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10.できない
しおりを挟むなんなんだ、あの野郎は……
俺は、ソファに座ったまま、ハントが金を持ってくるのを待った。
そして、金を待っていたら、ますます居心地が悪くなる。時間が経てば経つほど、理性が戻ってきて、考える時間も長くなる。
やっぱり、送っただけで金が出てくるのはおかしい。遺産って言ってたが、それならそれで、あいつが持っていた方がいい。
それに、あいつが世間知らずの馬鹿じゃないなら、何か企んでいるのかもしれない。
あいつが戻ってきたら、やっぱりいらないって言うか?
悩んだ。
あいつなら、いらないと言ったところで、そんなこと言わずに受け取ってくださいと、そう言うだろう。
だったらもう、何も言わずに帰るか?
そうだ。立ち上がって、帰ればいい。帰って、ハントには二度と会わない。それが、俺のためだ。
それなのに。
あいつに背を向けて逃げ去ることができない。
しばらく待つと、ガンガンと、ドアを叩く音がした。
ハント、戻ってきたのか?
「うるっせーよ。叩くなって……」
ぶつぶつ言いながら、ドアを開ける。すると、そこに立っていたのはあの兄貴だった。
「てめえっ……!」
出かけてたんじゃなかったのか!??
そいつは、切羽詰まった顔で俺の胸ぐらに掴みかかってくる。
「ハントがっ……! あいつがっ……! 帰ってきたのかっ……!?」
「てめえっ……! まだあいつのことをっ……!」
「あいつはっ……!? あいつはどこだっ……!? どこにいる!?」
「……言うわけねえだろっ!!」
こんなやつに、ハントのことを話せるものか。
俺はその手を振り払って突き飛ばし、部屋を飛び出した。
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