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「ロスタイム」のパン
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腕の足らない日本の映画監督が空を映すカットばかりを撮るように、ボクはよく空を見上げて考え事をする。その日ボクは信号待ちの車の中で原動機に揺さぶられながらフロントガラス越しの空を見上げていた。
淡い青のキャンバスに刷毛で塗ったような雲が浮かぶ空だった。まだ本格的に夜が明ける前、太陽は紅く燃え薄い月が孤独に浮いていた。カーラジオからはABBAの「Gimme!Gimme!Gimme!」のインスト曲が流れている。
空を見る度にボクが考えるのはいつも「彼女」についてだった。
彼女は一体何だったのか、どういった因果関係によってボクと彼女は引き寄せられ、また去っていったのか。
確かなことは一つだけだ、あの時、あのメッセージを受け取ってからボクの人生はガラリと変わってしまった。
ボクはドリンクホルダーに差してあったタンブラーからすでに冷たくなっているコーヒーを一口飲んだ。味はコーヒーの蜃気楼みたいに薄かった。
彼女と出会うまでのボクは、まさにこの冷たいコーヒーだった。人生にとって着火剤になるようなモノを探し求め続けていた。退屈を転換してくれるような、そんな何かをただ口を開けて待っていた。
彼女はまさにその何かだった。
月、コミュニスト、流刑地。
彼女の残した少ないヒントから彼女の正体についての幾つかの答えをボクなりに導き出した。しかし、ボクにはそれらが適当であるとは思えなかった。ボクの知る歴史、文化、常識とは全く相反するイムプラティクルな答えだった。
ボクが知る限り、ボクらから物理的距離にして38万キロメートル離れた場所、そこには誰もいなかった。
あるのは暗い海と冷たい岩達だけだった。
答えを求めて、仕事も辞めた。無為にパンを作り続ける時間はボクの人生から弾き出された。
空が段々と、明るくなり始めていた。
信号機が青に変わり、ボクはアクセルペダルを踏み込んだ。
答えを求めて、ボクはもう一度あの時間を振り返った。スピードを段々と上げていく車と反比例して、ボクの意識は過去にロケットの様に飛んだ。
ボクは駐車場にスーパーハイトの軽自動車を停めて、エンジンを切る。暖かな空気を排出していたエア・コンは止まって、冷たい空気がドアの隙間から入ってくるのが感じられる。
ブランドのスーツを着た気象予報士が今年は暖冬だとTVでは言っていたのだが、12月も中頃になると朝の寒さは皮膚を刺してくるようだった。
ボクは冬と冬の寒さが嫌いだった。冬の寒さは人間のポジティブな感情をかき消してしまうように感じられる。
ボクにはその原因がわかっている。それは日照時間が減ると体内のセロトニン分泌量が減少するからで、冬に鬱々とした気分がするのはそのせいだ。
この世界には何事にも因果関係が潜んでいる。そして、知りたいと思えばインターネットを駆使すれば良いのだ。
ボクは何か行動を起こそうという気分がジリジリ減退していくのを冬の寒さが厳しさを増すに連れてヒシヒシと感じている。
それに、寒さは体外的な弊害も発生させる。最近、ボクの頭を悩ませるのはフロントガラスのしつこい結露と寒さによってホイロ(=二次発酵)の進み方が牛の歩みのようになってしまう事だ。特に後者はボクにとっては業務の進行に関わる深刻な問題のひとつだと言える。
でも、いくら寒さが苦手とはいえずっと車の中にいるわけにはいけない。
ボクは自分に気合いを入れて車外に出る事を決めた。
人はどれだけ苦手な事に直面していようが、鬱々とした気分でいようが、金を稼ぐ為には働かなくてはいけないのだ。
暖かい車内から抜け出すと、店の裏口の扉まで歩き始めた。
ボクは毎日決まった歩数を頭の中で数えながら車から裏口までの道を移動している。右足から踏み出して12歩、これがボクのルーチンワークのひとつだった。
僅か12歩、距離にして7m弱を歩く間にも冷たい空気が服の隙間から侵入してボクの身体を容赦なく冷やしていく。
ダウンのポケットに手を突っ込むと殆ど外気と同じ程に冷たくなった鍵束に手が触れた。判別の為に貼ってあるシールを指先で確認してから目当てのキーを探り当てると鍵を開けて店に入る。
