嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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15.僕も同じです

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「でもっ…………!」

 気にしなくていい、なんて、そんなはずない。

 だって僕は、殿下をひどく傷つけてしまったのに。

 それでも殿下は、首を横に振って言った。

「突然、屋敷は取り壊し、君を王都に連れて行く、なんて聞いたら、俺を信用できなくて当たり前だ」
「……殿下…………」
「だけど、俺は……というより、俺たちは、君からあそこを奪うつもりなんかないから」
「…………」

 まずい……安心しすぎた。

 話しながら、もう泣きそうだ。

 すると、それを見た殿下は、急に笑い出した。

 なんなんだ……

「あの…………何か?」
「…………ごめん………………だって、ひどく怖がっているのに強がるから……可愛くて…………」
「はあ!!??」

 カッとなって、殿下に振り向く。馬鹿にしてるのか!

 だけど殿下はますます笑い出してしまう。

 なんだこいつ!!

「ば、馬鹿にするなっっ!! 僕はっ……!!」
「ごめんごめん…………はははっ……ごめんね。馬鹿にする気なんて、全くない。ただ、その……可愛くて」
「だからっ……!! そ、それが馬鹿にしていると言ってるんだっっ!! 僕を見くびるなよ!」
「見くびってなんかいないよ。君が結界のためにしてくれたことを、俺は理解しているつもりだし、蔑ろにするつもりもない。むしろ、心底感謝している。ただ、俺が一年前に会った時の君のままだから、ホッとしただけ」
「……一年前………………?」
「俺が、あの屋敷で君にお土産渡した時。俺の言い訳聞いて、噴き出していただろ?」
「…………っっ!!」

 そんなこと、覚えていたのか?

 てっきり、忘れているとばかり思っていたのに!!

 驚いて慌てる僕の前で、ますます殿下は笑い出す。

「あの時の俺は、王城で誰も信じられなくなっていたから……尊敬していた兄上たちのことだって、欲望を叶える道具にする奴らばかりだったし、俺のことなんか、勝手に裏切り者だって喚いて、毎日嫌がらせされてたし……」
「殿下…………」
「だから、あの屋敷でダスフィレトに会えて、本当によかった」
「……僕?」
「そう。仲間と結界のために頑張るダスフィレトに会えて、君がこの地を守ろうとしてくれているのが分かって…………俺は嬉しかったんだ。あの時は、ろくに何も伝えることができなかったけど、感謝していた」
「殿下…………」

 そんなの、僕だって同じだ。

 ずっと蔑まれて、馬鹿にされて、王都の魔法使いを見くびって国のはずれに追いやられた馬鹿な魔法使いだって言われて、後ろ指を指されていた。

 平気なふりをしていたけど、それでも辛くないかと言われれば、そんなはずがない。ずっと、苦しかったんだ。

 だけど、あの屋敷で殿下に会えて、嬉しかった。それなのに、すぐに殿下は来なくなってしまった。殿下じゃなくて従者の方が来た時に、僕は、王子なんだから仕方がないって無理に自分を納得させていたけど、それで納得できたかと言えば、そんなことはなくて、正直、寂しかった。僕は会えている時間が楽しかったのに、殿下はそんなもの、特になんとも思ってなかったような気がして。

 再会できて嬉しかったのも、様子が違って戸惑ったのも、僕だって同じだった。

 今だって、殿下が微笑んで僕と話してくれるから、嬉しいのに、少しだけ胸が苦しい。

「懐かしいな。あの時のこと、俺、全部覚えてるよ? 君の言ったこと、全部」

 そう言って、彼は僕の頬に触れた。

 くすぐったい。

 震えて見つめたら、あの屋敷で初めて殿下と出会った時のように緊張してくる。

 殿下と出会っていた時のことなら、僕だって覚えている。

 鮮明に。

 殿下が言ったことだって。はにかむような顔だって。

 本当は、僕だって彼に会いたかったんだ。

 会えて嬉しかったのに、彼が、僕が大事にしているものを奪いにきて、僕を断罪しにきたんだって思ったら、辛かった。嘘つきって、そう思ってしまった。

 だけど、こうしてもう一回会えて、話せて、僕だって嬉しかったんだ。

 多分、伝わってなんかいないんだろうけど。

 ……でも……伝わらない方がいいか…………

 だって、自分でも戸惑っているくらいなんだ。なんで僕……こんな風に勝手に嬉しくなっているんだ。

「…………僕は……覚えてなんか、いません…………」
「ダスフィレト…………」
「でも…………再会できて、よかった……です」

 ぼそっと言う。聞こえたかどうかは分からないけど。
 彼も、僕の方を見つめていた。

「俺だって、そうだよ」

 そう言った彼が、突然、僕の首に手を伸ばしてきたように見えた。

 何をされるのかと、体をひいて逃げたら、殿下はゆっくり、僕に迫ってくる。

「俺だって、ずーーーーーーーーっと会いたかった…………」
「え…………?」
「やっと……迎えにくることができた……」
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