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9.本当の美咲
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美咲が去った後の教室。祐佳、梓、優里奈が腑に落ちないというような表情で話をしている。
「なんか本人は忘れちゃってるみたいだけど、あたしの魅力を教えてくれたのは美咲なのにね。自分はフツーとか言っちゃってさ。おかしくない?」
そう言って梓は口を尖らせる。
「私って今はこうだけど、元々自分に自信が持てなかったんだよ……」
祐佳は過去を思い出すように目線を上に向ける。
「私ねー。のんびりした性格でねー。話し方がゆっくりだからー。いつもトロいって馬鹿にされてたんだよね。でも美咲ちゃんはそんな私の話し方を好きって言ってくれたんだ。優里奈と一緒にいると癒やされるって。あのときは本当に嬉しかった。それでのんびりしたところも自分の個性なんだって思えるようになったんだよ……」
そう言って優里奈はうつむく。
「あたし、運動は得意なんだけど勉強はからっきしダメでさ。男子にバカ女呼ばわりされて凹んでたんだよね。でも美咲はふさぎ込むあたしに『バカみたいな明るさが梓の取り柄なんだからいつも明るくしてなよ』って真顔で言い出すんだ。思わず笑っちゃったよ。慰め方がなんか上から目線でさ。でもあたしそれで心が軽くなった気がしたんだ。あたしの良さをわかってくれる子がいるんだってね」
うんうん、とうなずきながらしみじみと語る梓。祐佳は2人の話に耳を傾けていたが、窓の向こうの夕焼け空を見ながらひとりごとのように話し出す。
「私、この見た目で、思ったことをストレートに言っちゃうタイプだから、みんなにキツい性格だと思われたんだ。なんかクラスの女子からもどんどん距離を置かれちゃってさ。ずっと寂しかった……。でも美咲はそんなわたしにうるさいくらいにガンガン話しかけてきてね。友達になってくれっていうの。祐佳は裏表がないから信頼できるってさ。その言葉でなんか救われた気がしたんだ……」
「うん。あたしたちって、結局、美咲に救われてるんだよねっ」
「そうだねー。私は美咲ちゃんのおかげでこうやって毎日楽しく過ごせてると思ってるよ」
「だから私、今の美咲に納得がいかないんだよ。前はあんなふうに自分に魅力がないとかいう子じゃなかったでしょ」
祐佳は興奮して机をバンっと叩く。
「そういえば、美咲って昔はもっと自由だったっていうか。自分の気持ちに正直だったような気がするんだよね」
「うん。表情もちょっと硬くなったよー。いつも感情を抑えてるみたい。今もかわいいんだけど、感情豊かでコロコロと表情が変わる美咲ちゃんはもっとカワイイんだよ。ギュッと抱きしめたくなるのー」
腕を組んで首をかしげる梓。優里奈はその隣で抱きしめるようなポーズをしている。
「それからなんかあの子、自分の気持ちに鈍感になってるっていうか。自分にとって都合の悪いことを見ないようにしてるって気がするんだよ」
祐佳は眉間にしわを寄せ、目を落とす。
「ねーねー。美咲が変わったのって、やっぱりお姉さんがいなくなってからだよね」
梓が祐佳の肩をポンポンと叩く。
「うん。美咲ってお姉ちゃん子みたいなところあったから、ショックは大きかったみたいだよ。小6の秋かな。あの頃、ちょっとおかしかったでしょ」
「そうそう。ときどき考え込むようにボーッとしてることが多くになって、授業中に突然泣き出したこともあったよね」
「うんうん。あのときは私たちもオロオロしちゃったよねー。本人はせいいっぱい元気なふりしてるんだけど美咲ちゃんって感情が顔に出やすかったから……痛々しくってね……」
梓と優里奈は顔を見合わせた後、それぞれうつむく。
「あー、あたし、思い出した。美咲がメガネをかけ始めたのもその頃だったよね」
梓はバッと顔を上げて2人を見回す。
「あれはびっくりしたねー。イメチェンにもほどがあるよー」
「そうだね。でもメガネをかけた美咲は見違えるほど元気になってた。学校でつらそうな姿を見ることはなくなったし、普通に楽しくおしゃべりできるようになってたしね」
