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第一部
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俺には、この、したり顔の姫の、真意が分からない。
「勇者に連れられて、帰ればよいではないか。一度、さらわれたという実績があれば、帰っても不都合はあるまい」
「冗談はよして。あんなヘボ勇者に助け出されて、そのまま結婚なんてことになったら、どうするの!」
「しかし、お前のくだらぬ嘘のせいで、あの勇者達は死ぬことになったのだぞ」
「それが? 何回だって生き返るんだし、別にいいでしょ。それに、殺したのはわたしじゃないしね」
この姫が異常なのか、この世界の死生観が、俺の知っているものとは違うのか、どうにも、感覚のズレがあるように思える。
しかし、たしかに、何度でも生き返ることが可能であれば、死に対する扱いが、軽くなるのは当然か。
ここで、また、ひとつの疑問が生まれ、小声でブランに問う。
「勇者以外の、通常の人間は、死ぬと、どうなるのだ」
「どうなる、と言いますと?」
「生き返ったりはしないのか」
「しません」
「死体はどうなる?」
「勇者のように、消えたりはせず、その場に残ります。やがて、腐敗して、骨になります」
その辺は、一応、俺の知ってる現実世界と同じように聞こえる。
「勇者だけが、生き返ることができるのか」
「厳密には、勇者と、そのパーティメンバー、ですが」
そこで突然、アキナの声が聞こえてきた。アキナは、いつの間にか、玉座の前のほうまで出てきていた。
「何回も生き返るとか、勇者って、ホント、気持ち悪いわよね」
「こら。盗み聞きをするでない」
「あんなにでかい声で話しておいて、盗み聞きもなにもないでしょう」
「それほど、大きな声で話していたか?」
「あんなの、隣の部屋に居たって、聞こえるわよ!」
そうか。どうやら、小声の認識を改めねばならないようだ。なんせ、俺は、今、身長およそ30メートルなのだ。俺が小声のつもりでも、その声は、存外に大気を震わせるのだろう。やはり、密談する場合は、超空間に行くのがよさそうだ。
俺は、アキナに向けて言う。
「それはそうと、勇者が気持ち悪いだと?」
「だって、そうでしょ? 死んでも死んでも生き返るのよ? 完全に、人間やめてるでしょ」
なんだか、勇者の扱いが、俺の想像と、少し違うような気がする。
「しかし、お前は、将来、その勇者と結婚するのではないのか?」
「んー、お父さんは、そうさせたいみたいだけどね。わたしは、ちょっとなあ」
そう言いながら、アキナは、少し、眉根を寄せた。
「お前は、先ほど、勇者に助けを請うていたではないか」
「わたしも立場上、勇者が来たら、ああするしかないじゃない。あなたが、勝ってくれて、ホッとしたわ。できることなら、2度と、ここに勇者は来てほしくないくらい」
「どうにも、話が見えてこないな。その、ひとつしかない命を危険に晒してまで、お前は、魔王城に居る必要があるのか? 姫としてのプライドや、世間体は、命よりも優先すべきものなのか」
「あなた、本当に分かってないのね」
再び、アキナの目に、怒りの色が浮かぶ。
「わたしにとっては、ストラリア城に居るほうがよっぽど危険なの! 毎日毎日、どこの馬の骨とも分からない勇者が、とっかえひっかえやってきては、私を宿屋に連れ込もうと狙ってるのよ? わたし、あんなところには、死んでも戻らないからね」
ブランから聞いていた話とは、少し違う。ブランの話は、あくまで過去の知識であるということなのか、それとも、この世界が特殊なのか。
それはさておき、姫は姫で苦労してるんだな、と少し同情する。
「しかし、ここは魔王城だぞ。ここに居れば、本当に、死ぬ危険もあるのだぞ」
「どんな危険があるの?」
アキナが不思議そうな顔でたずねた。
具体的に聞かれると、俺も、困る。魔王城と言えば、人間にとっては、世界の最果て。人間が足を踏み入れるには、あまりに危険な場所、というイメージがある。
魔王城の危険と言えば、やはり、魔物であろう。
「ほれ、そこに魔物が山ほどいる」
言いながら、俺は、玉座の後ろに固まっている、ネコやらウサギやらの群れを指した。
それを見て、アキナは吹き出す。
「あはは。わたし、その子達と一緒に、数日かけて、ここまで旅をしてきたのよ?」
俺は、苦し紛れに、扉のほうを指差しながら言う。
「そこの奥の通路には、恐怖のデスナイト――デスデスも居る」
「ああ、あの、かわいいガイコツさん? デスデスっていうんだ!」
「いやあ、照れるデス!」
いつの間にか、扉の隙間から頭をのぞかせていたデスデスは、それだけ言って、頭を引っ込めた。
「他にも、危険はたくさんあるぞ。……なあ」
俺は、ブランに同意を求めた。
「まあ……フルグラ様が、指示を出さない限りは、姫を殺そうとする魔物は居ないでしょうな。もしくは、フルグラ様が、直接殺すという手段も考えられますが。その、つまりは、フルグラ様次第ということです」
「あなたは、わたしを殺すの?」
アキナが、一切の疑いを感じさせない、子どものような瞳で、俺を見つめている。
俺が、こいつを殺す?
そのことを考えたとき、自分でも驚くほどの忌避感に襲われた。
なぜだろう。勇者は、なんのためらいもなく、殺すことができたのに。
勇者は、殺しても生き返ることを知っていたからか? そして、この姫は、殺せば、もう生き返らないことを知ってしまったからか?
俺は、自分でもよく分からない内に、返事をしていた。
「いいや」
アキナは、歯を見せて、ニカッと笑う、お得意の笑顔を作って言う。
「じゃあ、わたし、ここで暮らすんで、よろしくね」
玉座の後ろから、魔物たちの喝采が聞こえた。
それから数日、俺は、魔王城の改築を進め、ときおり、マサムネの様子を見に行き、また、ときおり、玉座の間に戻る、という生活を繰り返していた。
玉座の間に戻り、あちこちを走り回る魔物達を見て、今更ながら、気になったことがあり、ブランを超空間に呼ぶ。
「魔物達のエサというのは、どうなっているのだ?」
「どう、と言いますと?」
「あいつらは、何を食って生きてるんだ」
「質問の意図が把握できないのですが、何も食べていません、というお言葉で、返答になるでしょうか」
薄々、勘付いてはいたが、一応、質問を重ねてみる。
「何も食べなくとも、飢え死にはしないということか」
「飢え死に、とはなんでしょうか」
やはり、そうだ。この世界には、飢える、という概念がないのだ。満腹度、のようなシステムが入っていないせいだろうか。
俺も、この世界で魔王を始めてから、1週間以上は経過していると思うが、何も口にしていない。にも関わらず、空腹感はなく、特に問題は生じていない。
「すまぬ。おかしな質問を続けるかも知れぬが、容赦してほしい」
「滅相もない。いくらでも、お聞きください」
「魔物達のエサ自体は存在するのか?」
「エサと呼ぶべきかは分かりませんが、食べるものはあります」
「食べるとどうなるのだ」
「どうと言われると難しいのですが、大抵は、美味しかったり、嬉しかったりしますね」
どうやら、食べ物は、あくまで嗜好品のような感覚であるらしい。エサの心配をしなくていいのは助かる。
超空間から戻ると、左斜め前方にアキナの姿が見え、声をかけてみる。
「お前、腹は減っていないか」
アキナは、キョトンとしており、何を聞かれているのかが分からない様子だ。
俺は、言葉を変えて聞いてみる。
「何か、食べたいものはあるか?」
アキナは目を輝かせる。
「え、なに? 言えば、持ってきてくれるの? モモ! わたし、モモが食べたい」
すると、周りの魔物達が、俺の前方に集まりだし、次々に声を発した。
「えー、アキナばっかりずるい!」
「ボク、いちご!」
「オレ、メロン!」
なんだか果物ばっかりだ。
「静まれ! 今、ここにはない! もし、どこかで見つかったら、持ってきてやる」
俺が言うと、魔物達は、歓声を上げたり、舌打ちをしたりしながら、散っていった。舌打ちしたやつは、どいつだろう。俺は、魔王として、なめられているんだろうか。
そんなことを考えている俺を、アキナは、ニコニコしながら、見ていた。
「魔王って、ずいぶん優しいんだね」
「勘違いするでない。少し、確認したいことがあっただけだ」
「何を?」
「お前に言う必要はない」
人間も、魔物と同様、空腹を感じないのかを確かめたかっただけなのだ。
アキナは肩をすくめて言う。
