冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

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68.そんなわけない

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 伯爵の騒動があってから、隊長とは、これまで城で何度も顔を合わせている。その度に話すのは、これからのこの城の警備のこととか、部隊のこととか、これからの遠征の話とか……つまりは、隊長と部隊の一人として、または、侯爵様と護衛としての話ばかり。ヴァンフィルイト様と僕の話じゃない。

 だけど、僕……た、隊長にキス……されてるんだよな。いろんなところに……唇にもっ……それに、こ、婚約の話までしていた。

 隊長のそばにいたいし、隊長のことは好きだ。だけど、婚約!?? 僕が!?? 隊長、侯爵様なのに!!??

 僕なんか絶対にダメだ……絶対にまた失敗して侯爵様に迷惑かける。
 ここに来るまでも、伯爵に飛びかかったり、隊長のことばっかり考えてたり、グレウォゴレルを困らせたり、会議に飛び込んだり、色々やってしまった。

 さすがはなんでも失敗してきた僕……この調子でまた隊長に迷惑を………………なんでこんなことばっかり考えちゃうんだっ……!

 そんなことばっかり考えて、ちゃんと隊長と向き合うことを避け続けた結果、隊長とはそのことを話さないまま、ここまで来た。

 僕が何も言わないからか、隊長も、そのことに関して何も言わなかった。それをいいことに、わざとらしく二人きりになることを避けて来てしまった。

 自分で自分に呆れてしまいそう。

 こんな奴が、今から侯爵様の城の警備に行く? ふざけんな。

 どうしよう……行っていいのか? いや、今更何を悩んでるんだ! 隊長が誘ってくれてるんだ。僕だって行くって言っただろ!! それを今さら……やっぱり行きません、なんて、言えるわけがない。

 僕だって、あの時のキスと婚約の話、気になっていたんだし、今さら行かないなんてありえない。あのことを聞きたいし、ヴァンフィルイト様のそばにいられることは嬉しいんだしっ……!! 行くぞ!!

 ……会議が終わるまでに、どんな風に話すとか、どうやって聞くとか、全部考えておこう…………

 そう思って、隊長がいない間に対策を立てるはずが、結局何も思いつかなかった。

 というか、隊長のことばかり考えてしまって、そしたら今度はキスと婚約の話をされた時のことを思い出して、あたふたしていたら、いつのまにか、時間が経っていた。

 そして、会議が終わる時間が近くなっていた。

 …………僕は本当に何をしているんだ…………

 頭を抱えたくなってきた。

 緊張しながら、少し早めに、隊長が来るはずの城門の方に向かう。

 僕、変なところないよな? ちゃんと身だしなみは整えて来たつもりだ。髪だって綺麗に整えて来たし、服だって、もちろん、装備も……って、何してるんだ、僕! これからするのはデートではなく、城の周りを、魔物がいないか見て回るだけ。きっと、僕たちだけじゃない。部隊の人もいるはずだ。二人きりってわけじゃないだろ。決して、デートに誘われたわけじゃない! それなのに、こんな風に舞い上がったりして、きっと僕の方がおかしいんだ。

 隊長は今、城の周りの安全を確保することで忙しいんだから、僕はこんな風に余計なことばっかり考えていちゃダメなんだ。

 隊長が僕なんかに声をかけてくれたんだから、城を守ることだけ考えればいいのに……

 こんなことしてないで、隊長が一緒に行こうって言ってくれたんだから、ちゃんと準備して、隊長の役に立ちたいのに。

 自分で色々考えてしまって、だんだん歩くスピードも遅くなる。

 もう考え事で頭がいっぱいになりながら、門の方に向かう。すると、門の前に一人の男が立っていた。

 え…………え!?? う、うそだろ!? 隊長、もう来ている!?? だってまだ会議が終わるには早すぎる時間なのにっ……!!
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