「ってゆうことは、美咲が元気になったのは、あのメガネのおかげってこと?」
梓は目をパチクリさせながら祐佳のほうを見る。
「そうだと思う。あれって実は、お姉さんの美月さんがかけてたメガネなんだよ。形が特徴的だからすぐわかった。私のお姉ちゃんが美月さんと同級生でね。何度も会ってるから間違いないよ」
「そういえば美咲ちゃんって頭が良くて優しいお姉ちゃんみたいになりたいって言ってたねー」
「うん。だから私、思うんだ。美咲はあのメガネをかけることで本当の自分を無理やり抑えて、美月さんになろうとしてるって」
祐佳はロングヘアーの髪をかき上げる。そして梓と優里奈に交互に目をやりながら話しを続ける。
「たぶん、美咲にとってあのメガネは失意のどん底から立ち直るために必要なものだったんだと思う。でも美咲は美咲。美月さんじゃない。私は本当の美咲に戻って欲しいんだ」
祐佳はそこまで話すとふぅーと息を吐いた。
「あっ、そっか、美咲を元に戻すにはあの丸メガネを外させちゃえばいいんだ。じゃあみんなで強引に奪っちゃおっか」
「梓ちゃん。そんな単純じゃないよー。本当に解決しなきゃいけないのは美咲ちゃんの心の問題だからね」
「そう。優里奈の言うとおりさ。メガネは美咲が変わるきっかけに過ぎないんだ。だから『もうメガネは必要ない』って自覚しないと何にも変わらない」
「う~ん。美咲ってすっごく頑固だからなぁ」
梓は腕を組んで目をつぶり、ウンウンとうなる。祐佳はそんな彼女を一瞥し、静かな口調で話し出す。
「誰かみたいになりたい、自分を変えたいって強く思う気持ちってね。元をただせば自己否定から始まってるんだよ」
「そうかー。たぶん美咲ちゃんはお姉さんがいなくなって泣いてばかりいる自分がゆるせなかったんだね。だから憧れのお姉さんみたいになりたいって思ったのかも」
「うん。美咲は自分の気持ちに素直過ぎるところがあったからね。お姉さんのことに動揺して感情を抑えられなくなった自分に嫌気が差した。それでああなっちゃったって考えるのが妥当かな」
「ふ~ん。祐佳っていろいろ考えてるんだね。だてにエッチ博士じゃないねっ」
二人の会話にウンウンとうなずきながら耳を傾けていた梓が口を挟む。
「まあね。私はいつも美咲のこと観察してるから……ん、私って梓の中でエッチ博士になってんの?勘弁してよー」
「祐佳ちゃんは、美咲ちゃんのこと大好きだもんね。いつもなんか熱いまなざしで見てる」
祐佳は、優里奈の指摘にハッとしたような顔をしたが、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻る。
「……まあ、とにかくだね。私はあの子に『もうメガネは必要ない』って自覚させたいって思ってる」
「とりあえず理屈はわかったんだけどさー。それって本当にできるの?」
梓は首をかしげている。
「美咲ちゃんを元に戻すことができるのは、お姉さんだけのような気がするんだよねー。私たちがなんとかできる問題でもなさそう……」
「うん、私もそう思ってた。でも今日話してみて気づいたんだ。美咲を元に戻す鍵は、あの子自身が封印している恋愛感情にあるんじゃないかって」
「えっ、それってどういうこと?」
梓は机をバンと叩き、祐佳のほうに身を乗り出す。祐佳は梓と優里奈に視線を送ったあと、自分の考察を話し始める。
「美咲は無意識に恋愛から自分を遠ざけているんだよ。だから恋愛につながる状況に自分を置かないようにしてる。魅力的な女の子じゃないって思ってるのもそのせい。そうすれば男子にとって自分が恋愛対象外ってことにできるから……」
「あっ、そういえば小学生の頃、あたしに好きな人ができたときさ。美咲、応援してくれたんだよね。結果はアレだったけど……あんときは恋愛にも興味津々な感じだったなぁ」
梓は思い出に浸るかのように遠い目をしている。
「う~ん。やっぱりこれもお姉さんのことと関係あるよね。家出の理由が彼氏とのことだし……」
優里奈は眉根を寄せる。