「ま、いいけどね。ところでさ、あなた、あんまり玉座の間に居ないけど、どこで、なにやってるの?」
俺は、正直に言うべきかで悩んだが、言ったところで問題ないだろうと判断する。
「今は、魔王城の改築をしている。私は、いわば、現場監督だ」
「あははは。なにそれ。魔王が現場監督してるの? 魔王は、ちゃんと働くんだねえ。うちのお父さんなんて、玉座に座りっぱなしだよ」
「あいにく、魔王は、玉座に座りっぱなしでは、勇者に殺されるのでな」
「そっか。魔王は大変なんだね。それで、なんでまた、改築を?」
「勇者を、この玉座の間に、辿り着かせないようにだ」
「あ、もしかして、わたしが、勇者に来てほしくないって言ったから?」
アキナは、両手で自分の頬を触り、いかにもなポーズを取っている。
「ちがう! 私と、魔物達のためだ。そもそも、お前が、初めて、この城に来た時に、すでに改築は始まっていただろう」
「そうだったっけ」
アキナは、肩をすくめながら、首をかしげた。
この女は、とぼけているのか、本当に覚えていないのか。
「玉座の間の場所自体は、もう知られてしまっている。であれば、辿り着くまでの道のりを、困難にするしかあるまい」
言ってから、失敗したかと思った。こちらの内情を喋りすぎたかと感じたのだ。しかし、それに対する、アキナの返答は、完全に俺の心理的盲点を突いていた。
「玉座の間は、別の場所に動かせないの?」
俺は、その返答を求めて、ブランを見た。
ブランは、目を見開いたまま固まり、答えなかった。
「勇者に連れられて、帰ればよいではないか。一度、さらわれたという実績があれば、帰っても不都合はあるまい」
「冗談はよして。あんなヘボ勇者に助け出されて、そのまま結婚なんてことになったら、どうするの!」
「しかし、お前のくだらぬ嘘のせいで、あの勇者達は死ぬことになったのだぞ」
「それが? 何回だって生き返るんだし、別にいいでしょ。それに、殺したのはわたしじゃないしね」
この姫が異常なのか、この世界の死生観が、俺の知っているものとは違うのか、どうにも、感覚のズレがあるように思える。
しかし、たしかに、何度でも生き返ることが可能であれば、死に対する扱いが、軽くなるのは当然か。
ここで、また、ひとつの疑問が生まれ、小声でブランに問う。
「勇者以外の、通常の人間は、死ぬと、どうなるのだ」
「どうなる、と言いますと?」
「生き返ったりはしないのか」
「しません」
「死体はどうなる?」
「勇者のように、消えたりはせず、その場に残ります。やがて、腐敗して、骨になります」
その辺は、一応、俺の知ってる現実世界と同じように聞こえる。
「勇者だけが、生き返ることができるのか」
「厳密には、勇者と、そのパーティメンバー、ですが」
そこで突然、アキナの声が聞こえてきた。アキナは、いつの間にか、玉座の前のほうまで出てきていた。
「何回も生き返るとか、勇者って、ホント、気持ち悪いわよね」
「こら。盗み聞きをするでない」
「あんなにでかい声で話しておいて、盗み聞きもなにもないでしょう」
「それほど、大きな声で話していたか?」
「あんなの、隣の部屋に居たって、聞こえるわよ!」
そうか。どうやら、小声の認識を改めねばならないようだ。なんせ、俺は、今、身長およそ30メートルなのだ。俺が小声のつもりでも、その声は、存外に大気を震わせるのだろう。やはり、密談する場合は、超空間に行くのがよさそうだ。
俺は、アキナに向けて言う。
「それはそうと、勇者が気持ち悪いだと?」
「だって、そうでしょ? 死んでも死んでも生き返るのよ? 完全に、人間やめてるでしょ」
なんだか、勇者の扱いが、俺の想像と、少し違うような気がする。
「しかし、お前は、将来、その勇者と結婚するのではないのか?」
「んー、お父さんは、そうさせたいみたいだけどね。わたしは、ちょっとなあ」
そう言いながら、アキナは、少し、眉根を寄せた。
「お前は、先ほど、勇者に助けを請うていたではないか」
「わたしも立場上、勇者が来たら、ああするしかないじゃない。あなたが、勝ってくれて、ホッとしたわ。できることなら、2度と、ここに勇者は来てほしくないくらい」
「どうにも、話が見えてこないな。その、ひとつしかない命を危険に晒してまで、お前は、魔王城に居る必要があるのか? 姫としてのプライドや、世間体は、命よりも優先すべきものなのか」
「あなた、本当に分かってないのね」
再び、アキナの目に、怒りの色が浮かぶ。
「わたしにとっては、ストラリア城に居るほうがよっぽど危険なの! 毎日毎日、どこの馬の骨とも分からない勇者が、とっかえひっかえやってきては、私を宿屋に連れ込もうと狙ってるのよ? わたし、あんなところには、死んでも戻らないからね」
ブランから聞いていた話とは、少し違う。ブランの話は、あくまで過去の知識であるということなのか、それとも、この世界が特殊なのか。
それはさておき、姫は姫で苦労してるんだな、と少し同情する。
「しかし、ここは魔王城だぞ。ここに居れば、本当に、死ぬ危険もあるのだぞ」
「どんな危険があるの?」
アキナが不思議そうな顔でたずねた。
具体的に聞かれると、俺も、困る。魔王城と言えば、人間にとっては、世界の最果て。人間が足を踏み入れるには、あまりに危険な場所、というイメージがある。
魔王城の危険と言えば、やはり、魔物であろう。
「ほれ、そこに魔物が山ほどいる」
言いながら、俺は、玉座の後ろに固まっている、ネコやらウサギやらの群れを指した。
それを見て、アキナは吹き出す。
「あはは。わたし、その子達と一緒に、数日かけて、ここまで旅をしてきたのよ?」
俺は、苦し紛れに、扉のほうを指差しながら言う。
「そこの奥の通路には、恐怖のデスナイト――デスデスも居る」
「ああ、あの、かわいいガイコツさん? デスデスっていうんだ!」
「いやあ、照れるデス!」
いつの間にか、扉の隙間から頭をのぞかせていたデスデスは、それだけ言って、頭を引っ込めた。
「他にも、危険はたくさんあるぞ。……なあ」
俺は、ブランに同意を求めた。
「まあ……フルグラ様が、指示を出さない限りは、姫を殺そうとする魔物は居ないでしょうな。もしくは、フルグラ様が、直接殺すという手段も考えられますが。その、つまりは、フルグラ様次第ということです」
「あなたは、わたしを殺すの?」
アキナが、一切の疑いを感じさせない、子どものような瞳で、俺を見つめている。
俺が、こいつを殺す?
そのことを考えたとき、自分でも驚くほどの忌避感に襲われた。
なぜだろう。勇者は、なんのためらいもなく、殺すことができたのに。
勇者は、殺しても生き返ることを知っていたからか? そして、この姫は、殺せば、もう生き返らないことを知ってしまったからか?
俺は、自分でもよく分からない内に、返事をしていた。
「いいや」
アキナは、歯を見せて、ニカッと笑う、お得意の笑顔を作って言う。
「じゃあ、わたし、ここで暮らすんで、よろしくね」
玉座の後ろから、魔物たちの喝采が聞こえた。
それから数日、俺は、魔王城の改築を進め、ときおり、マサムネの様子を見に行き、また、ときおり、玉座の間に戻る、という生活を繰り返していた。
玉座の間に戻り、あちこちを走り回る魔物達を見て、今更ながら、気になったことがあり、ブランを超空間に呼ぶ。
「魔物達のエサというのは、どうなっているのだ?」
「どう、と言いますと?」
「あいつらは、何を食って生きてるんだ」
「質問の意図が把握できないのですが、何も食べていません、というお言葉で、返答になるでしょうか」
薄々、勘付いてはいたが、一応、質問を重ねてみる。
「何も食べなくとも、飢え死にはしないということか」
「飢え死に、とはなんでしょうか」
やはり、そうだ。この世界には、飢える、という概念がないのだ。満腹度、のようなシステムが入っていないせいだろうか。
俺も、この世界で魔王を始めてから、1週間以上は経過していると思うが、何も口にしていない。にも関わらず、空腹感はなく、特に問題は生じていない。
「すまぬ。おかしな質問を続けるかも知れぬが、容赦してほしい」
「滅相もない。いくらでも、お聞きください」
「魔物達のエサ自体は存在するのか?」
「エサと呼ぶべきかは分かりませんが、食べるものはあります」
「食べるとどうなるのだ」
「どうと言われると難しいのですが、大抵は、美味しかったり、嬉しかったりしますね」
どうやら、食べ物は、あくまで嗜好品のような感覚であるらしい。エサの心配をしなくていいのは助かる。
超空間から戻ると、左斜め前方にアキナの姿が見え、声をかけてみる。
「お前、腹は減っていないか」
アキナは、キョトンとしており、何を聞かれているのかが分からない様子だ。
俺は、言葉を変えて聞いてみる。
「何か、食べたいものはあるか?」
アキナは目を輝かせる。
「え、なに? 言えば、持ってきてくれるの? モモ! わたし、モモが食べたい」
すると、周りの魔物達が、俺の前方に集まりだし、次々に声を発した。
「えー、アキナばっかりずるい!」
「ボク、いちご!」
「オレ、メロン!」
なんだか果物ばっかりだ。
「静まれ! 今、ここにはない! もし、どこかで見つかったら、持ってきてやる」
俺が言うと、魔物達は、歓声を上げたり、舌打ちをしたりしながら、散っていった。舌打ちしたやつは、どいつだろう。俺は、魔王として、なめられているんだろうか。
そんなことを考えている俺を、アキナは、ニコニコしながら、見ていた。
「魔王って、ずいぶん優しいんだね」
「勘違いするでない。少し、確認したいことがあっただけだ」
「何を?」
「お前に言う必要はない」
人間も、魔物と同様、空腹を感じないのかを確かめたかっただけなのだ。
アキナは肩をすくめて言う。
「ま、いいけどね。ところでさ、あなた、あんまり玉座の間に居ないけど、どこで、なにやってるの?」
俺は、正直に言うべきかで悩んだが、言ったところで問題ないだろうと判断する。
「今は、魔王城の改築をしている。私は、いわば、現場監督だ」
「あははは。なにそれ。魔王が現場監督してるの? 魔王は、ちゃんと働くんだねえ。うちのお父さんなんて、玉座に座りっぱなしだよ」
「あいにく、魔王は、玉座に座りっぱなしでは、勇者に殺されるのでな」
「そっか。魔王は大変なんだね。それで、なんでまた、改築を?」
「勇者を、この玉座の間に、辿り着かせないようにだ」
「あ、もしかして、わたしが、勇者に来てほしくないって言ったから?」
アキナは、両手で自分の頬を触り、いかにもなポーズを取っている。
「ちがう! 私と、魔物達のためだ。そもそも、お前が、初めて、この城に来た時に、すでに改築は始まっていただろう」
「そうだったっけ」
アキナは、肩をすくめながら、首をかしげた。
この女は、とぼけているのか、本当に覚えていないのか。
「玉座の間の場所自体は、もう知られてしまっている。であれば、辿り着くまでの道のりを、困難にするしかあるまい」
言ってから、失敗したかと思った。こちらの内情を喋りすぎたかと感じたのだ。しかし、それに対する、アキナの返答は、完全に俺の心理的盲点を突いていた。
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俺は、その返答を求めて、ブランを見た。
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