好きな人の「好き」を信じられない僕には、会長の束縛じゃ物足りません

迷路を跳ぶ狐

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18.この部屋、片付けてないじゃないか!

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 か、会長と部屋に二人きり……もう、何をされてもいいです!

 いやでもまだ心の準備がっ……! き、緊張するけど……もう大丈夫!

「じ、じゃあっ……! どうぞっ……!!」

 僕は、ドアノブに手をかけた。

 しかし。

 ちょっと待て。

 いや、かなり待て。

 この部屋、片付けてないじゃないか!! か、会長を散らかった部屋に入れるなんてできない!
 二人部屋だけど、ルームメイトがいなかったから、会長の写真もいっぱい並べてある。
 あ! それに、魔法で作ったポスターとか会長の抱き枕とかも勝手に置いてあるんだ!!

 いや……それよりもっとまずいものがあるんだ。自分でするときのために作った、会長そっくりな姿をしたもの。空気に魔法をかけて作った、人形みたいなものだ。空気だから、触れることはできないけど、僕が魔法をかけると、僕の命じたことを話してくれるやつ……こ、これを見られたらまずい!!
 いつも部屋を出る前に消すんだけど、今朝は消すのが惜しくてそのままにっ……! あんなの見られたら……秒で嫌われる……というか、貴族への不敬で退学かも…… 

 僕は、ぎこちない笑顔を浮かべて、会長に振り向いた。

「か、かいちょう……僕の部屋……あのその……ち、散らかってて……」
「そのほうが、普段のディトルスティが見れて、俺は嬉しい。ドア開けて」

 間髪を入れずに言われて、威圧感まで感じるよ……だけど、怯んでる場合じゃない! 会長を入れるわけにはいかないんだ!!

「で、でも……あの! ご、ゴミも捨ててなくて……虫とか魔物とか……そうだ!! 魔法が暴走するかもしれません!」
「そんなの、俺が全部綺麗さっぱり消し去ってあげる」
「でもあの、あ、危ないし……す、少しだけ掃除させてください! 魔法を使うので、お待たせはしません! 僕、隠蔽の魔法が得意なんです!」
「ダメ」
「なんでですか!?」
「言っただろ? 今日から君は、俺の管理下に置かれる。勝手に掃除なんかしちゃダメ」
「そ、掃除もダメなんておかしいです! 掃除と、僕が公爵家に手を出したことと、どう関係が……」
「会長命令。ドア、開けて?」
「生徒会にそんな権限ないはずです!」
「じゃあ、俺の個人的な頼み事。ドアを開けて俺を中に入れて?」
「う、お願いしますうぅ…………ち、ちょっとだけ……十分、一分……いや、十秒でいいんです!」
「だめ」

 ……会長、頑な。だけど、この部屋に会長を入れるなんて、死刑と一緒だ。
 会長に嫌われたくない……こうなったらドア越しに魔法をかけるか……?

 悩んでいたら、会長がちょっと笑って言った。

「自慰の時に使ってるもの、見られたらそんなに困る?」
「………………え?」

 い、今、なんて?? き、き、き、気づかれてるの?? 嘘……あれを誰かに見られたことなんてないのに!!

 焦る僕が、あまりの事実に固まっていると、会長は僕の横をすり抜け、ドアノブに手をかけてしまう。

 とっさに僕は、ドアに鍵の魔法をかけた。これは、禁書の魔法を使ったものだ。会長でも開けられないはず!

 だけど会長は、それをあっさり開けた。

 そして中に入っていく。

 え……?? なんで?? この魔法を打ち破ってドアを開いた人なんて、今までいなかったのに!!

