嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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4.僕をどこに連れて行くつもりなんだ!?

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 くそっ……一体、どうなっているんだ!

 苛立ちが増していくようだ。

 なんなんだよ、あいつ。なんで僕をそんなに馬車に乗せたがるんだ!?

 何か意味があるのか?

 そうか……馬車の中に何か罠が仕掛けてあるんだな!!

 そうか!!!! そうだったのか!!

 なるほどな。そこに頭が回らないとは。僕もどうかしていた。

 ふんっ……くだらない真似をする王子だ!!

 理由が分かったら、もう怖くもなんともない。

 僕は、馬車の前で腕を組んだ。

「王子殿下。素晴らしい馬車ではありませんかっ…………!! もう少し豪華でも構わないのだが…………我慢してあげます……」

 話しながら、魔力でこっそり馬車に魔法がかけられていないか確認する。

 …………特に奇妙なところは見当たらない。確かに豪華な馬車だが、罠となる魔法がかかっているような様子はない。

 これは…………豪華なこと以外、なんの変哲もない馬車だな……

 いや、まだ安心するのは早い! 魔力を感知されにくい、魔法の道具を使っているのかもしれない!

 ……隙を見せたらダメだ。油断するな。貴族の間では、弱みを見せればすぐに潰される。それを忘れてはならない。

 そのはずなのに、王子は言う。

「君が我慢することない。すぐに新しい馬車を用意する」
「これでいいって言いましたよね! 乗りますから!!」

 なんなんだこいつ!!

 もう訳がわからない……!!

 怒鳴る僕が馬車に乗ろうとすると、背後から声がした。

「あ、あのっ…………ダスフィレト様っ……!!」

 叫んだ声に振り向けば、それは、使用人だった。
 僕がずっと、ここで仕事を手伝っていてもらっていた男だ。

 僕にはもう声をかけるなと言ったのに。屋敷に入っていろと言ったことも忘れている。

 不安なんだろう。僕という主を失い、ここは取り壊される。そうなったら、彼らは行き場を失ってしまう。
 それは分かっていたから、彼らのことは、知り合いの魔法使いに預けることにしてある。

 とは言え、それだけでは不安だ。僕が悪人として、大々的に処刑されてしまえば、僕の元にいた彼らも何をされるか分からない。
 僕には一応まだ公爵家としての地位がある。むしろ、拘束されて危険なのは、今こうして連れて行かれる僕より、彼らの方だ。共謀でも疑われたら、貴族どもに拷問されるかもしれない。

 そんなことはさせない。彼らは僕の力になってくれた。そんな彼らを見捨てるなんて、できるものか。

 王都の小うるさい貴族なんてすぐに黙らせて、僕は、彼らの元に戻るんだ。
 それまでは、できるだけ僕に近づかない方が彼らのためだ。

「僕に近づくな。お前たちのことは、すでに知り合いの魔法使いに預けてある。話しただろ……二度と、僕に関わるな」

 って、殿下が来る前にも何度も話したんだけどな……

 気持ちは分かるが、今は仕方がないんだ。必ず僕は戻ってくるから、待っていてほしい。

 それはさすがに今は言えないので、彼らに背を向ける。

 けれど、殿下は僕を見下ろして言った。

「誰?」
「……使用人です。屋敷の雑用をさせていました。全員すでに、ここを出ることが決まっています。あなたには関係ないでしょう? 殿下」
「…………」

 くそっ……面倒なことを言い出す前に、さっさと乗り込めばよかった!

 それなのに、王子は彼らに振り向いたまま。何をしているんだ?

 さっさと乗り込まないと、王子が彼らに興味を持ってしまいそうだ。

「殿下。何やってるんですか? ダラダラしてないで行きましょう! 王族はのろまだなあ!」

 思いっきり無礼な口をきいてやると、王子は少しだけ僕に振り向いた。けれどそれだけで、すぐに彼らに向き直る。

「彼のことは預かるけど、ちゃんと返すから。安心して」

 王子はそんなことを彼らに向かって言うと、僕の方に振り向いた。

「行こうか」
「………………」

 なんなんだ、こいつっ……!! 意味が分からない。

 僕を連れに来たんじゃないのか?

 一体、どういうつもりだ……すぐに僕を返す? 屋敷にか?

 それとも…………どこにだ?

 こいつ一体、僕をどこに連れて行くつもりなんだ!!
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