冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

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17.なぜそんな奴を

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「……………………どうなんだ? 今はもう俺の部隊だろう?」
「えっと……そうですけど……」
「だったら、そんな男を守る必要はない」
「で、でも……あ…………部隊でなくとも…………ま、魔物が出たら、伯爵様をお守りするのは……当然のことで……ございます……だから……お守りしただけです……」

 下手な言い訳を繰り返すと、ヴァンフィルイト隊長は、そうか、と言ったけど、納得していないことは明らか。

 部隊じゃなくても伯爵様だし、魔物が出たら守らなきゃいけないような気がするんだけど……

 戸惑いながら、顔を上げる。

 目を見ただけで、こんなに苦しくなる人なんていない。
 許してもらえるなら、このままじっと、見つめていたいけど……

 ……ヴァンフィルイト様にとって大事な時に揉め事を起こしておいて、僕は何を言っているんだ……

「守るのが当然だと? 今日は、俺の護衛なのにか?」
「…………え……と……ご……ごめん、なさい…………や、やっぱり、僕…………」

 話しているだけなのに、胸が苦しくなってきた。

 なんで、僕はこうなんだ……

 じっと僕を見つめる彼が、僕を引き寄せる。

 振り払うこともできるはずなのに、そのままされるがままに近づく情けない僕。

「…………ぼ、僕…………ほ、本当に……申し訳ございません…………」
「……俺の質問に答えろ。そんなものを守る必要はない。俺の護衛なんだからな」
「……で、でも…………」

 口を開いた僕に、彼はもう一度「俺の護衛だろう?」と言って迫ってくる。

 そうだけど……い、一体、なんなんだ??

 やけに怖い顔で迫られて、僕は恐る恐る、はいって答えた。

「た、確かに……今日は、ヴァンフィルイト様の護衛です…………」
「それならいい」
「へ!? で、でもっ……あのっ……! み、見てましたよね? 僕、伯爵様をっ……拘束して……」
「ああ、それか。よくやった」
「はっ!?」

 驚く僕に、彼は耳打ちしてくる。

「よくやった。とどめを刺さなかったことと、俺の前で、別の男を守るなどと言ったことは気に入らないが……」
「な、な、なんのこと…………」
「…………その男に絡まれたんじゃないのか? だったら下手な言い訳などせず、そう言え」
「で、でもっ…………」

 体が震えた。彼の手が、僕の頬に触れたんだ。

「あっ……あのっ…………!」
「俺はもう二度と…………お前を離すつもりはない」
「…………え…………」

 ……な、何を言っているんだ……??

 これから彼は、侯爵になるんだ。それなのに……なんで、そんなことを言うんだ?

 呆然としている僕を、彼はじっと見下ろしている。

 お……怒ってるんだよな……? それとも、他に何か言いたいことがあるのか?

 訳がわからなくて、近づいてくる彼から遠ざかろうとすると、すぐに背中に手を回された。

「あ…………あ、あのっ……」

 ……なんでこんなに僕のそばに来るんだ??

 彼の長い髪が、僕の体にかかって、手は、僕の頬に触れてる。

「………………な、何をっ…………」
「……怪我がないか、確かめるだけだ」

 囁かれて、顔を上げた。

 その目に見つめられているだけで苦しいのに、そんな風にされたら、声が出ない。

 しっかりしろよ。僕……

 僕は、彼のそばにはいられない。

 それなのに……

「……あの男に、何もされなかったか?」
「え……?」
「…………絡まれたのだろう? それなのに、あんな男を守るなどと言うな。俺の護衛なのに」

 …………護衛であったら余計に、伯爵と揉め事を起こしちゃダメだと思う……

 それに僕は伯爵を守りたかった訳じゃない。伯爵を魔法で拘束したことを咎められるのが怖かっただけだ。

 それなのに、彼は僕を優しく抱き寄せる。

「んっ…………」

 腕の力が強くて、遠ざかることもできない。こんな力、感じたことない。

 僕はずっと、必死に顔を背けていた。

 目なんか合わせたら……僕はきっと…………もう、一切我慢できなくなる。

「……あっ…………あのっ……た、隊長…………ど、どうしちゃったんですか? 僕……怪我なんか、してません……」

 僕は、相手の体を押し返して、離れようとした。だって、こんなことをしている場合じゃない。

 だけど、逃げようとすると、彼は僕を抱き寄せる腕に力を入れてしまう。

「……どこへ行く?」
「え…………?」
「俺から離れようと言うのか?」
「あ…………」

 そんなつもりない。僕だって、彼のそばにいられて嬉しい。だけど、僕はこんなふうに、彼のそばにいるわけにはいかない。だから、その体を押し返そうとするのに、彼は離れてくれない。

 それどころか、暴れる僕を押さえつけて、囁いた。

「無駄だ……逃すと思っているのか?」
「……そんなんじゃ…………」
「……再会したら…………この首に首輪をつけてやるつもりだった」
「え…………?」
「それから、鎖でつなぐ。二度と、断れないように…………」
「…………」

 え……え? え!?? な、なんて??

「あ、あのっ…………」

 ちょっと待ってくれ…………

 あの時断ったこと、そんなに怒ってたの!!??

 だってあの時は、分かったって、そう言ってくれたじゃないか!
 だから、分かってくれて……納得してくれたんだと思っていた。ヴァンフィルイト様だって、本気じゃなかったはずなのに…………本当は、そんなに怒ってたのか!?
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