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神木 綾人(かみき あやと)は珍しく浮かれていた。以前偶然見かけて気になっていた相手とパートナーになれたからだ。実は綾人と葵は初対面ではない。綾人が一方的に見ただけではあるが、1ヶ月ほど前に1度出会っている。
――1ヶ月前
『いやぁ、さすがは神木先生だ。あの難しい手術も完璧にこなされて…神木先生がいらっしゃればこの病院の未来も安泰ですな!』
『はは、ありがとうございます。無事成功してよかったです。』
綾人は大病院で医師として働いている。元は海外の大学を出てそのまま医者をやっていたのだが、2年前に母国である日本に戻ってきた。そのため経験豊富で、まだ若いがかなり評判の医師なのだ。
『…それはそうと神木先生、最近恋人の方は?』
『……残念ながら。』
綾人は今までそれほど興味を引かれるような人に出会っておらず、特定の恋人というものは基本的にはいたことがない。Domであるのでプレイのためや、単純に性欲処理のために関係をもった相手はたくさんいたが、どの相手とも基本的には一度きりの関係だった。
『ほう!そうですか!先生ほどのお人ならお相手には困らんでしょうに。なんでも院長のお孫さんからも声がかかっただとか。』
『…ああ、お孫さんは私なんかには勿体なくて、残念ながらお断りさせていただきました。』
『ほう!そうですか!先生が院長の娘さんとご結婚なさったらますます院が安泰になると思いましたのに。』
『ははは。そんなことはないですよ。』
手術後、腕はまずまずだが噂好きで権力欲が強い医師との会話にうんざりし始めたときだった。
『本当に、ありがとうございました…』
『いえいえ、大したことはしてませんよ。』
『おにいちゃん!待ってるあいだずっと一緒にいてくれてありがとう!』
待合室の方で妊婦の母親と幼い子供、それからスーツを着た儚げな美人が話をしていた。どうやらスーツの男が検診にきた母親を不安そうに待つ子供と一緒に待合室で待っていてやったらしい。
『ふふ、ちゃんとお母さんたちを待てて偉かったね。いいお兄ちゃんになるんだよ。』
『うん!』
男が子供に微笑みかけた。その美しいながらもあんまり儚い微笑みに、綾人はドキリとした。
『じゃあ、僕はそろそろ行きますね。』
『はい、お世話になりました。』
『おにいちゃんありがとう!』
男はもう一度子供に微笑み、そして頭を撫でてから去っていった。
(あれ…。)
去っていった男はふらふらしていて、華奢な背中がひどく頼りなく見えた。
あれから1ヶ月、綾人はあのときの儚い微笑みが頭に残って離れなかった。一夜の相手探しも気が向かず、あの日以来綾人は一度もプレイをしていなかった。しかし、欲求はたまる。特に綾人はDomとしての力が強く、我慢はきくが比較的まめに欲を発散しておきたいタイプだった。そこで使用したのが例のマッチングアプリだったというわけだ。ダイナミクスの欲求を発散するための一時のプレイ相手を探していただけだったのだが、あるプロフィールと写真が目にとまった。
(!これは…)
プロフィールとコメントこそ簡素なものだったが、そこに添えられていた写真はかなりの美人で、遠くから撮られており遠目にしか見えないが明らかな美人に魅せられ、長々と口説くコメントを送る男が数人いた。その男が美人だったから、というよりも綾人はその男に見覚えがある男だったので驚いた。
(あのときの…)
その男――『あお』は一月前に院内で見かけたあの男だった。綾人の頭に鮮明に記憶されているあの微笑みを浮かべた男だと気づいたとき、綾人は即座にメッセージを打った。相手と同じくらい簡潔に、だが決して、逃すことはないように。
そういったわけで、綾人は一方的に葵を知っていた。しかし、葵は実際近くで見た方が写真や記憶の中よりも数倍綺麗だった。その上、甘えなれていないのに甘やかされるとすぐに蕩ける葵の性格も、綾人の好みど真ん中だ。そんな前から気になっていて、実際あってみたらもっと自分好みだった美人とパートナーになれたら浮かれもするというものである。
しかし、綾人にはいくつか気になるところがあった。例えば絶頂したときのあの反応。dropして過呼吸にまで陥った。綾人は医者で、Domとしての力も強かったために幸い大事にならず落ち着いたが、ホテルで会ってすぐにも感じたホルモンバランスの乱れは相当ひどいものであったのだろう。…だが、それだけではない。おそらくあの反応は勝手に達したことを咎められるのを恐れての反応だ。さらに、葵が口にした『鞭はやめて、痛くしないで』の言葉。
(それに…)
綾人は寝ている葵の体を拭いているときに見えてしまった腹の痛々しい傷痕。体を見られたくないと言ったのはそういう意味だったのだろう。とすると、背中はいったいどれほどひどいことになっているのか…。綾人は葵の過去を憂いてため息を一つおとした。
(これからはたっぷり甘やかそう。)
綾人は決意を固めた。
あの日、お互い自分の本名と仕事など簡単に自己紹介してから次の金曜の夜にまた会う約束をしていた。そして金曜の夜、葵の仕事場の近くに同じく仕事を終えた綾人が葵を車で迎えに来ていた。葵が車に乗って、車が綾人の家に向かって発進した。なぜ綾人の家なのかというと、葵は車を持っていないが綾人は車を持っていて自由がきくし、それに綾人の家は葵の職場にも近いからだ。実は葵の家は綾人の職場も遠いのだが、葵の職場にも近くはない。郊外にあるので電車で40分ほどかかる。
「お疲れ様。」
「綾人さんも、お疲れ様です。」
「…あお、仕事するときは髪あげるんだね。」
「ああ、はい。営業なので、顔がはっきり見える方がいいかな、と。」
「うん、顔がよく見えてかわいい。」
「かっ……そんなことないと思いますけど…ありがとうございます。」
葵は嫌な気はしないのだが、自分ではそうは思えず恥ずかしくて照れてしまう。
「あおが照れてる顔もよく見えていいね。やっぱりかわいい。」
助手席の葵の赤くなった顔を綾人がミラー越しに見てくすりと笑う。
一度言われたら自分の顔が障害なく綾人の前にさらされているのが気になってしまい、葵は車内で会話を交わす中ずっと綾人の方を見れなかった。
「着いたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
綾人の家に到着し、二人は綾人のマンションに入った。
(大きなマンション…。)
