冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

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8.君の方が嫌ってるんじゃないの?

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 公爵家の側近で、今は魔法の研究所の所長。その魔法の腕は国で一番だと言われているブレロブル様。彼と殿下は、たまに一緒にいるところを見かける。殿下とは仲がいいのかな……

 それでも、殿下は彼に相手にしてもらえないからか、少し残念そうだった。

 かつて、強力な魔法で国を救い、公爵の地位を賜ったラーフィガテス公爵家。そんな名高い一族と長く懇意にしているのが、ロレヴァス家だ。貴族たちが二つの勢力に分かれて争った時も、彼らは公爵家にとって、力強い仲間だった。

 そして、そんな一族の一人で、その強力な魔法は誰をも魅了すると言われた魔法使いが、ブレロブル様。彼の魔法を目の当たりにすると、誰もがそれに惹きつけられて、言うことを聞くらしい。魔法の強化や、それらに使う魔法の道具や薬を生み出すことにも多大な貢献をして、魔法の研究所の所長にも、彼が任命されるだろうと以前から言われていた。
 昔は対立したらしいけど、今は王家と公爵家、ブレロブル様の一族の関係は良好なようだ。

 そっけない態度をとっているけど、多分ブレロブル様は、殿下のことはいつも心配しているんだと思う。だって、殿下が僕に振り向いたら、今度は彼の方が、殿下の背中をじっと見つめている。

 それに気づく様子のない殿下は、僕に近づいてきた。

「……ね? 分かるだろう? 頼むよ」
「殿下…………で、でもっ……できません…………僕には無理です……」
「無理なんかじゃないよ! 大体君、ヴァンフィルイトに嫌われてるって気にしてるみたいだけど、嫌ってるのは君の方だろ?」
「へっ……!?? ぼ、僕が……? ヴァンフィルイト様を……嫌う……??」

 な、何でそんな話になるんだ?

 嫌うどころか、ヴァンフィルイト様には、むしろ感謝している。僕を部隊に入れてくれて、僕を誘ってくれて。
 侯爵家の方が、僕に声をかけてくれたんだぞ。それが僕にはどんなに光栄で、嬉しかったか。

 それなのに、僕がヴァンフィルイト様のことを嫌う? ありえないだろ。今だって、尊敬しているのに。

「な、なんでっ…………そんな話になるんですか!! 僕が、こっ……侯爵様を嫌うなんて……そんなこと、ありえません!!」
「だって君、ヴァンフィルイトの誘いを断ったそうじゃないか」
「それは…………」
「それから会ってもいないんだろ?」
「そうですけど…………」

 確かに、部隊に入ることは断ったし、それから会ってない。
 だけど、部隊に入ることを断ったのは、迷惑をかけることが嫌なのと、他にもっとふさわしい、彼の力になれる人がいるはずだって思ったからだし、その後会っていないのは、そもそも部隊で一緒に魔物退治に行く以外で、ヴァンフィルイト様に会うことなんて、ほとんどなかったからだ。

 気まずくて会いたくないっていうのも、ちょっとあったけど…………それに、断ったくせにヴァンフィルイト様の顔を見たら、あの時断ったことを後悔しそうで怖かったからでもあるけど……

「き、嫌うなんて……そんなことありません!」
「でも、怖いだろ? あいつ」
「そんなこと……」
「君の気持ちは分かるよ! 確かに怖いし困るだろうけど、何が何でも君に彼の護衛をしてもらわないと、僕が困るの!!」
「な、なんで…………そんなに…………」
「言っただろ? 今回、いつもはヴァンフィルイトの部隊にいるブレロブルが僕の護衛になる……その交換条件なんだっっ!!!!」
「こ、交換……条件? ブレロブル様が殿下の護衛になるから、代わりに僕がヴァンフィルイト様の護衛をすることがですか?」
「そうだよ。それが、ブレロブルが僕の護衛になってくれる条件。ブレロブルに護衛してほしいってヴァンフィルイトに話したら、それを条件にされたの!」
「そんな…………」

 なんでヴァンフィルイト様がそんなことを……もう、訳がわからない。

 戸惑う僕に、殿下は腕を組んで続けた。

「何が何でも了解してもらうから。そのために、ヴァンフィルイトが来る前に話してるんだよ?」
「へっ……!??」
「君をここに呼び出したのは、ヴァンフィルイトだよ」
「はっっ!!??」

 なんだそれ……そんなの、今初めて聞いたぞ! ヴァンフィルイト様が……僕を!?? なんで!??

 ますます焦る僕の前で、殿下は胸を張る。

「ヴァンフィルイトが君を説得するって言ってたから、僕が先に話したんだよ。いい作戦だろ?」
「な、なんでそんなことをっ……」
「だって君、ヴァンフィルイトが言ってもまた断るだろ!!??」
「そ、それは……………………」

 断る……かも…………

 だってそんなの、行けるわけない。僕が、ヴァンフィルイト様の護衛だなんて、実力不足だし、部隊のみんなも困らせてしまう。

 言い淀む僕。

 すると殿下は、ますます僕に迫ってくる。

「ほらみろ!! だから、それより先に僕がこうやって、王家の権力を使って君に頼んでるの!!」
「け、権力……?」
「もうこうなったら王族の命令だよ!! これ以上逆らったら、君は死刑!!」
「そんな無茶な…………こ、困ります!!」
「困ってるのはこっちだよ! なんで行くって言わないの!?」
「ヴァンフィルイト様が僕に話すって言ってたんですよね!? それなのに、勝手にこんなふうに話をされては……」
「そんなこと、どっちでもいいの! 絶対に護衛してもらうから!」
「で、でも……と、とにかく、僕は適任じゃありません。国の安寧のために、最善と思われる策を取るべきです」
「そのためにも君がいいと思うから言ってるんだよ!」
「しかしっ……僕じゃない人を選ぶべきです!」
「嫌だよ! 絶対に引き受けてもらうから!」
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