「うん……でもね。だからこそお姉さんのことを乗り越えるきっかけになると思うんだ。恋する気持ちは理性では抑えられない。恋をすればおのずと感情が溢れ出して止まらなくなる。だから……」
「なるほどー。そうなると美咲ちゃん、今度はお姉さんのメガネをかけてる自分を否定しなきゃならなくなるね」
「そう、美咲にとってあのメガネは理性の象徴なんだ。それを溢れ出る恋愛感情で吹き飛ばす。そうすれば本当の美咲を取り戻せそうな気がするんだよ」
祐佳は確信に満ちた目で言った。優里奈はそんな彼女にうなずく。
「なんかよくわっかんないけど、とにかく美咲が恋をすれば、にっくき丸メガネがドーンって吹っ飛んで、元の美咲がただいまーって帰ってくるってことでいいの?」
梓は腕を組んで首を傾げている。祐佳はそんな彼女を唖然とした目で見つめたあと、「まあ、そんなもんだよ」と言った。梓は「うんうん、そうだよね」っと一人で納得していたが、優里奈は「梓ちゃん、わかってないんじゃない」と耳打ちする。祐佳は「まあいいんだよ。梓はあれでも大事なことはわかってるんだから」と意に介さない。2人がそんな会話をヒソヒソとしていると、梓が今思い出したといわんばかりに大声で指摘する。
「でもさ。美咲って好きな人いないよね」
「いや、ちゃんといるよ。まだ本人はその気持ちに気づいていないけどね。私は確信してる」
「さっすが、祐佳ちゃん。で、やっぱり彼だよね」
「えー。優里奈も知ってるの?なんでー」
「まあ、私も美咲ちゃんのこと大好きだからだよ。祐佳ちゃんの海のように広くて深い愛情には及ばないけどねー」
優里奈は祐佳を温かい目で見る。
「……私ってどんだけ美咲のこと大好きなんだよ。まあ好きなんだけどさ……そうあらためて言われるとなんか恥ずいよ……」
祐佳は優里奈の発言にツッコみを入れつつも、顔を赤らめている。
「あっ、祐佳がデレたー。まあそんなことどーでもいいからさー。あたしにも教えてよ。美咲の好きな人って誰?誰?」
気になって仕方がないというようすで梓はジタバタする。そんな梓に優里奈が耳打ちする。
「えぇぇ!!」
教室内に梓の叫び声が響き渡る。祐佳が耳をふさぎながら彼女に注意する。
「梓、うっさいよ。だからさ……私たちで協力してね……美咲を彼と……」
「なんか本人は忘れちゃってるみたいだけど、あたしの魅力を教えてくれたのは美咲なのにね。自分はフツーとか言っちゃってさ。おかしくない?」
そう言って梓は口を尖らせる。
「私って今はこうだけど、元々自分に自信が持てなかったんだよ……」
祐佳は過去を思い出すように目線を上に向ける。
「私ねー。のんびりした性格でねー。話し方がゆっくりだからー。いつもトロいって馬鹿にされてたんだよね。でも美咲ちゃんはそんな私の話し方を好きって言ってくれたんだ。優里奈と一緒にいると癒やされるって。あのときは本当に嬉しかった。それでのんびりしたところも自分の個性なんだって思えるようになったんだよ……」
そう言って優里奈はうつむく。
「あたし、運動は得意なんだけど勉強はからっきしダメでさ。男子にバカ女呼ばわりされて凹んでたんだよね。でも美咲はふさぎ込むあたしに『バカみたいな明るさが梓の取り柄なんだからいつも明るくしてなよ』って真顔で言い出すんだ。思わず笑っちゃったよ。慰め方がなんか上から目線でさ。でもあたしそれで心が軽くなった気がしたんだ。あたしの良さをわかってくれる子がいるんだってね」
うんうん、とうなずきながらしみじみと語る梓。祐佳は2人の話に耳を傾けていたが、窓の向こうの夕焼け空を見ながらひとりごとのように話し出す。
「私、この見た目で、思ったことをストレートに言っちゃうタイプだから、みんなにキツい性格だと思われたんだ。なんかクラスの女子からもどんどん距離を置かれちゃってさ。ずっと寂しかった……。でも美咲はそんなわたしにうるさいくらいにガンガン話しかけてきてね。友達になってくれっていうの。祐佳は裏表がないから信頼できるってさ。その言葉でなんか救われた気がしたんだ……」
「うん。あたしたちって、結局、美咲に救われてるんだよねっ」
