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-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-

-第二章四十三節 ファンファーレと化け物?…と戦闘不能-

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衛兵達に肩を借りながらハーフリングスへと戻る道中…ふと気が付いた

様子で衛兵Aの相方…衛兵Bに視線を向けると、その衛兵Bはあの玄関口前で

仲間の死を嘆いていた衛兵である事に気が付く…衛兵Bからはあの時の

様子が嘘の様に!…まるで生まれ変わった様に真剣な表情を見せて

マサツグに肩を貸している様子が伺え、その様子にマサツグも若干の驚きを

覚えつつ…恐る恐る衛兵Bに話し掛け出すと、衛兵Bもマサツグに答えるよう

会話を交わし出す。


__…ザッ!……ザッ!……ザッ!……ザッ!…


「…ッ!…そう言えばアンタ?…」


「…ッ!…あの時は助かりました!…

お陰で何人か助ける事が出来まして!…意識を取り戻させる事も無事に!…

…目の前で同僚がやられて気が動転して動けなかったのですが…

貴方の怒鳴り声で何とか我に返る事が出来ました!…

……もしあの場に貴方が居なければ私達どころかハーフリングスも!…」


「…ッ!…そ、そうか!…

……所で何人って事は後の連中は?…」


覚束ない足取りで歩きつつ…マサツグが衛兵Bに声を掛けると、衛兵Bは

マサツグにお礼の言葉を口にする!…その際マサツグに対し若干畏怖の念を

持った様子で話し出しては、マサツグがドラゴンを連れて行った後の事を

話し!…何人か命を助ける事に成功した!とマサツグに感謝をすると、

怒鳴られた事に対しても感謝をするようマサツグに軽く頭を下げて見せる。

そしてマサツグが居なかったらと言った様子で衛兵Bが危機感を覚えた表情で

話すと、その様子にマサツグは戸惑い出し!…とにかくハーフリングスが

無事だと言う事を知って安堵すると、同時にその被害に遭った衛兵達の事が

気になったのか…恐る恐るその事に付いて衛兵Bに尋ねると、衛兵Bは暗い

表情を見せながらもマサツグの質問に答える…


「ッ!……はい…現段階でまだ被害状況の確認は完全ではありませんが…

少なくとも死傷者の数は約百五十!……その内民に対しての被害は

今の所ゼロですが、衛兵達の被害が酷く!…まだ意識不明の重体者が

何十人も…」


「ッ!?…そ、そうか…」


衛兵Bが暗い表情を見せる中…マサツグの質問に答えるよう話し始めたのは

そのドラゴンの襲来により受けた被害状況で、ハーフリングスの民には被害

は無いものの衛兵達には大打撃と…数が多く未だに意識が戻っていない者が

居る事を聞かされると、その話を聞いたマサツグはショックを受ける!…

もっと早く助ける事が出来れば!…と反省し出すと、日和って居た事に

マサツグは後悔し!…それに釣られるよう衛兵二人も俯き出し、三人揃って

反省の陰鬱な空気を放ち出すと、何とも言えない気まずい空間を作って

しまう!…幾ら後悔した所でもう後の祭りなのだが、ただ何も言えない様な

暗い雰囲気で…各々がそれぞれ反省しながらただ脚を進めて居ると、いつの

間にか現場の森を出てはハーフリングスへの街道に出て来る。