この間のホテルもそうだが、綾人はかなりお金持ちだ。待ち合わせの部屋が上等なホテルの最上階で驚いたという話をしたら、何でも、元々海外で医者をやっていて医師としての勤務年数が長く、特に趣味もないのでお金はあっても使うところがないのだそうだ。
(住んでる世界が違う…)
葵とて大手医療メーカーの営業を勤めており、さらに営業課のエースと呼ばれているのでかなりお金はあるのだが、若くして大病院一の名医と呼び声高い綾人とは比べてはいけない。
綾人は葵が悶々と考えている間にエレベーターのボタンを押し、エレベーターが上昇し始めた。それに気づいた葵がボタンを見た。
「さ、最上階の部屋なんですか?」
「うん、そう。階数にこだわりはなかったんだけど、夜勤とかもあって夜中にバタバタしたら近所に悪いから、ひと続きになってる最上階まるまる購入したんだ。」
「そうなんですか…。」
葵は住んでいる世界が違うことを再確認し、またそんな男がどうして自分とお試しとはいえパートナーになろうといったのかが余計に分からなくなった。
(このあいだもうまくできなかったのに……いや、チャンスがあるんだから挽回できるよう頑張ろう)
葵はまた落ち込みそうになる思考を無理矢理引き上げて綾人を見た。綾人はそんな葵を見て微笑み、自室の鍵を開けて扉を開き、葵を招き入れた。
「お邪魔します。」
「どうぞ。」
「わ、広いですね…!」
「そうだね、独り暮らしだから広すぎるくらいでちょっと寂しいんだ。」
綾人が笑いながら困ったように言った。
「お風呂出来てるから、先に入りな。」
「え、そんな、綾人さんお先に…」
「…じゃあ一緒にはいる?」
「え…!」
葵は今日、仕事終わりに直接綾人の家に来て、泊まることになっていた。そのためお風呂も貸してもらう予定ではあったのだが、一緒にはいるのは…と葵が体の傷がまだ消えきっていないことを考えながら眉を下げた。
「先に入りな。」
それを見た綾人がぽんと葵の頭に手をおきもう一度言った。
「ありがとうございます…。」
申し訳なさげに葵が言うと、綾人が葵の頭に置いた手で優しく葵を撫でた。
葵は綾人に案内され、申し訳なく思いながらも先に風呂にはいった。
(結局お風呂も先にいただいてしまった…絶対に夕飯はうまく作らないと)
実は今日は、あの日の朝に葵が料理が得意だという話をしたら普段は基本外食かケータリングで済ますという綾人が、食べてみたいと言ったので、材料だけ買っておいてもらい葵が夕飯を作りに来ることになったのだ。
手早く身体を洗い、少し湯船につかって葵は脱衣所に出た。下着は持ってきていたが、タオルと部屋着は綾人が貸してくれると言っていたのでこちらもありがたく借りることにした。綾人に借りた部屋着はやはり葵には少し大きかったが、着れないというほどではなかった。
「お風呂お先にいただきました。」
そう言ってリビングに戻ってきた葵を見た綾人は少し驚いたような表情をしたあと目をそらした。
「…おかえり。じゃあ、俺も風呂にいってくるね。」
「はい。あ、キッチン借りててもいいですか?」
「ああ、もちろん。言ってた物は冷蔵庫に入ってるから。」
「分かりました。じゃあ、作りかけておきますね。」
「うん、じゃあ、よろしくね。」
「はい。」
綾人は葵と目を会わせないままそそくさと風呂場に向かった。葵は不思議に思いながらも張り切って夕飯の準備に取りかかった。
その頃、風呂場で綾人はため息をついていた。
(俺の大きい服着てるあお、思ってたよりクるなあ…)
肩幅が違うので服の肩の位置が落ちて、半袖のはずが五分袖ほどの長さになってしまっており、襟も大きく開いていた。
(……あおから言ってくるまでちゃんと手を出すつもりはないのに…あれでプレイまでして…)
もともと綾人は恋人こそいないがDomとしての欲求も強いし、適度に発散させるついでなどでかなり遊んでいる方だった。必ずプレイもセックスも、とか特にこだわってはいなかったが、綾人は多くのSubを抱いたしそれ以外とも寝た。しかし、今回ばかりは本気なのだ。半ば強引にパートナーという関係にはなったが、お試し、だとか言いくるめただけなのでプレイはすれども下手に手を出すわけにはいかない。
(持つかなあ、俺の理性…)
いや、持たせなければならない。怖がらせて逃げられてしまってはいけないのだから、と綾人は葵と会う前にも入れたはずの気合いをもう一度入れ直して風呂を出た。――このあと綾人の服の上に持参のエプロンの姿で料理を作る葵を見て、さっそく理性が揺らぐことになるのだが、このときの綾人は知るよしもない。
「あ、綾人さん、お風呂上がったんですね。もう少しでできるので待っていてもらえますか?」
「……うん。ありがとう。」
葵は風呂上がりの綾人にそう声をかけながら卵を焼いた。好き嫌いがないらしい綾人に何を作るか迷ったのだが、今日は定番のオムライスだ。簡単に作れるし失敗しないのでよく作っているため、オムライスは得意料理のひとつだ。二つ目の皿にもふわふわの卵をのせると完成だ。
「できました。ケチャップはお好みで好きな量をかけてください。」
葵はそう言いながらケチャップと二つの皿をダイニングに持っていった。
「いい匂い。美味しそうだね。」
「ありがとうございます。食べましょうか。」
言いながらエプロンをはずし、葵も席についた。
「いただきます。」
「どうぞ。」
オムライスは自信作ではあったが美味しいものも食べなれているだろう綾人にどう思われるかが心配でじっと見つめてしまう。
「……」
「おいしい!すごい、あお、料理上手だね。」
綾人が本当に美味しそうにそう言いながら葵に微笑み、葵はほっと胸を撫で下ろした。
「よかったです。僕も、いただきます。」
葵も手を合わせてオムライスを食べ始めた。やはり自信作なだけあり、美味しくできている。良かった、と思いながら二人で他愛ない会話をしながらオムライスを食べた。
夕食後、皿洗いは綾人がやってくれる、と言ったので葵は食器を拭く方にまわった。食洗機は普段コップくらいしか使わないので、持っていないのだそうだ。それを聞いて葵は驚きつつも綾人の食生活が心配になった。最近は健康志向のメニューも増えているとはいえ、ケータリングと外食ばかりではやはりよくないだろう。
「あの、よかったらまたごはん作りに来てもいいですか?」
「え、俺こそいいの?今日のオムライスも正直最近食べたものの中で一番美味しかったし、すごく助かる。」
「本当ですか?ならうれしいです。また作りに来ますね。」
自信のある料理の腕を誉められて嬉しくなった葵は綾人に満面の笑みを向けた。
皿を洗い終えて、リビングでお茶を飲みながら葵と綾人はこれからの話をした。
「あおは何をされるのが好きなのか、よくわからないって言ってたよね。」
