誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
85 / 106

85.覚悟しておけ


 僕を追い詰めるように、僕の肩を抱いたフュイアルさんが耳元で囁く。

「夜になったら、いっぱい喘いでもらう」
「そ、そんなの……聞いてません…………」
「トラシュは寝ていたから覚えていないだろうけど、昨日、俺はずっとトラシュのこと抱きしめて、身体を癒してたんだ。トラシュはずーっと、俺の腕の中で、強請るみたいな声を上げてたんだぞ」
「そ、そんなの知らないっ……!! 勝手に何してるんだ!!」

 振り払いたいのに、フュイアルさんに強く抱かれていては、それもできない。僕の頬に、フュイアルさんがぺろっと舌を這わせてきた。

「な、何すんだっ…………! 離せっ……!」
「あんなに可愛い声でなくトラシュを抱きしめたまま、俺は何もできなかったんだ。あれだけ俺を痛めつけておいて、ただで済むと思う?」
「そんなの、フュイアルさんが勝手にやったんだろ!!」
「今日は、俺が満足するまで淫らな姿を晒してもらう…………覚悟しておいてね」

 なんだよっ……! それっ……! そんなの聞いてない。勝手にやったくせに、何言ってるんだ。

 僕だって、何か言わなきゃ。いつもみたいに突き放さなきゃ。それなのに、本当はしたくない。

 相反する願いの間で動けなくて、じっとしている僕を、フュイアルさんはじっと見下ろしていた。

「トラシュ……」

 ぎゅっと強く後ろから抱きしめられ、背中に、フュイアルさんの体温を感じる。いつも氷みたいに冷たいのに、少し熱いような気がした。

 肩に顔を埋められて、フュイアルさんの髪が僕の頬にかかる。

 怯えて俯いていたら、フュイアルさんは、僕に囁いた。

「トラシュ…………何か最近、俺に隠してない?」
「は!? な、なにもっ……」
「だって、なんだか最近、おかしい。俺がトラシュのことで知らないことなんか、ないはずなのに……」
「何も隠してません……死んでください」
「……隠すと、トラシュのためにならないよ?」
「隠してないって言ってるだろ!!」
「……後悔するよ?」

 黙り込む僕を、フュイアルさんは肩を抱いたまま、大通りから少し外れた路地裏に連れていく。

 強く振り払えばいいのに、できなかった。

 僕、フュイアルさんと行きたいんだ。連れていって欲しいんだ。
 期待している。この人に連れて行かれて、白状させられることを。
 何を考えているんだ。今更、期待しているのか? 愛されるかもしれないなんて。どうかしてる。僕みたいなクズ、誰が愛してくれるんだ。しっかりしろ。振り払うんだ。

 だけどフュイアルさんは、こんな時に僕を見逃してくれるほど甘くない。
 しばらく行くと、誰もいない、廃墟が並ぶ暗い路地についた。この辺りは、かつて街が破壊された時のままらしい。ここまできて、彼はやっと立ち止まった。

「な、何……するんだよっ……!」
「トラシュが小賢しい真似するから、お仕置き」
「は!?」

 慌てる僕の両手が、空から降りてきた鎖に縛られて、僕は、そばにあった廃墟の壁に鎖で繋がれてしまう。こんなところで、抵抗できない状態にされて、僕は恐ろしくて震えた。

「フュイアルさんっ……! やめろっ……! こんなところで何するんだ!」
「心配しなくても、誰も来ないよ。この辺りに魔法をかけたから」
「そういう問題じゃない! 人払いして強姦かよっ……離せっ!!」
「そんな可愛い声で泣かないでよ。ひどくしたくなるから」
「僕の体が回復するまでやらないって言ったくせに!!」
「もう回復しただろ?」

 フュイアルさんが冷たい顔で笑う。僕を嬲り尽くして笑う笑顔だ。僕は、それを知りながら、顔を背けた。そんなことをすればどうなるか、わかっているはずなのに。

 しっかりしろ、僕。こんなことしてないて、鎖を焼き切るんだ。魔力が回復した今なら、できるかもしれないだろ。焼き切って、逃げるんだ。

 それでも、僕は鎖を切れない。何度自分に鎖を切れって言い聞かせても、できるはずがない。だって僕は、この人が好きなんだから。

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872