「そうだねー。私は美咲ちゃんのおかげでこうやって毎日楽しく過ごせてると思ってるよ」
「だから私、今の美咲に納得がいかないんだよ。前はあんなふうに自分に魅力がないとかいう子じゃなかったでしょ」
祐佳は興奮して机をバンっと叩く。
「そういえば、美咲って昔はもっと自由だったっていうか。自分の気持ちに正直だったような気がするんだよね」
「うん。表情もちょっと硬くなったよー。いつも感情を抑えてるみたい。今もかわいいんだけど、感情豊かでコロコロと表情が変わる美咲ちゃんはもっとカワイイんだよ。ギュッと抱きしめたくなるのー」
腕を組んで首をかしげる梓。優里奈はその隣で抱きしめるようなポーズをしている。
「それからなんかあの子、自分の気持ちに鈍感になってるっていうか。自分にとって都合の悪いことを見ないようにしてるって気がするんだよ」
祐佳は眉間にしわを寄せ、目を落とす。
「ねーねー。美咲が変わったのって、やっぱりお姉さんがいなくなってからだよね」
梓が祐佳の肩をポンポンと叩く。
「うん。美咲ってお姉ちゃん子みたいなところあったから、ショックは大きかったみたいだよ。小6の秋かな。あの頃、ちょっとおかしかったでしょ」
「そうそう。ときどき考え込むようにボーッとしてることが多くになって、授業中に突然泣き出したこともあったよね」
「うんうん。あのときは私たちもオロオロしちゃったよねー。本人はせいいっぱい元気なふりしてるんだけど美咲ちゃんって感情が顔に出やすかったから……痛々しくってね……」
梓と優里奈は顔を見合わせた後、それぞれうつむく。
「あー、あたし、思い出した。美咲がメガネをかけ始めたのもその頃だったよね」
梓はバッと顔を上げて2人を見回す。
「あれはびっくりしたねー。イメチェンにもほどがあるよー」
「そうだね。でもメガネをかけた美咲は見違えるほど元気になってた。学校でつらそうな姿を見ることはなくなったし、普通に楽しくおしゃべりできるようになってたしね」
「ってゆうことは、美咲が元気になったのは、あのメガネのおかげってこと?」
梓は目をパチクリさせながら祐佳のほうを見る。
「そうだと思う。あれって実は、お姉さんの美月さんがかけてたメガネなんだよ。形が特徴的だからすぐわかった。私のお姉ちゃんが美月さんと同級生でね。何度も会ってるから間違いないよ」
「そういえば美咲ちゃんって頭が良くて優しいお姉ちゃんみたいになりたいって言ってたねー」
「うん。だから私、思うんだ。美咲はあのメガネをかけることで本当の自分を無理やり抑えて、美月さんになろうとしてるって」
祐佳はロングヘアーの髪をかき上げる。そして梓と優里奈に交互に目をやりながら話しを続ける。
「たぶん、美咲にとってあのメガネは失意のどん底から立ち直るために必要なものだったんだと思う。でも美咲は美咲。美月さんじゃない。私は本当の美咲に戻って欲しいんだ」
祐佳はそこまで話すとふぅーと息を吐いた。
「あっ、そっか、美咲を元に戻すにはあの丸メガネを外させちゃえばいいんだ。じゃあみんなで強引に奪っちゃおっか」
「梓ちゃん。そんな単純じゃないよー。本当に解決しなきゃいけないのは美咲ちゃんの心の問題だからね」
「そう。優里奈の言うとおりさ。メガネは美咲が変わるきっかけに過ぎないんだ。だから『もうメガネは必要ない』って自覚しないと何にも変わらない」
「う~ん。美咲ってすっごく頑固だからなぁ」
梓は腕を組んで目をつぶり、ウンウンとうなる。祐佳はそんな彼女を一瞥し、静かな口調で話し出す。
「誰かみたいになりたい、自分を変えたいって強く思う気持ちってね。元をただせば自己否定から始まってるんだよ」
「そうかー。たぶん美咲ちゃんはお姉さんがいなくなって泣いてばかりいる自分がゆるせなかったんだね。だから憧れのお姉さんみたいになりたいって思ったのかも」
「うん。美咲は自分の気持ちに素直過ぎるところがあったからね。お姉さんのことに動揺して感情を抑えられなくなった自分に嫌気が差した。それでああなっちゃったって考えるのが妥当かな」
「ふ~ん。祐佳っていろいろ考えてるんだね。だてにエッチ博士じゃないねっ」
