37 / 38
第二ミッション
37
しおりを挟む
天日により投げ飛ばされた五人。
能力が比較的に高い王子、戦士として日々体を動かしている黒川、運動神経抜群な星宮、盗賊として身のこなしがいい空門、踊り子として体の動かし方を熟知している加納。
五人は投げ飛ばされても上手く着地して屋敷の方を見ればメイドがいることに気が付いた。
「乱暴だけど、逃がさなくて済んだね」
投げ飛ばされたことに少しだけ負の感情を抱いた星宮だがすぐに切り替えた。
「飛ばされてきてどうなさったのですか!?」
メイドは飛ばされてきた星宮たちを心配するようなそぶりを見せる。
「もしやデーモンブラッドの仕業ですか!? 王子様もいるのですから早くお逃げください!」
そう言いながら自身も逃げようとするメイド。
「下手な芝居は止せ。こちらはもうお前がデーモンブラッドだと分かっているんだぞ」
王子は神猿からもらった剣の切っ先を向けてそう言い放つ。
その一方、黒川は王子に不信感を抱いていた。
(ヒェリ家がデーモンブラッドと繋がっていたのならこいつも怪しくねぇか……?)
色々と状況が変わっている中で黒川が一番信用しているのは他プレイヤー。そしてデーモンブラッドを看破した天日。
天日は本当のデーモンブラッドから狙われていたからこちら側であると確信していた。
だが、王子はそれすら見抜けずに危うくデーモンブラッドの味方をしようとしていたことで黒川にとって王子は怪しく見えていた。
「今は考えている暇はないよ。とにかく目の前のデーモンブラッドを倒そう」
「……はい」
その考えを星宮に見抜かれた黒川はまずデーモンブラッドを倒すことを考える。だが王子を警戒することも忘れない。
「……ハァ、全く。あれだけ注意しろって言ったのに見抜かれるなんて馬鹿でしょ」
観念したようにメイドは口調を変えた。
「この国を陥れる魔神の手下よ。この国の王子として、お前を斬る」
「あなたに? すごい武器になっているけどそれは無理よ」
「言ってろ」
「親切に警告して上げているのに。まあいいわ。どうせ正体がバレたら殺さないといけないから」
メイドのデーモンブラッドは魔神の力を解放し、服を際どいものへと変化させる。
「エロいな!」
その際どい服を見た黒川がそう反応すれば、空門による殺意のこもった冷たい視線が突き刺さる。
「はぁ? ふざけてんの?」
「い、いやいや違うって! 胸のところに紋章があるから!」
意味の分からない言い訳をしている黒川をよそにデーモンブラッドは動き出す。
「さぁ、始めましょう。蹂躙を」
「ッ!?」
デーモンブラッドは一瞬にして王子の背後に回り込みナイフを突き刺そうとしていた。
それを神猿から押し付けられた剣がオートガードしたことにより防ぐことができた。
「その武器に助けられたわね」
「……馬鹿言え。単なる実力だ」
そう言った王子だが自身が全く反応できなかったことに驚き、神猿の剣に感謝した。
プネウマ王国に代々王子に受け継がれる宝剣では瞬殺されていたことを自覚する王子。
さらに続けてデーモンブラッドが王子に攻撃を仕掛けるがそのすべてを剣がガードした。そして時には王子の魔力を使ってカウンターを狙うが王子のリーチを把握していたデーモンブラッドにより簡単に避けられる。
(くそッ! もっと動ければ倒せているのに!)
