誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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63.押し付けられた作戦


 マンションの外に出て、エイリョーゾの気配を探す。すると、マンションの前の大通りの方から、微かな魔力が僕に向かって飛んでくるのを感じた。エイリョーゾが、僕に合図を送っているんだ。今フュイアルさんに見つかったら危ないのに。

 昼はあれだけ吹き荒れていた砂嵐も、今はもう、収まっている。

 エイリョーゾの魔力を探して、大通りを歩くと、うなじのあたりが、ちくっと痛んだ。針みたいな形にした魔力を飛ばされたんだ。

 振り向いたら、細い路地の方から、同じ魔力が飛んでくる。一応、避ける。だって、痛いものは痛い。だけどこれで、エイリョーゾのいるところが分かった。多分、大通りの向こう側の路地の方だ。

 街灯の光から逃れるように、狭い路地の奥まったあたりまで走ると、ビルとビルの間の、薄暗く狭い誰もいない通りの真ん中に、エイリョーゾが立っていた。

「何避けてんだよ。人族が」
「だって……痛いし……」
「それに遅えよ。フュイアルに見つかってないだろうな?」
「多分……追って来てないし……」
「ならいい。お前に言い忘れたことがあった」
「ぼ、僕も、あなたに話さなきゃならないことがあるんだ! フュイアルさんにっ……バレてる、かも知れない……」
「なんだと!?」

 エイリョーゾは、僕の胸ぐらを掴み上げる。強く掴まれて、息が苦しくなりそうだ。
 彼は相当怒っているようで、僕を恐ろしい目で睨んでいた。

「てめえ、まさか、フュイアルに全部話したんじゃないだろうな?」
「や、やめて……僕、何も話してない……」
「だったら、バレてるかも知れないってどういうことだ!? お前まさか、フュイアルに俺を連れて来るように言われたんじゃないだろうな!?」
「ち、ちが……」
「だったらなんだ!? バレてるくせに、のこのこ俺んとこ来たのか!? バレるならてめえ一人でバレろ!! 言っておくが、俺はお前に誘われて無理矢理やらされたんだからな!」
「落ち着いて……違うよ……」

 息苦しさを我慢して、なんとか言うと、彼は、僕を離してくれた。

「だったらなんだ!? バレたのか!? バレてないのか!?」
「分からない……フュイアルさんは、得体が知れないから……だけど、なんとなく、バレているような気がするんだ……」
「バレてる気がする? なんだ……じゃあ、バレたんじゃないのか?」
「なんとなく、そんな気がするだけ……」
「……そんなことかよ。つまり、お前の勘ってことか?」
「…………うん」
「なんだよ馬鹿らしい……」

 フュイアルさんにバレたって、確証がある訳じゃない。フュイアルさんに「バレてるぞ」って言われたわけでもない。ただ、そんな気がするだけだ。だけど、僕は長くフュイアルさんと一緒にいたんだ。

 けれど、彼は信じてくれてないみたい。僕の胸ぐらを掴んだまま、僕に凄んでくる。

「……いいか? お前のくだらない勘なんかで止めるわけにはいかないんだよ……ここまできたんだ。フュイアルぶっ殺すまで付き合ってもらうからな……」

 そう言って彼は、強く締め上げていた僕を冷たい通りに投げ捨てた。

「これだけ覚えとけ。フュイアルにバレそうになったら、お前は全部自分だけでやったって答えろ」
「そんな……僕は…………」
「俺を誘ったのはお前だろ? お前が無理矢理、俺を引き入れたんだ。裏切ったら、お前を拘束して、魔物の前に突き出す」
「え……?」

 驚いた僕の前に、彼はしゃがんでニヤリと笑って、小さな瓶を押し付けてくる。そして今度は、打って変わって猫撫で声で言った。

「お前がいい子にしてるうちは、俺だってんなことしねえよ……俺はお前が好きだからな。好きな奴が、腕もがれて腹に穴あけられて泣き叫んでるとこ、見たくねえもんな。なあ?」
「……」
「いい子だ……お前は今から、フュイアルのマンションに戻って、その中の砂を撒いてこい」
「え……?」

 瓶を見下ろしたら、それには、真っ白で微かに光る砂が入っている。

「これを……?」
「ああ。心配すんな。それの中身は、外に出せばすぐに消えて、フュイアルには気づかれない。それを、一粒一粒部屋の隅に撒いてこい。そうすれば、あいつの部屋の様子は、こっちに筒抜けだ」
「……でも、フュイアルさんには、すぐに気づかれそう……」
「馬鹿がてめえは。さっきすぐ消えるって言っただろ。だいたい、なんのためにそれが砂だと思ってるんだ? ここはこれだけ砂嵐が吹き荒れてる街だぞ。魔力を持った砂が少し部屋に入り込んでも、気にする奴なんているはずないだろ?」
「でも……」
「うるせえよ!! 怖気付いてんじゃねえ!! いいか? お前は今からあいつの部屋に戻って、これを仕掛けてくるんだ。すぐに消えるし、あいつが気づくはずがない」
「……」
「……バレても誘ったのはお前だからな……言っとくが、フュイアルに話したら、お前を殺す。殺してくれって泣き喚いても許されずに、魔物に引き裂かれて死ぬんだ。裏切るなよ……」
「……」
「聞いてんのか!?」

 また掴みかかってくる彼に、僕が頷くと、彼はやっと、僕の服を離してくれた。

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