僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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46*ロステウィス視点*すでに恥をかいています

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 ど、どれだけ手懐けたら、竜がそんな風に言うことを聞くようになるんだ??

 正直、信じられないが、フィルロファルもそんなことを言っていた。彼は優しい竜だと。

 優しい竜……?

 俺が会った時は、国の外れの屋敷に住む魔法使いの竜たちと共に、辺り一帯を破壊し、土ばかりになった森を飛び回って、哄笑を上げていたんだぞ。あと少しで、その向こうの山まで破壊するところだったんだ。あの時は、屋敷の魔法使いが説得に応じて、ことなきを得た。

 フィルロファルの前では、まるで飼われている猫か犬のように従順にしているようだが……ヴァルウィトフェルは油断のならない竜だ。

「僕はフィルロファルの一番の友達なの! お前はさっさと王城に帰れば? なんなら僕が城ごと爆破してあげてもいいよ?」

 ……こういうことを笑いながら言う奴だからな……

 フィルロファルの修復の魔法のおかげで大人しくなったが、この竜は、本気で砦の殲滅を考えていたはずだし、道具が手に入らなければ、王都も破壊していたかもしれない。

「お前はフィルロファルのそばでは寝るな。危険だ」
「フィルロファルはいいって言ったもん。なんなの? お前。突然ここに入り込んで来て、偉そうに」
「お前だってここに来たばかりだろ! とにかく、フィルロファルには手を出すな!! お前のような危険な竜を、彼のそばに置いておけるか!!」
「僕は、フィルロファルには何もしないよ。だって僕、フィルロファルの友達だから。お前は何? なんで、いちいち口うるさいの?」
「俺はこの国の宰相だ。国の脅威となる可能性のある竜を警戒するのは当然だ」
「だからって、朝っぱらからフィルロファルの部屋に押しかけたりして、何の用??」
「お前には関係ない」
「ふーん……」

 竜は高く飛び上がり、そこから俺を見下ろして言う。

「じゃあ……どのツラ下げてフィルロファルに会いにきたの? フィルロファルに枷をして幽閉してるくせに」
「それはっ…………!」

 それを言われると、反論できない。どれだけの言い訳を並べ立てたところで、俺たちが彼を幽閉したことに変わりはない。後ろ指を指されながら王都を去った彼のことを考えれば、この竜の言うことはもっともだ。

 王都を破壊しようとした竜に言いたい放題言われて、反論一つできないとは……あまりに情けない。

「フィルロファルの幽閉なら、終わらせることができるように、今、調査と手続きを進めている。それに関して、お前にも、用がある」
「用? 僕に?」
「王都を破壊しようとした件と、お前が受け取るはずだった道具について聞きたい」
「え? なんで?」
「横領の調査のためだ。それは一体どう言うもので、どう言う経緯で受け取ることが決まった? それの機能もだ。詳しく説明してほしい」
「何それ。面倒臭い」
「お前が今回の横領で被害を被ったことは悪いと思っている。事件が解決し、ことの経緯が明らかになったら、国として補償もする。お前も、横領には腹を立てているだろう。協力してくれ」

 俺が言っても、彼は顔を背けてしまう。

「嫌。お前とは話したくない」
「……なぜだ?」
「僕だって、僕を脅威だなんて疑うやつとは、話したくない」
「……では、王都を破壊する気は最初からなかったのか?」
「あったよ」
「…………」
「とにかく、お前に話したくない。フィルロファルになら、話をしてもいいけど」
「彼は忙しい。話なら、俺が聞く」
「じゃあ、こうする?」

 竜は高いところまでふわりと上がり、ニヤリと笑って、小さな鳥のような大きさから、天井にあと少しで届きそうな大きさにまで、姿を変える。

 禍々しい吠え声を上げたその竜の周りに、魔力が渦巻き始めた。湧き上がる魔力が、輝く黒い水のように彼の周りにまとわりつく。

 息苦しくなりそうな魔力だ。

 ……力づくで、ということか……? 王都を破壊しようとした最悪の竜らしいじゃないか。

 俺も、構えた。

「それがお前の凶悪な本性か? 可愛いね。その程度なら……相手になってやる」

 すると、一部始終を見ていたヴィクトウェトルが、俺の背後から呆れたように言う。

「あの……そんなことをしている場合じゃないですよね? フィルロファルに用があるなら、さっさと行きませんか?」
「先にこの竜を押さえつける。王都を破壊しようとした竜から逃げるなんて、公爵家の名折れだろ」