二人の会話にウンウンとうなずきながら耳を傾けていた梓が口を挟む。
「まあね。私はいつも美咲のこと観察してるから……ん、私って梓の中でエッチ博士になってんの?勘弁してよー」
「祐佳ちゃんは、美咲ちゃんのこと大好きだもんね。いつもなんか熱いまなざしで見てる」
祐佳は、優里奈の指摘にハッとしたような顔をしたが、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻る。
「……まあ、とにかくだね。私はあの子に『もうメガネは必要ない』って自覚させたいって思ってる」
「とりあえず理屈はわかったんだけどさー。それって本当にできるの?」
梓は首をかしげている。
「美咲ちゃんを元に戻すことができるのは、お姉さんだけのような気がするんだよねー。私たちがなんとかできる問題でもなさそう……」
「うん、私もそう思ってた。でも今日話してみて気づいたんだ。美咲を元に戻す鍵は、あの子自身が封印している恋愛感情にあるんじゃないかって」
「えっ、それってどういうこと?」
梓は机をバンと叩き、祐佳のほうに身を乗り出す。祐佳は梓と優里奈に視線を送ったあと、自分の考察を話し始める。
「美咲は無意識に恋愛から自分を遠ざけているんだよ。だから恋愛につながる状況に自分を置かないようにしてる。魅力的な女の子じゃないって思ってるのもそのせい。そうすれば男子にとって自分が恋愛対象外ってことにできるから……」
「あっ、そういえば小学生の頃、あたしに好きな人ができたときさ。美咲、応援してくれたんだよね。結果はアレだったけど……あんときは恋愛にも興味津々な感じだったなぁ」
梓は思い出に浸るかのように遠い目をしている。
「う~ん。やっぱりこれもお姉さんのことと関係あるよね。家出の理由が彼氏とのことだし……」
優里奈は眉根を寄せる。
「うん……でもね。だからこそお姉さんのことを乗り越えるきっかけになると思うんだ。恋する気持ちは理性では抑えられない。恋をすればおのずと感情が溢れ出して止まらなくなる。だから……」
「なるほどー。そうなると美咲ちゃん、今度はお姉さんのメガネをかけてる自分を否定しなきゃならなくなるね」
「そう、美咲にとってあのメガネは理性の象徴なんだ。それを溢れ出る恋愛感情で吹き飛ばす。そうすれば本当の美咲を取り戻せそうな気がするんだよ」
祐佳は確信に満ちた目で言った。優里奈はそんな彼女にうなずく。
「なんかよくわっかんないけど、とにかく美咲が恋をすれば、にっくき丸メガネがドーンって吹っ飛んで、元の美咲がただいまーって帰ってくるってことでいいの?」
梓は腕を組んで首を傾げている。祐佳はそんな彼女を唖然とした目で見つめたあと、「まあ、そんなもんだよ」と言った。梓は「うんうん、そうだよね」っと一人で納得していたが、優里奈は「梓ちゃん、わかってないんじゃない」と耳打ちする。祐佳は「まあいいんだよ。梓はあれでも大事なことはわかってるんだから」と意に介さない。2人がそんな会話をヒソヒソとしていると、梓が今思い出したといわんばかりに大声で指摘する。
「でもさ。美咲って好きな人いないよね」
「いや、ちゃんといるよ。まだ本人はその気持ちに気づいていないけどね。私は確信してる」
「さっすが、祐佳ちゃん。で、やっぱり彼だよね」
「えー。優里奈も知ってるの?なんでー」
「まあ、私も美咲ちゃんのこと大好きだからだよ。祐佳ちゃんの海のように広くて深い愛情には及ばないけどねー」
優里奈は祐佳を温かい目で見る。
「……私ってどんだけ美咲のこと大好きなんだよ。まあ好きなんだけどさ……そうあらためて言われるとなんか恥ずいよ……」
祐佳は優里奈の発言にツッコみを入れつつも、顔を赤らめている。
「あっ、祐佳がデレたー。まあそんなことどーでもいいからさー。あたしにも教えてよ。美咲の好きな人って誰?誰?」
気になって仕方がないというようすで梓はジタバタする。そんな梓に優里奈が耳打ちする。
「えぇぇ!!」
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