【完結】極悪と罵られた令嬢は、今日も気高く嫌われ続けることに決めました。憎まれるのは歓迎しますが、溺愛されても気づけません

迷路を跳ぶ狐

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78.ご命令でここに来ただけです

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 全員で庭に出ようとすると、廊下の向こう側から、コーレジェアス様が駆け寄ってくる。

「トルティールス様! エウィトモート様!! お久しぶりです!!」

 デシリー様の理不尽な命令により、魔物を探していたコーレジェアス様も、こうして城に戻ってきた。
 トルティールス様やエウィトモート様も嬉しそう。

 例の封印の魔法の杖の事件が解決した直後、だいぶ疲弊していた討伐隊のことを心配したトルティールス様は、討伐隊を迎えに行くと言ってくれた。けれど、その時にはすでにクリエレスア様が討伐隊と合流していて、彼女は自分が討伐隊を率いていくから大丈夫だと言って、トルティールス様の提案を断った。封印の魔法の杖を探しにきた使者の方にそんなことをしていただくわけにはいかないし、後々、封印の魔法の杖とは全く関係ない討伐に加わったとトルティールス様たちが責められるかもしれない上に、何かあれば、ジレスフォーズ様が責められるからだ。

 とは言え、クリエレスア様が帰ってくるまで、私は気が気ではなかったし、彼女らが城に帰って来た時は心底ホッとした。
 コーレジェアス様たちの帰還を祝うパーティーでは、クリエレスア様もコーレジェアス様も、討伐隊のことをずっと気にかけてくださっていたトルティールス様に、とても感謝していた。

 コーレジェアス様は、トルティールス様とエウィトモート様に挨拶をして「共に討伐に行けるなんて光栄です」と話していた。
 けれど、それを聞いたクリエレスア様がコーレジェアス様に詰め寄っていく。

「コーレジェアス様! それは、私だけでは頼りにならない、ということかしら?」
「そうは言っていません。使者の方々の前で、無礼な真似はやめていただきたい」
「無礼は私だけ数に入れてないコーレジェアス様の方です。疲れ切ったあなた方を先導したのは私ですわ! 私だって、トルティールス様とエウィトモート様のお役に立てます!」

 楽しそうに話すクリエレスア様とコーレジェアス様。

 その様子を、トルティールス様はじっと見つめていた。

「元気そうですね……クリエレスアは……」

 そう言って、彼は「良かった……」と呟いていた。

 それを聞いたエウィトモート様が、トルティールス様の肩にポンと手を置く。

「よかったな、トルティールス。いつも面倒くさがってばかりのお前がこっちに来るくらい、心配してたもんな」
「なんの話ですか? 僕は陛下のご命令でここに来ただけです」
「ふーん……」

 そっけない様子のトルティールス様だけど、討伐隊から迎えを断られた時、彼女たちをとても心配していたのだから、クリエレスア様の無事な様子を見てホッとしたはずだ。
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