__ザッ!……ザッ!……ザッ!……ザッ!…


「……ッ!…あっ!…ゆ、勇者殿!…もうしばらくの辛抱です!!…

目の前にハーフリングスが!…」


「ッ!……おぉ!……って、んん?…」


__ズラァ~~~!…


街道に出て来ると目の前には玄関口がボロボロのハーフリングスが

見えていた!…先程までドラゴンに襲われていた痕跡がありのままに

残っているのだが、衛兵Aが見えて来たとマサツグに空気を入れ替える

よう話し掛けては励まし!…マサツグもその掛け声に反応して元気を

出すと視線をハーフリングスの方に向けるのだが、そのハーフリングス

の玄関口に目線を向けた瞬間奇妙な光景を目にする!…その奇妙な

光景とは言うのは玄関口にて何故か衛兵達が整列している様子で、

その衛兵達の手にはラッパが!…何故か誇らしげに握られて誰かの

帰りを待って居るかの様に外の方へ振り向いている光景であった。


「……ラッパ?…何でラッパが?…もしかして今から葬儀とか?…」


「ッ!…何を仰っているのやら!…そんな訳が無いじゃないですか!…」


「そうですよ勇者殿!!…さぁ、参りますぞ?…」


「へ?…えぇ?…」


マサツグはその光景を見るなり何が有った!?…と言った戸惑いの表情を

見せては困惑の言葉を漏らすのだが、肩を貸して居る衛兵の二人は特に

疑問を持つ事無く!…ただマサツグの言葉にご冗談を!…と言った笑顔で

ツッコミを入れると、ハーフリングスに向かい歩き続ける!…そして

誇らしげにマサツグを抱えながら徐にその衛兵達へ向かい手を振り始めると、

整列している衛兵達もその様子に気が付いたのか手に持っていたラッパを

咥え始め!…ますます訳が分からないマサツグが首を傾げて見せて居ると、

それは待っていたとばかりに突如として始まる!


__…スッ……ぱ~ぱぱぱっぱっぱ~!!!♪…ぱ~ぱぱぱっぱっぱ~!!!♪


「ッ!?…ちょ!?…何何!?…」


「ッ?…何って?…ファンファーレですが?…」


「ッ!?…はぁ!?…」


「我々の国を救って下さった勇者殿の帰還です!!…

それ相応の感謝を!…」


もう直ぐハーフリングスの玄関口に足を踏み入れようと言う所で、

整列した衛兵達が突如ラッパでマサツグ達を出迎える様に演奏し

始めると、その突然の演奏にマサツグは戸惑う!…

急に何が起きている!?…と思わずイベントバグか何かか!?と

ただ戸惑った表情で疑うのだが、衛兵達の様子を見る限りそう言う

様子は無く!…バグでは無い事にマサツグが困惑の言葉を漏らして

居ると、衛兵Aが困惑気味にマサツグの疑問に答え!…更にマサツグが

困惑の一言を漏らして居ると、衛兵Bがこうなった原因について

感謝するよう更に答える!…如何やらマサツグがドラゴンを倒したと

言う事は既にハーフリングスまで届いて居るらしく!…その帰還を

祝ってのファンファーレらしいのだが、マサツグにとっては

トンデモナイ勢いで恥ずかしいイベントでしか無かった!…


「……あのぉ~?…申し訳ないんだが今すぐにこの勇者帰還!…

みたいなのを止めて貰う事は?…物凄く目立って居るのですが?…」


「ッ!?…何を言いますか勇者殿!!…

このファンファーレを浴びる事が出来るのは真に勇気を示した者のみ

浴びれる物!…我等が勇者殿の凱旋をせずして何がお迎えか!?…

それにこれは女王陛下の命にもあります!