自身の実力不足を痛感してしまっている王子。
「あなたでは私を倒せないわよ。それにあなたの体がもたないでしょう」
「まだまだ余裕だ」
神猿の剣がオートガード、オートカウンターの性能を持っているとは言え、所有者に負担がかかっている。
「チュー」
「……やっぱりそうなんだね」
すぐに王子が時間稼ぎをできないと理解した神子は星宮にその意思を伝えれば何となくだが星宮は理解できた。
「みんな、聞いてくれ。彼は長く持たないみたいだ」
「えっ、なんか戦えているように見えるけど……」
星宮の言葉に信じられないと言う顔をする空門。
「だよね。戦えているみたいだから勝てるんじゃないの?」
さらに加納も同調する。だが黒川は違った。
「いや、完全に受け身だからジリ貧だ」
「そう。だから僕たちは彼の援護に回るよ」
「りょーかい!」
「そっすね。やらないとこの国がヤバイですし」
「はい!」
王子を援護するべく四人は動き始める。
基本四人でパーティを組むプレイヤーたちだが王子を含めた五人でパーティを組むこともあったため今回も王子を主体とした動きをする。
王子が敵と接触している間に戦士である黒川と盗賊である空門が敵の集中を削ぎ、魔法使いである星宮が敵を魔法で攻撃しつつ、踊り子の加納が全体バフをかけるというものであった。
「ハァ!」
王子がデーモンブラッドの攻撃をオートガードをしたところで黒川が斬りかかるが易々と避けられる。
だが神猿の剣がその状況でもうまくオートカウンターを発揮したことで顔に切り傷をつけることに成功した。
「いいぞ真司!」
「はい!」
ほんの一瞬だけでも隙を作り、なおかつ王子の射程にいれば神猿の剣の餌食になると踏んだデーモンブラッドはすぐに回りの人間を片付けることにした。
黒川は王子と近いためその次にデーモンブラッドと近い空門に狙いをつけて斬りかかる。だが、残りのメンバーがいるため狙われた空門に焦りはない。
「ッ!?」
空門に近づく前に地面が割れるほどの重みをデーモンブラッドは感じた。
それをしたものが星宮の肩に乗っている神子だと分かった様子のデーモンブラッド。
「神威……!」
「神子がいるから負けるつもりはないから」
空門はそう言ってデーモンブラッドから距離をとった瞬間に王子が距離と詰める。
デーモンブラッドは魔神の力を使い拘束から抜け出して王子に応戦する。
(これはまずいわね。とにかくあのネズミがヤバい……どうにかしないと袋叩きね)
すぐさま神子をどうにかする方針をとるデーモンブラッド。
デーモンブラッドはわざと神子が力を使う状況を作り出し神子がどう動くかを分析する。
数度したところであることに気が付いてしまった。
(もしかして、間隔を空けないとできない?)
神子の性質は「増殖」であり重力操作はその副次効果に過ぎない。
そのため神子一匹ではできることが限られていた。ただし、神子一匹でできることに限りがあるとしても、無限の神子が集まればその限りではない。
数がいればいるほど神子の力は発揮できる環境にあった。
そのため一匹では意味がないことを神子は理解しており、それをデーモンブラッドに見抜かれつつあった。
(もう何度も喰らえない……から、ここでやるしかないか)
デーモンブラッドはその可能性が正しいと考え行動に移す。
狙いを見せないようにまず王子からの攻撃をかわし邪魔をしてくる黒川も無視する。そして狙うは一番浮いている駒である空門であった。
だがそこへの攻撃はカウンターのように神子の力が飛んでくる。
圧し潰されそうになるデーモンブラッドであるが、ここぞとばかりに魔神の力を全解放することで一瞬のうちに神子の力を解いた。
魔神の適合者であるデーモンブラッドではあるが受けたその力を全解放することは体が壊れてしまう恐れがあった。
数秒間でさえデーモンブラッドの体は破壊と再生が繰り返される。人間の身ではそこに限界が来るが神子を消すことさえできればその後はどうとでもなると考えたからこう行動した。
それを神子はすぐに理解して星宮に危害が及ばないように肩から飛び降りてデーモンブラッドを星宮から引き離そうとする。
「今度は、僕が!」
だが星宮が神子を守るように飛び降りようとする神子を抱きしめる。
デーモンブラッドはすでに神子を補足しているため星宮ごと神子を魔神の力で突き刺そうとした。
その瞬間、屋敷から流星のごとき速さで星宮のもとにたどり着き、星宮を抱っこしてその凶刃から救う。
「ふぅ、間一髪ってところか」
