僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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86.あの時から、ずっとそんな風で

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 屋敷には、監視のための魔法と、異常が起きた時にそれを中にいる人に伝える警戒の魔法、他にも侵入者を捕らえる罠の魔法も仕掛けられているみたいだ。

 どれだけ警戒してるんだよ……

 中にいる敵に見つかるのも怖いけど、何より恐ろしいのは、気づかれて事件に関係のない人たちを人質に取られること。

 手早く終わらせなくては。

 魔法を全部解いてしまえば、完全に屋敷を包囲して、中に入ることができるんだ!

 門番たちに門をあけてもらえたから、僕と宰相様、ヴィクトウェトル様は、部隊と一緒に開いた門から中に侵入。

 門さえ開けば、こっちのもの!

 まずは宰相様が屋敷まで走る。彼が何重にもかけられた結界の魔法を解いて、僕やヴィクトウェトル様たちが警戒の魔法を解いていく。設置された魔法の道具も破壊。

 作業はすぐに終わる。

 警戒の魔法を全て解き終えたヴィクトウェトル様が、僕のところに走ってきた。

「ありがとうございます。屋敷にかけられた魔法は、ほとんど解くことができました。これで問題なく作戦を進められるでしょう」

 彼は、細く短い魔法の杖を返してくれる。魔法を解くのに役に立つと思って渡したものだ。

 カバンにたくさん魔法の道具入れておいてよかった!
 大急ぎで準備したからカバンに詰めすぎちゃったかなと思っていたけど、役に立った!!

「屋敷にかけられる魔法はだいたい見当がついたので……お役に立ててよかったです!!」

 僕でもできることがあって嬉しい。

 ここに来るまでに作戦の詳細は聞いていたけど、みんなすごい……あれだけ警戒の魔法がかけられていた屋敷が、あっという間に包囲されてしまった。

 宰相様も、屋敷の裏手から走ってきた。

「屋敷の裏の罠の魔法は解いた。魔法の道具も、全部回収したよ。思っていたより、ずっと早く終わったな……」

 「拍子抜けだな」って言って笑う彼。

 そこでオフィセイール様が僕らに「誰か来る」と声をかける。

 物音に気づいたのか?

 みんなで屋敷のドアに振り向く。

 するとそこを開いて、一人の男が出てくる。

「誰だっ……!」

 僕らがいるのを知り、驚いてそう言ったその男は、宰相様の魔法にかかり、すぐに眠ってしまった。

 外に出てきたのは、この男が初めて。

 もしかして中にいる人に気づかれてしまったのかと思ったけど、中にいる一族が、こっちに気づいて出てくる気配はない。よほど話に夢中になっているのか、それとももうそれどころじゃないのか。

 とにかく、これで屋敷の中に入る準備は整った。

 侵入する屋敷に振り向く。

 罠の魔法のことも教えてくれた門番たちは、まだ戸惑っているみたい。突然こんなことになって、何が起こってるか分からないんだろう。

 詳しく話してあげたいけど、今は屋敷への侵入が先。彼らのことは部隊の方に任せておけば大丈夫だろう。

 屋敷に向かう僕らに、門番の魔法使いが戸惑いながら口を開く。

「あ、あのっ……! ありがとうございました……屋敷の中は危険なので……お気をつけて!」







 屋敷の中に入ったのは、僕と宰相様、オフィセイール様。ヴィクトウェトル様と部隊の方は、合図があるまで屋敷の外で待機。

 屋敷内に取り残された人がどこにいるのか、宰相様にはすでに見当がついているみたい。廊下を迷いなくまっすぐ進んでいく。

 彼は、一つの扉の前で立ち止まった。

 魔法の鍵がかかっている。

 ずいぶん弱いものだ。それでも罠の魔法が仕掛けられている可能性がある。

 僕は前に出た。

「僕が開けます。罠が仕掛けられていないか、確認もできますから」
「……頼むよ」
「はい。警戒をお願いします」

 すぐにドアに飛びつく。魔法をかけると、魔法の鍵は簡単に消えていく。

 早速ドアノブを回す。

 だけど、ドアは開かない。

 まだ鍵がかかってる? 魔法を使わない、鍵穴に鍵を入れるものだ。

 しまった……

 普段魔法の鍵ばっかり開けてるから、こっちの対策を忘れてたっっ!!!!

