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70.そう言った
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なんで僕、肩を抱かれて抱き寄せられてるんだろう。
だって、隊長は見回りに誘ってくれたんだ。城の警備をするために、僕らは二人で歩いているはずなんだ。
それなのに……これって、まるでデートじゃないか……二人きりで歩いて、こんなにそばにいて。
あ、あれ……??
今さらすぎるけど、なんか変じゃないか?
そもそも、魔物がいるかもしれないから、こうして城の周りを見て回っているのに、侯爵様と一緒にいるのが、僕だけなんて、少し油断しすぎじゃないか?
城の周辺だけとは言え、絶対に危険がないわけじゃない。それなのに、護衛の方や、部隊の人たちがまるでいないなんて。もちろん僕は隊長を絶対に守る気でいるけど、二人だけで、本当にいいのかな……
と、とにかく、まずはこんなふうに肩を抱かれてないで、隊長の安全を確保しなきゃ。
「あの……隊長……」
声をかけながら離れようとするけど、すでに僕の肩は彼の手に捕まっているから、離れようがない。
それどころか、離れようとしたことを察知されてしまい、腕に力を入れられた。それだけで、僕は動けなくなる。強くされているわけじゃないのに、隊長からこれ以上離れられない。
……どうしよう……
なんだか「離れるな」って言われているみたいだ。
い、いいのかな……
魔法を使えば、離れられないことはない。だけど、そうまでして離れたくない。だってこうしているの、僕だって嬉しいんだから。心臓がドキドキいって、苦しいのは困るけど……
「……どうした? 俺にこうされるのは、嫌か?」
「え……? そんな……嫌じゃありません……」
そんなわけない。ひどく緊張して困るだけで……
ドキドキするけど、ずっとこうしていたくなる。隊長に触れられるの、僕は大好きみたいだ。
隊長も、安心したように言う。
「そうか……嫌でないのなら、よかった」
「…………」
……なんで隊長は、いちいち僕にそれを聞くんだろう。「嫌か?」って。
僕、そんな風に嫌がっているように見えるのか??
僕がこうして何度も離れて行こうとするからかな……嬉しいのに、僕がこんなに面倒だから。
だから…………そんなことを聞くのか? 僕、隊長に酷いことをしているんじゃないか?
「あ、あの…………隊長…………」
「俺が、デフィトリュウィクを誘った時のことを覚えているか?」
「へっ……!!??」
「俺が、デフィトリュウィクを部隊に誘った時だ」
「…………僕を……部隊に……? あっ……も、もちろんっ……! もちろんです!! 隊長が、僕を誘ってくれて…………僕、嬉しかったんです! だけど…………僕が、隊長の部隊にいても…………迷惑をかけてしまうので……すみません…………」
……だから、断ったんだ。
それに……何より…………
「俺が、あんなことを言ったからだろう?」
「へ!?」
驚いて、顔を上げる。すると、すぐに隊長と目があった。
彼は、普段あまりしないような、やけに穏やかな顔をしていた。優しくて、温かいような、そんなふうに微笑んでいるのに、僕はなんだか背中の辺りが震えて、足が止まりそうになる。すると彼は、僕の肩を抱いた手に微かに力を入れて、僕を連れていった。
「……俺が、あんな酷いことを言ったからだ。デフィトリュウィクが、俺の部隊のために多くのことをしてくれていたことにも気づかず、無神経に、お前でいいから部隊に来いなどと、無礼なことを言ってしまった……本当に、申し訳なかったと思っている……」
「そ、そんなっ…………僕はっ……そんなのっ……い、いいんです…………」
「……そうか…………だが俺は、図々しい誘い方をしてしまった。威圧的で、不遜だった。だからこそ今度は…………決めていたんだ」
「………………何を……ですか?」
「二度と、断られないようにしようと」
「………………え?」
彼が、僕に微笑む。僕の肩に触れる手が、少し熱くなった気がした。
魔力を感じる……魔物を避ける魔法でも使っているのか? それに、二度と断らせないって……えっと…………ちょっと、怖いんだけど……えーーっと……何かの冗談? かな??
「え……あの……隊長?」
「……すまない。絶対に断られないような誘い方をするという意味だ」
「え……っと……」
大して変わっていないし、やっぱり怖いんだが。
彼に声をかけようとしたら、頭がふらっとした。その上少し、体が熱くなったような気がした。
急にフラフラし始めた僕を、隊長はすぐに支えてくれる。
どうしたんだ…………僕…………
僕を誘ってくれた隊長が、僕を支えてくれている。
相手は隊長で、僕がこんなことをしちゃダメな相手なのに……僕、何してるんだろう……
僕を包むように抱き止めた彼の体が気持ちよくて、つい彼に身を委ねてしまう僕を、優しい隊長は、心配そうに見下ろしていた。
「触れられるのは、嫌ではないのだろう?」
「…………えっ……と……はい…………」
「よかった……大人しくなったな」
「え…………?」
「逃さないと言っただろう?」
「えっ……と………………」
「媚薬の魔法をかけた」
「はいっっっっ……!!??」
え……え!!?? い、今、なんて!!?? 媚薬の魔法!!?? なんで!!??
