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5.せめて最後に復讐してやる!
しおりを挟むここに集まった誰もが、陛下の使者たちにこの城をうろつかれる前に、私を差し出して帰ってもらいたいはずだ。
というのも、封印の魔法の杖を作るには、竜族の力が不可欠。
トレイトライル様たちがそれを用意することができたのは、おそらく、竜を捕らえてその力を利用したからだ。
だって私は見たことがある。
封印の杖が使われたあの晩。
煌びやかな祝勝会が行われた城で、私は魔法で城を美しく照らすように言い付けられていた。華やかな会合の際には、私はいつもそんな役回り。そんなことには慣れていたし、結構楽しいので、その仕事に勤しんでいたのだけど、その途中、城の庭で鎖をつけた小さな猫くらいの大きさの竜を見つけた。
少し弱っているようだったので、回復の魔法が使える方のところに連れていくと約束をしたけれど、その時あの騒ぎが起こり、結局約束を果たすことはできずに、気づいたら竜もいなくなっていた。
その後、封印の魔法の杖が暴走した話を聞いて、あの竜はそのためにこの城に捕らえられていた竜ではと疑ったけれど、例によって例の如く、誰も私の話なんか聞いてくれない。
ちょうど、王都の近くの森に住んでいた竜が行方不明になるという事件も起きていたし、きっとあれが行方不明の竜に決まっている!
陛下も、暴走なんてただの言い訳で、領主は竜を使って陛下を亡き者にする気だと疑っているはずだ。
そうでなければ、陛下の使者たちがここに来ることもなかったはず。
イールヴィルイ様は、鋭い目でトレイトライル様を睨みつけて言った。
「反逆者の言うことを、俺たちは信じるつもりはない」
あら……信じていないなんて、それはありがたいですわ。
きっと閣下には、最初からトレイトライル様の話を聞く気などないのでしょう。
誰も信じないというのは困ったけれど、これならまだ勝機はある!
このままいけば、皆さんの話を聞いた使者の方々は、全ては私の横暴が原因で引き起こされたことで、誰にも陛下を害する気などないと結論づけて、私の処遇を領主様に預け、ここを去ってしまうでしょう。その後の私を待ち受けているのは理不尽な拷問だ。
矜持に従って殺されるのならともかく、こんな城で罪をなすりつけられて死ぬなんて、ごめんです!
自分の欲望のために竜を利用し、ことあるごとに横暴な真似を押し通してきた方々に利用されて死ぬくらいなら、最後に復讐してやる!
封印の杖が作られたのは私のせいではないと明らかにし、あの夜見つけた竜を探し出し、この城の方々の横暴を、使者たちの前で明らかにしてやりますわ!
……なんて覚悟を決めたけれど……
やっぱり恐ろしいものは恐ろしい!!
陛下が遣わされた使者の方々について、いなくなった竜を探し出し、何があったのか調べさせる……そんなことが、奴隷同然の扱いを受けている私にできるとは思えない。
何しろ、普段は精一杯の虚勢を張っているけれど、私にはろくな魔法も使えないし、何かに立ち向かうような強い気持ちもない……
あるのは、この城での長い暮らしで身につけた虚勢だけ。
けれど、これだけが私の唯一の武器。だったら、これだけでなんとかする!
私は顔を上げた。
使者たちの真ん中に立っているのが、イールヴィルイ・ランフォッド。
優秀な魔法使いだと聞きますが、同時にひどく残酷な男だとも噂されている。
早速話を否定されたトレイトライル様はますます声を荒らげた。
「そ、そもそも、その女の普段の横暴がなければ、フィレスレアが封印の魔法を求めることもなかったのです!! その女は、遠い昔、国王に刃を向けた一族の女です!」
けれど、その言葉を使者の一人が笑い飛ばす。
「くだらない。どれだけ昔の話だ」
「あ、あなた方はご存知ないのです! その女は、恐怖で相手を変えるのです!! 私たちも、その女の粗暴な振る舞いにどれだけ手を焼いてきたか……」
トレイトライル様は、まるで悲劇のヒロインのような仕草で目元を押さえた。
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