この凱旋をする事によって勇者殿が無事である事を知らせると言う役目も…」


「あ、いや…俺が恥ずかしい…って聞いてくれないなぁ~…」


何が起きているのか分かった所で今すぐファンファーレを止めて

欲しいと、マサツグは顔を真っ赤にしながら訴えるのだが!…

両サイドの衛兵達はそれを聞き入れようとはせず、寧ろマサツグに

若干反抗するようこのファンファーレの誉れについて説明し出すと、

その称賛されている本人の意見が破棄される事にマサツグは嘆く!…

ドラゴンを倒して凱旋…それもファンファーレ!…もはややって

居る事は某ドラゴン退治の大作RPG初代のエンディングロール状態で

有り、そのファンファーレの中!…両脇を衛兵に抱えられながら

歩いているマサツグにとっては、顔から火が出る勢いで恥ずかしい

出来事でしかないのであった。当然突如ファンファーレが流れて来た

事で町に帰って来た民達は何事!?と集まり!…マサツグの姿を

見るなり戸惑いと困惑の表情を浮かべる!…


__ぱ~ぱぱぱっぱっぱ~!!!♪…ぱ~ぱぱぱっぱっぱ~!!!♪


「ッ!?…誰だ!?…誰が帰って来たんだ!?……ッ?…

……囚人?…」


「ねぇ?おかあさん!…

あの人兵士さんに抱えられてるよ?…何が凄いの?…」


{…今改めて聞いてみたら何だこの音程?…

…まるでドラ○エのファンファーレじゃねぇか!…

…って言うかこっ恥ずかしいわ!!…何とかならんのか!!…

ほぼ公開処刑だぞ!?…これぇ!!!…}


ある者はマサツグの姿を見るなり「えぇ!?…」と言った戸惑いの

表情を浮かべ!…またある子供は母親の手を引っ張ってマサツグを

指差しては何アレ?…と聞き出す始末!…確かにマサツグの格好は

今だに囚人服で頭からドラゴンの血を浴びてはドロドロと!…

オマケに服をブレスで焼かれてはボロボロと!…見るも無残な

状態であり、パッと見では囚人が連行されて居る様にしか見えない!…

なのにファンファーレの中を歩いて居るとあっては民達は戸惑い!…

一体何が起きて居る!?…と言った様子でマサツグを凝視している、

その集中砲火の様な視線にマサツグは参ってしまう!…何とか視線を

紛らわそうとファンファーレに耳を傾けるもやはりドラ〇エのファン

ファーレにしか聞こえず!…子供と視線が合うと露骨に視線を

逸らされては精神的にダメージを負う!…ただ顔を真っ赤にして

泣きたくなるのを我慢し、言う事を聞いてくれない衛兵の凱旋に

付き合って居ると徐々にそのファンファーレの終点!…女王陛下と

ミスティーの姿が見えて来る!…


「……ッ!?…おぉ!…おぉ!!…ほ、本当に帰って来た!!…

まさか本当にドラゴンを倒したと言うのか!?…たった一人で!?…

確かに幼体と言えど!…アレを倒すには約500の兵は必要とすると言うのに!…

あの者は何者なのだ!?…本当に冒険者?…いや人か!?…」


「お…お姉様!…落ち着いて下さい!…

……確かにあの人は凄いです!…たった一人で何人をも敵を斬り伏せる!…

そんな方ですが…あの人は紛れも無い人間です!…」


「ッ!?……ほえぇ!…ミスティーの惚れた男は末恐ろしいものだな?……

ふむ、興味が出て来た!…」


「ッ?!…お、お姉様!?…惚れたでは無く…いやその前に!!…」


ファンファーレの中を衛兵達に支えられながらも…マサツグが帰って

来た事に女王陛下が驚ては改めてマサツグは何者か!と…人か如何かで

さえも疑わしいと言った様子で困惑と戸惑いの様子を露わにして居ると、

ミスティーは慌てた様子で女王陛下に落ち着くよう声を掛ける!…

そして自身が分かって居る部分だけでもマサツグの事を女王陛下に話し

出すのだが、女王陛下は嬉々として語るミスティーの様子の方に興味を

持ち出し!…突く様にマサツグの事をミスティーの男と話しては笑い!…

同時にマサツグの事にも興味を持ち出すと、ドラゴン討伐前に頭を

撫でられた事を思い出しては頬を染める!…そんなミスティーも

女王陛下の言葉に反応すると、顔を真っ赤にしては女王陛下に文句を

言い!…姉妹喧嘩をし始める様な雰囲気になり始めると、二人の前に

マサツグが到着する!…


__ザッ!……ザッ!……ザッ!……ザッ!…


「…女王陛下!!……ここに勇者の帰還!!…

マサツグ殿をお連れした事をご報告いたします!!」


「我々が現場に到着した際!…既にドラゴンは勇者殿の手により葬られ!…

息をしては居りませんでした!!……と言うよりも首が飛んでいる状態でして…

ッ!!…ン゛ン゛!!…とにかく!…惨状を見る限りは激戦が繰り広げられ!…

この様に完全に疲労しては自力で立つ事も困難と!…我ら異国の者に

その勇気を示した事を!!…ここに証言致します!!!」


「「…彼は間違い無く!!…この国を救った英雄であり!!!…

友になれる事を!!!…ここに堂々!!!…獣神王の誓いに則り!!!…

…宣言出来る事を!!!…ここに証言致します!!!!!」」


マサツグが衛兵達に連れられて女王陛下とミスティーの前にやって来ると、

衛兵達の動きに連動するよう傅き!…衛兵Aがマサツグを連れ帰った事を

女王陛下に報告し出すと、衛兵Bがドラゴンの死亡を確認したと話し出し!…

その際報告をするのが苦手なのか?…それとも信じられないのか?…

ドラゴンの首が斬り落とされていたと話すと、女王陛下及び周りに居た

ラッパの衛兵隊・ハーフリングスの民達は酷く驚き!…衛兵が気を取り

直すよう咳払いをしつつ、再度形式に則った方法で証言し始めると、

最期に宣誓が行われる!…まるで儀式か何かか?…とにかく巻き込まれる様に

してマサツグが付き合い困惑して居ると、両脇では衛兵二人が声を挙げて

マサツグは信頼出来ると話し!…その話を聞いて女王陛下も大きく頷いて

見せると、マサツグを抱えている衛兵達に指示を出す!


「……ではその英雄殿を至急手当をせよ!!!

このまま死なせる事は許さん!!…絶対に元の状態に戻すのだ!!!

