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プロローグ

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 圧倒的な才能を目にした時、人はまず魅せられてしまう。
 俺を見下ろす彼女の姿は、天狗になっていた俺にそのことを教えてくれた。
 精緻な魔法、無駄のない動き、洗練された剣技。
 何より、相手に怪我をさせるかもしれないとか、自分が怪我するかもしれないとか、そんな恐れを一切覗かせない、平時と変わらない整った顔。
 戦う者としての、勇者としての才能を目の当たりにして、俺は。
「天使みたいだ……」
 混じり気なしの称賛を、口にしたのだった。
 
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