たたきで靴を作業用のものに履き替えると、ボクは着替えをするために事務所へと向かった。
昼間はパンが焼き上がる甘い匂いで充満しているこの部屋も、現在は淀む冷たさが足の先から天井までぎっしりと詰まっているようだ。
ボクはリュックを荷物置き場に下ろすとノートpcと着替えを纏めた袋を取り出した。
ボクを寒さから守ってくれていた黒のダウンをハンガーに吊るし、着替え始める。この後帽子を被る事になる髪型が寝癖でどうなっていようが誰も構いはしないので、鏡で身嗜みを整える事すらしなかった。
時計をみると現在の時刻は午前3時25分となっていた。
会社の規則で決められたボクの本来の出勤時間は午前5時だ。
正確に言うとam4:46~am05:00の間にタイムカードを切る規則になっている。
こんな朝早くに出勤する職業があるだなんてまるで信じられないが、朝から焼きたてのパンを食べる人間がこの地球上から絶滅しない限り、ボクの出勤時間は5時のままで変わることはない。
ボクはいつも朝食人類の絶滅を願っている。
しかしながら、現在の時刻はそれよりも約1時間30分も早い。これが意味することはボクが本来の出勤時間よりもとんでもなく前倒しで出勤を行なっているということに他ならない。
もちろん本当はそんな事禁止されているのだが、ボクはお構いなしに本来の出勤時間よりも早くに店に来て、パンを焼く為の作業を行っている。
パンを捏ねるのは勿論のことだが、オーブン、フライヤー、ホイロ(=発酵を促す機械)等の機械達に余熱を入れたり、食パンの型に油をスプレーしたり、サンドウィッチに使う卵やベーコンを焼いたりなど細々とした作業を淡々とこなしている。
午前2時45分。
これがボクの毎日の起床時間だ。
暇な大学生ならこれから寝ると人も少なくない時間にボクは毎日起きている。
慣れたものだった。
15分で身支度を済ませて家を出ると店に到着するのが3時20分頃、白いコック服を着てネットキャップと黒の帽子を被って、ニトリル素材の手袋をはめ作業を始めるのは午前3時30分頃になる。
これがボクが毎日行っているルーチンワークであり、1時間30分のサービス残業だ。
これはいわばボクにとっての「ロスタイム」だった。
今日の場合、フロントガラスの結露に手間取ることなくルーチン通りに着替えまで済ませる事が出来た。
スムーズに物事が進むのはどの様な物であれ気持ちの良いものだ。
スムーズな移動、スムーズな職業、スムーズな葬式。どれもがこれ以上なく、素晴らしい。
ボクは3つのスイッチをONにする。ガコンガコンガコン。と大きな音が室内に響き、3台の換気扇が稼働しだす。まるで巨人が天井で居眠りでもしているかの様な轟々とした音だ。
ボクはノートpcを小脇に抱えて事務所を抜けてから真っ暗な厨房へと向かう。
厨房が真っ暗な理由はボクが電気をつけていないからで、何故電気をつけていないかというと電気をつけて作業をすれば店外からボクの「ロスタイム」を目撃される可能性が増えるからだ。だからボクは「ロスタイム」の作業中に灯りをつけることはない。
やはり何事にも、因果関係があるのだ。
もしもボクの上司であるこの店の店長にボクの「ロスタイム」が露見すれば説教を喰らうだけでは済まないだろう。サービス残業に厳しい世の中になったのは世間的には喜ばしいことだが、誰にでも都合がいいというわけではない。
少なくともボクはそのせいで大きなリスクを孕んでいる。
ボクはホワイト企業という幻想の崩壊を願っている。
ボクがなぜ約1時間30分もタイムカードを切らずサラリーの発生しない作業を行っているのか、説明しなければいけない。
単純に作業を早く終わらせたいとか、溜まっている仕事があるだとかそんな理由ではない。
本当の理由はもっと利己的で、捻くれていて、ボク個人の趣味と深く関わりのあることだった。
厨房に設置されている大きなまな板の横にノートpcを置いて、パンを焼く機械達(計3機)とpcに電源を入れる。
パチンパチンパチンパチン、スイッチON×4。
ボクはpcが稼働している微振動を指先に感じながら、契約している動画サブスクリプションサービスを開いた。
