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8.祐佳の避妊講座(後編)
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「じゃあ、ここで仕切り直すけど、私、実はコレも持ってるんだよね」
祐佳はさっきのポーチから今度は違う小箱を出した。先ほどの箱よりも一回りくらい小さな箱。白い箱に赤い人のようなものが印刷されている。こっちは見たことがない。何だろう。
「なにそれ?」
「へへへー。何だと思う?」
わたしの質問に祐佳はすぐに答えず、箱の端を持って左右に振っている。
「あっ、それって」
梓はそれが何かわかったようだけど、わたしにはさっぱりわからなかった。
「避妊薬だよ」
「やっぱピルだよねっ」
梓がポンと手を叩く。
「いや、これは厳密に言うと『モーニングアフターピル』って種類の避妊薬だよ。普通のピルは毎日飲み続けなければいけないんだけど、これはセックスしてから72時間以内に1錠服用すれば妊娠が防げるって薬なんだ」
「でも実際には24時間以内に飲んだほうが避妊効果が高いっていうよね。それでも100%妊娠を防げるわけじゃないし、頭痛とか吐き気とかいろいろ副作用がでることもあるみたいだよー。やっぱりあてにし過ぎるのは問題かも。『転ばぬ先の杖』って感じで持っておくといいかもね」
祐佳の説明を優里奈が補足してくれる。祐佳は優里奈のほうを向いてうなずく。
「へー。勉強になったね」
梓が感心したように、うんうんとうなずく。そんなものがあるなんてわたしも知らなかった。祐佳が持っている箱をじっと見つめる。
「そんな薬どうやって手に入れたの?そういうのって病院にいかないと手に入らないんじゃない?」
わたしは素直な疑問を口にした。
「大学生のお姉ちゃんが教えてくれたんだよ。お姉ちゃんの彼氏、あんまりコンドームをつけてくれないらしくてね。念のため持ってるって言ってた。私にもお姉ちゃんが一つくれたんだけど、インターネットで手軽に買えるらしくてね。この前注文して手に入れたってわけ」
「ふーん。いいお姉さんだねー。男の人を見る目はあまりなさそうだけどー」
ゆったりとした口調で祐佳のお姉さんを軽くディスる優里奈。祐佳は苦笑いをしながら
「とりあえずみんなに一つずつあげるよ。いざという時に安心だから」
ポーチから同じ箱をさらに二つ取り出して梓、優里奈、わたしに一箱ずつ渡す。正直に言えば受取り拒否したかったんだけど、わたしだけ断るのも気が引けたから、素直にお礼を言って受け取っておくことにした。
「あ、美咲にはついでにこっちも進呈しよう。Mサイズだけど」
ポーチから新品のコンドームの箱を取り出す祐佳。それをわたしの手の上にのせる。
「まあ、どっちもわたしには使い道ないけどね」
苦笑いをする。そんなわたしを目を細めてじっと見つめる3人。
「……」
しばらくその場を静寂が支配したような気がする。沈黙を破って祐佳が口を開く。
「ねえ、前から思ってたんだけど、美咲って自分に自信ないの?」
「だってわたしってフツーじゃん。祐佳たちみたいに魅力的な女の子じゃないし」
「……」
再び沈黙。
「それ、本気で言ってるの?」
祐佳はあっけにとられたような顔だ。
「なんで。本気に決まってるじゃない」
3人は目を丸くして口をポカーンと開けている。わたし、変なこと言ったのかな?