お姫様抱っこをされた星宮は救い出したものを見つめる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……!」
☆
ホント良かったー。最初から戻らないといけない羽目になるところだったー。もう一体のデーモンブラッドの方を見たら今にも殺されそうになっている星宮さんがいたからビックリした。
そして星宮さんを助け出したのはいいけどどうしてこんなにメス顔をしているのか。こういうシチュエーションが好きでときめいているのかもしれない。
「降ろしますよ」
ボーっとしている星宮さんを地面に座らせ、俺はデーモンブラッドの方を向く。
「お前でラストだ」
「……あっちのバカはやられたようね」
「ボコボコにしてやったから面でも見るか?」
「いいわよ。どうせ見れたものではないでしょうし」
「そうだな。半分くらいのめり込むまでボコボコにしたから」
てか何だかボロボロだなー。王子とかがやったのではなくてこれは自滅だな。
「おいアンタ気を付けろ! そいつ強いぞ!」
親切にも黒川さんにそう忠告される。
「大丈夫です。俺、強いですから」
そう言い終えるや否や、デーモンブラッドは斬りかかってくる。
「危ない!」
空門さんの声が聞こえるが俺はあえて受けた。
「そんなものか?」
俺の首筋に当たるナイフは一切俺の肌に傷をつけることができなかった。
「ほら、もっと頑張らないと終わるぞ?」
距離をとったデーモンブラッドに俺がそう言っても全く俺に向かっては来ない。それどころか意識は戦おうとしているのではなく逃げようとしているのが分かった。
「来ないのなら仕方がない。こっちから行くぞ」
「邪魔をしないで……!」
俺が殴りかかればデーモンブラッドはナイフで応戦する。
剣速は執事のデーモンブラッドと同じくらいだが移動速度が速い。これは星宮さんたちがてこずるわけだ。
「これは……!?」
俺の攻撃を直接食らわなくてもオメガの加護は発動する。
ナイフで応戦したとしても力がみるみると消えていくのが分かった様子のデーモンブラッド。
「まさか! アルファの生き残りか!」
「おっ、二人のデーモンブラッドは分からなかったのにお前は分かるのか」
驚いている暇など与えず、デーモンブラッドを蹴り飛ばした。
「くぅっ! ……最悪だ……!」
「そうだ。俺と戦えば戦うほどお前の力は消えていく。だから最初で終わらせなければお前には勝ち目がなかった。まぁ、俺はもとから強いからそれも無理だろうけど」
こうなればもうデーモンブラッドに勝ち目はない。ただ諦めていない様子だからどうするのかと見れば一気に魔神の力を解放させた。
勝負を決める気なのかと思ったが、次の瞬間全方位に魔力の弾が放たれた。
「私を倒したいのなら他は諦めることね」
その隙に逃げるって訳か。俺が星宮さんを助けたから他も助けると踏んだのだろう。
「なめられたものだ」
俺は神牛を顕現させ五人の前に鏡を置き盾にした。
鏡に魔力の弾が着弾した瞬間、その威力が神威が乗りデーモンブラッドに返った。
「ああああぁ!?」
逃げようとしていたデーモンブラッドの動きが止まったことで俺はデーモンブラッドを殴り飛ばした。
地面を転がっていき止まった時にはオメガの加護が効いたようで絶命した様子だった。その証拠にデーモンブラッドが絶命したことで三度出てきた魔神アスタロトの力をオメガの加護で蹴り消した。
「おっ、こいつは十%か」
ロールミッションで魔神アスタロトの魔力を十%消失と出てきた。いつもなら五%だったがこいつだけは多く魔力を受けていたようだな。
さて、これでアナスタシアは満足だろうから俺は帰るか。
「ま、待ってくれないか!?」
俺が踵を返せば星宮さんが話しかけてきた。
「も、もしかして、あなたは……前回の世界で僕を助けてくれた人じゃ……!?」
うーん、どうしよう。裏チートキャラのロールをこなすためにはここで星宮さんたちと合流するのはよくないと思うんだよなー。
でもどうなんだろうか。合流じゃなければ許されるのかってところが分からない。
「チュー、チュチュチュー!」
「えー。それ肩を持ちすぎじゃないか?」
俺が悩んでいれば神子が説教をするようなことを言ってきた。
要するに「あんた前回会っていないんだからきちんと挨拶しなさいよ! 総評なんてどうせチート能力を持っててそれ以上何を欲しがるわけ!? こっちを強くする方が重要でしょうが!」と言われている。
星宮さんと会うまではこんなことはなかったが、星宮さんとかなり親密になっているからこうなった。