「…はい。」
「落ち込まないで。大丈夫、これからいろいろ分かっていけばいいよ。それで、体はあんまり見ない方がいいんだよね?」
「あ、えっと、はい…。」
「…それって、もしかしてなんだけどお腹にあった傷跡と関係ある?」
「なんでそれを…!」
「ごめんね、言うか迷ったんだけど、この間体拭いたときに見えちゃって。手当てもされてないみたいだからこのままだと痕になりそうで。俺なら力にになれるかな、と思って…。それと、背中は見てないんだけど、もしかして背中も…?」
「……」
「前のパートナーに?」
「…パートナー、というか、そこまでの関係でもなかったんだと思います。」
「…言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど、それってどんな人だったのか聞いてもいい?」
「………」
どうせ傷のことはバレているのだから、と葵は例の男のことを全て話した。まだあって間もないが、葵は綾人は信頼していた。少なくとも、前のパートナーのように弱味を握って無体を強いたりはしないだろうという確信があった。
綾人は葵の話を眉間にシワを寄せながら真剣な顔で聞いた。
「…それ、警察には?」
「いいんです…。もう、終わったことなので。」
「……そうか。」
綾人は葵をぎゅっと抱きしめた。
「綾人さん…。」
「もうそいつとは会わないで。」
「…はい。もう、向こうからも会わないでおこうと言われましたし、大丈夫だと思います。」
綾人は葵を抱きしめる手にさらに力を込めた。
「他にも、なにか嫌なこととか危ないことがあったら言ってね。」
「…大丈夫ですよ、もうあの人とも会うことないですし。」
「パートナーとして約束して。何かあったら俺に言うこと、もうあいつとは会わないこと。」
「……はい。」
「あお。」
綾人が目を細めて葵を見る。本気で葵を心配しているのだ。
「わかりました、約束します。」
綾人がふう、と息を吐いて抱きしめていた手を放す。
「…今までよく頑張ったね。いい子。」
「っ…。」
綾人が葵の頭を優しく撫でる。葵は綾人の優しい眼差しに見つめられ涙がにじんできて、慌てて俯いた。
「このまま寝てもいいけど、どうする?もう寝る?」
だんだん葵の頭がほわほわしてきて瞳がとろんとしてきたころ、綾人の優しい声が耳にはいって葵ははっとした。
「…まだ、寝たくないです。」
このままだとまた何もできない。せめてちゃんとプレイをして、このDomに奉仕したい。
「そう?ならちょっとだけプレイする?」
綾人が葵の頭を撫でていた手を下ろし葵と目を合わせた。
「はい。」
「今日はどうしようか?」
「…綾人さんの、好きにしてください。」
「…あお、そんなこと簡単に言っちゃダメ。」
「……綾人さんなら、いいのに。」
「もう…。」
呆れられただろうか、とトーンの落ちた声にびくりとして綾人を見上げると、綾人は困ったようにこちらを見ていた。
「…なら今日は、あおの好きなことを探りながら、イく練習をしようか。」
「…?」
「本番のセックスはしないけど、あおが気持ちいいことだけをして素直にイく練習。あお、先にイくのに抵抗あるでしょ?」
SubのくせにDomより先に絶頂するな、とは以前の男に散々言い含められていたことだ。綾人はそれのことを言っているのだろう。
「そう…ですね…でも、Subの僕がDomより先に気持ちよくなったらダメじゃないですか。」
綾人はまた少し眉根を寄せ、難しい顔をしながら言った。
「あお、パートナーの約束を追加しよう。その男が言ったことは全部忘れて。それから俺といるときは俺のことだけ見て。」
「っ!…はい。」
「いい子。じゃあ、プレイを始めようか。あお、セーフワードは?」
「"Stop"。」
「うん、いいね、嫌だと思ったら遠慮なく言うこと。」
「はい。」
綾人は素直に返事をした葵を褒めるようにもう一度頭を撫でた。
「じゃあ、あお、寝室に行こうか。」
葵が頷いたのを確認して綾人は寝室に向かう。後ろを葵がついていった。寝室に入ると綾人は葵を振り返った。
「ここで止まって。"Stay"。」
綾人は寝室のドアのところに葵を立たせ、ベッドに腰かけると葵をじっと見てから次のコマンドを発した。
「あお、"Come"」
弾かれたように綾人の方へと向かう葵。綾人がベッドのとなりをとんとん、と叩いたので葵もとなりに座る。
「うん、よくできたね。」
葵の頭を撫でて綾人が微笑む。綾人に褒められて、撫でられて葵はまた頭がふわふわとしてくる。
「あお、キスしてもいい?」
「は、はい。」
葵の瞳をじっと見つめながら伺う綾人に葵は緊張しながら目を閉じた。すると葵の唇に優しいキスが落ちてきて、葵の肩がぴくりと揺れる。何度か角度を変えてキスをしたあと、綾人が少しだけ隙間を開けて囁いた。
「あお、力抜いて。」
キスになれていない葵は無意識に唇に力をいれてしまっていたらしい。意識して力を抜くと下唇をペロリと舐められて驚いた葵が少し口を開いたところに綾人が舌を差し込んだ。
「んんぅ、ふっ、んむ…」
綾人は葵の歯列をなぞり、上顎を擽るように撫で、葵の口内をもてあそぶ。さらに綾人の大きな手で敏感な耳までさわられてしまい、葵はされるがままになって綾人の服の胸元を握った。舌をからめられて必死にそれに応えているうちにどんどん体から力が抜けて、ついに葵の瞼に溢れそうなほど涙がたまった頃、綾人は唇を離した。
「はあっ…はっ…」
涙目で綾人を見る葵に綾人は少し意地悪そうに笑いながら言った。
「キス、慣れてないんだ?かわいい。」
言いながら葵の目尻にたまった涙をぬぐう綾人にやっと呼吸が落ち着いてきた葵は辛うじて言葉を返した。
「……ファーストキス、だったので。」
「え!そうだったの?」
「…はい。今まで仕事ばかりで恋人ができたこともなく、プレイもあんな感じでしたので…」
「そうなんだ。」
葵がこの年にもなって恥ずかしいことを言ってしまった、とやや後悔していたが綾人は嬉しそうだ。急に機嫌が良くなった綾人を疑問に思いながら葵は綾人を見た。
「ファーストキスだったんならもっと大切にすればよかったって思ったけど、俺があおの初めてなんだって思うと、うれしい。」
心底嬉しそうに言う綾人に葵はさらに恥ずかしくなって顔を赤く染めた。
ベッドのヘッドボードにもたれ掛かった綾人がもう一度葵を呼んだ。
「あお、"Come"。俺の脚の間に来て。」
綾人が自身の開いた脚の間に葵を座らせた。
「ん、いい子。じゃあ、手、いれるね?」
言ってから葵の部屋着の中に手をいれた綾人は葵の胸の周りを撫でた。
「んっ、ふっ…」
