追放される俺を憧れの魔法使いが拷問しようとしているらしいんだけど多分気のせいだと思いたい。やっと再会した人がストーカー気味なんて嘘だよな!?

迷路を跳ぶ狐

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16.さすがです……


「め、命令って…………」

 命令って、なんのことだ?

 俺は、ウィンルゼンド様を一晩お守りする約束で、ここに連れてきたんだ。だから、俺が一晩ウィンルゼンド様を守ることは、当然であるはずだ。

 それなのに、なんでだ?

 俺が戸惑っていても、ウィンルゼンド様は俺の腕を握ったまま。いつもどこか冷たいウィンルゼンド様の手が、何だか心地いい。

「……フィリレジレク。ちゃんとベッドに入って。王都までは、魔物も魔獣も多い道のりを行かなきゃならないんだ。フィリレジレクもちゃんと休まないと、魔力だって回復しない。そのまま出発すれば、旅の途中で危険な目に遭う。教えただろ? この辺りの魔物のことは」
「……はい」

 ウィンルゼンド様の言うとおりだ。この辺りの魔物は強力で、こちらもそれなりに準備をして行かないと危険だ。

 反論できない俺に、ウィンルゼンド様は微笑んで言った。

「それに、もしかしたらベッドの中に魔物が出るかもしれないだろ?」
「……それは……出ないと思いますが…………この部屋には結界も張っていますし……」

 さすがに、ベッドの中に魔物は出ないと思う……

 すると、ウィンルゼンド様は少し黙って、天井に向かい、魔法の光の球を打つ。人を害したり、何かを破壊するためのものではなく、ただの魔力の光の集まりだ。それは天井をすり抜け、外に飛び出していく。

 部屋には俺が結界を張っている。もしもそれが、ウィンルゼンド様のあの光の球より強力な力を持っていたのなら、先ほどの光の球は俺の結界に阻まれて外に出ることはできずに消えていたはずだ。それなのに、結界をあっさりすり抜けて行ってしまったのは、俺の結界が持つ力が、ウィンルゼンド様に負けた証拠。

 さすがです……ウィンルゼンド様……

 あっさり負けたことには落胆してしまうし、悔しいと言えば悔しい。しかし、こうしてウィンルゼンド様の魔法を目の当たりにすると、いつも気が引き締まる。

 俺もまだまだ……

 ウィンルゼンド様はさらに続けた。

「あれくらいの力を持つ魔物が、結界をすり抜けて入ってくるかもしれない。だから、俺も一緒に部屋に結界を張る。ちゃんと、フィリレジレクも休むんだ。魔力の回復が十分なら、あの球だって、フィリレジレクの結界が防いでいた」
「…………俺の結界が…………ウィンルゼンド様の魔法を?」
「フィリレジレクの魔法は、それくらい強力なものなんだ。俺に敵う奴はいないけど、フィリレジレクに敵う奴も、俺くらいのものだよ」
「…………そんな……褒めすぎです……」

 どうしたんだろう……ウィンルゼンド様……そんなこと、初めて言われた。こんなに褒めていただけるなんてっ……!

 嬉しいんだけど、少し照れくさい。俺の魔法はまだそんなに胸を張れるほどのものじゃない。今だって、ウィンルゼンド様にあっさり破られた。

 最初の頃は、どれだけ教わっても、魔法なんて使えなかった。それを、ウィンルゼンド様が丁寧に魔法のことを一から教えてくれて、少しずつ使えるようになったんだ。剣士として働く時にも、これは役に立っている。俺のような下っ端には、支給されるものも少なかったから、足りないものを魔法で補っていたんだ。ウィンルゼンド様の魔法がなかったら、危ない時なんてたくさんあった。だから、ウィンルゼンド様は恩人なんだ。

 そんなウィンルゼンド様に褒めていただけるなんて、今日は一体どれだけ幸せな日なんだ!

 だが、ウィンルゼンド様に未熟な結界を見せてしまったことは悔やまれる。もっとウィンルゼンド様を驚かせたい。その力で、ウィンルゼンド様を守りたい。そのために、まだまだ練習しなくてはっ……!!

 ウィンルゼンド様は、俺の手を軽く引く。

「だから……フィリレジレクも、ちゃんと魔力を回復させるんだ。これは命令だよ。逆らうことは許さない」
「ウィンルゼンド様…………」

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