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53.後悔させてやる
しおりを挟むリビングへ向かうと、テーブルには、すでに朝食が用意されていた。
フュイアルさんはいつもどおりで、僕とあの男との内緒話がバレたような気配はない。
やっぱり気づいていないのか……だとすると、さっきのエイリョーゾは、フュイアルさんの部屋にフュイアルさんに気づかれないように魔力を飛ばせるほどの使い手ってことになる。
初めて会ったときは、そんなふうに見えなかったけど……フュイアルさんに喧嘩売ってるんだ。それなりの魔力は持っているのか……
フュイアルさんは「座って」なんて言いながら、キッチンで果物を切っている。
その男の背中を睨みつける。
また僕に背中向けてる。全くの無防備で。僕はあいつを、本気で殺す気でいるのに……
僕は大人しく、ダイニングテーブルについた。
僕とフュイアルさんの二人しかいないのに、焼きたてのパンが大量にバスケットに入っている。野菜がたっぷり入ったスープは湯気をあげ、スクランブルエッグと焼きたてのベーコン、ソーセージが盛られた皿と、青々とした野菜のサラダが並んでいた。
朝からこんなに作ってたのか……? もしかして、それでエイリョーゾに気づかなかったのか?
僕が作った魔力を奪う毒にはすぐに気づいて、証拠写真まで勝手に撮りまくってアルバムに貼りまくってたくせに。
またこれが力の差か? 見ず知らずの魔族に負けるなんて……
苛立つ僕に、フュイアルさんは、果物が盛られた皿を持って振り向いた。
「トラシュ、今日のジャムは何にする?」
「……イチジク……」
「はい」
すぐにフュイアルさんは、キッチンからジャムの瓶を持ってきて、渡してくれる。
何を言ってるんだ、僕……
何がイチジクだ。こんな人から物をもらうなんて、いつからこんなに恥知らずになったんだろう。昨日、襲われそうになったのに。
ジャムの瓶を受け取って、その男を見上げる。フュイアルさんは、いつもと変わらない笑顔だ。
不意に、昨日僕に「抱かない」と言った時のフュイアルさんを思い出した。
……あの時、なんでやめたんだろう。あの時のフュイアルさん、フュイアルさんじゃないみたいだった。
何か……企んでいるのか?
向かいの席に座ったフュイアルさんと対峙する。そいつは何が楽しいのかニコニコしてて、僕にバターの入ったケースを渡してくる。
「はい。バター」
「……ありがとうございます……」
さっき警戒するって決めたのに、既に警戒が薄れてる。こんな人が作ったものに、平然と手を伸ばすなんて。
フュイアルさんのそばにいるせいで、僕は毒されてしまったんだ。
しっかりしなきゃ。この腹立たしい男に、昨日の強姦と手加減のことを後悔させてやるんだ。
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