驚く僕を、隊長は、やけにニコニコしながら見下ろしている。
「…………デフィトリュウィク……気分はどうだ?」
「あ……えっ……と…………えーーっと……」
どうだ? と言われても……びっくりしすぎて、呆然とするしかないです、としか、答えられないんだが。
だって、隊長は見回りに誘ってくれたんだ。城の警備をするために、僕らは二人で歩いているはずなんだ。
それなのに……これって、まるでデートじゃないか……二人きりで歩いて、こんなにそばにいて。
あ、あれ……??
今さらすぎるけど、なんか変じゃないか?
そもそも、魔物がいるかもしれないから、こうして城の周りを見て回っているのに、侯爵様と一緒にいるのが、僕だけなんて、少し油断しすぎじゃないか?
城の周辺だけとは言え、絶対に危険がないわけじゃない。それなのに、護衛の方や、部隊の人たちがまるでいないなんて。もちろん僕は隊長を絶対に守る気でいるけど、二人だけで、本当にいいのかな……
と、とにかく、まずはこんなふうに肩を抱かれてないで、隊長の安全を確保しなきゃ。
「あの……隊長……」
声をかけながら離れようとするけど、すでに僕の肩は彼の手に捕まっているから、離れようがない。
それどころか、離れようとしたことを察知されてしまい、腕に力を入れられた。それだけで、僕は動けなくなる。強くされているわけじゃないのに、隊長からこれ以上離れられない。
……どうしよう……
なんだか「離れるな」って言われているみたいだ。
い、いいのかな……
魔法を使えば、離れられないことはない。だけど、そうまでして離れたくない。だってこうしているの、僕だって嬉しいんだから。心臓がドキドキいって、苦しいのは困るけど……
「……どうした? 俺にこうされるのは、嫌か?」
「え……? そんな……嫌じゃありません……」
そんなわけない。ひどく緊張して困るだけで……
ドキドキするけど、ずっとこうしていたくなる。隊長に触れられるの、僕は大好きみたいだ。
隊長も、安心したように言う。
「そうか……嫌でないのなら、よかった」
「…………」
……なんで隊長は、いちいち僕にそれを聞くんだろう。「嫌か?」って。
僕、そんな風に嫌がっているように見えるのか??
僕がこうして何度も離れて行こうとするからかな……嬉しいのに、僕がこんなに面倒だから。
だから…………そんなことを聞くのか? 僕、隊長に酷いことをしているんじゃないか?
「あ、あの…………隊長…………」
「俺が、デフィトリュウィクを誘った時のことを覚えているか?」
「へっ……!!??」
「俺が、デフィトリュウィクを部隊に誘った時だ」
「…………僕を……部隊に……? あっ……も、もちろんっ……! もちろんです!! 隊長が、僕を誘ってくれて…………僕、嬉しかったんです! だけど…………僕が、隊長の部隊にいても…………迷惑をかけてしまうので……すみません…………」
……だから、断ったんだ。
それに……何より…………
「俺が、あんなことを言ったからだろう?」
「へ!?」
驚いて、顔を上げる。すると、すぐに隊長と目があった。
彼は、普段あまりしないような、やけに穏やかな顔をしていた。優しくて、温かいような、そんなふうに微笑んでいるのに、僕はなんだか背中の辺りが震えて、足が止まりそうになる。すると彼は、僕の肩を抱いた手に微かに力を入れて、僕を連れていった。
「……俺が、あんな酷いことを言ったからだ。デフィトリュウィクが、俺の部隊のために多くのことをしてくれていたことにも気づかず、無神経に、お前でいいから部隊に来いなどと、無礼なことを言ってしまった……本当に、申し訳なかったと思っている……」
「そ、そんなっ…………僕はっ……そんなのっ……い、いいんです…………」
「……そうか…………だが俺は、図々しい誘い方をしてしまった。威圧的で、不遜だった。だからこそ今度は…………決めていたんだ」
「………………何を……ですか?」
「二度と、断られないようにしようと」
「………………え?」
彼が、僕に微笑む。僕の肩に触れる手が、少し熱くなった気がした。
魔力を感じる……魔物を避ける魔法でも使っているのか? それに、二度と断らせないって……えっと…………ちょっと、怖いんだけど……えーーっと……何かの冗談? かな??
「え……あの……隊長?」
「……すまない。絶対に断られないような誘い方をするという意味だ」
「え……っと……」
大して変わっていないし、やっぱり怖いんだが。
彼に声をかけようとしたら、頭がふらっとした。その上少し、体が熱くなったような気がした。
急にフラフラし始めた僕を、隊長はすぐに支えてくれる。
どうしたんだ…………僕…………
僕を誘ってくれた隊長が、僕を支えてくれている。
相手は隊長で、僕がこんなことをしちゃダメな相手なのに……僕、何してるんだろう……
僕を包むように抱き止めた彼の体が気持ちよくて、つい彼に身を委ねてしまう僕を、優しい隊長は、心配そうに見下ろしていた。
「触れられるのは、嫌ではないのだろう?」
「…………えっ……と……はい…………」
「よかった……大人しくなったな」
「え…………?」
「逃さないと言っただろう?」
「えっ……と………………」
「媚薬の魔法をかけた」
「はいっっっっ……!!??」
え……え!!?? い、今、なんて!!?? 媚薬の魔法!!?? なんで!!??
驚く僕を、隊長は、やけにニコニコしながら見下ろしている。
「…………デフィトリュウィク……気分はどうだ?」
「あ……えっ……と…………えーーっと……」
どうだ? と言われても……びっくりしすぎて、呆然とするしかないです、としか、答えられないんだが。
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