「会長! まっ……待ってください!」
「俺、鍵を開ける魔法は得意だから」
「あ、あ…………待って!!」

 慌てて部屋に入った僕だけど、もう遅い。会長は会長そっくりの姿をしたものが、ベッドに座っているのを見つけてしまう。

 終わった……そんな風に思ったのに、会長はそれを見て、微笑んだ。

「これ、俺?」
「あ、あの……その……」
「空気に魔法をかけたのか……すごいな……こんなことまでできるんだ……すごいけど、あんまり使わないほうがいいよ? 貴族たちに目をつけられちゃうから。こっちは二人で撮った写真だよね? こんなにたくさん……大事にしてくれてるんだ」
「え、えーーっと……ち、違う……違うんです……け、決して僕が並べたわけではなく……あの、ある日、空から降ってきて、気づいたら僕の部屋にあって…………」

 混乱した頭で、言い訳にもならない言い訳を並べていたら、案の定、会長は噴き出してしまう。

「それ、いいわけ? 咄嗟に思いついたの?」
「……ご、ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。知ってたし」
「へ!?? な、なんで……!??」
「……俺も魔法使いだから。こっそり、ディトルスティのこと、全部見てた」
「ぼ、僕を……?」
「たまに商人たちに怒鳴られてたりしただろ? もう大丈夫?」
「は、はい……だい、じょうぶです……会長のところに出入りするようになってから……何もされなくなりました」

 あ、あれって、もしかして、会長のおかげなのかな……

「あのっ……か、会長! 僕……」
「どうしたの?」
「えっと……あ、ありがとうございました……あの時から……いろいろ気にかけていただいて……」
「……そんなの、気にしなくていいんだよ。俺、ずっとディトルスティのこと、好きなんだから」
「会長……」

 嬉しい……会長……そんな風にしてくれてたんだ……急に商人たちの態度が変わったから、もしかしてって思ってたけど……

 また鼓動が大きくなる。会長といると、ずっとドキドキして、心臓に悪いよ……

 状況も忘れて俯いていたら、会長は、僕の顔を覗き込んできた。

「とりあえず、ここにあるの、片付けていい?」
「あ!! は、はい!! 僕、やります!! す、すみませんっ!」
「うん。じゃあ、ここにあるもの、消滅させるね」
「え? あ、はい……」

 答えるより先に、会長は、消滅の魔法を使って、僕の部屋にあった会長に関するものを全部消し去ってしまった。

「あ……」

 あまりにも一瞬すぎて、僕は何が起こったのかすら、分からなくなりそうだった。

 会長に関するものが、全部なくなった部屋は、僕がここにくる前と、ほとんど変わらない気がする。授業のための教科書と、ずっと愛用していた魔法に関する本が数冊あるだけ。ひどくがらんとしていて、空っぽになる一歩手前。

 本当に……全部消えちゃったんだ……二人で撮った写真は残して欲しかったのに。

 だけど会長は、僕を見下ろして微笑んでいた。

「ごめんね? だけど俺、我慢できないから」
「……はい……」
「俺じゃないものに、ディトルスティが気を取られてるなんて」
「……え?」
「だって、写真なんて、俺じゃない。俺は、俺だけをディトルスティに見ててほしい。さっきも、俺よりヴィユザを見てただろ?」
「へ!? そ、そんなことないです。ヴィユザは、ただの友達で……」
「それに、俺と歩いてるのに、周りに集まった学生たちのこと、見てた」
「き、気づいていたんですか!?」
「もちろん……気づかないとでも思った? ずっと群衆に気を取られてた。俺と歩いてるのに……ね」
「会長……」

 き、気づかれてたのか……確かにさっきは、周りの人が会長を見ているのが気になって仕方なくて、そっちに気を取られていた。

「さっきだって、ここにあるものに気を取られて、俺を部屋に入れるのを拒もうとしただろ? そんなの、許されると思った?」
「あ…………え、えっと……ごめん、なさい……」

 何を謝っているのか、分からなくなりそうだ。へ、部屋に入れるの拒んだの、そんなに怒ってるの??

「あの……かいち……やっ!」

 急に、何をするのかと思った。会長は僕の手をとり、押し倒す。そこにはベッドがあって、僕はそこで、会長に組み敷かれていた。
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