「チュー!」
「分かった分かった」
神子にしつこく言われるものだから俺は神鳥の能力を解き素の状態を見せる。
「どうも、初めまして表プレイヤーの皆さん。俺は前回星宮さんと一緒だったプレイヤー、天日晴明です。どうぞこの世界が続く限りよろしくお願いします」
俺は恭しく頭を下げて自己紹介をする。
「プレイヤーとはなんだ?」
あぁ、そう言えば王子にはプレイヤーについて説明していなかったんだったな。でも分からないならそれでいい。
「プレイヤーは俺たちが同郷であることを示す言葉です。特に深い意味はありません」
「そうなのか……」
「あ、あの!」
星宮さんがこちらに歩み寄ってきた。
「前回は、本当にありがとう……僕の、王子様……」
星宮さんが手を伸ばしながらそう言ってきたから俺はその手をとり手の甲に口づけをした。
「お姫様がご無事で何よりです。俺が遣わしたものはしっかりとお姫様のお役に立てているようで嬉しい限りです」
「ふふっ、この子は僕の親友になったんだ。大切な親友を遣わしてくれたこともありがとう」
「いえいえ、とんでもないです」
あー、ようやく星宮さんと話せて満足してしまうなー。
「あー、少しいいか?」
俺と星宮さんが二人の雰囲気を作っていたところで黒川さんが気まずそうに話しかけてきた。
「空気読め、陰キャ」
せっかく意を決した黒川さんに空門さんはそう言って軽蔑の視線を向けていた。
「……今の状況を確認しておきたいんだが」
「構いませんよ。むしろ俺から言わないといけないことがあります」
空門さんの言葉を無視して俺に話しかける黒川さんに俺は応える。
「一先ず俺がデーモンブラッドの死体を証拠にヒェリ家の当主がデーモンブラッドと繋がっていたことを示さなければならない」
やっぱりこういうことは王子にしかできないか。
「デーモンブラッドがいる以上、マギア機関を管理するスィオピ家が必要だと進言してスィオピ家の地位を元に戻すつもりだ。……だからアナスタシアに戻ってくるように伝えてくれないだろうか?」
ま、俺が持ってきた手紙が本物だと判断すればアナスタシアが一緒にいると思うよな。
「無理です。アナスタシアはもう戻らないと言っています」
これは本当に聞いたことだ。ピロートークの時にデーモンブラッドを倒した功績でプネウマ王国に戻らないのか、と。
その解はノー。もう貴族として振る舞うのは飽きたと言っていた。
「そんな馬鹿な! 彼女がそんなことを!?」
「はい。ですがプネウマ王国のデーモンブラッドを殲滅することは協力するとのことです」
「……信じられない。彼女と直接話をさせてくれ……!」
えー、そんなことアナスタシアが承諾するのかー? それに会うとしてもどこで? 一番安全なのはアンゲロスだが、王子は入れないだろ。
まあ聞いてみるかと、俺はポケットからスマホを取り出す。
「えぇ!? どうしてスマホがあんの!?」
そのスマホを見た空門さんが俺に詰め寄ってきた。
「俺が作ったからですね」
「えっ……!? て、天才!?」
「まあそうとも言うかもしれませんね」
「ねー天才ー、あたしにもスマホ作ってー」
空門さんは俺にすり寄りながら上目遣いでお願いしてきた。
「後でやりますから今は待っててください」
「はーい」
「おい。そいつは今重要な場面なのに余計なことを言っていたんだぞ。だから厳しく黙れと返しておけばいい」
「はぁ? あんたもスマホがほしいからそんなこと言ってんの? ぷぷっ」
空門さんの言葉に青筋を立てる黒川さん。
「まあ今はダメですけど後でならいくらでもしますからね。だからそこまで厳しいことは言いませんよ」
「ほらー」
「でも空門さんも手が空いている時に言ってくれた方がいいですよ」
「はーい。反省!」
「こいつ……!」
「まあまあ、落ち着いて黒川くん」
血管が切れそうなくらいに怒りを露にしている黒川さんを落ち着かせる加納さん。
そして俺はアナスタシアに電話を掛ければすぐにアナスタシアは出た。
『も、もしもし?』
初めての電話であるため緊張した声色を出すアナスタシア。
「もしもし。晴明だが今少しいいか?」
『……なにか問題があったのかしら?』
「いや、デーモンブラッドを二体倒したしヒェリ家が繋がっていたから順調に事は済んだよ」
『当然ね。そんなことを言いたくて電話をしたの?』
「本題はここから。ヒェリ家と一緒にプネウマ王国の王子がいて、アナスタシアに会いたいって言っているぞ」
『なぜ?』
酷く毛嫌いしているような声色で俺に問いかけてくる。
