8 / 85
8.君の方が嫌ってるんじゃないの?
しおりを挟む
公爵家の側近で、今は魔法の研究所の所長。その魔法の腕は国で一番だと言われているブレロブル様。彼と殿下は、たまに一緒にいるところを見かける。殿下とは仲がいいのかな……
それでも、殿下は彼に相手にしてもらえないからか、少し残念そうだった。
かつて、強力な魔法で国を救い、公爵の地位を賜ったラーフィガテス公爵家。そんな名高い一族と長く懇意にしているのが、ロレヴァス家だ。貴族たちが二つの勢力に分かれて争った時も、彼らは公爵家にとって、力強い仲間だった。
そして、そんな一族の一人で、その強力な魔法は誰をも魅了すると言われた魔法使いが、ブレロブル様。彼の魔法を目の当たりにすると、誰もがそれに惹きつけられて、言うことを聞くらしい。魔法の強化や、それらに使う魔法の道具や薬を生み出すことにも多大な貢献をして、魔法の研究所の所長にも、彼が任命されるだろうと以前から言われていた。
昔は対立したらしいけど、今は王家と公爵家、ブレロブル様の一族の関係は良好なようだ。
そっけない態度をとっているけど、多分ブレロブル様は、殿下のことはいつも心配しているんだと思う。だって、殿下が僕に振り向いたら、今度は彼の方が、殿下の背中をじっと見つめている。
それに気づく様子のない殿下は、僕に近づいてきた。
「……ね? 分かるだろう? 頼むよ」
「殿下…………で、でもっ……できません…………僕には無理です……」
「無理なんかじゃないよ! 大体君、ヴァンフィルイトに嫌われてるって気にしてるみたいだけど、嫌ってるのは君の方だろ?」
「へっ……!?? ぼ、僕が……? ヴァンフィルイト様を……嫌う……??」
な、何でそんな話になるんだ?
嫌うどころか、ヴァンフィルイト様には、むしろ感謝している。僕を部隊に入れてくれて、僕を誘ってくれて。
侯爵家の方が、僕に声をかけてくれたんだぞ。それが僕にはどんなに光栄で、嬉しかったか。
それなのに、僕がヴァンフィルイト様のことを嫌う? ありえないだろ。今だって、尊敬しているのに。
「な、なんでっ…………そんな話になるんですか!! 僕が、こっ……侯爵様を嫌うなんて……そんなこと、ありえません!!」
「だって君、ヴァンフィルイトの誘いを断ったそうじゃないか」
「それは…………」
「それから会ってもいないんだろ?」
「そうですけど…………」
確かに、部隊に入ることは断ったし、それから会ってない。
だけど、部隊に入ることを断ったのは、迷惑をかけることが嫌なのと、他にもっとふさわしい、彼の力になれる人がいるはずだって思ったからだし、その後会っていないのは、そもそも部隊で一緒に魔物退治に行く以外で、ヴァンフィルイト様に会うことなんて、ほとんどなかったからだ。
気まずくて会いたくないっていうのも、ちょっとあったけど…………それに、断ったくせにヴァンフィルイト様の顔を見たら、あの時断ったことを後悔しそうで怖かったからでもあるけど……
「き、嫌うなんて……そんなことありません!」
「でも、怖いだろ? あいつ」
「そんなこと……」
「君の気持ちは分かるよ! 確かに怖いし困るだろうけど、何が何でも君に彼の護衛をしてもらわないと、僕が困るの!!」
「な、なんで…………そんなに…………」
「言っただろ? 今回、いつもはヴァンフィルイトの部隊にいるブレロブルが僕の護衛になる……その交換条件なんだっっ!!!!」
「こ、交換……条件? ブレロブル様が殿下の護衛になるから、代わりに僕がヴァンフィルイト様の護衛をすることがですか?」
「そうだよ。それが、ブレロブルが僕の護衛になってくれる条件。ブレロブルに護衛してほしいってヴァンフィルイトに話したら、それを条件にされたの!」
「そんな…………」
なんでヴァンフィルイト様がそんなことを……もう、訳がわからない。
戸惑う僕に、殿下は腕を組んで続けた。
「何が何でも了解してもらうから。そのために、ヴァンフィルイトが来る前に話してるんだよ?」
「へっ……!??」
「君をここに呼び出したのは、ヴァンフィルイトだよ」
「はっっ!!??」
なんだそれ……そんなの、今初めて聞いたぞ! ヴァンフィルイト様が……僕を!?? なんで!??
