7 / 46
7.面倒くさいなぁ……
しおりを挟む任せてって、どうするつもりなんだろう。僕は、会長には迷惑かけたくないのに。
心配になりながらも、演習場に着いたら、遅れてきたことで、先生に睨まれてしまった。
ついでに、フォーラウセとその周りにいた生徒達からも冷たい視線が向けられる。
先にここについていたフォーラウセがニヤニヤしているのを見ると、あいつ、多分何か言ったな……
フォーラウセと一緒にいた男が、僕を冷たく睨んで言った。
「ディトルスティ……平民の分際で、よく遅れてこれたな……呆れるぞ」
「……」
うわ……最悪だ。イヴィーリだ。精霊族の貴族の彼は、自分より身分が低い人に対してだけ、態度が違う。それはそんなに珍しいことではないけど、彼はそれがひどくあからさま。寮に入ったその日に、いきなり僕に絡んできたから、よく覚えている。
「お前のような者の、下手くそな魔法で、陛下のお役に立てるはずがない。やる気がないならちょうどいい。さっさとやめろ」
「遅れてきたことは申し訳ございません。だけど、やめろなんて、あなたに言われたくありません。僕の魔法を、あなたは知らないはずです。下手くそかどうかなんて、見てみないとわからないのではないでしょうか?」
「なんだと…………」
あ、しまった。つい、言い返しちゃった。こんなことするつもりなかったのに。
今度はフォーラウセが言った。
「遅れてきたくせに、貴族に敬意も払えないのか……?」
「それは、あなたが僕を足止めしたからでしょう? いい加減、僕に絡むの、やめてくれませんか?」
「絡むだと? 何を馬鹿らしい! 俺は少し、忠告しただけだ。それを……被害妄想も甚だしい!」
「……」
面倒くさいなぁ……僕を呼び止めたのはこの人なのに。
そんな話をしていたら、先生に、授業中だぞって、また注意されてしまった。
「無駄口は減点の対象になるぞ」
「すみません! 気をつけます!!」
慌てて謝って、頭を下げる。すると先生はため息をついて、演習の説明を続けていた。
授業はちゃんと受けなきゃ……退学だけは避けなきゃならない。
フォーラウセやイヴィーリのことも、気にしないようにしなきゃ……さっきだって、それで会長に迷惑をかけてしまったんだ。
会長……もう少し、そばにいたかったです。
授業があるのは分かる。だけど、だからって、もう行っちゃうなんて……
また夜になったら、生徒会室で会えるみたいだけど、それって夜にならないと会えないってこと?
そんなの……待ち切れない。
僕は、ずっと一緒にいたい。なんなら、会長のそばに繋がれていたい。それなのに、会長は放課後まで待てるんですか?
そんなんじゃ、僕は全然足りない。
そんなことを考えていたら、唐突に、先生に呼ばれた。
「ディトルスティ」
「は、はい!」
「聞いていたのか?」
「はい! 今日の演習は、周りに痕跡を残さずに、魔法を使うことです!」
「……やってみろ」
「はい!」
僕は、前に出た。こうした演習の際、魔法はできること前提で話が進む。先生から学ぶのは、それをいかに磨き上げ、自分なりのものにしていけるかだ。
今日の授業のために、得意の水の魔法で、水溜りを作らずに雨を降らせる練習、してきたんだ。
だけど、横から早速、フォーラウセの邪魔が入る。
「先生。俺たち、ろくに話も聞けない平民の魔法なんて、見ていられません。ここにいる方々に危害が及んだら、先生はどうなさるおつもりなんですか?」
すると、その周りにいた人たちまで声を上げる。
「セルラテオ様を付け回して、その上、手を上げるなんて……どうかしています!!」
「セルラテオ様のご迷惑も考えろ!」
口々に上がる僕への非難の声。僕は手をあげたことはないんだけど……なんて、多分言ったところで無駄なんだろう。
すっかりフォーラウセのことを信じちゃってる。
僕が平民とか、そんなこと、今関係ないような気がするんだけどな。話は確かに聞いていなかったけど。
意外だったのは、さっき僕を呼び止めたヴィユザが、何も言わずに顔を背けていること。事態を見物して、楽しんでいる様子もない。会長に言われて、大人しくなったのかな……?
それにしても、僕はセルラテオのことなんて、なんとも思ってないのに、いつのまにか僕がセルラテオを好きで付き纏っている、みたいな話になっているのは心外。
ふざけるな。僕は、会長以外、なんとも思ってない。
それなのに、味方が増えて調子に乗ったのか、フォーラウセは声を張り上げた。
「セルラテオ様は、お前など、相手になさらない!! セルラテオ様にお詫びしろ!!」
「……」
お詫び? 僕にわざわざ詫びに行けってことか? そんなことしていたら、会長に会える時間が減るのに?
ああ、面倒だ。先に対処しておくか……
僕は、先生に向き直った。
「先生。僕、やります!!」
「しかし……」
先生は、周りの様子を見て、少し返事をためらっていた。トラブルを避けたい気持ちはわかる。だけど、僕はもう、これ以上我慢なんて、できそうにない。
「痕跡を全く残さなければいいんですよね? 簡単です!」
僕は、魔法で小さな水の玉を呼び出した。本当はこれで、小雨でも降らすつもりだったんだけど、今は小さな雷撃の光を纏わせている。まるで小さな雷雲だ。
それを見て、フォーラウセは馬鹿にするように笑った。
「なんだそれは……ろくに魔法も使えないのか……」
「そんなことないです! ほら、見てください」
わざと笑顔で言って、僕らは彼らに近づいた。
そして一思いに、それを握り潰す。
すると途端に、演習場が雷撃の渦に包まれた。
雷光は一瞬で消えて、あとには水溜りも雷撃の跡もない。代わりに演習場の周りにあった照明だけが、明かりをつけていた。
フォーラウセは、不思議そうに自分の体を触ったりしている。よほど怖かったのか、震えていた。
「な、なんだ今のはっ……い、いたっ……! ……くない?」
「大丈夫ですよ」
答えて、僕が彼に近付くと、フォーラウセは悲鳴を上げて、僕から離れた。
「お、お前っ……!」
「怪我をするわけないです。みんな、どこにも、傷ひとつないでしょう?」
「だ、だからって……!」
「危害なんて加えてません。少し、それっぽい光を生み出しただけです。錯覚ですよ」
「さ、錯覚だと……!? だが、今確かにっ……! お、お前が俺たちに魔法をっ……!」
「さっきの雷は、そう見えるだけのただの光です。気のせい、なんですよ。それなのに大騒ぎしないでください。被害妄想じゃないんですか?」
「なんだとっ……!!!」
フォーラウセは今にも僕に殴りかかってきそう。
だけど、僕の言ってることは本当で、雷っぽい光をみんなに見せただけ。
その中でフォーラウセたちにだけ、少し頭の中をいじって、本当に雷が落ちたように錯覚させる魔法をかけた。
雷が落ちたんだから、それなりの衝撃があったような気がしたかもしれないけど、体にはなんのダメージもない。痛いような気がしただけだ。
フォーラウセは、そんな魔法にかかったことには、気付いていないみたいだけど。
すると、先生が頷いて言った。
「……いい出来だ。だが、二度と使わないように」
「はい! 気をつけます!」
11
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる