僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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6.何やってるんだよ!

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 ふらふらになりながら森の中を飛んでいく。背中に担いだレオトウェルラレット様は、微かに、向こうだ、と呟いていた。声がだんだん消えていくみたいだ。回復の魔法はかけたのに、毒がしつこいんだろう。

 しばらく飛ぶと、大きなテントが見えてくる。それがいくつも集まって、陣営を作っているようだった。

 あれだ!!

 助けを求めに来た、敵意のないものだって分かりやすいように、レオトウェルラレット様がつけていたマントを外す。これには大きく王国の魔法使いの部隊の紋章が記されている。それに魔法をかけて、紋章を浮かび上がらせた。それから、炎に似せた光を纏わせる。緊急の時に、助けを求めるためのものだ。これなら、敵や魔物と間違われて攻撃されることもなく、敵の魔法が襲ってきたと誤解されることもない。
 魔法で高く飛んで、それを振り回す。

「た、助けてっ!! たすけてくださーーい!!」

 って、叫んでいるのに、なんで攻撃してくるの!??

 僕めがけていくつも魔法の炎の弾が飛んで来て、何度も僕の頬を掠めていく。

 えええええっっ!!??

 僕だけがこうして近づいているのなら、撃ってくる人もいそうだけど、今僕がしたのは、討伐途中の緊急事態を知らせるための合図。これなら、王国の部隊の人が危険に晒されているって、誰でもわかる。そういう時は真っ先に人命を優先して救助に協力する……常識だろ!! 一体隊長は誰だよ!! これ、軽い処分じゃ済まないやつだからな!

 僕は、魔法で壁を作り出し、自分とレオトウェルラレット様を守った。

 飛んでくる魔法は、僕の魔法の壁に阻まれて消えていく。

 この程度の魔法なら、僕の魔法で防ぐことができるけど……だけど、このままじゃすぐに魔力は切れる。かと言ってこちらから攻撃すれば、紋章も救助要請も、奇襲を仕掛けるための嘘だと疑われるかもしれない。

 なんとかして、敵じゃないって伝えなきゃ!

 こうなったら……要は、攻撃しなきゃいいんだろ!!

 僕は、飛んでくる魔法に怯まず、速度を上げた。ぎゅうっと抱きしめると、レオトウェルラレット様が微かに呻いた気がした。

「大丈夫ですっ!! 僕が助けますっっ!!」

 彼は、答えなかった。

 また気絶してしまったのかもしれない。

 彼を強く抱きしめて守る。最後の魔力で光を纏って目眩し。さっきから僕のことをしつこく殺したい奴がいるみたいだから。

 僕の体は陣営の真ん中めがけて落ちていく。

 なんとか陣営の真ん中に降りることができたけど、今度はテントの影から、さっき森で見た眩しい光が現れて、僕の方に集まってきた。ここでも魔法の道具が暴走してるのか?

 僕は、マントに風の魔法をかけて、暴走した魔力を吹き散らしながら叫んだ。

「僕は、フィルロファル・ルイルット! 敵じゃない!! 王国の魔法使い、レオトウェルラレット様が怪我を…………って、うわあああっっ!!」

 一斉に、魔力の弾が飛んでくる。

 なんだよ!! 僕とレオトウェルラレット様がいるんだぞ! それなのに、なんで撃ってくるの!?

「わわわわわわっっ……!!」

 魔力もないし、人を担いで逃げていたら、彼が撃ち殺されてしまうかもしれない。

 攻撃魔法は飛んでくるけど、陣営に人はいない。恐らく、近くに潜んでいるんだろう。
 キョロキョロしていたら、僕の方に、激しく光る、小さな石の集まりのようなものが飛んでくる。

「うわっ……!!」

 慌てて避けて魔法を放つ。だけど、魔力がない今は、そんなに強力な魔法は使えない。僕の魔法を受けた光る石は、多少怯んだものの、僕の方に突っ込んで来た。

 あれ……魔法の道具だ。あれが暴走したのか……
 暴走なら、魔法で止めることができる。だけど、魔力がないんだーー!!

 レオトウェルラレット様を担いだまま逃げていたら、彼は、僕の背中で弱々しく囁いた。

「……あっち…………あっちに……回復の魔法の薬が……」

 彼が指しているのは、一つのテント。あそこで、回復ができるのか!??

「ありがとうございます!!」

 僕は、彼を担いだまま、テントの中に飛び込んだ。中には、武器や防具が乱雑に並んでいる。

 うわ……なんだよ、これ。これじゃ、魔物が来た時、すぐに対処できないだろ! 最悪、全滅の可能性だってある。

 回復の魔法の薬……どこっっ!!??

 こんなことしていたら、魔物に襲われるかもしれないのにっ……!!

 もうめんどくさい!

 テントの中全体に魔法をかけると、すぐに、目当ての薬を見つけられた。テントの端の袋の中だ!

 駆け寄って袋を開けると、中は空の瓶や、素材の鮮度を保つ魔法の薬の瓶なんかが、ぐちゃぐちゃに混じって入っている。もう一度魔法をかけて探すと、その中に、隠されるようにして、目当ての魔法の薬はあった。

 それを使い、早速魔力を回復する。さすがは王都から来た部隊。この回復の魔法の薬は、かなり強力なものだ。これなら、解毒の魔法も強力なものが使える!

 レオトウェルラレット様の体に魔法をかけると、なんとか体の毒は解毒されたようだ。彼はゆっくりとまぶたをあげる。

「よかった…………もう、大丈夫です……」

 目を覚ました彼に言うと、彼は僕に掴みかかってくる。

「お、俺のことはいいっ……! ぶ、部隊が何かに襲われているんだっっ!! た、助けてくれっ……!」
「でも……」

 何かって、さっきの暴走した道具? 王都から来た部隊がこんなことになるなんて、一体、何があったんだ? 隊長は誰? 部隊の人は?

 助けようにも、状況が分からなければ、ますます事態を悪化させてしまう可能性もある。じれったく思えるかもしれないが、まずは戦況の確認をしなければ。

 けれど、僕のそんな態度は、レオトウェルラレット様を焦らせてしまったみたい。彼は、僕に掴みかかってくる。

「た、頼むっっ!! 頼む! 助けてくれ!! 今は、お前しかいないっ……! お前にしたことなら、謝るから!! このままじゃみんな死ぬんだっっ!! 助けてくれっっ!!」
「……落ち着いてください。僕は、公爵家にもあなたにも、恩義があります。見捨てたりなんてしません」
「…………フィルロファル……」
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