僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
9 / 41

9.夕飯、死守します!

しおりを挟む
 宰相様が、レオトウェルラレット様に振り向く。

 ひどく焦った。僕を庇ったせいで彼が責められてしまうような気がしたから。

「あ、あのっ…………待ってください! 宰相様!! レオトウェルラレット様は、僕が、ゆっ……幽閉されている砦に、物資を運んで来てくれているだけで……そ、それだけです!」

 焦る僕に、ロステウィス様は優しげな笑顔で言う。

「うん……分かっている。君が俺たちを助けてくれたことも……」
「え……?」
「ちゃんと見ていた。本当に、ありがとう……」
「…………え……えっ……と…………わ、わ、分かっていただければいいんです…………本当に……」

 ……分かってもらえたのは、すごく良かったんだけど……

 な、なんだか落ち着かないな…………レオトウェルラレット様も無事だったし、早く砦に帰ろう。
 分かってもらえたのは良かったけど、やっぱりここにいるのは、まだ少し怖い。







 それから僕は、テントの中で何があったのか報告して、久しぶりに、王家に報告するための書類も用意した。

 まさか、またこれをするなんて思わなかったなー……二度と王都になんて帰るつもりなかったから。

 あれから、レオトウェルラレット様は、もう一度回復が必要ではないか部隊の回復の魔法使いの方に見てもらっていたし、もう大丈夫だろ。

 なんでも、彼はここで王都からの報告を部隊に伝える役割を担っていたらしい。だけど、陣営にたどり着いてみれば、そこで魔法や道具が暴走していて、部隊が襲われたんだと思った彼は、慌てて宰相様たちを呼びに行く途中、背後から魔法の道具の暴走に巻き込まれて、倒れていたらしい。

 今回の隊長は、普段宰相様の護衛をしている魔法使いの方で、宰相様はそれに同行していたみたい。部隊はこの先にある谷で素材の回収の任務に着くはずだったんだけど、そこに向かう途中、王都に隣国からの使者が来ると報告があり、隊長と宰相様が、少しの護衛を連れて、王都に帰っていたようだ。

 谷での素材回収は何度かしていたし、それほど難しい任務じゃない。今回宰相様が同行したのも、そこで取れる素材で、隣国との新しい取引を始めたいかららしい。いつもなら、何事もなく終わるもの。この辺りにも小さな魔物はいるけど、強力な魔物はいない。少し宰相様たちが部隊を離れても、任務は滞りなく進むはずだったんだ。それが、まさか、留守の間部隊を任せたラグトジャスが、魔法の道具を暴走させるなんて。

 どうやら魔法の道具の整備をなおざりにしていたらしく、その上、陣営で酔って魔法を暴走させて、それが道具に命中して道具まであちこちで暴走して、収拾がつかなくなったらしい。

 僕が何も企んでないってことは、すぐに分かってもらえた。追放された時は、誰にも分かってもらえなかったけど、記録の魔法、身につけて強化しておいて、本当に良かった……

 服と装備も借りることができたし、もう帰って夕飯食べたいなぁ……

 お腹空いてきた。久しぶりに魔法使いの部隊の陣営になんて来て緊張しているのに、それでもやっぱり腹が減る。僕は本当に図太いなあ……

 もう日が暮れているようで、テントの中にも少し肌寒い空気が入ってくる。

 早く帰って、砦の自分の部屋を温めたい。今日は冷えるし、温めた部屋でキノコのスープを食べたいなぁ……頑張ってお風呂も修理したから、のんびりお風呂にも入りたい。

 帰ってからの計画を立てていたら、テントの外から、こちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。

 …………なんだ? また敵か?

 魔物が現れたような気配はしない。

 ってことは、またラグトジャスか……

 ……あいつ……懲りない奴だなーー。僕のことが嫌いなくせに、僕を嬲るのは大好きなんだから。なんでも僕が悪いことにしようとするし、ここで僕に突っかかって来たのも、僕を今回の騒ぎの犯人にしようとしていたんじゃないのか? 正直もう顔も見たくない。

 先手必勝で、さっさと追い返しちゃおう!

 僕は、いつでも魔法を放てるように構えて、テントの入り口の方に向き直る。

 すると、少し間をおいて、僕の予想とは、違う声がした。

「……フィルロファル……いる?」
「何の用ですか……もう帰りま…………」

 言いかけて、相手の声がラグトジャスとは違うことに気づいた。

 え……え!? こ、この声、宰相様!? ロステウィス様!?

 うわあああ!! どうしよう!! 早とちりで、ひどい無礼を働いちゃった!! ロステウィス様が相手なら、もっと丁寧に「帰ります」って言ったのに!

「す、すみませんっ……!」

 慌てて僕は、テントの外に出た。

 すると、ひんやりとした空気が入り込んでくる。冷たい……頬に、雪がふれて溶ける。

 外はすでに夜で、雪が降っていた。

 夜空は星も出ていなくて暗い。だけど陣営には、魔物の襲撃に備えて、魔法の照明があちこちに飛んでいる。食事の用意をしているらしく、いい匂いがした。少し離れたところでは部隊の人たちが集まって、和やかな様子で話している。
 いつのまにか、さっきよりも多くの人たちが集まっているみたいだ。ロステウィス様と街に行っていた人たちが帰って来たんだろう。

 魔法の照明と結界のおかげで、雨風も凌げるようになっているようだけど、完璧にとはいかないのか、結界の中にも雪がちらついていた。

 そしてそんな中、ロステウィス様は頬に雪をつけながら立っている。

「ロステウィス様!? な、何をされているのです!? は、早く中にっ……!」

 慌てて、宰相様をテントの中に招き入れる。

 だけど、なんでわざわざ宰相様自ら、僕に会いにくるんだ? 報告ならしたし、書類も渡した。もう僕は用済みなはずだし、帰っていいっていう許可を待つばかりだったのに。

 まだ、僕に何か用?

 落ち着かない思いでいると、ロステウィス様は、感心したように言った。

「この中は……暖かいね。これだけ暖かかったら、雪も溶けそうだ」
「あ…………いつも砦を暖めていますから……」

 あの砦に連れて行かれた僕が、できるだけ早くと思って取り組んだのが、食料の調達と魔物対策、部屋を温めることとだった。

 テントの中にかけたのは、ほんの少しの魔力で部屋を温める魔法で、一度かければ当分かけ直さなくていい。

 宰相様は、物珍しそうにテントの中を見渡していた。

「すごいな……これは…………魔法の道具も使わずに……」

 そう言って、テントの中に入って来たロステウィス様は、従者も連れていなくて、一人だった。

 宰相様がこんなところに一人で来るなんて……もしかして、何か重要な話?

 もしかして……

 僕がとったきのこや果物、一応中身を確認するって言われて、カゴごと預けたけど、やっぱりこれは返せない……とか言われたらどうしよう! せっかく美味しい夕飯がたくさん取れたのに!! あれを砦に戻ってからゆっくり食べるの、楽しみにしてたのに!!

「あ、あのっ……宰相様っ…………あ、あのっ……きのこは……」
「きのこ? ああ……あれはすぐに返すよ」

 よかったああああああ!! 夕飯、ちゃんとある!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。 新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。 年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。 *現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。 *初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...