誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
63 / 106

63.押し付けられた作戦

しおりを挟む

 マンションの外に出て、エイリョーゾの気配を探す。すると、マンションの前の大通りの方から、微かな魔力が僕に向かって飛んでくるのを感じた。エイリョーゾが、僕に合図を送っているんだ。今フュイアルさんに見つかったら危ないのに。

 昼はあれだけ吹き荒れていた砂嵐も、今はもう、収まっている。

 エイリョーゾの魔力を探して、大通りを歩くと、うなじのあたりが、ちくっと痛んだ。針みたいな形にした魔力を飛ばされたんだ。

 振り向いたら、細い路地の方から、同じ魔力が飛んでくる。一応、避ける。だって、痛いものは痛い。だけどこれで、エイリョーゾのいるところが分かった。多分、大通りの向こう側の路地の方だ。

 街灯の光から逃れるように、狭い路地の奥まったあたりまで走ると、ビルとビルの間の、薄暗く狭い誰もいない通りの真ん中に、エイリョーゾが立っていた。

「何避けてんだよ。人族が」
「だって……痛いし……」
「それに遅えよ。フュイアルに見つかってないだろうな?」
「多分……追って来てないし……」
「ならいい。お前に言い忘れたことがあった」
「ぼ、僕も、あなたに話さなきゃならないことがあるんだ! フュイアルさんにっ……バレてる、かも知れない……」
「なんだと!?」

 エイリョーゾは、僕の胸ぐらを掴み上げる。強く掴まれて、息が苦しくなりそうだ。
 彼は相当怒っているようで、僕を恐ろしい目で睨んでいた。

「てめえ、まさか、フュイアルに全部話したんじゃないだろうな?」
「や、やめて……僕、何も話してない……」
「だったら、バレてるかも知れないってどういうことだ!? お前まさか、フュイアルに俺を連れて来るように言われたんじゃないだろうな!?」
「ち、ちが……」
「だったらなんだ!? バレてるくせに、のこのこ俺んとこ来たのか!? バレるならてめえ一人でバレろ!! 言っておくが、俺はお前に誘われて無理矢理やらされたんだからな!」
「落ち着いて……違うよ……」

 息苦しさを我慢して、なんとか言うと、彼は、僕を離してくれた。

「だったらなんだ!? バレたのか!? バレてないのか!?」
「分からない……フュイアルさんは、得体が知れないから……だけど、なんとなく、バレているような気がするんだ……」
「バレてる気がする? なんだ……じゃあ、バレたんじゃないのか?」
「なんとなく、そんな気がするだけ……」
「……そんなことかよ。つまり、お前の勘ってことか?」
「…………うん」
「なんだよ馬鹿らしい……」

 フュイアルさんにバレたって、確証がある訳じゃない。フュイアルさんに「バレてるぞ」って言われたわけでもない。ただ、そんな気がするだけだ。だけど、僕は長くフュイアルさんと一緒にいたんだ。

 けれど、彼は信じてくれてないみたい。僕の胸ぐらを掴んだまま、僕に凄んでくる。

「……いいか? お前のくだらない勘なんかで止めるわけにはいかないんだよ……ここまできたんだ。フュイアルぶっ殺すまで付き合ってもらうからな……」

 そう言って彼は、強く締め上げていた僕を冷たい通りに投げ捨てた。

「これだけ覚えとけ。フュイアルにバレそうになったら、お前は全部自分だけでやったって答えろ」
「そんな……僕は…………」
「俺を誘ったのはお前だろ? お前が無理矢理、俺を引き入れたんだ。裏切ったら、お前を拘束して、魔物の前に突き出す」
「え……?」

 驚いた僕の前に、彼はしゃがんでニヤリと笑って、小さな瓶を押し付けてくる。そして今度は、打って変わって猫撫で声で言った。

「お前がいい子にしてるうちは、俺だってんなことしねえよ……俺はお前が好きだからな。好きな奴が、腕もがれて腹に穴あけられて泣き叫んでるとこ、見たくねえもんな。なあ?」
「……」
「いい子だ……お前は今から、フュイアルのマンションに戻って、その中の砂を撒いてこい」
「え……?」

 瓶を見下ろしたら、それには、真っ白で微かに光る砂が入っている。

「これを……?」
「ああ。心配すんな。それの中身は、外に出せばすぐに消えて、フュイアルには気づかれない。それを、一粒一粒部屋の隅に撒いてこい。そうすれば、あいつの部屋の様子は、こっちに筒抜けだ」
「……でも、フュイアルさんには、すぐに気づかれそう……」
「馬鹿がてめえは。さっきすぐ消えるって言っただろ。だいたい、なんのためにそれが砂だと思ってるんだ? ここはこれだけ砂嵐が吹き荒れてる街だぞ。魔力を持った砂が少し部屋に入り込んでも、気にする奴なんているはずないだろ?」
「でも……」
「うるせえよ!! 怖気付いてんじゃねえ!! いいか? お前は今からあいつの部屋に戻って、これを仕掛けてくるんだ。すぐに消えるし、あいつが気づくはずがない」
「……」
「……バレても誘ったのはお前だからな……言っとくが、フュイアルに話したら、お前を殺す。殺してくれって泣き喚いても許されずに、魔物に引き裂かれて死ぬんだ。裏切るなよ……」
「……」
「聞いてんのか!?」

 また掴みかかってくる彼に、僕が頷くと、彼はやっと、僕の服を離してくれた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...