ますます焦る僕の前で、殿下は胸を張る。
「ヴァンフィルイトが君を説得するって言ってたから、僕が先に話したんだよ。いい作戦だろ?」
「な、なんでそんなことをっ……」
「だって君、ヴァンフィルイトが言ってもまた断るだろ!!??」
「そ、それは……………………」
断る……かも…………
だってそんなの、行けるわけない。僕が、ヴァンフィルイト様の護衛だなんて、実力不足だし、部隊のみんなも困らせてしまう。
言い淀む僕。
すると殿下は、ますます僕に迫ってくる。
「ほらみろ!! だから、それより先に僕がこうやって、王家の権力を使って君に頼んでるの!!」
「け、権力……?」
「もうこうなったら王族の命令だよ!! これ以上逆らったら、君は死刑!!」
「そんな無茶な…………こ、困ります!!」
「困ってるのはこっちだよ! なんで行くって言わないの!?」
「ヴァンフィルイト様が僕に話すって言ってたんですよね!? それなのに、勝手にこんなふうに話をされては……」
「そんなこと、どっちでもいいの! 絶対に護衛してもらうから!」
「で、でも……と、とにかく、僕は適任じゃありません。国の安寧のために、最善と思われる策を取るべきです」
「そのためにも君がいいと思うから言ってるんだよ!」
「しかしっ……僕じゃない人を選ぶべきです!」
「嫌だよ! 絶対に引き受けてもらうから!」
それでも、殿下は彼に相手にしてもらえないからか、少し残念そうだった。
かつて、強力な魔法で国を救い、公爵の地位を賜ったラーフィガテス公爵家。そんな名高い一族と長く懇意にしているのが、ロレヴァス家だ。貴族たちが二つの勢力に分かれて争った時も、彼らは公爵家にとって、力強い仲間だった。
そして、そんな一族の一人で、その強力な魔法は誰をも魅了すると言われた魔法使いが、ブレロブル様。彼の魔法を目の当たりにすると、誰もがそれに惹きつけられて、言うことを聞くらしい。魔法の強化や、それらに使う魔法の道具や薬を生み出すことにも多大な貢献をして、魔法の研究所の所長にも、彼が任命されるだろうと以前から言われていた。
昔は対立したらしいけど、今は王家と公爵家、ブレロブル様の一族の関係は良好なようだ。
そっけない態度をとっているけど、多分ブレロブル様は、殿下のことはいつも心配しているんだと思う。だって、殿下が僕に振り向いたら、今度は彼の方が、殿下の背中をじっと見つめている。
それに気づく様子のない殿下は、僕に近づいてきた。
「……ね? 分かるだろう? 頼むよ」
「殿下…………で、でもっ……できません…………僕には無理です……」
「無理なんかじゃないよ! 大体君、ヴァンフィルイトに嫌われてるって気にしてるみたいだけど、嫌ってるのは君の方だろ?」
「へっ……!?? ぼ、僕が……? ヴァンフィルイト様を……嫌う……??」
な、何でそんな話になるんだ?
