僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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7.今さら負けません!

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 僕は、レオトウェルラレット様にたずねた。

「それで、何があったんですか? 部隊はっ……! 隊長はどこですか?」
「分からないっ……! 隊長は部隊の一部を連れて街へ行ったらしい。俺はここに魔法の薬を届けに来たんだ。そしたらここがこんなことになってて……」
「結界は? 魔法が暴走した時にそれを抑える結界はどうしたんですか?」
「それが…………破壊されて機能してないんだ」
「そんな……じゃあ、部隊の人は……」
「魔法の道具が暴走して、森の方に逃げたらしいっ……このままじゃ装備も魔法の薬も破壊されてしまう! 今魔物に襲撃された終わりだ!!」
「…………それなら、結界を張って暴走を抑えましょう。ここにいてください。結界を張って来ます」
「まっ、待ってくれ!! 一人で行く気かっ……!?」
「大丈夫です! 魔力も回復できましたから!」
「そんな……ま、魔法の杖だってないんだろう!? それなのにっ……!」
「なんとかなります……じゃあ、行って来ます!」
「あのっ……!」
「あ! 昨日、塩、たくさん持って来てくれてありがとうございます!! おかげで、塩焼ききのこが食べられます!」

 レオトウェルラレット様をテントに置いて、僕は、外に飛び出した。一体何が起こっているのか、魔法の道具の暴走も確認するため状況を記録する魔法を使う。

 そうしている間に、一斉に、僕めがけてさっきの暴走した光が飛んでくる。僕はそれを、防御の魔法で防いで、それらの力を抑える結界を張った。

 すると光は消えて、魔法の道具は力を失い地面に落ちる。

 思ったより簡単だった。魔力を回復できたからだな!!

 ホッとしたのも束の間、僕に向かって、周囲から魔法が一斉に放たれる。

 どれだけ僕に殺意持ってるの!?

 僕は、魔法の壁に魔力を込めた。すると、魔法はすぐに消えていく。

 振り向いて、構える。

 魔法を防がれて、僕を不意打ちした奴らが、物陰から現れて僕に近づいてくる。

「え………………」

 びっくりして、僕は何も言えなくなりそうだった。

 僕を取り囲んでいたのが、王城の部隊の面々だったからだ。
 彼らの真ん中に立つのは、一ヶ月前に僕をあの砦で殴りつけたラグトジャス。

 こいつ……こんなところで何してるんだ?

 そいつは、勝ち誇ったような顔をして、僕に剣を向けた。

「貴様……性懲りも無く、また現れたか!! 反逆者め!!」
「…………」

 こいつ、何言ってるんだ?

 わけがわからないまま、僕はラグトジャスと魔法使いたちに囲まれてしまっていた。

 しかも、手枷はつけたままだし、足には壊れた足枷。誰がどう見ても、逃げてきた怪しい逃亡犯だ。

 最悪……こんな奴に出会ってしまうなんて。

 ラグトジャスは、僕に向かって、またあの嘲るような顔をして言った。

「……お前、ここで何をしているんだ? 砦に幽閉されているはずだろう」
「それは……」

 僕は、ここに来るまでのこと、ここに来てからのことを、全部説明した。それなのに、彼らには全然伝わっていないみたい。

「それで? お前は、そこにいるレオトウェルラレットを助けるために飛んできたって? なぜその場で回復させない?」
「…………僕の魔法じゃ、回復させることが難しかったからです」

 何度目か分からない説明を繰り返す。だけど、ラグトジャスたちは、まるで信じていないようだった。

「よく言えるな……そんな嘘を。助けるため? 逃げるつもりだったんだろう?」
「違う!!」
「回復の魔法が使えて、魔力も回復できる状況だったんだ!! それを、逃げるつもりじゃなかったと言われてもな」
「そんなっ…………」

 確かにこいつの言う通り、僕が回復することもできた。それでも、不確実な僕の魔法をかけるより、確実に助かる方法をとりたかったのに。

 僕は何もしてない。

 だけど、分が悪いのは僕の方。確かに、回復の魔法が使えない状況ではなかったし、今、僕に対する信頼は全くない。

 これだけの人に囲まれて、あの時の悪夢が蘇る。誰にも信じてもらえずに、幽閉が決まったあの日のことが。

 どうせ、誰も信じてくれない……どれだけ言い訳をしたって、絶対に無駄だ。そんな意識が頭を埋めていく。

 けれどその時、僕が回復させたレオトウェルラレット様が駆け寄ってきた。彼は、ラグトジャスに向かって叫ぶ。

「あ、あのっ……本当に違うんだ! フィルロファルは、確かに俺を助けてくれた! 俺のために、ここまでっ……!」
「馬鹿かお前はっっ!! 騙されてるのが、分からないのか!!」

 怒鳴られて、彼はビクッと震える。このまま彼がただ騙された、なんてことになれば、彼だって責任を追及されるかもしれない。

 僕の傍にいる彼にまで、ひどく冷たい視線が浴びせられる。

 僕と一緒に……

 僕と同じ目に遭うのか? そんなこと……絶対にさせたくない。僕だって、そんな目に遭うのは嫌だ。

 ラグトジャスは、やけに自慢げな態度で胸を張る。

「俺は今、この部隊を任されているんだ。なぜだか分かるか? 俺以外に、それをできる奴がいないからだ。俺にはこの部隊を安全に王都に返さなきゃならないんだよ。それを……お前みたいな悪人がいたら、部隊を安全に王都に帰せないだろう?」

 なんだか鼻高々な様子でそう語っているけど……

 こいつが、部隊を任されている? さすがに隊長ってわけじゃなさそうだけど、それにしても、こいつが?

 信じられない。

 もしも、本当にここで、こいつが部隊を率いているのなら、このままじゃ絶対にダメだと思った。僕のすぐそばには、僕を庇ってくれたレオトウェルラレット様がだっている。彼は、ひどく辛そうな顔をしていた。

 僕は、恐る恐る口を開いた。

「あの……」
「なんだ? 何か、弁解でもあるのか?」
「……僕がここについた時、僕を一番に撃ったの、あなたですよね? ラグトジャス様」
「はあ? なんのことだ?」
「僕がマントを振ったの、見えませんでしたか?」
「さあな。見えたらなんだって言うんだ? お前など、殺されて当然だ! 逃げ出したくせに!!」
「……あなたは僕と隣にいたレオトウェルラレット様を魔法で撃ったんです。許されることじゃありません。それに、さっきの戦闘の途中にも、僕を狙っていたんですよね?」
「だからなんだ! 悪いのはお前だ!! お前を狙って、何が悪い!!」

 叫んで、そいつの魔法が僕に向かってくる。随分、情けない魔法だ。この程度、今の僕なら簡単に防げる。

 僕は相手の魔法を、軽く自分の魔法で打ち消した。
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