「プネウマ王国に、スィオピ家に戻らないってことを伝えたらそう言い出してね」
『……ハァ、どうして言うのよ』
「悪い。それでどうする? 嫌なら断るぞ」
『……いい機会だわ。その場でしっかりとこちらの意思を伝えることにするわ』
「分かった。それなら一時間後にそっちに向かう」
『えぇ』
アナスタシアとの電話を切り王子にそのことを伝える。
「今から少ししたらアナスタシアたちがいる場所に行きます。ですからそれまでに後処理をしていてください」
「あぁ、感謝する!」
☆
王子が後処理をしている間、俺たちプレイヤーは星宮さんたちが宿泊している部屋で集まっていた。
星宮さんたちは二部屋で借りているようで黒川さんの男部屋と星宮さんたちの女部屋で別れていたようで今は女部屋に集まっている。
「キモいんだけど」
「き、キモくねぇし!」
黒川さんがキョロキョロとして心なしか呼吸が多いことに空門さんはキモいと言い放った。
「ささ、ここに座ってくれ」
「ここは誰が使っていたベッドなんですか?」
「僕だよ」
真ん中のベッドを星宮さんが使っていたようで俺はそのベッドに腰掛け星宮さんは俺の隣に腰かけた。
「なぁ、あれはキモくないのか? 誰が使っていたかを聞くのは」
「うーん……言い方かなぁ」
黒川さんの指摘に加納さんは言いづらそうにそう答えた。
「ちゃんとハッキリ言いなよ円香。お前が気持ち悪いんだって」
「気持ち悪くねぇし!」
「いや、普通にキモい。マジでキモい。きついくらいにキモい」
空門さんの怒濤のキモい攻撃に撃沈した黒川さん。
「そんなことよりも今の状況を話しましょうか」
「そうだね。僕たちから話した方がいいかな?」
「いえ、それは大丈夫です。神子が粗方教えてくれましたから」
「自己紹介も大丈夫なのかい?」
「ちゃんと分かっていますよ、星宮さん。それに黒川さん、空門さん、加納さん」
「本当に分かっているんだね。でも僕のことは輝夜でいいよ」
「そうですか? それなら俺も気軽に晴明と呼んでください」
「あぁ、そう呼ばせてもらうよ。晴明」
輝夜さんたちに俺のやってきたことを伝える前に俺はひとつ確認しなければいけなかった。
「まず、俺たちのクリア条件が一緒かどうかを確認したいです」
「一緒じゃないのか?」
「俺のロールが裏チートキャラなんでもしかしたら違うかもと思ったんです」
「裏チートキャラ!? なんだそのチートキャラの上位互換は……」
「そのおかげで今のところデーモンブラッドにも余裕で勝てていますからね」
輝夜さんは当然だと言わんばかりの表情をしているし何だかんだ他の人もさっきの戦いで納得している。
「魔神召喚阻止とマギア機関の復活。その二つで合っていますか?」
「うん、合ってるよ。そこは共通みたいだね」
「前回の世界のクリア条件は魑魅魍魎の陣の破壊でしたか?」
「うん、そうだよ」
やっぱりそこは変わらないのか。
「それで晴明は何してたの?」
隣のベッドで横たわって聞いてくる空門さん。
「俺はマギア機関の復活を手伝っていましたよ」
「マジか! マギア機関だけはスィオピ家の人たちがいなくなって詰んだと思っていたから助かった……」
「やっぱり俺と表プレイヤーは別行動をしていた方が効率よくクリアできるみたいですね」
「そうだな。ただ裏チートキャラっていうくらいだからそっちの方が難易度は高そうだ」
「まー、最初は盗賊から女性たちを助けてからその女性たちをまとめて連れて行くことから始まりますからね」
「えっ、そんなことができたのか!?」
「俺の十二神獣は万能ですから」
「神子を出したスキルがそれなのかな?」
「はい」
隠すことでもないし輝夜さんの問いに素直に頷く。
「この子、ずっと僕たちを手伝ってくれているんだけど魔力は大丈夫だろうか?」
「一度顕現させた分しか動くことはできません。なので魔力を使い切れば自ずと消えるようになっています」
「えっ!? ぼ、僕の魔力で回復はできないかな!?」
「無理ですね」
「ど、どうして!? この子は僕の親友だからできることなら僕が回復させてあげたいんだ……!」
「圧倒的な魔力不足です。輝夜さんの魔力が満タンの状態だったとしても神子を回復させることはできません」
「そうなんだー。輝夜さん何人分で神子を回復させれるの?」
空門さんの質問に俺は少し考えてから答える。
「神子の力を一%回復させるのに、輝夜さんが十万人は必要ですね」
「じゅ、十万!? そんなの無理だろ!」
「十万って、絶対言い過ぎでしょー」