この国を救った英雄殿に感謝を!!…

にて最大級の持て成しをするのだ!!!」


「ッ!?…ハハァ!!!」


__……ワアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!


女王陛下は衛兵達にマサツグの手当てをするよう宣言すると、同時に王宮へ

連れて行く様に指示し…それを聞いて衛兵達も何やら驚いた反応を見せると、

慌てて女王陛下に返事をする!…何が何だか分からない出来事にマサツグも

ただ無言で如何にでもしてくれ…とばかりに付き合って居ると、突如として

周りから状況を理解した様に歓声が上がり出し!…その歓声にマサツグが

ビクッと驚いた様子で顔を上げると、周りの獣人達から称賛の声を

浴び始める!…


「マジかよ!?…あのにだって!?…」


「こんな事今まで聞いた事が無い!?…何て誉れ高いの!?…」


{……え?…何でこんなに沸き立ってるの?…王宮?…

確かに王宮に連れて行かれるのは凄いと思うが?…そんなにか?…

春野原スプリングフィールドだったら余程の問題が無い限りは一般向けに王城を解放…

…って、あの王城が変わってるのか?…}


とにかく周りからの称賛の声に驚いては辺りを見渡し!…何でそんなに

沸いてるの?…と疑問を持ち出すと、ふとあの王様スティングの方針で親しみを

持って貰おうと一般向けに王城を解放しようとしていた件を思い出すの

だが、翌々考えるとこっちが普通なのか?…と考えてしまい…本格的に

普通とは何なのか?と…哲学的に感覚が麻痺し始め思わず悩み出して

居ると、突如として女王陛下とミスティーの間からシロが姿を現す!…


__ぎゅうぅ~!!…ぽん!!…


「…ふぅ……ッ!?…ご、ご主人様!?…」


マサツグの目の前に現れたシロはハーフリングス仕様になったのか…

シロの格好は何処をどう見てもアラビアンな踊り子…ほぼ水着で

シースルー素材の領巾が付いた何とも豪華な装いになっており!…

シロも人混みを掻き分け更に女王陛下とミスティーを掻き分け…

やっとの思いでシロがマサツグの前に姿を現して見せると、シロの

目の前にはボロボロのマサツグが!…当然マサツグの姿を見るなり

驚きと困惑に満ちた表情・反応を露わにして見せ…ボロボロの状態に

戸惑いつつも恐る恐るマサツグの事を呼び出すと、マサツグも

シロの事に気が付いてはシロの方へ振り向き返事をする!…


「…ッ!…おうシロ!…久しぶり!…元気だったか?…

…彼此…あぁ~っと…一週間?…いや十日ぶりか?…

とにかく待たせたな!…」


「……ッ~~~!!!…ひっぐ!!…

ごしゅじんさまぁ~!!…」


__ダッ!!!…


この時シロを安心させる様にマサツグは二カッと笑って見せると、久しぶりと

声を掛け出し!…シロに待たせてしまった事を謝る様に話し続け、その言葉に

シロは涙を流しもう一度マサツグの事を呼んでは帰って来た事に喜びを露わに

すると、それはある種の感動的な場面になる!…シロは帰って来たマサツグに

向かい駆け出し!…抱き着こうと両腕を伸ばすと、ミスティーと女王陛下も

その様子を見守る様に笑顔で見送る!…


ごぶびんばばあぁご主人様あぁ~~~!!!!!」


__バッ!!…


「ッ!…シロ、ただい…」


