君は俺の光

もものみ

文字の大きさ
18 / 41
産婦人科医の災難な1日ー女医sideー

18

しおりを挟む
 実は沙月は優月から計画のことを聞いていた。三回の診察の際に優月に悩みはないか、など毎回丁寧に伺ったところ、ぽつりぽつりと優月が話し出したのだ。優月はすぐに病院を移ることになってしまうのに…と終始申し訳なさそうにしていたが、沙月が心配事やストレスをためすぎるのはお腹の子にもよくない、と言うと今の自分の状況を話してくれた。ずっと付き合っている人がいるけれど、その人は自分にはふさわしくないということ。どうやら最近その人にいい人がいるようだから自分はその人から離れようと思っているということ。だけれど愛するその人との子供であるお腹の中の子供は産みたいということ。そのためにここから離れた病院を探しているということ。などなど、ぽつりぽつりと優月が語った内容は沙月にはどれも衝撃的だったが、そのすべての言動から、お腹の子の相手である彼への愛情が感じられた。優月はその人に出会えて本当に幸せだったのだ、とも言っていた。

(まあ、あんなにいい子を差し置いて他に”いい人”を作ってるだなんていったいどんな奴かと思ったら…この様子じゃ、この人がそんなことするだなんて考えられないけど。)

 沙月はもう一度目の前の陽仁をじっと見る。美しい顔に笑顔を浮かべてはいるが、その綺麗な目元にはわずかに隈が見られる。

(三日前に来た時に、明後日出ていくって言ってたから、出て行ったのは昨日よね。…この様子じゃ、寝ずに探してたんでしょうね。)

「その前に一つ聞いていいかしら。」
「…?ええ。」
「あなた、優月君以外に外にだれか囲ってるの?」
「は?」

 声が1トーン…いや、2トーンほど下がり、ずっと美しい笑みを貼り付けていた顔が一瞬真顔になる。が、すぐに、またその顔に笑顔を貼り付けて沙月に聞いた。

「…それは、優月が?」

 また変わらずにっこり笑って見せるが、その口元はやや引きつっているように思える。

(やっぱりね。この反応、間違いないわ。)

「ええ、そうね、優月君から聞いたのだけれど、間違っていたかしら?」

 沙月は意地悪く笑みを浮かべて陽仁に問う。答えは分かり切っていたが、やはり恋人のことになると余裕をなくす陽仁が面白かったのだ。

「全く、事実無根です。……それで先生、そのご様子だと何かご存じなのでは?」

 陽仁がきっぱり言い切った後、話題を元に戻そうとする。

(やっぱり、拗れてるだけだったのね。)

 そうと分かれば陽仁に協力してやりたい気持ちもないではないが、沙月とて優月の現住所までは知らないし、何より沙月はあくまでも優月の味方だ。

「残念ながら私もそれは知らないわ。…知っていたとしても、教えることはできないけれど。」
「…そうですか。お手数おかけいたしました、先生。」

 それだけ言うと陽仁はすっと立ち上がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【完結】番になれなくても

加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。 新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。 和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。 和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた── 新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年 天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年 ・オメガバースの独自設定があります ・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません ・最終話まで執筆済みです(全12話) ・19時更新 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

処理中です...