「いやそれがそうではないんですよ。そもそもが神の名を冠しているんですから人間ごときが顕現させるにはそれくらい必要だってことです」
「あー、確かに?」
「いやまあそれだけ強い能力は持っているか……」
空門さんと黒川さんは納得している感じだが輝夜さんは納得していない様子だった。
「――どうにかして、僕の魔力を増やすことはできないだろうか?」
「うーん……そう言われてもあまりそっちの知識はないですからね……」
「どうにかならないかな!? 輝夜さんと神子ちゃんってすごく仲がいいからどうにかしてほしいんだ……!」
「うーん……」
輝夜さんと加納さんにどうにかしてほしいと言われて俺は一つの案を思いついた。
「あぁ、デーモンブラッドみたいにすればできるかもしれないですね」
「どういうことだ?」
「デーモンブラッドが魔神から力を授かった存在ってのは分かっていますよね?」
「あぁ、それは王子様から聞いた」
「神子の一部を輝夜さんに授ければいいんじゃないかって話です」
「できるのならしてもらいたい」
即答でグイっと俺に顔を近づけてくる輝夜さん。
「待ってください、星宮さん。なぁ、デーモンブラッドは適合者でなければならないって話じゃなかったか?」
「デーモンブラッドはそうですね。でもそれは魔神が外界の存在だから適合者でなければならないんですよ。この世界とは違い過ぎる存在であるがゆえに、適合者でなければならない。逆に対を成す天使は人間と親密な関係であるので天使の意思と気まぐれと人間の力によって力を与えることができます」
「そうなのか!? ……初めて知った」
「それならあたしも力を受けれるってこと!?」
「できますよ」
「それなら私も!?」
「大丈夫ですよ」
「あたしもほしー!」
「じゃあついでに私もー!」
「心春、円香、待ってくれ。まず最初は僕だよ」
ワイワイと三人が盛り上がっている中、黒川さんがソワソワとした感じでこちらを見ていた。
「黒川さんもいりますか?」
「ほしい!」
即答した辺りやはりそうだったらしい。
「神子以外にも十二神獣がいるので書いていきますね。好きな十二神獣を選んでください」
「……どこから出したの?」
「能力ですよ」
加納さんの戸惑った質問にそう答えつつ俺は紙に十二神獣を書いていく。
「そう言えばデーモンブラッドが何体いるかは分かっていますか?」
十二神獣を書きながら四人に聞く。
「分かんなーい」
「まだいるの?」
「さぁ……」
「分からないね。プネウマ王国の彼からはデーモンブラッドが複数いて国を裏から操ろうとしている、としか聞いていないからね」
「それなら教えておきます。残り三体です」
伝えておくことを言えば部屋の中に静寂が支配した。
「……あんなのがまだ三体いるのか?」
「はい。でも今回のと合わせれば三体倒したので半分ですね」
「前にも倒したのか!」
「初日にマギア機関の人たちを狙ってきたので倒しておきました」
「……それを聞けばやっぱり裏チートキャラの天日にしかできないことだったんだな」
確かに難易度が爆上がりだよな。輝夜さんたちにやれって言われたら確実に無理だと言える。
「これが十二神獣のそれぞれの名前ですね」
長々とした十二神獣の真名を紙に書き終えたことで四人は紙を覗く。
「神子、キミ本当は暗黒能源特異神子って言うんだね!」
「チュー」
「名前見ても分かんなーい。晴明、どれがおススメ?」
空門さんの問いかけは非常に難しいものだ。
「空門さんがどういう戦い方をしたいかですね」
「どういう? てかあたしのことは心春でいいよー」
「じゃあ心春さん。心春さんのロールは盗賊でいいですよね?」
「そ。このパーティだと足を使って敵を錯乱させる役割だったけど、もう少し盗賊らしいことをしたいなー」
「それなら神鳥はどうですか?」
「この反転暗転夢幻神鳥ってやつ?」
「そうです。これは幻を司る神獣で、さっき俺の姿を正確に認識できなかったのはこの神鳥のおかげですね」
「それでバレずに侵入ってこと!? いいじゃんそれ!」
「ちなみに神鳥でスマホを作りました」
「どういうこと?」
「この神鳥は現実を幻に、幻を現実に持ってこれる力があります。それでスマホを作りましたね」
「えっ、最強じゃん……あたしそれー!」
まあ俺の神獣はどれも強いが汎用性が高いのは神鳥だ。
「ねぇねぇ、私はどれがいいかな?」
「加納さんは踊り子でしたよね」
「うん、そうだよ。踊りでみんなにいい効果を付けたり悪い効果を打ち消したりすることができるよ