 俺が言うと、ヴィクトウェトルはため息をついた。

「今さら名折れだなんだと言わなくても……すでに取り返せないくらいの恥をかいてますよ」
「黙ってろ!」

 全く、こいつまでなんなんだ。

 俺の方が剣を納めたところで、竜はやる気だぞ。

 竜は、その体内から魔力を湧き上がらせ、俺に向かってくる。

 一応あれでも隣国からの使者……下手に傷つけると、面倒なことになるな……縛り上げてしばらく大人しくさせるか。

 俺は、拘束の魔法で魔力の鎖を呼び出した。

 けれど、俺の鎖は竜の体を捕らえる前に、横から飛び出して来た別の竜に噛みちぎられてしまう。

 不意打ちの攻撃に、俺の反応が少し遅れる。

 まだ竜がいたのか!?

 違う。それはただの竜じゃない。ガラスでできた燃えるような光を放つ竜の姿をしたものだ。俺が持ってきたカンテラに乗せていた、魔法の道具じゃないか。それが大きくなって、俺の鎖に噛みついてきている。

 魔法の道具を操っているのか!? 違うな……竜の魔力にやられて暴走したか……相変わらず、腹立たしいような魔力だ。だが、俺にそれで敵うと思うな!

 俺の爆破の魔法が、一撃でそれを破壊する。

 せっかくフィルロファルのためにと持って来た物は、俺自身の魔法で粉々に砕け散ってしまった。

 ああ……フィルロファルに渡すはずのものだったのに…………なぜ俺は、せっかく持ってきたものを自分で破壊しているんだ……

 その上、竜はすでに俺の前にはいない。俺に背を向け飛んでいく。

「おいっっ……! 待て!! どこへ行く!?」
「やだよーー!! 僕、これからフィルロファルに誘われてるんだ!!」
「誘う? 誘うだと!? フィルロファルが!? お前をか!?」
「そうだよ! これから、一緒に遊びにいくんだ!」
「遊びに!? お前がフィルロファルとかっ……なぜお前とっ……! 俺はちっとも相手にしてもらえないのに……おいっ……待て! そっちは窓だっっ!! 砦を壊すなっ……!」

 叫んだところで、あの竜は俺の言うことを聞かない。

 くそっ……あんなに大きな竜が砦の中を飛び回ったりしたら、砦に傷がつく。あの竜は、羽だけで岩山すら軽く砕き、爪を少し振っただけで魔物を消滅させるような奴だぞ。

 この砦のほとんどがすでに強化されているが、まだ強化の終わっていないところもあるはずだ。何より、魔物や魔獣に対抗するための強化は終わっていても、竜に対する対策までは終わっていないだろう。

 さすがに王城でも、城の中で竜が暴れても耐え切れるほどの強化はされていない。

 俺は、竜が走る廊下に強化の魔法をかけた。

 壁も天井も床も、かなり強化してある。だが、置いてある照明やカーテン、窓はまだか……特に、この辺りは修復したばかりのようだ。とりあえず今使える強化の魔法をかけて、後でフィルロファルに報告するか。

「おいっ……! 待てっ……!! ヴァルウィトフェル!」

 俺が窓に魔法をかけて強化すると、竜は乱暴に魔法で窓を開けて飛んでいく。

「お前の強化っ……便利だねーー! ここで僕のために働いてよっ!」
「ふざけるな!! お前のためじゃない!!」

 俺も、竜を追って魔法を使い飛び出す。

 背後では、ヴィクトウェトルの「もうやめましょう」と言う声がした。

「馬鹿を言うな! フィルロファルの砦だぞ! 俺が守る!」
「すでに彼が守ってますよ……」
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