胸の先には触れず、焦らすようにじっくりと性感を高める動きに葵はもどかしくて身をよじらせる。
「あお、どうしたの?」
「あっ…あやとさん…」
「ん?言わないと分かんないよ、言って。"Say"」
葵が言いやすいようにコマンドを交えて問うてくる綾人に葵の口は素直に動いた。
「あぅ…胸の先も…触ってください。」
「よく言えました。」
にっこり葵に笑いかけた綾人がずっと焦らしていた胸の先に触れる。今までは感じたこともないし特に敏感ではなかったそこに触れられて、葵はびっくりするほど感じていた。葵が驚いている間に、優しく撫で回していた手が急にぎゅっとそこを挟まれた。
「んんっ!あっやっ、あやとさんっ…」
潤んだ瞳で綾人を見つめる葵により気分をよくした綾人は葵の耳元で囁いた。
「ちょっと痛いくらいの方が好きなんだ。えっちだね。」
耳が弱い葵はそのいつもより更に落ち着いたからかうような綾人の声にも感じてしまい、耳まで真っ赤になった。
「あんっ、やっ、んんんっ、」
「耳弱いね。きもちい?」
「やっだめ、耳だめです…」
「だめなの?」
ずっと葵の耳元で話しかける綾人に思わず否定してしまうと、綾人が葵の外耳を舐めた。
「ひぃっ、あやとさっ…やっんんっ」
「気持ちよさそうだけど…嫌なの?」
「ちがっ…いやじゃなっ」
「なら気持ちいい?気持ちいいときはちゃんと言って。」
今度はコマンドを使わずに問いかけた綾人に葵は案外すんなりと言葉を返せた。
「きっ、気持ちいい…です…」
「いい子だね。"Goodboy"」
綾人からSubへの最高の誉め言葉をもらい、葵は何も考えられなくなってきた。
「下もさわってもいい?」
また葵に確認をとってくれる綾人にきゅんとしながら葵は頷いた。
「自分で脱げる?"Strip"」
力が入らない体でノロノロと命令を実行する葵をじっと見つめながら待ってくれた綾人は、葵が脱ぎ終わると葵を後ろからぎゅっと抱きしめながら言った。
「いい子。じゃあ、さわるね。」
とっくに反応していた自身に綾人のきれいな長い指を這わされ、葵はびくっとした。
「あっ…んんんっ…」
「大丈夫。いっぱい気持ちよくなってね。」
「んっ、はい…あっ、気持ちいい…」
健気に自分の言いつけたことを守る葵に綾人もきゅんとしながら葵の色の薄い綺麗なものをしごいた。
「はっ、んっ、あやとさんっ、あっん…んうっ」
同時に後ろから耳も舐められて葵はさらに追い詰められていった。
「あんっ、耳もっきもちいいっ…んんっんっあっ…」
既に綾人とのプレイでかなり昂っていた葵はすぐに絶頂感が訪れた。
「やっ、あっ、あやとさっ、イっちゃ、いや、だめ、いっちゃいますっ…だめ、止めてっ」
「イっていいよ、あお。気持ちよくなっていい。あおが気持ちよくなってくれると俺も嬉しいよ。」
「んっ?ほんとっ?あんっだめ、イっちゃう、ほんとに、いいの?」
「うん、あお、"イけ"。」
「っ!!あっ、あああああああっ…」
極めつけに綾人から耳元で命令されて、葵は呆気なく絶頂した。
「はあっ、はぁ…」
「気持ちよくなれて偉いね。"Goodboy"、あお。」
綾人は乱れた呼吸を整える葵を注意深く見ながら、葵にdropの気配はなく落ち着いていることを確認して安心したように一息ついた。と、呼吸もずいぶん落ち着いた様子の葵が綾人に言った。
「あの、あやとさん、よかったらそれ、僕にさせてもらえませんか?」
綾人の屹立したものを指差しながら言った葵に綾人はぎょっとした。
「え…」
「口で…しても、いいです、か?」
綾人の様子を伺いながら恐る恐る尋ねる葵に綾人はくらりとしながら言った。
「それはうれしいけど…俺は別に、あおが気持ちよくなってくれたらそれで満足だよ?」
「…僕も、綾人さんになにか返したいんです。」
真剣な瞳で言う葵に綾人が根負けして、葵が舐めやすいようにもう一度ベッドの縁に座った。
「"Kneel"。」
ベッドから降りた葵に最もポピュラーなコマンドを出した。言われるがままにぺたんと座る葵に続いてコマンドを出す。
「"Lick"。」
綾人は素直に従う葵を見下ろしながら頭を撫でた。根本から舐めて、吸って、カリの段差まで入念に舐めて、玉まで触る葵は明らかに躾けられており、そのことを若干不快に思いつつも同時に自ら奉仕したいと言い出し、その技巧を自分のためだけに披露する葵に気分を良くした。
「あお、そこは無理に咥えるんじゃなくて、筋に沿うように舐めて。」
真剣に奉仕する瞳の下にあるかわいい泣きぼくろを親指で撫でて自分の方を向かせながら言った。
さらに自分好みにしつければいいだけだと思い直した綾人は、乱暴な前の男の名残の残る葵の、少し自分に無理をさせるような口淫を、葵も口で快楽を感じられるように自分好みに教えこんだ。
「んん、んむ、ふっふぁ、あぅ」
すると自分を見上げる葵の優しい垂れ目がとろんとして、葵も快感を感じているようだった。
「ん、あお、気持ちいよ。あおも気持ち良さそうだね。」
また葵の頭を撫でながら言った。自身の限界も近かったが、この自分を見上げるかわいい顔を見れなくなってしまうのが惜しいと感じた。
「んっ…あお、そろそろイくから放して。」
「んむっんうっ…ふうぅ」
「ちょっ、あお…!」
葵は聞こえているのかいないのか、とろんとした顔で綾人を放そうとしない。
「ほんとに、あお!……ふっ……くっ…!」
「んむっ、んんんんっんっんっ…はぁ…。」
綾人はより激しさを増す葵の口淫に耐えきれず口内に精を放った。
「あお、ほらティッシュ!」
「んむっ……飲んじゃいました。」
へへっと笑う葵に綾人は目を見開いてからため息をついた。
「あ…勝手にごめんなさい…」
「怒ってないよ、怒ってはないけど…もう…俺は検査してるし病気ももってないからいいけど、精液は口に含むだけでも感染症にかかるリスクもあるんだからね。」
「あ…僕も、病院に営業に行くので定期的に検診は受けてますけど病気はないですよ?」
「そういうことじゃなくて……もう…。」
「?」
「心配してるの。でも、ありがとう、あお、気持ちよかったよ。あおも…あれ?あおもイった?」
「あれ…?なんで…」
葵の腹にも新たに少量の精液がかかっていた。
「ふふ、俺の舐めて気持ちよかった?」
「あ……は、い…」
葵が窺うように綾人を見ると、綾人はにこっと微笑みながら葵を撫でた。
「ちゃんと気持ちよくなれてよかった。"Goodboy"。」
愛しげに目を細めて葵を撫でながら言う綾人に葵の胸は高なり、また顔が赤くなった。
2人はそのままお互いシャワーを浴びて眠りについた。次の日の朝、葵は綾人の暖かい腕の中で目覚めた。昨夜のことを恥じらいつつも朝食を一緒につくってその日は昼から仕事らしい綾人とまったり午前を過ごして出勤ついでにと家に送ってもらって解散した。