!」
「それなら防御とカウンターを兼ね備えた神牛はどうですか?」
「神牛……あっ、この八咫鏡って書かれている神獣だね」
「三種の神器の一つが名前に入っているって強そうだな……」
「実際強いですよ。デーモンブラッドと戦っている時に出した鏡がそうですね」
「その鏡はどんな効果なの?」
「簡単に言えば攻撃を繰り出した人にその攻撃を返すことができます。どれだけ離れていても物理的に不可能だとしても返すことができる、一種の呪いですね」
「おー、それはいいね! それならその強い神牛にするね」
踊り子だから一瞬神兎がよぎったがあれは協力するわけがないからすぐに除外した。
「最後は黒川さんですね。何か決まりましたか?」
「……いや、もう少しだけ考えてもいいか?」
「はい。それなら輝夜さんから順番に刻んでいきますか」
「あぁ、お願いするよ」
「少しお腹を出してもらってもいいですか?」
輝夜さんはためらうことなく全く贅肉が付いていないお腹を露わにしてくれた。
「ん……」
そんな輝夜さんのお腹に触れれば少しだけ声を出す輝夜さん。
「冷たかったですか?」
「いや……少し嬉しかっただけだよ」
「じゃあ遠慮なく触らせてもらいますね」
「あぁ、存分に触ってくれ。自慢の体なんだ」
遠慮なく輝夜さんの体をお腹をペタペタと触り、少し上に手を持っていけば輝夜さんから艶めかしい声を出た。
「んぅ……こんなところで、やるつもり……?」
「輝夜さんが望むなら」
俺としては三人に見せつけてやるのも悪くはないし輝夜さんから拒否する感じがしないからな。
「ダメダメストーップ!」
だが俺と輝夜さんの間に入って来た加納さんによりストップが入ってそれはできなくなった。
「うわぁ……やるのかと思った―。てかあんたなに輝夜さんをガン見してんだよ! キモ過ぎなんだけど!」
「し、仕方ないだろ!?」
輝夜さんをガン見して少し興奮した様子を見せた黒川さんが心春さんに怒鳴られている。
でもこれは好きな輝夜さんを見られてキレているんだろうな。決して黒川さんが他の女を見て、とかではない。
「時間もありませんから今は我慢しましょう」
「ふふっ、そうだね」
今度はきちんと輝夜さんのお腹に手を置き、俺の力を譲渡した。
「これは……!?」
「輝夜さんに神子の力の百分の一を渡しました」
「えっ、そんだけなの?」
輝夜さんは受け取った力を実感している様子だが俺の言葉を聞いた心春さんがそう問いかけてきた。
「これ以上渡そうとすれば人間じゃなくなりますからね」
「どゆこと?」
「この力は人間には過ぎた力ってことですよ。デーモンブラッドでさえ与えられた力を百%使おうとすれば人間性を失われてただの魔物になります。それくらいに使い方を慎重にしないといけないのが神性の力ってことです」
「そ、そんなものを渡されるんだね……」
「リスクはあるがリターンもあるってことだろ。正直言ってこのままだと俺たちはデーモンブラッド相手にすぐに死ぬからな」
さすが黒川さんはよく分かっている。
「でも使い方を間違えなければ大丈夫です。それに力が使い方を教えてくれますから」
「力が?」
「そーそー。ビビりすぎっしょー! 次あたしにして!」
「オッケーです」
迷うことなく俺にお腹を見せてくる心春さん。
「見んなよ」
「見るかよ……!」
背中を向けている黒川さんにドスの利いた声で牽制する心春さん。
「ほい」
「んっ!? ……お、おぉ……!」
神鳥の力を譲渡すればすぐさま効果を実感するのは輝夜さんと一緒だ。
「一つ聞いてもいいか?」
「はい」
心春さんの番が終われば黒川さんが質問してきた。
「この十二神獣の一つを選んだとして、魔力が増えるだけなのか? それとも出せるようになるのか?」
「魔力が増えますし力を引き出すことができます。輝夜さんたちの体が強くなればなるほど力を強く引き出すようになります。そうなれば十二神獣を顕現させれますよ」
「それは俺専用なのか?」
「いえ、同じ個体です。ただ別行動をすれば同期するまでは記憶は別々ですね」
まあ神子はそういうのがない性質を持っている。
「そうか……それなら前衛の俺は攻撃力が高い神獣の方がいいか」
力を引き出すことを考えればそうかもしれない。
「次は加納さんですね」
「うん、お願いね!」
「大丈夫そうですか?」
「うん。よく考えればこんな世界に来たんだからなりふり構ってられないよね」
「まあ死んでもいいとは言えなるべく死なない方がいいですから」
ここで死んでまた最初からってなったらとんでもなく怠いぞ。
