僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
9 / 106

9.夕飯、死守します!

しおりを挟む
 宰相様が、レオトウェルラレット様に振り向く。

 ひどく焦った。僕を庇ったせいで彼が責められてしまうような気がしたから。

「あ、あのっ…………待ってください! 宰相様!! レオトウェルラレット様は、僕が、ゆっ……幽閉されている砦に、物資を運んで来てくれているだけで……そ、それだけです!」

 焦る僕に、ロステウィス様は優しげな笑顔で言う。

「うん……分かっている。君が俺たちを助けてくれたことも……」
「え……?」
「ちゃんと見ていた。本当に、ありがとう……」
「…………え……えっ……と…………わ、わ、分かっていただければいいんです…………本当に……」

 ……分かってもらえたのは、すごく良かったんだけど……

 な、なんだか落ち着かないな…………レオトウェルラレット様も無事だったし、早く砦に帰ろう。
 分かってもらえたのは良かったけど、やっぱりここにいるのは、まだ少し怖い。







 それから僕は、テントの中で何があったのか報告して、久しぶりに、王家に報告するための書類も用意した。

 まさか、またこれをするなんて思わなかったなー……二度と王都になんて帰るつもりなかったから。

 あれから、レオトウェルラレット様は、もう一度回復が必要ではないか部隊の回復の魔法使いの方に見てもらっていたし、もう大丈夫だろ。

 なんでも、彼はここで王都からの報告を部隊に伝える役割を担っていたらしい。だけど、陣営にたどり着いてみれば、そこで魔法や道具が暴走していて、部隊が襲われたんだと思った彼は、慌てて宰相様たちを呼びに行く途中、背後から魔法の道具の暴走に巻き込まれて、倒れていたらしい。

 今回の隊長は、普段宰相様の護衛をしている魔法使いの方で、宰相様はそれに同行していたみたい。部隊はこの先にある谷で素材の回収の任務に着くはずだったんだけど、そこに向かう途中、王都に隣国からの使者が来ると報告があり、隊長と宰相様が、少しの護衛を連れて、王都に帰っていたようだ。

 谷での素材回収は何度かしていたし、それほど難しい任務じゃない。今回宰相様が同行したのも、そこで取れる素材で、隣国との新しい取引を始めたいかららしい。いつもなら、何事もなく終わるもの。この辺りにも小さな魔物はいるけど、強力な魔物はいない。少し宰相様たちが部隊を離れても、任務は滞りなく進むはずだったんだ。それが、まさか、留守の間部隊を任せたラグトジャスが、魔法の道具を暴走させるなんて。

 どうやら魔法の道具の整備をなおざりにしていたらしく、その上、陣営で酔って魔法を暴走させて、それが道具に命中して道具まであちこちで暴走して、収拾がつかなくなったらしい。

 僕が何も企んでないってことは、すぐに分かってもらえた。追放された時は、誰にも分かってもらえなかったけど、記録の魔法、身につけて強化しておいて、本当に良かった……

 服と装備も借りることができたし、もう帰って夕飯食べたいなぁ……

 お腹空いてきた。久しぶりに魔法使いの部隊の陣営になんて来て緊張しているのに、それでもやっぱり腹が減る。僕は本当に図太いなあ……

 もう日が暮れているようで、テントの中にも少し肌寒い空気が入ってくる。

 早く帰って、砦の自分の部屋を温めたい。今日は冷えるし、温めた部屋でキノコのスープを食べたいなぁ……頑張ってお風呂も修理したから、のんびりお風呂にも入りたい。

 帰ってからの計画を立てていたら、テントの外から、こちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。

 …………なんだ? また敵か?

 魔物が現れたような気配はしない。

 ってことは、またラグトジャスか……

 ……あいつ……懲りない奴だなーー。僕のことが嫌いなくせに、僕を嬲るのは大好きなんだから。なんでも僕が悪いことにしようとするし、ここで僕に突っかかって来たのも、僕を今回の騒ぎの犯人にしようとしていたんじゃないのか? 正直もう顔も見たくない。

 先手必勝で、さっさと追い返しちゃおう!