――1ヶ月前
『いやぁ、さすがは神木先生だ。あの難しい手術も完璧にこなされて…神木先生がいらっしゃればこの病院の未来も安泰ですな!』
『はは、ありがとうございます。無事成功してよかったです。』
綾人は大病院で医師として働いている。元は海外の大学を出てそのまま医者をやっていたのだが、2年前に母国である日本に戻ってきた。そのため経験豊富で、まだ若いがかなり評判の医師なのだ。
『…それはそうと神木先生、最近恋人の方は?』
『……残念ながら。』
綾人は今までそれほど興味を引かれるような人に出会っておらず、特定の恋人というものは基本的にはいたことがない。Domであるのでプレイのためや、単純に性欲処理のために関係をもった相手はたくさんいたが、どの相手とも基本的には一度きりの関係だった。
『ほう!そうですか!先生ほどのお人ならお相手には困らんでしょうに。なんでも院長のお孫さんからも声がかかっただとか。』
『…ああ、お孫さんは私なんかには勿体なくて、残念ながらお断りさせていただきました。』
『ほう!そうですか!先生が院長の娘さんとご結婚なさったらますます院が安泰になると思いましたのに。』
『ははは。そんなことはないですよ。』
手術後、腕はまずまずだが噂好きで権力欲が強い医師との会話にうんざりし始めたときだった。
『本当に、ありがとうございました…』
『いえいえ、大したことはしてませんよ。』
『おにいちゃん!待ってるあいだずっと一緒にいてくれてありがとう!』
待合室の方で妊婦の母親と幼い子供、それからスーツを着た儚げな美人が話をしていた。どうやらスーツの男が検診にきた母親を不安そうに待つ子供と一緒に待合室で待っていてやったらしい。
『ふふ、ちゃんとお母さんたちを待てて偉かったね。いいお兄ちゃんになるんだよ。』
『うん!』
男が子供に微笑みかけた。その美しいながらもあんまり儚い微笑みに、綾人はドキリとした。
『じゃあ、僕はそろそろ行きますね。』
『はい、お世話になりました。』
『おにいちゃんありがとう!』
男はもう一度子供に微笑み、そして頭を撫でてから去っていった。
(あれ…。)
去っていった男はふらふらしていて、華奢な背中がひどく頼りなく見えた。
あれから1ヶ月、綾人はあのときの儚い微笑みが頭に残って離れなかった。一夜の相手探しも気が向かず、あの日以来綾人は一度もプレイをしていなかった。しかし、欲求はたまる。特に綾人はDomとしての力が強く、我慢はきくが比較的まめに欲を発散しておきたいタイプだった。そこで使用したのが例のマッチングアプリだったというわけだ。ダイナミクスの欲求を発散するための一時のプレイ相手を探していただけだったのだが、あるプロフィールと写真が目にとまった。
(!これは…)
プロフィールとコメントこそ簡素なものだったが、そこに添えられていた写真はかなりの美人で、遠くから撮られており遠目にしか見えないが明らかな美人に魅せられ、長々と口説くコメントを送る男が数人いた。その男が美人だったから、というよりも綾人はその男に見覚えがある男だったので驚いた。
(あのときの…)
その男――『あお』は一月前に院内で見かけたあの男だった。綾人の頭に鮮明に記憶されているあの微笑みを浮かべた男だと気づいたとき、綾人は即座にメッセージを打った。相手と同じくらい簡潔に、だが決して、逃すことはないように。
そういったわけで、綾人は一方的に葵を知っていた。しかし、葵は実際近くで見た方が写真や記憶の中よりも数倍綺麗だった。その上、甘えなれていないのに甘やかされるとすぐに蕩ける葵の性格も、綾人の好みど真ん中だ。そんな前から気になっていて、実際あってみたらもっと自分好みだった美人とパートナーになれたら浮かれもするというものである。
しかし、綾人にはいくつか気になるところがあった。例えば絶頂したときのあの反応。dropして過呼吸にまで陥った。綾人は医者で、Domとしての力も強かったために幸い大事にならず落ち着いたが、ホテルで会ってすぐにも感じたホルモンバランスの乱れは相当ひどいものであったのだろう。…だが、それだけではない。おそらくあの反応は勝手に達したことを咎められるのを恐れての反応だ。さらに、葵が口にした『鞭はやめて、痛くしないで』の言葉。
(それに…)
綾人は寝ている葵の体を拭いているときに見えてしまった腹の痛々しい傷痕。体を見られたくないと言ったのはそういう意味だったのだろう。とすると、背中はいったいどれほどひどいことになっているのか…。綾人は葵の過去を憂いてため息を一つおとした。
(これからはたっぷり甘やかそう。)
綾人は決意を固めた。
あの日、お互い自分の本名と仕事など簡単に自己紹介してから次の金曜の夜にまた会う約束をしていた。そして金曜の夜、葵の仕事場の近くに同じく仕事を終えた綾人が葵を車で迎えに来ていた。葵が車に乗って、車が綾人の家に向かって発進した。なぜ綾人の家なのかというと、葵は車を持っていないが綾人は車を持っていて自由がきくし、それに綾人の家は葵の職場にも近いからだ。実は葵の家は綾人の職場も遠いのだが、葵の職場にも近くはない。郊外にあるので電車で40分ほどかかる。
「お疲れ様。」
「綾人さんも、お疲れ様です。」
「…あお、仕事するときは髪あげるんだね。」
「ああ、はい。営業なので、顔がはっきり見える方がいいかな、と。」
「うん、顔がよく見えてかわいい。」
「かっ……そんなことないと思いますけど…ありがとうございます。」
葵は嫌な気はしないのだが、自分ではそうは思えず恥ずかしくて照れてしまう。
「あおが照れてる顔もよく見えていいね。やっぱりかわいい。」
助手席の葵の赤くなった顔を綾人がミラー越しに見てくすりと笑う。
一度言われたら自分の顔が障害なく綾人の前にさらされているのが気になってしまい、葵は車内で会話を交わす中ずっと綾人の方を見れなかった。
「着いたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
綾人の家に到着し、二人は綾人のマンションに入った。
(大きなマンション…。)
この間のホテルもそうだが、綾人はかなりお金持ちだ。待ち合わせの部屋が上等なホテルの最上階で驚いたという話をしたら、何でも、元々海外で医者をやっていて医師としての勤務年数が長く、特に趣味もないのでお金はあっても使うところがないのだそうだ。
(住んでる世界が違う…)
