僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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8.え? なんで?

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 自分の魔法を防がれたラグトジャスは青い顔をしていた。

「まさか……なぜお前なんかに、そんな魔法が使えるんだ……」
「さっき部隊を任されたと言いましたよね? 結界は機能してないし、道具の管理も武器の管理もいい加減、加えて、戦う魔法使いではない方の命まで軽んじています。あなたがしたことは、全部魔法で記録してありますから」
「なんだとっ……! お前っ……そんなことまでしていたのか?!! ひ、人を陥れるような真似をしてっ……! 恥ずかしいとは思わないのか!!」

 そいつはカッとなったのか、僕につかみかかろうとする。そんなものに、今さら付き合ってやるつもりはない。

 確かに、ラグトジャスの言うことの方が、いかにも本当らしい。やはり、あの場で回復の魔法を使うべきだったのかとも思う。

 けれど、ここにいる部隊を任されておきながら、彼らを守ることより、使者として来てくれた人を助けるより、僕を倒すことに夢中になっていたような人に、とやかく言われたくない!

 ラグトジャスの手を払いのけると、そいつはますます腹を立てたのか、僕を指差して喚き散らす。

「貴様……幽閉された罪人が俺に意見するのか!?」
「僕らに魔法を撃ったのは、あなたですよね? 大したことないくせに意地悪な魔力だから、すぐにわかりました」
「何をっ…………! 貴様っ……無力の分際でっ……!」

 そいつが放つ炎の魔法を、僕は弾き飛ばした。

 こいつ……攻撃するの、何回目? 僕には魔法を撃ってもいいし吊るして殴ってもいいと思ってるのか?

 だんだん苛立ってくる。なんで僕、こんなことされてるの? 今日はきのこをとって帰るつもりだったのに。

 すでに、魔力は回復している。僕だって、もう二度と、こんな奴らになぶりものにされたくない。

「……あなたとは、もう話をしません。一方的に僕を責めて、僕を陥れるあなたと話すのも嫌ですから」
「だまれっ……さっきから偉そうにっ……!! 貴様、一体何様だ!!」

 カッとなったそいつは、今度は僕に殴りかかってくる。力で僕を圧倒したくせに、僕に圧倒されるのは嫌なんだ。

 だけど、僕だって、こんな扱いを受けたくない。

 僕はもう幽閉されることになったんだ。婚約の話もなくなって、王家とも王都とも、もう関係ないんだ! 今さら、こいつに黙って蹂躙されるような理由だって、まるでない!

 それなのに、この男はいつまで僕の上にいるつもりだ。

「鬱陶しいな……僕に構うなっ…………」

 僕の魔法は、今度はその男を弾き飛ばした。

 十分手加減はしたから、怪我はないようだけど……

 ラグトジャスの周りにいた奴らも、まさか僕が反撃するとは思っていなかったんだろう。襲いかかって来たりはしなくて、むしろ恐れるような顔をしている。

「ひ……な、なんだ、お前っ……! 言い返せないからって……暴力を振るうのか!」
「どの口が、そんなことを言えるんですか? 僕にこれ以上のことをしたくせに」
「ひっ…………!」

 彼らが震え上がる。力の差くらいはわかるんだろう。他の奴らも向かっては来ない。とりあえず、もう誰も、襲っては来ないだろう。

 だけどもう出て行ったほうがいいな……みんなが僕を遠巻きに見ている。

 けれど、僕は逃げる機会を逃してしまったらしい。

「何の騒ぎだ?」

 そう尋ねながら、一人の男が歩み寄ってくる。美しいローブを身につけていて、長い金色の髪が、風に靡いていた。
 僕があの城で別れた、ロステウィス様じゃないか!

「宰相様!?」

 誰もがそちらに振り向いて、ひどく驚いている。

 ロステウィス様まで、ここに来ていたのか? 宰相様、自ら??

 どうしよう……こんなところで宰相様に会うなんて……

 彼の姿を見て、ラグトジャスはすぐに駆け寄っていく。

「き、聞いてくださいっ!! あの男がっっっっ…………陣営に乗り込んできました!! 我々を攻撃してっ……!」

 言いかけたラグトジャスは、喉を震わせて倒れてしまう。ロステウィス様の魔法の電撃にやられたんだろう。

 恐ろしい魔力だ……魔力だけでなく、その魔法も。

 おそらく、同じ魔力を使い、同じ魔法を使っても、僕に同じことはできない。

 でも……なんで宰相様が、ラグトジャスのことを?

 ……この陣営の有り様を見たら、それくらいに腹が立って当然か。結界は機能していないし、武器も道具もせっかくここにあるのに、使える状態じゃない。

 ロステウィス様が僕に近づいて来て、僕は、咄嗟に構えた。

 僕は何もしていないけど、ラグトジャスの言うことだって、もっともだ。宰相様にも疑われているかもしれない。

 けれど彼は、僕の前で頭を下げた。

 ……え…………?

「……ありがとう。俺の部下を助けてくれて」
「へっ……!?」

 え、え!?

 な、なんで……

 宰相様がそんなことをするんだ!??

「あ、あのっ…………あのっ……!」
「こんなことをして悪かった……君は、俺たちを助けてくれたのに……」

 言って、宰相様は自分のマントを外して、僕の肩にかけてくれた。

 なんでそんなことをするのかと思ったけど、僕、服がボロボロだ。ここに来て魔法を受けた時に破れたんだ。

 だからマントをかけてくれたのか……いや、だからなんで宰相様がそんなことをするんだ!?

「え……あ、あのっ……」
「……本当に、申し訳なかった……」

 何を言われているのか、分からなかった。何をされているのかも。

「……ひっ……! やっ……!!」

 訳が分からなくて、それを振り払ってしまう僕。

 怖くて振り払ったけど、そうしたら僕は大きく破れた服しか着ていなくて、慌ててマントを拾う。

「あ……っ! あのっ……申し訳ございません。見苦しい真似を…………マントはありがとうございます……」
「すぐに、服も用意する」
「い、いりませんっ……! あ、やっぱりいります……服はいります。いるけど、交換条件なんかは飲めません!!」

 もしかして、そんなものでもあるのかと思ったけど、宰相様は「もちろんだ」なんて、当たり前みたいに言う。

 どうしたんだ……何でいきなりそんなこと言うんだよ!!
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