

 何やら満足したのか、そいつは初めて笑った。
 いつもはムカつくだけの笑顔なのに、なぜかほっとする。
 こんな奴の笑顔で心が温かくなるなんて、僕はもう、心まで潰されてしまったんだ。

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