冷遇された僕、思いが募るばかりなので遠ざかったら嫉妬心を見せつけた隊長が襲いかかってくる。僕じゃなくても良い、邪魔するなって言ってたのに……

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
70 / 85

70.そう言った

しおりを挟む
 なんで僕、肩を抱かれて抱き寄せられてるんだろう。

 だって、隊長は見回りに誘ってくれたんだ。城の警備をするために、僕らは二人で歩いているはずなんだ。

 それなのに……これって、まるでデートじゃないか……二人きりで歩いて、こんなにそばにいて。

 あ、あれ……??

 今さらすぎるけど、なんか変じゃないか?

 そもそも、魔物がいるかもしれないから、こうして城の周りを見て回っているのに、侯爵様と一緒にいるのが、僕だけなんて、少し油断しすぎじゃないか?
 城の周辺だけとは言え、絶対に危険がないわけじゃない。それなのに、護衛の方や、部隊の人たちがまるでいないなんて。もちろん僕は隊長を絶対に守る気でいるけど、二人だけで、本当にいいのかな……

 と、とにかく、まずはこんなふうに肩を抱かれてないで、隊長の安全を確保しなきゃ。

「あの……隊長……」

 声をかけながら離れようとするけど、すでに僕の肩は彼の手に捕まっているから、離れようがない。
 それどころか、離れようとしたことを察知されてしまい、腕に力を入れられた。それだけで、僕は動けなくなる。強くされているわけじゃないのに、隊長からこれ以上離れられない。

 ……どうしよう……

 なんだか「離れるな」って言われているみたいだ。

 い、いいのかな……

 魔法を使えば、離れられないことはない。だけど、そうまでして離れたくない。だってこうしているの、僕だって嬉しいんだから。心臓がドキドキいって、苦しいのは困るけど……

「……どうした? 俺にこうされるのは、嫌か?」
「え……? そんな……嫌じゃありません……」

 そんなわけない。ひどく緊張して困るだけで……
 ドキドキするけど、ずっとこうしていたくなる。隊長に触れられるの、僕は大好きみたいだ。

 隊長も、安心したように言う。

「そうか……嫌でないのなら、よかった」
「…………」

 ……なんで隊長は、いちいち僕にそれを聞くんだろう。「嫌か?」って。

 僕、そんな風に嫌がっているように見えるのか??

 僕がこうして何度も離れて行こうとするからかな……嬉しいのに、僕がこんなに面倒だから。

 だから…………そんなことを聞くのか? 僕、隊長に酷いことをしているんじゃないか?

「あ、あの…………隊長…………」
「俺が、デフィトリュウィクを誘った時のことを覚えているか?」
「へっ……!!??」
「俺が、デフィトリュウィクを部隊に誘った時だ」
「…………僕を……部隊に……? あっ……も、もちろんっ……! もちろんです!! 隊長が、僕を誘ってくれて…………僕、嬉しかったんです! だけど…………僕が、隊長の部隊にいても…………迷惑をかけてしまうので……すみません…………」

 ……だから、断ったんだ。

 それに……何より…………

「俺が、あんなことを言ったからだろう?」
「へ!?」

 驚いて、顔を上げる。すると、すぐに隊長と目があった。
 彼は、普段あまりしないような、やけに穏やかな顔をしていた。優しくて、温かいような、そんなふうに微笑んでいるのに、僕はなんだか背中の辺りが震えて、足が止まりそうになる。すると彼は、僕の肩を抱いた手に微かに力を入れて、僕を連れていった。

「……俺が、あんな酷いことを言ったからだ。デフィトリュウィクが、俺の部隊のために多くのことをしてくれていたことにも気づかず、無神経に、お前でいいから部隊に来いなどと、無礼なことを言ってしまった……本当に、申し訳なかったと思っている……」
「そ、そんなっ…………僕はっ……そんなのっ……い、いいんです…………」
「……そうか…………だが俺は、図々しい誘い方をしてしまった。威圧的で、不遜だった。だからこそ今度は…………決めていたんだ」
「………………何を……ですか?」
「二度と、断られないようにしようと」
「………………え?」

 彼が、僕に微笑む。僕の肩に触れる手が、少し熱くなった気がした。

 魔力を感じる……魔物を避ける魔法でも使っているのか? それに、二度と断らせないって……えっと…………ちょっと、怖いんだけど……えーーっと……何かの冗談? かな??

「え……あの……隊長?」
「……すまない。絶対に断られないような誘い方をするという意味だ」
「え……っと……」

 大して変わっていないし、やっぱり怖いんだが。

 彼に声をかけようとしたら、頭がふらっとした。その上少し、体が熱くなったような気がした。

 急にフラフラし始めた僕を、隊長はすぐに支えてくれる。

 どうしたんだ…………僕…………

 僕を誘ってくれた隊長が、僕を支えてくれている。

 相手は隊長で、僕がこんなことをしちゃダメな相手なのに……僕、何してるんだろう……

 僕を包むように抱き止めた彼の体が気持ちよくて、つい彼に身を委ねてしまう僕を、優しい隊長は、心配そうに見下ろしていた。

「触れられるのは、嫌ではないのだろう?」
「…………えっ……と……はい…………」
「よかった……大人しくなったな」
「え…………?」
「逃さないと言っただろう?」
「えっ……と………………」
「媚薬の魔法をかけた」
「はいっっっっ……!!??」

 え……え!!?? い、今、なんて!!?? 媚薬の魔法!!?? なんで!!??

 驚く僕を、隊長は、やけにニコニコしながら見下ろしている。

「…………デフィトリュウィク……気分はどうだ?」
「あ……えっ……と…………えーーっと……」

 どうだ? と言われても……びっくりしすぎて、呆然とするしかないです、としか、答えられないんだが。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

捨てられた花屋のオメガは、雨の日に現れたスパダリ社長に溺愛される~抑制剤をやめたら、運命の番に捕まりました~

水凪しおん
BL
花屋『フルール・リリエン』で働くオメガの藍沢湊は、かつて家柄を理由に番(つがい)に捨てられたトラウマから、アルファを頑なに拒絶して生きてきた。 強力な抑制剤でフェロモンを隠し、ひっそりと暮らす湊。しかしある雨の日、店に現れたIT企業社長のアルファ・橘蓮に見初められてしまう。 「この花、あなたに似ている」 毎日店に通い詰め、不器用ながらも真っ直ぐな愛を注ぐ蓮。その深い森のような香りに、湊の閉ざされた心と、抑え込んでいた本能が揺さぶられ始めて――? 傷ついたオメガ×一途で完璧なスパダリ社長。 雨上がりの紫陽花のように涙に濡れた恋が、あたたかな陽だまりに変わるまでの、救済と溺愛のオメガバース。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【完結】みにくい勇者の子

バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……?     光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。  攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。

処理中です...