葵とて大手医療メーカーの営業を勤めており、さらに営業課のエースと呼ばれているのでかなりお金はあるのだが、若くして大病院一の名医と呼び声高い綾人とは比べてはいけない。
綾人は葵が悶々と考えている間にエレベーターのボタンを押し、エレベーターが上昇し始めた。それに気づいた葵がボタンを見た。
「さ、最上階の部屋なんですか?」
「うん、そう。階数にこだわりはなかったんだけど、夜勤とかもあって夜中にバタバタしたら近所に悪いから、ひと続きになってる最上階まるまる購入したんだ。」
「そうなんですか…。」
葵は住んでいる世界が違うことを再確認し、またそんな男がどうして自分とお試しとはいえパートナーになろうといったのかが余計に分からなくなった。
(このあいだもうまくできなかったのに……いや、チャンスがあるんだから挽回できるよう頑張ろう)
葵はまた落ち込みそうになる思考を無理矢理引き上げて綾人を見た。綾人はそんな葵を見て微笑み、自室の鍵を開けて扉を開き、葵を招き入れた。
「お邪魔します。」
「どうぞ。」
「わ、広いですね…!」
「そうだね、独り暮らしだから広すぎるくらいでちょっと寂しいんだ。」
綾人が笑いながら困ったように言った。
「お風呂出来てるから、先に入りな。」
「え、そんな、綾人さんお先に…」
「…じゃあ一緒にはいる?」
「え…!」
葵は今日、仕事終わりに直接綾人の家に来て、泊まることになっていた。そのためお風呂も貸してもらう予定ではあったのだが、一緒にはいるのは…と葵が体の傷がまだ消えきっていないことを考えながら眉を下げた。
「先に入りな。」
それを見た綾人がぽんと葵の頭に手をおきもう一度言った。
「ありがとうございます…。」
申し訳なさげに葵が言うと、綾人が葵の頭に置いた手で優しく葵を撫でた。
葵は綾人に案内され、申し訳なく思いながらも先に風呂にはいった。
(結局お風呂も先にいただいてしまった…絶対に夕飯はうまく作らないと)
実は今日は、あの日の朝に葵が料理が得意だという話をしたら普段は基本外食かケータリングで済ますという綾人が、食べてみたいと言ったので、材料だけ買っておいてもらい葵が夕飯を作りに来ることになったのだ。
手早く身体を洗い、少し湯船につかって葵は脱衣所に出た。下着は持ってきていたが、タオルと部屋着は綾人が貸してくれると言っていたのでこちらもありがたく借りることにした。綾人に借りた部屋着はやはり葵には少し大きかったが、着れないというほどではなかった。
「お風呂お先にいただきました。」
そう言ってリビングに戻ってきた葵を見た綾人は少し驚いたような表情をしたあと目をそらした。
「…おかえり。じゃあ、俺も風呂にいってくるね。」
「はい。あ、キッチン借りててもいいですか?」
「ああ、もちろん。言ってた物は冷蔵庫に入ってるから。」
「分かりました。じゃあ、作りかけておきますね。」
「うん、じゃあ、よろしくね。」
「はい。」
綾人は葵と目を会わせないままそそくさと風呂場に向かった。葵は不思議に思いながらも張り切って夕飯の準備に取りかかった。
その頃、風呂場で綾人はため息をついていた。
(俺の大きい服着てるあお、思ってたよりクるなあ…)
肩幅が違うので服の肩の位置が落ちて、半袖のはずが五分袖ほどの長さになってしまっており、襟も大きく開いていた。
(……あおから言ってくるまでちゃんと手を出すつもりはないのに…あれでプレイまでして…)
もともと綾人は恋人こそいないがDomとしての欲求も強いし、適度に発散させるついでなどでかなり遊んでいる方だった。必ずプレイもセックスも、とか特にこだわってはいなかったが、綾人は多くのSubを抱いたしそれ以外とも寝た。しかし、今回ばかりは本気なのだ。半ば強引にパートナーという関係にはなったが、お試し、だとか言いくるめただけなのでプレイはすれども下手に手を出すわけにはいかない。
(持つかなあ、俺の理性…)
いや、持たせなければならない。怖がらせて逃げられてしまってはいけないのだから、と綾人は葵と会う前にも入れたはずの気合いをもう一度入れ直して風呂を出た。――このあと綾人の服の上に持参のエプロンの姿で料理を作る葵を見て、さっそく理性が揺らぐことになるのだが、このときの綾人は知るよしもない。
「あ、綾人さん、お風呂上がったんですね。もう少しでできるので待っていてもらえますか?」
「……うん。ありがとう。」
葵は風呂上がりの綾人にそう声をかけながら卵を焼いた。好き嫌いがないらしい綾人に何を作るか迷ったのだが、今日は定番のオムライスだ。簡単に作れるし失敗しないのでよく作っているため、オムライスは得意料理のひとつだ。二つ目の皿にもふわふわの卵をのせると完成だ。
「できました。ケチャップはお好みで好きな量をかけてください。」
葵はそう言いながらケチャップと二つの皿をダイニングに持っていった。
「いい匂い。美味しそうだね。」
「ありがとうございます。食べましょうか。」
言いながらエプロンをはずし、葵も席についた。
「いただきます。」
「どうぞ。」
オムライスは自信作ではあったが美味しいものも食べなれているだろう綾人にどう思われるかが心配でじっと見つめてしまう。
「……」
「おいしい!すごい、あお、料理上手だね。」
綾人が本当に美味しそうにそう言いながら葵に微笑み、葵はほっと胸を撫で下ろした。
「よかったです。僕も、いただきます。」
葵も手を合わせてオムライスを食べ始めた。やはり自信作なだけあり、美味しくできている。良かった、と思いながら二人で他愛ない会話をしながらオムライスを食べた。
夕食後、皿洗いは綾人がやってくれる、と言ったので葵は食器を拭く方にまわった。食洗機は普段コップくらいしか使わないので、持っていないのだそうだ。それを聞いて葵は驚きつつも綾人の食生活が心配になった。最近は健康志向のメニューも増えているとはいえ、ケータリングと外食ばかりではやはりよくないだろう。
「あの、よかったらまたごはん作りに来てもいいですか?」
「え、俺こそいいの?今日のオムライスも正直最近食べたものの中で一番美味しかったし、すごく助かる。」
「本当ですか?ならうれしいです。また作りに来ますね。」
自信のある料理の腕を誉められて嬉しくなった葵は綾人に満面の笑みを向けた。
皿を洗い終えて、リビングでお茶を飲みながら葵と綾人はこれからの話をした。
「あおは何をされるのが好きなのか、よくわからないって言ってたよね。」
「…はい。」
「落ち込まないで。大丈夫、これからいろいろ分かっていけばいいよ。それで、体はあんまり見ない方がいいんだよね?」
「あ、えっと、はい…。」
「…それって、もしかしてなんだけどお腹にあった傷跡と関係ある?」
「なんでそれを…!」
「ごめんね、言うか迷ったんだけど、この間体拭いたときに見えちゃって。手当てもされてないみたいだからこのままだと痕になりそうで。俺なら力にになれるかな、と思って…。それと、背中は見てないんだけど、もしかして背中も…?」
「……」
「前のパートナーに?」
「…パートナー、というか、そこまでの関係でもなかったんだと思います。」
「…言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど、それってどんな人だったのか聞いてもいい?」
「………」
どうせ傷のことはバレているのだから、と葵は例の男のことを全て話した。まだあって間もないが、葵は綾人は信頼していた。少なくとも、前のパートナーのように弱味を握って無体を強いたりはしないだろうという確信があった。
綾人は葵の話を眉間にシワを寄せながら真剣な顔で聞いた。
「…それ、警察には?」
「いいんです…。もう、終わったことなので。」
「……そうか。」
綾人は葵をぎゅっと抱きしめた。
「綾人さん…。」
「もうそいつとは会わないで。」
「…はい。もう、向こうからも会わないでおこうと言われましたし、大丈夫だと思います。」
綾人は葵を抱きしめる手にさらに力を込めた。
「他にも、なにか嫌なこととか危ないことがあったら言ってね。」
「…大丈夫ですよ、もうあの人とも会うことないですし。」
「パートナーとして約束して。何かあったら俺に言うこと、もうあいつとは会わないこと。」
「……はい。」
「あお。」
綾人が目を細めて葵を見る。本気で葵を心配しているのだ。
「わかりました、約束します。」
綾人がふう、と息を吐いて抱きしめていた手を放す。
「…今までよく頑張ったね。いい子。」
「っ…。」
綾人が葵の頭を優しく撫でる。葵は綾人の優しい眼差しに見つめられ涙がにじんできて、慌てて俯いた。
「このまま寝てもいいけど、どうする?もう寝る?」
だんだん葵の頭がほわほわしてきて瞳がとろんとしてきたころ、綾人の優しい声が耳にはいって葵ははっとした。
「…まだ、寝たくないです。」
このままだとまた何もできない。せめてちゃんとプレイをして、このDomに奉仕したい。
「そう?ならちょっとだけプレイする?」
綾人が葵の頭を撫でていた手を下ろし葵と目を合わせた。
「はい。」
「今日はどうしようか?」
「…綾人さんの、好きにしてください。」
「…あお、そんなこと簡単に言っちゃダメ。」
「……綾人さんなら、いいのに。」
「もう…。」
呆れられただろうか、とトーンの落ちた声にびくりとして綾人を見上げると、綾人は困ったようにこちらを見ていた。
「…なら今日は、あおの好きなことを探りながら、イく練習をしようか。」
「…?」
「本番のセックスはしないけど、あおが気持ちいいことだけをして素直にイく練習。あお、先にイくのに抵抗あるでしょ?」
SubのくせにDomより先に絶頂するな、とは以前の男に散々言い含められていたことだ。綾人はそれのことを言っているのだろう。
「そう…ですね…でも、Subの僕がDomより先に気持ちよくなったらダメじゃないですか。」
綾人はまた少し眉根を寄せ、難しい顔をしながら言った。
「あお、パートナーの約束を追加しよう。その男が言ったことは全部忘れて。それから俺といるときは俺のことだけ見て。」
「っ!…はい。」
「いい子。じゃあ、プレイを始めようか。あお、セーフワードは?」
「"Stop"。」
「うん、いいね、嫌だと思ったら遠慮なく言うこと。」
「はい。」
綾人は素直に返事をした葵を褒めるようにもう一度頭を撫でた。
「じゃあ、あお、寝室に行こうか。」
葵が頷いたのを確認して綾人は寝室に向かう。後ろを葵がついていった。寝室に入ると綾人は葵を振り返った。
「ここで止まって。"Stay"。」
綾人は寝室のドアのところに葵を立たせ、ベッドに腰かけると葵をじっと見てから次のコマンドを発した。
「あお、"Come"」
弾かれたように綾人の方へと向かう葵。綾人がベッドのとなりをとんとん、と叩いたので葵もとなりに座る。
「うん、よくできたね。」
葵の頭を撫でて綾人が微笑む。綾人に褒められて、撫でられて葵はまた頭がふわふわとしてくる。
「あお、キスしてもいい?」
「は、はい。」
葵の瞳をじっと見つめながら伺う綾人に葵は緊張しながら目を閉じた。すると葵の唇に優しいキスが落ちてきて、葵の肩がぴくりと揺れる。何度か角度を変えてキスをしたあと、綾人が少しだけ隙間を開けて囁いた。
「あお、力抜いて。」
キスになれていない葵は無意識に唇に力をいれてしまっていたらしい。意識して力を抜くと下唇をペロリと舐められて驚いた葵が少し口を開いたところに綾人が舌を差し込んだ。
「んんぅ、ふっ、んむ…」
綾人は葵の歯列をなぞり、上顎を擽るように撫で、葵の口内をもてあそぶ。さらに綾人の大きな手で敏感な耳までさわられてしまい、葵はされるがままになって綾人の服の胸元を握った。舌をからめられて必死にそれに応えているうちにどんどん体から力が抜けて、ついに葵の瞼に溢れそうなほど涙がたまった頃、綾人は唇を離した。
「はあっ…はっ…」
涙目で綾人を見る葵に綾人は少し意地悪そうに笑いながら言った。
「キス、慣れてないんだ?かわいい。」
言いながら葵の目尻にたまった涙をぬぐう綾人にやっと呼吸が落ち着いてきた葵は辛うじて言葉を返した。
「……ファーストキス、だったので。」
「え!そうだったの?」
「…はい。今まで仕事ばかりで恋人ができたこともなく、プレイもあんな感じでしたので…」
「そうなんだ。」
葵がこの年にもなって恥ずかしいことを言ってしまった、とやや後悔していたが綾人は嬉しそうだ。急に機嫌が良くなった綾人を疑問に思いながら葵は綾人を見た。
「ファーストキスだったんならもっと大切にすればよかったって思ったけど、俺があおの初めてなんだって思うと、うれしい。」
心底嬉しそうに言う綾人に葵はさらに恥ずかしくなって顔を赤く染めた。
ベッドのヘッドボードにもたれ掛かった綾人がもう一度葵を呼んだ。
「あお、"Come"。俺の脚の間に来て。」
綾人が自身の開いた脚の間に葵を座らせた。
「ん、いい子。じゃあ、手、いれるね?」
言ってから葵の部屋着の中に手をいれた綾人は葵の胸の周りを撫でた。
「んっ、ふっ…」
胸の先には触れず、焦らすようにじっくりと性感を高める動きに葵はもどかしくて身をよじらせる。
「あお、どうしたの?」
「あっ…あやとさん…」
「ん?言わないと分かんないよ、言って。"Say"」
葵が言いやすいようにコマンドを交えて問うてくる綾人に葵の口は素直に動いた。
「あぅ…胸の先も…触ってください。」
「よく言えました。」
にっこり葵に笑いかけた綾人がずっと焦らしていた胸の先に触れる。今までは感じたこともないし特に敏感ではなかったそこに触れられて、葵はびっくりするほど感じていた。葵が驚いている間に、優しく撫で回していた手が急にぎゅっとそこを挟まれた。
「んんっ!あっやっ、あやとさんっ…」
潤んだ瞳で綾人を見つめる葵により気分をよくした綾人は葵の耳元で囁いた。
「ちょっと痛いくらいの方が好きなんだ。えっちだね。」
耳が弱い葵はそのいつもより更に落ち着いたからかうような綾人の声にも感じてしまい、耳まで真っ赤になった。
「あんっ、やっ、んんんっ、」
「耳弱いね。きもちい?」
「やっだめ、耳だめです…」
「だめなの?」
ずっと葵の耳元で話しかける綾人に思わず否定してしまうと、綾人が葵の外耳を舐めた。
「ひぃっ、あやとさっ…やっんんっ」
「気持ちよさそうだけど…嫌なの?」
「ちがっ…いやじゃなっ」
「なら気持ちいい?気持ちいいときはちゃんと言って。」
今度はコマンドを使わずに問いかけた綾人に葵は案外すんなりと言葉を返せた。
「きっ、気持ちいい…です…」
「いい子だね。"Goodboy"」
綾人からSubへの最高の誉め言葉をもらい、葵は何も考えられなくなってきた。
「下もさわってもいい?」
また葵に確認をとってくれる綾人にきゅんとしながら葵は頷いた。
「自分で脱げる?"Strip"」
力が入らない体でノロノロと命令を実行する葵をじっと見つめながら待ってくれた綾人は、葵が脱ぎ終わると葵を後ろからぎゅっと抱きしめながら言った。
「いい子。じゃあ、さわるね。」
とっくに反応していた自身に綾人のきれいな長い指を這わされ、葵はびくっとした。
「あっ…んんんっ…」
「大丈夫。いっぱい気持ちよくなってね。」
「んっ、はい…あっ、気持ちいい…」
健気に自分の言いつけたことを守る葵に綾人もきゅんとしながら葵の色の薄い綺麗なものをしごいた。
「はっ、んっ、あやとさんっ、あっん…んうっ」
同時に後ろから耳も舐められて葵はさらに追い詰められていった。
「あんっ、耳もっきもちいいっ…んんっんっあっ…」
既に綾人とのプレイでかなり昂っていた葵はすぐに絶頂感が訪れた。
「やっ、あっ、あやとさっ、イっちゃ、いや、だめ、いっちゃいますっ…だめ、止めてっ」
「イっていいよ、あお。気持ちよくなっていい。あおが気持ちよくなってくれると俺も嬉しいよ。」
「んっ?ほんとっ?あんっだめ、イっちゃう、ほんとに、いいの?」
「うん、あお、"イけ"。」
「っ!!あっ、あああああああっ…」
極めつけに綾人から耳元で命令されて、葵は呆気なく絶頂した。
「はあっ、はぁ…」
「気持ちよくなれて偉いね。"Goodboy"、あお。」
綾人は乱れた呼吸を整える葵を注意深く見ながら、葵にdropの気配はなく落ち着いていることを確認して安心したように一息ついた。と、呼吸もずいぶん落ち着いた様子の葵が綾人に言った。
「あの、あやとさん、よかったらそれ、僕にさせてもらえませんか?」
綾人の屹立したものを指差しながら言った葵に綾人はぎょっとした。
「え…」
「口で…しても、いいです、か?」
綾人の様子を伺いながら恐る恐る尋ねる葵に綾人はくらりとしながら言った。
「それはうれしいけど…俺は別に、あおが気持ちよくなってくれたらそれで満足だよ?」
「…僕も、綾人さんになにか返したいんです。」
真剣な瞳で言う葵に綾人が根負けして、葵が舐めやすいようにもう一度ベッドの縁に座った。
「"Kneel"。」
ベッドから降りた葵に最もポピュラーなコマンドを出した。言われるがままにぺたんと座る葵に続いてコマンドを出す。
「"Lick"。」
綾人は素直に従う葵を見下ろしながら頭を撫でた。根本から舐めて、吸って、カリの段差まで入念に舐めて、玉まで触る葵は明らかに躾けられており、そのことを若干不快に思いつつも同時に自ら奉仕したいと言い出し、その技巧を自分のためだけに披露する葵に気分を良くした。
「あお、そこは無理に咥えるんじゃなくて、筋に沿うように舐めて。」
真剣に奉仕する瞳の下にあるかわいい泣きぼくろを親指で撫でて自分の方を向かせながら言った。
さらに自分好みにしつければいいだけだと思い直した綾人は、乱暴な前の男の名残の残る葵の、少し自分に無理をさせるような口淫を、葵も口で快楽を感じられるように自分好みに教えこんだ。
「んん、んむ、ふっふぁ、あぅ」
すると自分を見上げる葵の優しい垂れ目がとろんとして、葵も快感を感じているようだった。
「ん、あお、気持ちいよ。あおも気持ち良さそうだね。」
また葵の頭を撫でながら言った。自身の限界も近かったが、この自分を見上げるかわいい顔を見れなくなってしまうのが惜しいと感じた。
「んっ…あお、そろそろイくから放して。」
「んむっんうっ…ふうぅ」
「ちょっ、あお…!」
葵は聞こえているのかいないのか、とろんとした顔で綾人を放そうとしない。
「ほんとに、あお!……ふっ……くっ…!」
「んむっ、んんんんっんっんっ…はぁ…。」
綾人はより激しさを増す葵の口淫に耐えきれず口内に精を放った。
「あお、ほらティッシュ!」
「んむっ……飲んじゃいました。」
へへっと笑う葵に綾人は目を見開いてからため息をついた。
「あ…勝手にごめんなさい…」
「怒ってないよ、怒ってはないけど…もう…俺は検査してるし病気ももってないからいいけど、精液は口に含むだけでも感染症にかかるリスクもあるんだからね。」
「あ…僕も、病院に営業に行くので定期的に検診は受けてますけど病気はないですよ?」
「そういうことじゃなくて……もう…。」
「?」
「心配してるの。でも、ありがとう、あお、気持ちよかったよ。あおも…あれ?あおもイった?」
「あれ…?なんで…」
葵の腹にも新たに少量の精液がかかっていた。
「ふふ、俺の舐めて気持ちよかった?」
「あ……は、い…」
葵が窺うように綾人を見ると、綾人はにこっと微笑みながら葵を撫でた。
「ちゃんと気持ちよくなれてよかった。"Goodboy"。」
愛しげに目を細めて葵を撫でながら言う綾人に葵の胸は高なり、また顔が赤くなった。
2人はそのままお互いシャワーを浴びて眠りについた。次の日の朝、葵は綾人の暖かい腕の中で目覚めた。昨夜のことを恥じらいつつも朝食を一緒につくってその日は昼から仕事らしい綾人とまったり午前を過ごして出勤ついでにと家に送ってもらって解散した。
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