「美咲ってカワイイじゃん。目が大っきくて顔小さいし。お人形さんみたいだよっ」
梓がこっちに身を乗り出すようにして顔を近づけてくる。
「そもそも美咲ってこの中で一番男子にモテるタイプでしょ。性格だって悪くないし」
祐佳は呆れたような表情をしている。二人ともなに言ってんのよ。なんとなく「褒め殺し」って言葉が頭に浮かぶ……。とりあえず反論しよう。
「でもわたしはみんなみたいに男子に告白されたりしないし、キレイだねとかカワイイねとかほめられたことないよ。みんなでわたしのこと、陥れようとしていない?」
「えー。美咲ちゃんの隠れファン多いんだけどなー。部活のときに男子たちがよく見に来てるじゃん。視線気にならないの?」
優里奈が怪訝な表情をする。わたしは「う~ん」とうなって考えてみたけど、全く心当たりがなかった。狐につままれるとはこのことかも。
「眼中にないってわけね。だから男子も近づいてこない」
「だねぇ。いくら美咲ちゃんがかわいくても、本人に全然その気がないってわかっちゃうと告白しようとか思わないもんねー」
「だねっ。玉砕覚悟でトッコーするようなツワモノはうちの男子にはいないよねっ」
祐佳、優里奈、梓が顔を見合わせて、うんうんとうなずき合う。3人の間で結論が出たようだけど、わたしはいまいち納得できなかった。
「好きな人いないの?」
「いない」
「じゃっ、いいなって思う男子は?」
「いない」
祐佳と梓が矢継ぎ早に聞いてくる。わたしは即答する。
「じゃあー。一緒にいて安心するって男の子とか、心配で放っておけないって男の子とか、いない?」
「……いないよ」
優里奈に質問されたとき、脳裏に翔流くんの顔が浮かんだ。でも翔流くんはそんなんじゃない。そんなんじゃないよ。
「あれ?いまちょっと間があったよね」
「あった、あった」
「誰か思い浮かんだんじゃない?おしえてよー」
祐佳の鋭い指摘。梓、優里奈もすぐにそれに乗っかる。こうなると3人の熾烈な追及をかわす術はない。
「あ、そうだ。今日お母さんにおつかい頼まれてたんだった。じゃあ、今日はこれで」
わたしは強引に話を打ち切って立ち上がる。多勢に無勢。ここは退却あるのみだ。
「美咲、また逃げるの?私たちあなたのことを思って……」
祐佳はわたしへの憤りを隠さない。
「わかった、わかった、その話はあとで聞くからね」
梓と優里奈がブーイングをしていたけれど、それもいつものことだ。明日になればみんなケロッとしている。わたしはそんな彼女たちに感謝しているんだ。
祐佳はさっきのポーチから今度は違う小箱を出した。先ほどの箱よりも一回りくらい小さな箱。白い箱に赤い人のようなものが印刷されている。こっちは見たことがない。何だろう。
「なにそれ?」
「へへへー。何だと思う?」
わたしの質問に祐佳はすぐに答えず、箱の端を持って左右に振っている。
「あっ、それって」
梓はそれが何かわかったようだけど、わたしにはさっぱりわからなかった。
「避妊薬だよ」
「やっぱピルだよねっ」
梓がポンと手を叩く。
「いや、これは厳密に言うと『モーニングアフターピル』って種類の避妊薬だよ。普通のピルは毎日飲み続けなければいけないんだけど、これはセックスしてから72時間以内に1錠服用すれば妊娠が防げるって薬なんだ」
「でも実際には24時間以内に飲んだほうが避妊効果が高いっていうよね。それでも100%妊娠を防げるわけじゃないし、頭痛とか吐き気とかいろいろ副作用がでることもあるみたいだよー。やっぱりあてにし過ぎるのは問題かも。『転ばぬ先の杖』って感じで持っておくといいかもね」
祐佳の説明を優里奈が補足してくれる。祐佳は優里奈のほうを向いてうなずく。
「へー。勉強になったね」
梓が感心したように、うんうんとうなずく。そんなものがあるなんてわたしも知らなかった。祐佳が持っている箱をじっと見つめる。
「そんな薬どうやって手に入れたの?そういうのって病院にいかないと手に入らないんじゃない?」
わたしは素直な疑問を口にした。