この時シロは感情を爆発させる様に泣きじゃくると目鼻グズグズの

大号泣の表情で、涙をボロボロと流しており!…鼻水を若干垂らしては

マサツグに向かって一直線に駆けて行き!…それを見ている周りの

者達は微笑ましく見守るよう視線を送って居た。シロとマサツグの

様子を見るかぎりパッと見でも二人は親しい仲である事が良く分かり、

当然二人の再会を邪魔する者は居らず!…マサツグとシロとの間の

距離がもはや無いに等しくなった頃!…シロがマサツグに向かい

飛び付き出すと、マサツグはシロに対し「ただいま」と言おうとする

のだが…その微笑ましい光景も一瞬にして可笑しな物へと変わって

しまう!…何故なら…


__バシュン!!…ドゴオォォス!!!……


「ま゛う゛っ!!!……」


感情の高ぶりのままにシロはマサツグの鳩尾へ向かいヘッドバッドを

繰り出す!…勿論ワザとでは無い!…ただ嬉しくて嬉しくてマサツグに

向かって飛び付き!…離れていた分甘えようとシロはマサツグに抱き

着こうとしたのだが、結果としてロケット頭突きとなってしまい!…

ノーガードのマサツグの鳩尾…それもクリティカルに入ってしまうと、

マサツグを抱えていた衛兵達を肩を貸したポーズのままにして!…

マサツグだけを押し倒す!…「ただいま」の「ま」が何とも重い一撃を

貰った悲鳴に変わり!…周りに居た衛兵達やミスティーの耳にも入ると、

女王陛下もシロの行動に驚きを隠せない様子で困惑する!…


「な!?…」


「シ…シロちゃ~ん!!!」


「ご主人様♥…ご主人様♥…ご主人様ぁ~~~♥…」


無常に木霊するミスティーの悲鳴!…突然の光景に周りの者達は唖然とし、

戸惑いを隠し切れない様子で倒れるマサツグを見詰めては女王陛下と衛兵達は

その場に固まる!…シロは倒れるマサツグに泣きながら顔を摺り寄せ甘えては

離れようとはせず、ただグリグリとマサツグの腹部に顔を摺り寄せ続けると

マーキングをする!…そして結果的に先程の某大学も真っ青のタックルが

マサツグの命を刈り取る止めの一撃となり!…マサツグのHPがゼロになると

視界は真っ赤に染まって行き!…幾らFFフレンドリーファイアに補正が付いて居たと

してもクリティカルが出てしまえば意味が無く!…更に危険域だったので

マサツグはそのまま倒れてしまってはこのゲーム初めての戦闘不能状態に

なってしまう!…それでもマサツグは遺言を残す様にシロの頭に手を乗せると、

一言声を掛け出す…


__……プルプルプルプル!……ポンッ…


「ッ!…ご主人様?…」


「し…シロ?…い…今のは…効いたぞ…ガクッ!…」


「へ?……ご…ごじゅじんざま!?」


マサツグが力を振り絞るようシロの頭に手を置くとシロは顔を上げて反応し、

何が有った?と言った様子でマサツグの事を呼ぶと、マサツグは笑顔で

頭突きが効いたと言い残す!…そして事切れた様に静かに吐血し出すと

幸せそうな表情でバタッと倒れ!…シロはその最後の言葉に疑問を持ち

更にマサツグが完全に倒れた事で途端に慌て出すと、辺りは騒然とする!…

つい先程まで死なせてはいけないと言われて居たにも関わらず!…

簡単に戦闘不能!…その様子に女王陛下はハッ!と我を取り戻すと慌てて

衛兵達に指示を出す!…


「……ハッ!?…え…衛兵!!…

この者を王宮まで運んで命を助けるのだ!!

