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11.どっちだよ!
しおりを挟む書庫には、ずらっと本が並んでいた。棚もあって、そこには、魔法の道具も並んでいる。書庫って言ってたけど、保管されているのは本だけではないようだ。
ここにある本は全部魔法の道具に関するものみたいで、そういった道具が並んでいるらしい。
照明は、かなり小さなものが少しあるだけ。
そして、奥の方に微かに明かりが見える。ぼんやりしているけど、魔法の灯りだ。ベルブラテスは奥か?
ガレイウディスと二人で行くと、明かりにばかり目がいって、周囲に対する注意が疎かになっていたらしい。背後から頭を何かでこんっと叩かれた。
「いてっ……」
「何をしている?」
振り向くと、そこにいたのはベルブラテス。置いて来たはずの俺たちがいるのを見て、不機嫌そうにしていた。
俺の頭を叩いたのはこいつか……多分、右手に握ってる杖でやったんだろう。
野郎……出会い頭に暴力かよ。喧嘩売ってんのか!
「何するんですか!! そんなもんで人を叩かないでください!!」
「来るなと言っただろう。何をしている?」
聞きながら、そいつはすぐに、ガレイウディスの方に振り向く。
「ガレイウディス、貴様まで……なぜ来た?」
「……申し訳ございません」
ガレイウディスはそう言うけど、こいつを無理矢理連れてきたのは俺だ。
「やめろ! ガレイウディスは、俺を案内しただけだっ……お、俺が頼んだんです!」
言うと、ガレイウディスは背後で「おい」って言って、俺を止めようとする。
「やめろ! 処罰されても知らないぞ!」
「なんだよ! さっき助けないって言ってたくせに!」
「それはっ…………と、とにかく、いちいち反抗するな!」
「反抗じゃねえ! 俺がお前を連れて来たんだろーがっっ!! 俺もお前も、悪いことなんかしてねーし!」
俺は、ベルブラテスを睨みつけた。
「先に嘘ついたのはそっちですよね!? 俺はあなたと行くって言ったし、そっちだって、ダメって言わなかったじゃないですか!!」
怒鳴る俺を前にして、ベルブラテスは、すっごく面倒臭そーーに言う。
「しつこい貴様を追い払いたかっただけだ」
「……しっ……しつこい!!?? 俺に結界を張れって言ったのはそっちだろーがっっ!! なんで俺が付き纏ってるみたいな感じになってるんだ!! し、書庫の結界だって……自分で張ってましたよね!? 結界張るなら俺がやります!」
俺が怒鳴るのを聞いて、遂に耐えかねたらしいガレイウディスが、手で俺の口を塞ぐ。
「馬鹿っっ!! やめろと言っているだろう!!」
「……!! 離せっっ!! 何怯えてんだよ!! さっき自慢の幼馴染だって言ってただろ!!」
「ばっ……! それは言うなと言ったじゃないか!! 今の俺はっ……この方の従者なんだっ!!」
「だからなんだよっ…………! 今だって、あれだけ自慢するくせにっ……!」
二人で揉み合っていたら、ベルブラテスは、静かに「やめろ」って言った。
それを聞いて、ガレイウディスはすぐに、ベルブラテスに向かって顔を下げる。
「ベルブラテス様……その…………申し訳ございません……」
「…………お前までここに来るとは思わなかった」
「それはっ…………! 申し訳……」
「謝るな」
一言冷たく言って、ベルブラテスは、ガレイウディスから顔を背けた。
「………………嬉しかった…………」
聞き取れないほどの声で、ベルブラテスがそう言うのを聞いて、ガレイウディスは顔を上げる。
だけどもうベルブラテスは彼に背を向けてしまっている。
なんだこいつ……やっぱりガレイウディスのこと、頼りにしてるんじゃないか。
けれどそいつは、今度は俺に振り向いて、さっそくムカつくことを言い出した。
「それで、貴様は置いていかれたのが寂しくて追いかけて来たのか?」
「んなこと言ってません。置いていかれたのがムカついたから来ただけです」
「勝手に部屋を出たから死刑だな」
「ああ!!?? 横暴だろ!! 結界張れって言ったのはそっちだ!!!」
遂に我慢の限界がきて怒鳴ると、そいつは俺に振り向いて、微笑んだ。
「しつこい男だ……だが、結界を張れるならちょうどいい……もう、そこにいろ」
「………………へ?」
「どうした? いたいのではないのか?」
「……な、なんだよ……ダメって言ったくせに……い、いいんですか?」
「今更追い返すのも面倒だ」
「…………」
さっき死刑って言ったくせに……意外に簡単に許可したな……ガレイウディスのことはともかく、俺のことはつまみ出すかと思った。
「……追い返されたっていてやります……」
ムカついて仕返しみたいにぼそっと言うけど、それでもベルブラテスは肩をすくめて、むしろ微笑んでいるようだった。なんだか嬉しそうじゃないか? 来るなって言ったり喜んだり。どっちなんだよ……
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