「大学生のお姉ちゃんが教えてくれたんだよ。お姉ちゃんの彼氏、あんまりコンドームをつけてくれないらしくてね。念のため持ってるって言ってた。私にもお姉ちゃんが一つくれたんだけど、インターネットで手軽に買えるらしくてね。この前注文して手に入れたってわけ」
「ふーん。いいお姉さんだねー。男の人を見る目はあまりなさそうだけどー」
ゆったりとした口調で祐佳のお姉さんを軽くディスる優里奈。祐佳は苦笑いをしながら
「とりあえずみんなに一つずつあげるよ。いざという時に安心だから」
ポーチから同じ箱をさらに二つ取り出して梓、優里奈、わたしに一箱ずつ渡す。正直に言えば受取り拒否したかったんだけど、わたしだけ断るのも気が引けたから、素直にお礼を言って受け取っておくことにした。
「あ、美咲にはついでにこっちも進呈しよう。Mサイズだけど」
ポーチから新品のコンドームの箱を取り出す祐佳。それをわたしの手の上にのせる。
「まあ、どっちもわたしには使い道ないけどね」
苦笑いをする。そんなわたしを目を細めてじっと見つめる3人。
「……」
しばらくその場を静寂が支配したような気がする。沈黙を破って祐佳が口を開く。
「ねえ、前から思ってたんだけど、美咲って自分に自信ないの?」
「だってわたしってフツーじゃん。祐佳たちみたいに魅力的な女の子じゃないし」
「……」
再び沈黙。
「それ、本気で言ってるの?」
祐佳はあっけにとられたような顔だ。
「なんで。本気に決まってるじゃない」
3人は目を丸くして口をポカーンと開けている。わたし、変なこと言ったのかな?
「美咲ってカワイイじゃん。目が大っきくて顔小さいし。お人形さんみたいだよっ」
梓がこっちに身を乗り出すようにして顔を近づけてくる。
「そもそも美咲ってこの中で一番男子にモテるタイプでしょ。性格だって悪くないし」
祐佳は呆れたような表情をしている。二人ともなに言ってんのよ。なんとなく「褒め殺し」って言葉が頭に浮かぶ……。とりあえず反論しよう。
「でもわたしはみんなみたいに男子に告白されたりしないし、キレイだねとかカワイイねとかほめられたことないよ。みんなでわたしのこと、陥れようとしていない?」
「えー。美咲ちゃんの隠れファン多いんだけどなー。部活のときに男子たちがよく見に来てるじゃん。視線気にならないの?」
優里奈が怪訝な表情をする。わたしは「う~ん」とうなって考えてみたけど、全く心当たりがなかった。狐につままれるとはこのことかも。
「眼中にないってわけね。だから男子も近づいてこない」
「だねぇ。いくら美咲ちゃんがかわいくても、本人に全然その気がないってわかっちゃうと告白しようとか思わないもんねー」
「だねっ。玉砕覚悟でトッコーするようなツワモノはうちの男子にはいないよねっ」
祐佳、優里奈、梓が顔を見合わせて、うんうんとうなずき合う。3人の間で結論が出たようだけど、わたしはいまいち納得できなかった。
「好きな人いないの?」
「いない」
「じゃっ、いいなって思う男子は?」
「いない」
祐佳と梓が矢継ぎ早に聞いてくる。わたしは即答する。
「じゃあー。一緒にいて安心するって男の子とか、心配で放っておけないって男の子とか、いない?」
「……いないよ」
優里奈に質問されたとき、脳裏に翔流くんの顔が浮かんだ。でも翔流くんはそんなんじゃない。そんなんじゃないよ。
「あれ?いまちょっと間があったよね」
「あった、あった」
「誰か思い浮かんだんじゃない?おしえてよー」
祐佳の鋭い指摘。梓、優里奈もすぐにそれに乗っかる。こうなると3人の熾烈な追及をかわす術はない。
「あ、そうだ。今日お母さんにおつかい頼まれてたんだった。じゃあ、今日はこれで」
わたしは強引に話を打ち切って立ち上がる。多勢に無勢。ここは退却あるのみだ。
「美咲、また逃げるの?私たちあなたのことを思って……」
祐佳はわたしへの憤りを隠さない。
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