そこには様々な映画やドラマ、アニメーションが並んでいた。
しかし、これといってピンと来るビジュアルイメージを持つ作品が無かったので、ボクは以前に観た履歴の残っている映画の中から一つの映画を選出した。
デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」だ。
原作者のパラニュークが書いた小説はスピード感のある一人称小説であり、映像化されたこの映画も主人公を演じたエドワード・ノートンの語りが映画の大部分を占めていた。
作業をしながらでもbgmとして楽しむことができるので、この映画はボクのマイフェイバリットであった。
一つだけ、上映時間が2時間弱もあり、ボクの好みの上映時間から外れしまっている部分は惜しいところではあった。
しかし、何度も観返した映画なので、途中で切り上げてしまっても結末は分かりきっていた。
なのでボクはこの映画を再生することに決めた。
そう、ボクは毎朝こうして映画を観ながらパンを作っている。だからこそコソコソと暗い中で寒さに震えながら「ロスタイム」の作業を行なっているわけだ。
丁度タイムカードを切る時間と映画の終了時間が重なる90分程度の映画がボクの最近のお気に入りとなっている。
映画と人生は短く濃い方が好ましい。
昨日はデヴィッド・コープの「シークレット ウインドウ」(上映時間96分)を、一昨日は今敏の「パーフェクトブルー」(上映時間81分)を観た。
どちらも少し過激な内容でパンを作りながら観る映画としては相応しくないかもしれないとボクは考えた。
しかし、ボクの「ロスタイム」にはそれを気にする人間はボクを含めて誰も存在しなかった。
うるさい上司や嫌味な同僚はまだ枕に涎のシミを広げている時間だ。
とにかく、ボクは映画が好きだった。
ボクと映画が出会ったのは6歳の頃だった。
ボクの誕生日の日だ。たまたま仕事が休みであった叔父に連れられ、街の小さな映画館で人生初めての映画を観た。
当時は幼く、タイトルすらハッキリとしないが何故か話の筋だけはラインマーカーが引かれているかの様に今でもはっきりと覚えている。
その映画は、主人公であるイタリア系アメリカ人の男が刑期を終えて刑務所から出所するところからストーリーが始まる。
一文無しの彼は迎えに来た自分の兄と一緒に出所祝いの食事に行くのだ。
喫茶店でハムとチーズのサンドイッチとポテトチップを食べコーヒーを3杯飲み、4杯目のコーヒーを飲もうとした時天井で回っていたシーリングファンが落ちてきて彼の兄を突き刺してしまう。
彼は兄を生き返らせる為にその場にいたミニスカートをはいたウェイトレスのアジア系の女の子と一緒に「傷を癒す黄金のウサギ」を捕まえにいく。
ストーリーは比喩的で、ボクには何を象徴しようとしているのかの解釈が難しかった。
思い返してみれば、映像の方もお粗末で予算の少なさが露呈していたし、役者の演技もとても見れたものではなかった。
それでもボクは初めて観る映画というものにかなりのショックを受けた。
ビッグバジェットな映画でなくても、一つの虚構を大勢の人間が作り出しているという事象そのものに大きな感銘を受けたのだ。
当然幼い頃のボクは漠然とだが何らかの形で映画に携わる人間に憧れた。
監督、プロデューサー、役者、大道具、メイクそしてカメラマン…。
映画という1つの巨大な虚構を構成するパーツの一部になるのがボクの夢だった。
結局夢は夢のまま叶う事は無く、ボクはまるで刑務作業のように毎日パンを焼き続けている。しかし、「ロスタイム」に映画の鑑賞会を行うのはそんな現状への何らかの反抗心の現れだとボクは自己分析をしている。
現在のボクにできる事は、せいぜいが生地を捏ね成形したり、焦げる事のないように焼成を行ったりするのが関の山だ。ボクの生活は映画の制作とはかけ離れてしまっている。
だからこそどんな形であったとしても映画との繋がりを自分の中で持ち続けていたいのだ。
幼き日にみた「黄金のウサギ」をボクは探し続けているのかもしれない。
ボクはベーコンエッグベーグルサンドに使用する目玉焼きを作る為、鉄板に型を乗せ用意した。
焦付きを防ぐ油のスプレイを満遍なくふりかけると卵を計12個、暗闇での作業なので卵の殻が混入しないように注意深く割り入れた。