嫌うどころか、ヴァンフィルイト様には、むしろ感謝している。僕を部隊に入れてくれて、僕を誘ってくれて。
侯爵家の方が、僕に声をかけてくれたんだぞ。それが僕にはどんなに光栄で、嬉しかったか。
それなのに、僕がヴァンフィルイト様のことを嫌う? ありえないだろ。今だって、尊敬しているのに。
「な、なんでっ…………そんな話になるんですか!! 僕が、こっ……侯爵様を嫌うなんて……そんなこと、ありえません!!」
「だって君、ヴァンフィルイトの誘いを断ったそうじゃないか」
「それは…………」
「それから会ってもいないんだろ?」
「そうですけど…………」
確かに、部隊に入ることは断ったし、それから会ってない。
だけど、部隊に入ることを断ったのは、迷惑をかけることが嫌なのと、他にもっとふさわしい、彼の力になれる人がいるはずだって思ったからだし、その後会っていないのは、そもそも部隊で一緒に魔物退治に行く以外で、ヴァンフィルイト様に会うことなんて、ほとんどなかったからだ。
気まずくて会いたくないっていうのも、ちょっとあったけど…………それに、断ったくせにヴァンフィルイト様の顔を見たら、あの時断ったことを後悔しそうで怖かったからでもあるけど……
「き、嫌うなんて……そんなことありません!」
「でも、怖いだろ? あいつ」
「そんなこと……」
「君の気持ちは分かるよ! 確かに怖いし困るだろうけど、何が何でも君に彼の護衛をしてもらわないと、僕が困るの!!」
「な、なんで…………そんなに…………」
「言っただろ? 今回、いつもはヴァンフィルイトの部隊にいるブレロブルが僕の護衛になる……その交換条件なんだっっ!!!!」
「こ、交換……条件? ブレロブル様が殿下の護衛になるから、代わりに僕がヴァンフィルイト様の護衛をすることがですか?」
「そうだよ。それが、ブレロブルが僕の護衛になってくれる条件。ブレロブルに護衛してほしいってヴァンフィルイトに話したら、それを条件にされたの!」
「そんな…………」
なんでヴァンフィルイト様がそんなことを……もう、訳がわからない。
戸惑う僕に、殿下は腕を組んで続けた。
「何が何でも了解してもらうから。そのために、ヴァンフィルイトが来る前に話してるんだよ?」
「へっ……!??」
「君をここに呼び出したのは、ヴァンフィルイトだよ」
「はっっ!!??」
なんだそれ……そんなの、今初めて聞いたぞ! ヴァンフィルイト様が……僕を!?? なんで!??
ますます焦る僕の前で、殿下は胸を張る。
「ヴァンフィルイトが君を説得するって言ってたから、僕が先に話したんだよ。いい作戦だろ?」
「な、なんでそんなことをっ……」
「だって君、ヴァンフィルイトが言ってもまた断るだろ!!??」
「そ、それは……………………」
断る……かも…………
だってそんなの、行けるわけない。僕が、ヴァンフィルイト様の護衛だなんて、実力不足だし、部隊のみんなも困らせてしまう。
言い淀む僕。
すると殿下は、ますます僕に迫ってくる。
「ほらみろ!! だから、それより先に僕がこうやって、王家の権力を使って君に頼んでるの!!」
「け、権力……?」
「もうこうなったら王族の命令だよ!! これ以上逆らったら、君は死刑!!」
「そんな無茶な…………こ、困ります!!」
「困ってるのはこっちだよ! なんで行くって言わないの!?」
「ヴァンフィルイト様が僕に話すって言ってたんですよね!? それなのに、勝手にこんなふうに話をされては……」
「そんなこと、どっちでもいいの! 絶対に護衛してもらうから!」
「で、でも……と、とにかく、僕は適任じゃありません。国の安寧のために、最善と思われる策を取るべきです」
「そのためにも君がいいと思うから言ってるんだよ!」
「しかしっ……僕じゃない人を選ぶべきです!」
「嫌だよ! 絶対に引き受けてもらうから!」
164
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
完結·囚われた騎士隊長と訳あり部下の執愛と復讐の物語
禅
BL
「月が綺麗ですね。あぁ、失礼。オレが目を潰したから見えませんね」
から始まる、国に利用され続ける隊長を自分のものだけにしようとした男の欲望と復讐の話
という不穏なあらすじですが最後はハッピーエンドの、隊長×部下の年下敬語攻めBL
※完結まで予約投稿済・☆は濡れ場描写あり
※Nolaノベル・ムーンライトノベルにも投稿中
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる