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85.覚悟しておけ
僕を追い詰めるように、僕の肩を抱いたフュイアルさんが耳元で囁く。
「夜になったら、いっぱい喘いでもらう」
「そ、そんなの……聞いてません…………」
「トラシュは寝ていたから覚えていないだろうけど、昨日、俺はずっとトラシュのこと抱きしめて、身体を癒してたんだ。トラシュはずーっと、俺の腕の中で、強請るみたいな声を上げてたんだぞ」
「そ、そんなの知らないっ……!! 勝手に何してるんだ!!」
振り払いたいのに、フュイアルさんに強く抱かれていては、それもできない。僕の頬に、フュイアルさんがぺろっと舌を這わせてきた。
「な、何すんだっ…………! 離せっ……!」
「あんなに可愛い声でなくトラシュを抱きしめたまま、俺は何もできなかったんだ。あれだけ俺を痛めつけておいて、ただで済むと思う?」
「そんなの、フュイアルさんが勝手にやったんだろ!!」
「今日は、俺が満足するまで淫らな姿を晒してもらう…………覚悟しておいてね」
なんだよっ……! それっ……! そんなの聞いてない。勝手にやったくせに、何言ってるんだ。
僕だって、何か言わなきゃ。いつもみたいに突き放さなきゃ。それなのに、本当はしたくない。
相反する願いの間で動けなくて、じっとしている僕を、フュイアルさんはじっと見下ろしていた。
「トラシュ……」
ぎゅっと強く後ろから抱きしめられ、背中に、フュイアルさんの体温を感じる。いつも氷みたいに冷たいのに、少し熱いような気がした。
肩に顔を埋められて、フュイアルさんの髪が僕の頬にかかる。
怯えて俯いていたら、フュイアルさんは、僕に囁いた。
「トラシュ…………何か最近、俺に隠してない?」
「は!? な、なにもっ……」
「だって、なんだか最近、おかしい。俺がトラシュのことで知らないことなんか、ないはずなのに……」
「何も隠してません……死んでください」
「……隠すと、トラシュのためにならないよ?」
「隠してないって言ってるだろ!!」
「……後悔するよ?」
黙り込む僕を、フュイアルさんは肩を抱いたまま、大通りから少し外れた路地裏に連れていく。
強く振り払えばいいのに、できなかった。
僕、フュイアルさんと行きたいんだ。連れていって欲しいんだ。
期待している。この人に連れて行かれて、白状させられることを。
何を考えているんだ。今更、期待しているのか? 愛されるかもしれないなんて。どうかしてる。僕みたいなクズ、誰が愛してくれるんだ。しっかりしろ。振り払うんだ。
だけどフュイアルさんは、こんな時に僕を見逃してくれるほど甘くない。
しばらく行くと、誰もいない、廃墟が並ぶ暗い路地についた。この辺りは、かつて街が破壊された時のままらしい。ここまできて、彼はやっと立ち止まった。
「な、何……するんだよっ……!」
「トラシュが小賢しい真似するから、お仕置き」
「は!?」
慌てる僕の両手が、空から降りてきた鎖に縛られて、僕は、そばにあった廃墟の壁に鎖で繋がれてしまう。こんなところで、抵抗できない状態にされて、僕は恐ろしくて震えた。
「フュイアルさんっ……! やめろっ……! こんなところで何するんだ!」
「心配しなくても、誰も来ないよ。この辺りに魔法をかけたから」
「そういう問題じゃない! 人払いして強姦かよっ……離せっ!!」
「そんな可愛い声で泣かないでよ。ひどくしたくなるから」
「僕の体が回復するまでやらないって言ったくせに!!」
「もう回復しただろ?」
フュイアルさんが冷たい顔で笑う。僕を嬲り尽くして笑う笑顔だ。僕は、それを知りながら、顔を背けた。そんなことをすればどうなるか、わかっているはずなのに。
しっかりしろ、僕。こんなことしてないて、鎖を焼き切るんだ。魔力が回復した今なら、できるかもしれないだろ。焼き切って、逃げるんだ。
それでも、僕は鎖を切れない。何度自分に鎖を切れって言い聞かせても、できるはずがない。だって僕は、この人が好きなんだから。
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