 僕は、いつでも魔法を放てるように構えて、テントの入り口の方に向き直る。

 すると、少し間をおいて、僕の予想とは、違う声がした。

「……フィルロファル……いる?」
「何の用ですか……もう帰りま…………」

 言いかけて、相手の声がラグトジャスとは違うことに気づいた。

 え……え!? こ、この声、宰相様!? ロステウィス様!?

 うわあああ!! どうしよう!! 早とちりで、ひどい無礼を働いちゃった!! ロステウィス様が相手なら、もっと丁寧に「帰ります」って言ったのに!

「す、すみませんっ……!」

 慌てて僕は、テントの外に出た。

 すると、ひんやりとした空気が入り込んでくる。冷たい……頬に、雪がふれて溶ける。

 外はすでに夜で、雪が降っていた。

 夜空は星も出ていなくて暗い。だけど陣営には、魔物の襲撃に備えて、魔法の照明があちこちに飛んでいる。食事の用意をしているらしく、いい匂いがした。少し離れたところでは部隊の人たちが集まって、和やかな様子で話している。
 いつのまにか、さっきよりも多くの人たちが集まっているみたいだ。ロステウィス様と街に行っていた人たちが帰って来たんだろう。

 魔法の照明と結界のおかげで、雨風も凌げるようになっているようだけど、完璧にとはいかないのか、結界の中にも雪がちらついていた。

 そしてそんな中、ロステウィス様は頬に雪をつけながら立っている。

「ロステウィス様!? な、何をされているのです!? は、早く中にっ……!」

 慌てて、宰相様をテントの中に招き入れる。

 だけど、なんでわざわざ宰相様自ら、僕に会いにくるんだ? 報告ならしたし、書類も渡した。もう僕は用済みなはずだし、帰っていいっていう許可を待つばかりだったのに。

 まだ、僕に何か用?

 落ち着かない思いでいると、ロステウィス様は、感心したように言った。

「この中は……暖かいね。これだけ暖かかったら、雪も溶けそうだ」
「あ…………いつも砦を暖めていますから……」

 あの砦に連れて行かれた僕が、できるだけ早くと思って取り組んだのが、食料の調達と魔物対策、部屋を温めることとだった。

 テントの中にかけたのは、ほんの少しの魔力で部屋を温める魔法で、一度かければ当分かけ直さなくていい。

 宰相様は、物珍しそうにテントの中を見渡していた。

「すごいな……これは…………魔法の道具も使わずに……」

 そう言って、テントの中に入って来たロステウィス様は、従者も連れていなくて、一人だった。

 宰相様がこんなところに一人で来るなんて……もしかして、何か重要な話?

 もしかして……

 僕がとったきのこや果物、一応中身を確認するって言われて、カゴごと預けたけど、やっぱりこれは返せない……とか言われたらどうしよう! せっかく美味しい夕飯がたくさん取れたのに!! あれを砦に戻ってからゆっくり食べるの、楽しみにしてたのに!!

「あ、あのっ……宰相様っ…………あ、あのっ……きのこは……」
「きのこ? ああ……あれはすぐに返すよ」

 よかったああああああ!! 夕飯、ちゃんとある!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

転生モブは穏やかに過ごしたい

ゆき
BL
火事に巻き込まれそうになった瞬間、エヴァンは前世の記憶を思い出した。 前世で火事によって命を落としたこと、そして自分がBLゲームのモブキャラクターに転生していることを――。 せっかくの第二の人生。しかも物語に関わらないはずのモブ。それならば今世こそ穏やかに過ごしたい。 そう考えていたエヴァンだったが、なぜか登場人物たちが放っておいてくれない……?!

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...