そうしながらもボクは「ファイト・クラブ」を再生する為にpcの画面に目を向けて、再生ボタンをクリックした。
画面が暗転し、換気扇やオーブンの作動する音だけが室内に響いている。
卵を割り続けて1鉄板を埋めると次はベーコンを焼く作業に取り掛かった。12枚のベーコンを鉄板に並べ終えるとオーブンに突っ込み、タイマーを3分にセットした。
いつもなら再生ボタンを押してからベーコンをオーブンに入れるまでの間に映画のアバンが再生され始める。
しかしその日は、いつまで経っても映像が始まる気配はなく、画面は暗いままで音楽やエドワード・ノートンの独白も流れださなかった。
ボクはpcに何かしらの不調が起きたのかと思い、検分する為に手を伸ばしかけた。
その時、微かにpcから何かの音が流れている事に気がついた。
耳を欹て、注意深く意識を向けると人々が行き交う音や声、原動機の駆動音、信号機などのインフラ設備のアナウンス音声などが僅かに聞こえている。それは所謂都会の喧騒といわれる類の環境音であった。
一瞬、間違った映画を再生してしまったのかと考えた。しかし、ボクにはその音声群が何らかの映画の一部分だとは思えなかった。
今流れている音の音質が映画で使われるような収音マイクで収録されたそれとは違い過ぎるという事に気づいたからだ。
例えるならそれはホームビデオ等の個人撮影された動画音声に近いチープでノイジーなものだった。
暗い画面を晒し続けるpcの画面はボクを無視するかの様に全く心当たりのない音声を再生し続けていた。暗く、誰もいない部屋の中で人々の雑踏はボクの孤独をより際立てるようだった。
次に取り掛かろうとしていた製造作業は不可思議な現象に相対したショックで頭から完全に切り離されてしまった。
これは一体どういう事だろうか。
ボクは因果関係の説明をこの時よりも強く求めたことはなかった。
しかし、その説明してくれる人間はボクの「ロスタイム」にはやはりいないのだ。
ボクのpcからは依然として謎の音声、街の雑音が流れ続けている。異変は実際時間の経過を無視していつまでも続く様に感じられた。
ボクは身震いして冷静に考えをまとめてみようとしたが、この状況に対する論理的な説明は何一つとして浮かばなかった。
暗い部屋の中を独りで異常事態に向き合っていると、暗い考えが忍び寄ってくるようだった。
ボクはエドガー・アラン・ポーが書いた「振り子と落とし穴」のイメージが脳裏に浮かんだ。
異端審問にかけられた男がジリジリと命を脅かされる様子だ。
その時だった。
急にベーコンを焼成する為にセットしていたタイマーが鳴り響いた。
ボクは少し驚いてオーブンからベーコンを取り出した。鉄板の上では油が踊るようにパチパチと跳ねていた。
もし、ボク以外の誰かが今のボクと同じシチュエーションに置かれたとしたらどうするだろうか。
原因を解き明かそうと考える、音を煩く思いpcを叩き壊す、それとも逃げ出すか。
ボクにはどの行動も取ることはできなかった。足は生まれた時からそうであったかの様に地面に縛り付けられていて、思考は隙間の大きなザルを通り抜ける様にどこにも引っ掛かることなくするりと滑っていった。
既に冷え冷えとしている厨房がさらにその冷たさを増しているようで、ボクはボクの体温が下がっていくのを感じた。
背後に設置されたコンベクションオーブンの中でファンが回転し、金属が擦れるキイキイという音が鳴り続けている。
途端に耳障りに感じたボクはコンベクションオーブンの電源をOFFにした。
騒音が止み、pcから流れ続ける音声だけが暗い部屋の中に響いていた_。
その瞬間、不意にこちらに呼びかけるような声が聞こえた。
ボクはドキリとして勢いよく背後を振り返った。
声の出所はやはりpcだった。
依然として画面は暗転していたが、スピーカーからは先程まで流れていた環境音とはまるで違う意思を持った一人の人間の声がしていた。
明るい調子のソプラノ、カラカラという笑い方、女の声だった。
女の声、「ロスタイム」、暗い部屋、ボクのpc、動きを止めたコンベクションオーブン、鉄板の上で乾いていくベーコン。
周囲を取り巻く状況がボクを中心としてグルグルと頭上で渦を巻いているようだった。
渦中のボクは混乱している頭を揺すり、どうにか情報を得ようと女の声に全神経を集中させた。
何事にも因果関係が潜んでいるならそれは必ず解き明かせる筈なのだ。
女の声はいつまでも、いつまでも続く様だった。
淡い青のキャンバスに刷毛で塗ったような雲が浮かぶ空だった。まだ本格的に夜が明ける前、太陽は紅く燃え薄い月が孤独に浮いていた。カーラジオからはABBAの「Gimme!Gimme!Gimme!」のインスト曲が流れている。
空を見る度にボクが考えるのはいつも「彼女」についてだった。
彼女は一体何だったのか、どういった因果関係によってボクと彼女は引き寄せられ、また去っていったのか。
確かなことは一つだけだ、あの時、あのメッセージを受け取ってからボクの人生はガラリと変わってしまった。
ボクはドリンクホルダーに差してあったタンブラーからすでに冷たくなっているコーヒーを一口飲んだ。味はコーヒーの蜃気楼みたいに薄かった。
彼女と出会うまでのボクは、まさにこの冷たいコーヒーだった。人生にとって着火剤になるようなモノを探し求め続けていた。退屈を転換してくれるような、そんな何かをただ口を開けて待っていた。
彼女はまさにその何かだった。
月、コミュニスト、流刑地。
彼女の残した少ないヒントから彼女の正体についての幾つかの答えをボクなりに導き出した。しかし、ボクにはそれらが適当であるとは思えなかった。ボクの知る歴史、文化、常識とは全く相反するイムプラティクルな答えだった。
ボクが知る限り、ボクらから物理的距離にして38万キロメートル離れた場所、そこには誰もいなかった。
あるのは暗い海と冷たい岩達だけだった。
答えを求めて、仕事も辞めた。無為にパンを作り続ける時間はボクの人生から弾き出された。
空が段々と、明るくなり始めていた。
信号機が青に変わり、ボクはアクセルペダルを踏み込んだ。
答えを求めて、ボクはもう一度あの時間を振り返った。スピードを段々と上げていく車と反比例して、ボクの意識は過去にロケットの様に飛んだ。
ボクは駐車場にスーパーハイトの軽自動車を停めて、エンジンを切る。暖かな空気を排出していたエア・コンは止まって、冷たい空気がドアの隙間から入ってくるのが感じられる。
ブランドのスーツを着た気象予報士が今年は暖冬だとTVでは言っていたのだが、12月も中頃になると朝の寒さは皮膚を刺してくるようだった。
ボクは冬と冬の寒さが嫌いだった。冬の寒さは人間のポジティブな感情をかき消してしまうように感じられる。
ボクにはその原因がわかっている。それは日照時間が減ると体内のセロトニン分泌量が減少するからで、冬に鬱々とした気分がするのはそのせいだ。
この世界には何事にも因果関係が潜んでいる。そして、知りたいと思えばインターネットを駆使すれば良いのだ。
ボクは何か行動を起こそうという気分がジリジリ減退していくのを冬の寒さが厳しさを増すに連れてヒシヒシと感じている。
それに、寒さは体外的な弊害も発生させる。最近、ボクの頭を悩ませるのはフロントガラスのしつこい結露と寒さによってホイロ(=二次発酵)の進み方が牛の歩みのようになってしまう事だ。特に後者はボクにとっては業務の進行に関わる深刻な問題のひとつだと言える。
でも、いくら寒さが苦手とはいえずっと車の中にいるわけにはいけない。
ボクは自分に気合いを入れて車外に出る事を決めた。
人はどれだけ苦手な事に直面していようが、鬱々とした気分でいようが、金を稼ぐ為には働かなくてはいけないのだ。
暖かい車内から抜け出すと、店の裏口の扉まで歩き始めた。
ボクは毎日決まった歩数を頭の中で数えながら車から裏口までの道を移動している。右足から踏み出して12歩、これがボクのルーチンワークのひとつだった。
僅か12歩、距離にして7m弱を歩く間にも冷たい空気が服の隙間から侵入してボクの身体を容赦なく冷やしていく。
ダウンのポケットに手を突っ込むと殆ど外気と同じ程に冷たくなった鍵束に手が触れた。判別の為に貼ってあるシールを指先で確認してから目当てのキーを探り当てると鍵を開けて店に入る。
たたきで靴を作業用のものに履き替えると、ボクは着替えをするために事務所へと向かった。
昼間はパンが焼き上がる甘い匂いで充満しているこの部屋も、現在は淀む冷たさが足の先から天井までぎっしりと詰まっているようだ。
ボクはリュックを荷物置き場に下ろすとノートpcと着替えを纏めた袋を取り出した。
ボクを寒さから守ってくれていた黒のダウンをハンガーに吊るし、着替え始める。この後帽子を被る事になる髪型が寝癖でどうなっていようが誰も構いはしないので、鏡で身嗜みを整える事すらしなかった。
時計をみると現在の時刻は午前3時25分となっていた。
会社の規則で決められたボクの本来の出勤時間は午前5時だ。
正確に言うとam4:46~am05:00の間にタイムカードを切る規則になっている。
こんな朝早くに出勤する職業があるだなんてまるで信じられないが、朝から焼きたてのパンを食べる人間がこの地球上から絶滅しない限り、ボクの出勤時間は5時のままで変わることはない。
ボクはいつも朝食人類の絶滅を願っている。
しかしながら、現在の時刻はそれよりも約1時間30分も早い。これが意味することはボクが本来の出勤時間よりもとんでもなく前倒しで出勤を行なっているということに他ならない。
もちろん本当はそんな事禁止されているのだが、ボクはお構いなしに本来の出勤時間よりも早くに店に来て、パンを焼く為の作業を行っている。
パンを捏ねるのは勿論のことだが、オーブン、フライヤー、ホイロ(=発酵を促す機械)等の機械達に余熱を入れたり、食パンの型に油をスプレーしたり、サンドウィッチに使う卵やベーコンを焼いたりなど細々とした作業を淡々とこなしている。
午前2時45分。
これがボクの毎日の起床時間だ。
暇な大学生ならこれから寝ると人も少なくない時間にボクは毎日起きている。
慣れたものだった。
15分で身支度を済ませて家を出ると店に到着するのが3時20分頃、白いコック服を着てネットキャップと黒の帽子を被って、ニトリル素材の手袋をはめ作業を始めるのは午前3時30分頃になる。
これがボクが毎日行っているルーチンワークであり、1時間30分のサービス残業だ。
これはいわばボクにとっての「ロスタイム」だった。
今日の場合、フロントガラスの結露に手間取ることなくルーチン通りに着替えまで済ませる事が出来た。
スムーズに物事が進むのはどの様な物であれ気持ちの良いものだ。
スムーズな移動、スムーズな職業、スムーズな葬式。どれもがこれ以上なく、素晴らしい。
ボクは3つのスイッチをONにする。ガコンガコンガコン。と大きな音が室内に響き、3台の換気扇が稼働しだす。まるで巨人が天井で居眠りでもしているかの様な轟々とした音だ。
ボクはノートpcを小脇に抱えて事務所を抜けてから真っ暗な厨房へと向かう。
厨房が真っ暗な理由はボクが電気をつけていないからで、何故電気をつけていないかというと電気をつけて作業をすれば店外からボクの「ロスタイム」を目撃される可能性が増えるからだ。だからボクは「ロスタイム」の作業中に灯りをつけることはない。
やはり何事にも、因果関係があるのだ。
もしもボクの上司であるこの店の店長にボクの「ロスタイム」が露見すれば説教を喰らうだけでは済まないだろう。サービス残業に厳しい世の中になったのは世間的には喜ばしいことだが、誰にでも都合がいいというわけではない。
少なくともボクはそのせいで大きなリスクを孕んでいる。
ボクはホワイト企業という幻想の崩壊を願っている。
ボクがなぜ約1時間30分もタイムカードを切らずサラリーの発生しない作業を行っているのか、説明しなければいけない。
単純に作業を早く終わらせたいとか、溜まっている仕事があるだとかそんな理由ではない。
本当の理由はもっと利己的で、捻くれていて、ボク個人の趣味と深く関わりのあることだった。
厨房に設置されている大きなまな板の横にノートpcを置いて、パンを焼く機械達(計3機)とpcに電源を入れる。
パチンパチンパチンパチン、スイッチON×4。
ボクはpcが稼働している微振動を指先に感じながら、契約している動画サブスクリプションサービスを開いた。
そこには様々な映画やドラマ、アニメーションが並んでいた。
しかし、これといってピンと来るビジュアルイメージを持つ作品が無かったので、ボクは以前に観た履歴の残っている映画の中から一つの映画を選出した。
デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」だ。
原作者のパラニュークが書いた小説はスピード感のある一人称小説であり、映像化されたこの映画も主人公を演じたエドワード・ノートンの語りが映画の大部分を占めていた。
作業をしながらでもbgmとして楽しむことができるので、この映画はボクのマイフェイバリットであった。
一つだけ、上映時間が2時間弱もあり、ボクの好みの上映時間から外れしまっている部分は惜しいところではあった。
しかし、何度も観返した映画なので、途中で切り上げてしまっても結末は分かりきっていた。
なのでボクはこの映画を再生することに決めた。
そう、ボクは毎朝こうして映画を観ながらパンを作っている。だからこそコソコソと暗い中で寒さに震えながら「ロスタイム」の作業を行なっているわけだ。
丁度タイムカードを切る時間と映画の終了時間が重なる90分程度の映画がボクの最近のお気に入りとなっている。
映画と人生は短く濃い方が好ましい。
昨日はデヴィッド・コープの「シークレット ウインドウ」(上映時間96分)を、一昨日は今敏の「パーフェクトブルー」(上映時間81分)を観た。
どちらも少し過激な内容でパンを作りながら観る映画としては相応しくないかもしれないとボクは考えた。
しかし、ボクの「ロスタイム」にはそれを気にする人間はボクを含めて誰も存在しなかった。
うるさい上司や嫌味な同僚はまだ枕に涎のシミを広げている時間だ。
とにかく、ボクは映画が好きだった。
ボクと映画が出会ったのは6歳の頃だった。
ボクの誕生日の日だ。たまたま仕事が休みであった叔父に連れられ、街の小さな映画館で人生初めての映画を観た。
当時は幼く、タイトルすらハッキリとしないが何故か話の筋だけはラインマーカーが引かれているかの様に今でもはっきりと覚えている。
その映画は、主人公であるイタリア系アメリカ人の男が刑期を終えて刑務所から出所するところからストーリーが始まる。
一文無しの彼は迎えに来た自分の兄と一緒に出所祝いの食事に行くのだ。
喫茶店でハムとチーズのサンドイッチとポテトチップを食べコーヒーを3杯飲み、4杯目のコーヒーを飲もうとした時天井で回っていたシーリングファンが落ちてきて彼の兄を突き刺してしまう。
彼は兄を生き返らせる為にその場にいたミニスカートをはいたウェイトレスのアジア系の女の子と一緒に「傷を癒す黄金のウサギ」を捕まえにいく。
ストーリーは比喩的で、ボクには何を象徴しようとしているのかの解釈が難しかった。
思い返してみれば、映像の方もお粗末で予算の少なさが露呈していたし、役者の演技もとても見れたものではなかった。
それでもボクは初めて観る映画というものにかなりのショックを受けた。
ビッグバジェットな映画でなくても、一つの虚構を大勢の人間が作り出しているという事象そのものに大きな感銘を受けたのだ。
当然幼い頃のボクは漠然とだが何らかの形で映画に携わる人間に憧れた。
監督、プロデューサー、役者、大道具、メイクそしてカメラマン…。
映画という1つの巨大な虚構を構成するパーツの一部になるのがボクの夢だった。
結局夢は夢のまま叶う事は無く、ボクはまるで刑務作業のように毎日パンを焼き続けている。しかし、「ロスタイム」に映画の鑑賞会を行うのはそんな現状への何らかの反抗心の現れだとボクは自己分析をしている。
現在のボクにできる事は、せいぜいが生地を捏ね成形したり、焦げる事のないように焼成を行ったりするのが関の山だ。ボクの生活は映画の制作とはかけ離れてしまっている。
だからこそどんな形であったとしても映画との繋がりを自分の中で持ち続けていたいのだ。
幼き日にみた「黄金のウサギ」をボクは探し続けているのかもしれない。
ボクはベーコンエッグベーグルサンドに使用する目玉焼きを作る為、鉄板に型を乗せ用意した。
焦付きを防ぐ油のスプレイを満遍なくふりかけると卵を計12個、暗闇での作業なので卵の殻が混入しないように注意深く割り入れた。
そうしながらもボクは「ファイト・クラブ」を再生する為にpcの画面に目を向けて、再生ボタンをクリックした。
画面が暗転し、換気扇やオーブンの作動する音だけが室内に響いている。
卵を割り続けて1鉄板を埋めると次はベーコンを焼く作業に取り掛かった。12枚のベーコンを鉄板に並べ終えるとオーブンに突っ込み、タイマーを3分にセットした。
いつもなら再生ボタンを押してからベーコンをオーブンに入れるまでの間に映画のアバンが再生され始める。
しかしその日は、いつまで経っても映像が始まる気配はなく、画面は暗いままで音楽やエドワード・ノートンの独白も流れださなかった。
ボクはpcに何かしらの不調が起きたのかと思い、検分する為に手を伸ばしかけた。
その時、微かにpcから何かの音が流れている事に気がついた。
耳を欹て、注意深く意識を向けると人々が行き交う音や声、原動機の駆動音、信号機などのインフラ設備のアナウンス音声などが僅かに聞こえている。それは所謂都会の喧騒といわれる類の環境音であった。
一瞬、間違った映画を再生してしまったのかと考えた。しかし、ボクにはその音声群が何らかの映画の一部分だとは思えなかった。
今流れている音の音質が映画で使われるような収音マイクで収録されたそれとは違い過ぎるという事に気づいたからだ。
例えるならそれはホームビデオ等の個人撮影された動画音声に近いチープでノイジーなものだった。
暗い画面を晒し続けるpcの画面はボクを無視するかの様に全く心当たりのない音声を再生し続けていた。暗く、誰もいない部屋の中で人々の雑踏はボクの孤独をより際立てるようだった。
次に取り掛かろうとしていた製造作業は不可思議な現象に相対したショックで頭から完全に切り離されてしまった。
これは一体どういう事だろうか。
ボクは因果関係の説明をこの時よりも強く求めたことはなかった。
しかし、その説明してくれる人間はボクの「ロスタイム」にはやはりいないのだ。
ボクのpcからは依然として謎の音声、街の雑音が流れ続けている。異変は実際時間の経過を無視していつまでも続く様に感じられた。
ボクは身震いして冷静に考えをまとめてみようとしたが、この状況に対する論理的な説明は何一つとして浮かばなかった。
暗い部屋の中を独りで異常事態に向き合っていると、暗い考えが忍び寄ってくるようだった。
ボクはエドガー・アラン・ポーが書いた「振り子と落とし穴」のイメージが脳裏に浮かんだ。
異端審問にかけられた男がジリジリと命を脅かされる様子だ。
その時だった。
急にベーコンを焼成する為にセットしていたタイマーが鳴り響いた。
ボクは少し驚いてオーブンからベーコンを取り出した。鉄板の上では油が踊るようにパチパチと跳ねていた。
もし、ボク以外の誰かが今のボクと同じシチュエーションに置かれたとしたらどうするだろうか。
原因を解き明かそうと考える、音を煩く思いpcを叩き壊す、それとも逃げ出すか。
ボクにはどの行動も取ることはできなかった。足は生まれた時からそうであったかの様に地面に縛り付けられていて、思考は隙間の大きなザルを通り抜ける様にどこにも引っ掛かることなくするりと滑っていった。
既に冷え冷えとしている厨房がさらにその冷たさを増しているようで、ボクはボクの体温が下がっていくのを感じた。
背後に設置されたコンベクションオーブンの中でファンが回転し、金属が擦れるキイキイという音が鳴り続けている。
途端に耳障りに感じたボクはコンベクションオーブンの電源をOFFにした。
騒音が止み、pcから流れ続ける音声だけが暗い部屋の中に響いていた_。
その瞬間、不意にこちらに呼びかけるような声が聞こえた。
ボクはドキリとして勢いよく背後を振り返った。
声の出所はやはりpcだった。
依然として画面は暗転していたが、スピーカーからは先程まで流れていた環境音とはまるで違う意思を持った一人の人間の声がしていた。
明るい調子のソプラノ、カラカラという笑い方、女の声だった。
女の声、「ロスタイム」、暗い部屋、ボクのpc、動きを止めたコンベクションオーブン、鉄板の上で乾いていくベーコン。
周囲を取り巻く状況がボクを中心としてグルグルと頭上で渦を巻いているようだった。
渦中のボクは混乱している頭を揺すり、どうにか情報を得ようと女の声に全神経を集中させた。
何事にも因果関係が潜んでいるならそれは必ず解き明かせる筈なのだ。
女の声はいつまでも、いつまでも続く様だった。
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