この者を死なせてはならん!!!」


「ッ!?…ハ、ハハァ!!…」


__バタバタバタバタ!!!…


「ご主人様!?…ごしゅじんさま!?…ごしゅじんさまぁ~~!!!…」


女王陛下の命令に衛兵達もハッ!と我に返り出すと、慌てた様子で

返事をしてはマサツグの救護に動き出す!…バタバタと慌しく騒動の

収拾に掛かる者も居れば担架の用意をする者と…そしてシロも何度も

マサツグの事を呼んでは体を揺さぶるのだが、当然マサツグは目を

開ける事は無く返事もせず…ただ微動だにせずその場で横になって

戦闘不能状態を続けて居ると、シロはその様子から更に混乱し始める!…

そうこうして居る間に衛兵達が担架を持って来てはマサツグを担架に

乗せようと…一時的にシロを退けようとするのだが、シロは衛兵達から

抵抗するようマサツグへ馬乗りになったまま離れようとはしない!…


「さぁ!…そこを退いて!!…このままだと手遅れに!…」


「ヤですぅ~!!!ごしゅじんさまぁ~~!!!…」


「……こりゃ梃子でも動きそうに無いぞ!…あぁ~もう!…

仕方が無い!…この子を乗せたまま担ぐぞ!…おい人手を足せ!!!」


「えッ!?…わ!…分かった!!…」


そうして衛兵の説得も強行手段も、シロは頑なに嫌がり!…無理に

引き剥がそうものならマサツグの身ぐるみごと引き剥がれそうと!…

見事なまでの抵抗ぶりを見せては衛兵達を戸惑わせ!…結果・衛兵

数人掛かりでマサツグをシロごと担架に乗せては慎重に運ぶと言った

珍事に発展する!…その様子を女王陛下は唖然とした様子で見詰め、

ミスティーはマサツグを心配した表情で見詰めては後を追い掛ける!…


「マサツグ様!!…しっかりしてくださぁ~い!!…」


「……外から来た英雄殿も大変なのだな?……

ッ!…イカンイカン!!…兵を集めよ!!…被害の有った区域の確認!…

城跡の被害状況を調べよ!!……遺族の葬儀も我々で執り行う!!…

急ぎ行動に移せ!!」


「ハッ!!!…」


王宮に連れて行かれるマサツグに思わず同情する女王陛下…しかしそんな

暇も無いとばかりにまたもやハッ!と我に返った反応を見せると、事態の

収拾に当たって居た衛兵達を集め出し!…今回のドラゴン襲撃による被害

確認の陣頭指揮を執り始める!その際被害が大きかった事を確認する様に!…

今現在でも行われている亡くなった衛兵達の遺体搬送を目にしては反省する

よう葬儀の手配も指示し、それを聞いた衛兵達も仲間の為と言った様子で

女王陛下に威勢良く敬礼をすると、遺体の搬送・確認を急ぐようキビキビと

動き続ける!…そしてこの時この騒動を見て居た余所者が一人…他の獣人達の

影に紛れるようその現場を見詰めては妖しく笑みを零し!…何か企むよう

その場から姿を消すと、笑い声だけを静かに残して行くのであった…


……さて、戦闘不能となったマサツグはと言うと現実世界に戻って来ており…

目の前に表示されている二つの選択肢とシロの新たなスキルを見ては溜息を

吐き、如何しようか?と悩んで居た。


 -----------------------------------------------------------------------


               戦闘不能


            ゲームを続けますか?…

 続ける場合はリスポーン地点から再開…或いはイベントの進行具合に

 よっては違う場所にリスポーンされます…現在のリスポーン地点は…

        「ハーフリングス王宮」となっています。


            [リスポーンして続ける]

             [ゲームを終了する]

 -----------------------------------------------------------------------


[シロは「石頭 Lv.1」を獲得しました。]


