僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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47*ロステウィス視点*俺だけが彼から遠い

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 あの竜を追って、外に飛び出した俺。

 朝の山は肌寒かった。空の雲が流れるように強い風が吹いて、不気味な音を立て、体を凍させるようだ。山の木々が一斉に風に吹かれている。

 辺りを見渡してみても、竜は体を小さくしたのか、すでに姿は見えない。

 あいつ……! 一体、どこへ行ったんだ!?

 山に逃げ込んだか、それとも砦に戻ったのか……早く見つけないと……

「くそっ……!! どこに行ったんだ!?」

 焦る俺の隣で、ヴィクトウェトルが言う。

「もうやめましょう。そう意地になって探すようなこともないでしょう」
「何を言っているんだ!? ヴァルウィトフェルが逃げたんだぞ!」
「逃げたんじゃなくて、フィルロファルと遊びに行くと言っているだけです」
「遊びに!? あれがか!? あの竜は砦を破壊しようとしたんだぞ!」
「もうそんな気ないみたいですよ?」
「今壊そうとしただろう!! あんなに大きくなって、砦の中を飛んだりして、フィルロファルが修復したばかりの砦に傷でもついたらどうする!??」
「砦は随分強化されています。さっきからあなたが一人で騒いでいるだけで、砦は無事で、ヴァルウィトフェルは大きくなって廊下を走って外に飛び出して行っただけです。それに、大人しくしているのに、一方的にフィルロファルに近づくなと言えば、腹を立てて当然です」
「それはっ……!」
「それに、フィルロファルのところに行ったのなら、余計に心配する必要はないのではありませんか? 彼にだけは懐いているようですし。フィルロファルにしてみれば、すでになんの関係もないあなたが、朝っぱらから部屋を訪れて、その上しつこく自分の前に姿を現すことの方が、よっぽど怖いですよ」
「怖い……? 俺は彼とは婚約をっ……」
「その話はなくなったではありませんか」
「……っ! とにかく、竜を探すぞ! どこだっ……クソ竜!! 出てこい!!」

 大声をあげて、竜を探すが、見つからない。

 この砦は、思ったより広い。山の方へ逃げたのか? どちらにしても、こんな広い砦と山を闇雲に探しても見つかるわけがない。

 ……竜め……俺を舐めるなよっ……!

 公爵家最強と言われた魔力……あの竜になど、ひけを取るものか! こうなったら、砦と山の中……その全体に使い魔を飛ばして探す!

 体の魔力を集中し、小さな鳥の姿をした使い魔を無数に作り出す。それをこの辺り一帯に飛ばして、一気に探すことにした。輝く小さな使い魔は周辺を飛び回り、俺に周りの状況を教えてくれる。

 だが、探し始めてすぐ、レオトウェルラレットが俺の目の前に飛び降りてくる。

「宰相様!! どうされました!?」
「どう? お前こそ……! どうしたんだ?」
「どうしたって…………! 何をおっしゃっているのです!? 砦とこの辺り一帯に、使い魔を飛ばしたではありませんか!!」
「あ、ああ……そうだったな……」
「何か、重大なことが起こったのではないのですか!?」

 俺が砦全体に使い魔を飛ばしたから飛んできたのか……

「あの竜が……ヴァルウィトフェルがフィルロファルの部屋から飛び出して行った。すぐに探してくれ」
「………………? なぜですか?」
「なぜ? ヴァルウィトフェルが、フィルロファルの部屋から出て来たんだぞ!」
「はい。あの竜はよく、フィルロファルといますから。遊びに行ったのでは?」
「あ、遊びにっ……!? 確かに、そう言っていたけど……あの竜は一度は王都を狙っている。何があるか分からない。探した方がいい」
「宰相様……分かりました。俺も探してみます」
「本当か!?」
「フィルロファルのところに行ったなら、森じゃないですか?」
「森??」
「はい。フィルロファルなら、よく朝から森にきのこや果物を採りに行くんです。あいつのとってくるものはうまいですよ。俺も、あいつとはよく食事をするんですが、山の中のうまいものをいつも教えてくれるんです」
「…………」

 フィルロファルが……楽しく食事をしている? それはよかった。何よりじゃないか。

 それなのに……

 やけに、心を乱される。

 あいつと、よく……一緒にいるのか? それはそうか。彼には、フィルロファルと共にここを守るように言いつけている。だったら、彼とも一緒にいるだろうし……

 案内すると言って、レオトウェルラレットが魔法で空を飛ぶ。使い魔でも、彼のことが見つかった。山の中だ。

 俺も、レオトウェルラレットについて魔法で飛んだ。

「……レオトウェルラレット……」
「はい? 何か……?」
「………………フィルロファルとは……よく食事をするのか?」
「……? はい。報告の時にここを訪れると、あいつがよく振る舞ってくれるんです。最初の頃は、串に刺したキノコを焼いて食べてるばかりだったのですが……最近は、料理もなかなかの腕前です。あ……宰相様の方がよく知っていますよね。夜会も一緒に出席されていたと聞きました」
「…………そう……だね……」

 彼と食事など……ほとんどしたことがない。王都でも……王城で会っても、夜会で会っても、俺は彼の隣を素通りするばかりだった。

 婚約するはずだったのに……

 ほんの少しの間に、俺だけが、フィルロファルから酷く遠い。
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