 宰相様が、僕に尋ねてくる。

「魔法の鍵?」
「ち、違います……普通の鍵です……鍵を探さないと…………」
「だったら問題ない。下がって」
「へ?」

 動くのが遅い僕の服に、ヴァルウィトフェルが服に噛み付いて、無理やり後ろに下げる。

 その間に宰相様は、魔法で作り出した巨大な斧で、ドアを粉々に壊してしまう。しかも、敵に気づかれず即座に破壊できるよう、ほんの少しの魔力を使った爆破の魔法までかかってる。ちゃんと叩き壊す音がしないように、防音の魔法をかけた上でだ。

 ドアは全部木屑になって、僕らはそれを飛び越えて進んだ。

 ちょっとびっくりしたけど……ここに取り残された人のところまで、早く辿り着かなきゃ。

 奥には警戒の魔法がかかっていたけど、それも全部、宰相様が無効化。足音も全部消して、侵入者を感知する魔法の道具も、彼は一撃で貫いていく。
 僕は、その後ろについて行った。

 王城にいる時から、宰相様は、ずっとこんな風だった。
 戦略も自分で立てて、自分だけで切り込んでいく。その周りには、彼の仲間として動く、僕じゃとても敵わない人たちがいて、彼の戦略の中で、彼を支えて動いていた。
 僕は、その姿を見つめて必死についていこうとしていたんだ。もうそうする必要がなくなって、彼を追うこともやめたけど、今は、できるだけのことをしたい。

 僕は、壁に隠された魔法の道具の動きを止めて走った。

 すると宰相様は、僕に少しだけ振り向いた。

「…………分かるの?」
「へ?」
「あっ……魔法の道具があることですか?」
「そうじゃない。あれを停止させる方法だよ」
「は、はい!」

 王城に行ってから、公爵家に嫁ぐために毎日たくさん頑張ってたし、砦についてからは、いろんな人から魔法を学べた。あの砦を守りたかったし、貴族としての責務を果たしたかったから。

「……フィルロファル……………………」
「は、はいっ!」
「ごめん…………助かるよ……ありがとう……その腕を見込んで、君に頼みたい。警戒のための魔法の道具があったら、全部停止させて」
「は、はい!!」

 答えて、廊下にある照明に似せた魔法の道具を停止させる。

 走っていくと、奥に人がいた。

「俺が行く。周囲の警戒を頼む」
「はい!」

 僕らに気づいて驚くその人。

「だ、誰だっ……!」

 宰相様は一気に駆け寄って、その口を軽く手で塞ぐ。

 相手にしてみれば、突然見知らぬ人が屋敷に入ってきて、口を塞がれたんだ。怖いに決まっている。

 けれど、怯える彼に、宰相様は優しく声をかけた。

「怖がらなくていい。俺は、ロレストラル家のロステウィスだ」
「ロレストラル家!?? えっ……!? まさか、ロステウィス様!?」
「ああ。ここで非道なことが行われていると知って来た。ここに来た客人と当主に、話を聞きたい。君たちのことも、解放する。だからどうか、協力してほしい」

 落ち着いた口調で言われて、彼は頷いた。すると宰相様が手を離しても、もう喚くようなことはしない。ただ、ひどく戸惑っているようだった。けれど、ここに宰相様が来たことについては、心当たりがあるようだ。

「ほ、本当に……ロステウィス・ロレストラル様? では……やはり、当主様はマウィルイセマスたちに、手を貸していたのですね……」
「……他の使用人たちは、どこにいる? 魔法の道具の管理をするために雇われた人たちもいるなら、教えて欲しい」
「は、はい……」
「……フィルロファル」

 彼は、僕に振り向いた。

「彼の回復と、この先の廊下に、罠のための魔法がかけられていないか確かめてほしい。俺は外に連絡する」
「はい!!」
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