「……石頭て!…はあぁ~…シロのタックルには参った!…

全く!…情熱的過ぎるのも少し考え物だな?…

……っで、時間はっと?……結構いい時間だな…

じゃあ今日はもう終わりっと…」


__ピピッ!…ピッ!……ヴウン…


マサツグをノックアウトしたお陰かシロは新たなスキルを手に入れ、

そのスキル名を見てツッコミを入れると溜息を吐く。ここで唐突だが

少しこのゲームの説明をば、このゲームでの戦闘不能…と言うのは

ゲームオーバーと言う意味で間違いは無いのだが、それでその

キャラクターが死亡したと言う扱いになって使えなくなると言った

ハードコア仕様では無い。当然である折角レベルを上げて死んだら

また一から…炎上ものである!…それもマサツグの様に器用な死に方を

したら尚更である!…さて説明に戻り…戦闘不能になった場合は

上記の様に、画面にリスポーンもしくはゲーム終了の二択が現れ…

リスポーンを選んだ場合は診療所…或いは病院の一室からのリスタート

となる。これが診療所・病院の無い土地の場合は何かグランドマーク前

からリスタートとなる場合も有るがそれは特殊例で、更に特定の条件で

リスポーン位置が変わる等色々な場所から再開させられるのだがこれと

言ったデメリットは無く、大体は上記に書いたどれかに当たり普通に

再開する事が可能となっている。そして今回マサツグは現実の方が

いい時間だった為、ゲームを終了するとログアウトし…無事ゲームを

シャットダウンさせると、改めてシロの感情爆発を警戒するよう

気を付けるのであった。


{…今度からシロとは出来るだけ一緒に行動しよう……反動が怖い!…

今回みたく止めを貰う事になる!…}


「あにさ~ん…メシぃ~」


「ッ!…は~い!」


こうしてマサツグの波乱万丈ハーフリングスドタバタ騒ぎ編・前半は終わる…

弟にご飯が出来たと呼ばれてはリビングに向かい、ご飯を食べ終えたら

お風呂と…何気ない一日を過ごし、そして次の日仕事を終えて帰宅すると、

ゲームを付ける!…もはやルーティンと化した日常に何の違和感も覚えず

マサツグがゲームの中へとダイブすると、その光景はいつもと違って居た…




__…ヴウン!!………パチッ!…


{……あれ?…ここは…どこ?……たしか最後に確認したのは

王宮ってトコまでだけど…

明らかに何か天蓋付きのベッドに寝かされている様な?…}


__…グッ!…グッ…グッ……


{……はい…また動けません……もうね?…

何回もこうして動けなくなるのを体感すると何も感じなくなりました…

寧ろこれがデフォルト的な……っで?…現状を確認しますと?…}


開幕見た事無い天井…只分かる事はお高い感じの様式美溢れる作りの白い

漆喰の天井がある事。そして今自分が寝かされているベッドは明らかに

貴族用なのか天蓋付きのベッドであり、手に感じるのはサラサラとした…

シルクの様な手触りのシーツを着せられて有る事と、お約束の拘束状態で

ある事…もはや慣れた様子で心の中で呟いては呆れた表情で確認し出し、

首をまず右の方に傾けるとトンデモナイ光景を初っ端から目にする!…


__…クルッ……ボン!…キュッ!…ボン!!…ふわぁ~お♥……


「……あれ?…おかしいな?…このゲームは全年齢対象の筈…

何の何も着ていないミスティーの姿が見える……

おかしいなぁ?……じゃあ左は?…」


マサツグはまず右腕を確認するよう視線を右に傾けるのだが、

そこで目にしたのは褐色デンジャラスボデーのお姉さん美女が

一糸纏わぬ姿で寝ている様子で…案の定マサツグの右腕を

ガッチリとホールドして動かない…見えそうで見えない!…

何とも際どい格好で寝息を立てていた…そんな光景を目にして

マサツグは一度視線を天井の方に戻すと、何かが可笑しいと感じ…

今度は視線を左に移し、同じ様に動かない左腕に何がくっ付いて

居るのかと確認をすると、そこには正真正銘ミスティーが

くっ付いて居り…やはり同じ様に左腕へ抱き着いてはガッチリと

ホールドしていた。


__クルッ……ボン!…キュッ!…ボン!!…ふわぁ~お♥……


「……こっちのミスティーは服を着てる……

でも色々と際どくてやっぱり危ないよなぁ?…

何でだろうな?…おかしいなぁ?…

まだ夢の中なのかな?……オマケにお腹にも重量を感じ……ッ!…」


__スゥ~…スゥ~…


「……やっぱ現実ゲームの中?…」


ミスティーの方はちゃんと寝間着を着ては居るのだがほぼ下着姿に

近いベビードールでこれまた際どく!…マサツグがまたもや視線を

天井の方へ向けては何かが可笑しいと感じ!…最後に腹部の圧迫感を

覚え確認をすると、そこにはマサツグのお腹の上で大の字に!…

マサツグに抱き着くよう眠るシロの姿を見つける。それらを見てやはり

ゲームの中?…と認識するとマサツグはただ動けぬまま悩み出し…

一体如何やってこのある意味での窮地を脱しようか?と…天井を

見詰めて固まって真顔のまま考え始めるのであった。

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