少し恥ずかしそうにお腹を出してくる加納さんのお腹に手を当てて神牛の力を譲渡する。
「さ、黒川さん。決まりましたか?」
「三つで悩んでいるんだが……」
「どれですか?」
「犬と猿と虎だ」
「あー、猿はやめておきましょうか」
「なんで? 猿って最初に出した神獣だよな? なんか王子様の宝剣を奪ってたけど」
「最後のが原因ですよ。十二神獣の中には性格に難アリがいましてね。その三体の中では猿がヤバくて犬と虎は大丈夫です」
「じゃあ二択だな。……天日的にはどっちがいい?」
「どっちも捨てがたいですよ。神犬は何だろうと切り裂く能力で、神虎は天候を司る能力。神犬は切るという能力が突出していますけど神虎は万能です。ま、黒川さんの好みですね」
「うーん……!」
「ねー、早くしてくんない? もう王子が来ちゃうんだけどー?」
心春さんの言う通り、俺も口には出さないが王子が来てもおかしくはない。
「うるせぇなぁ……! 分かった! それなら俺は神犬を選ぶ!」
「本当にいいですか?」
「あぁ。この状態だと突出していた方が強いだろ」
「分かりました」
能力が比較的に高い王子、戦士として日々体を動かしている黒川、運動神経抜群な星宮、盗賊として身のこなしがいい空門、踊り子として体の動かし方を熟知している加納。
五人は投げ飛ばされても上手く着地して屋敷の方を見ればメイドがいることに気が付いた。
「乱暴だけど、逃がさなくて済んだね」
投げ飛ばされたことに少しだけ負の感情を抱いた星宮だがすぐに切り替えた。
「飛ばされてきてどうなさったのですか!?」
メイドは飛ばされてきた星宮たちを心配するようなそぶりを見せる。
「もしやデーモンブラッドの仕業ですか!? 王子様もいるのですから早くお逃げください!」
そう言いながら自身も逃げようとするメイド。
「下手な芝居は止せ。こちらはもうお前がデーモンブラッドだと分かっているんだぞ」
王子は神猿からもらった剣の切っ先を向けてそう言い放つ。
その一方、黒川は王子に不信感を抱いていた。
(ヒェリ家がデーモンブラッドと繋がっていたのならこいつも怪しくねぇか……?)
色々と状況が変わっている中で黒川が一番信用しているのは他プレイヤー。そしてデーモンブラッドを看破した天日。
天日は本当のデーモンブラッドから狙われていたからこちら側であると確信していた。
だが、王子はそれすら見抜けずに危うくデーモンブラッドの味方をしようとしていたことで黒川にとって王子は怪しく見えていた。
「今は考えている暇はないよ。とにかく目の前のデーモンブラッドを倒そう」
「……はい」
その考えを星宮に見抜かれた黒川はまずデーモンブラッドを倒すことを考える。だが王子を警戒することも忘れない。
「……ハァ、全く。あれだけ注意しろって言ったのに見抜かれるなんて馬鹿でしょ」
観念したようにメイドは口調を変えた。
「この国を陥れる魔神の手下よ。この国の王子として、お前を斬る」
「あなたに? すごい武器になっているけどそれは無理よ」
「言ってろ」
「親切に警告して上げているのに。まあいいわ。どうせ正体がバレたら殺さないといけないから」
メイドのデーモンブラッドは魔神の力を解放し、服を際どいものへと変化させる。
「エロいな!」
その際どい服を見た黒川がそう反応すれば、空門による殺意のこもった冷たい視線が突き刺さる。
「はぁ? ふざけてんの?」
「い、いやいや違うって! 胸のところに紋章があるから!」
意味の分からない言い訳をしている黒川をよそにデーモンブラッドは動き出す。
「さぁ、始めましょう。蹂躙を」
「ッ!?」
デーモンブラッドは一瞬にして王子の背後に回り込みナイフを突き刺そうとしていた。
それを神猿から押し付けられた剣がオートガードしたことにより防ぐことができた。
「その武器に助けられたわね」
「……馬鹿言え。単なる実力だ」
そう言った王子だが自身が全く反応できなかったことに驚き、神猿の剣に感謝した。
プネウマ王国に代々王子に受け継がれる宝剣では瞬殺されていたことを自覚する王子。
さらに続けてデーモンブラッドが王子に攻撃を仕掛けるがそのすべてを剣がガードした。そして時には王子の魔力を使ってカウンターを狙うが王子のリーチを把握していたデーモンブラッドにより簡単に避けられる。
(くそッ! もっと動ければ倒せているのに!)
自身の実力不足を痛感してしまっている王子。
「あなたでは私を倒せないわよ。それにあなたの体がもたないでしょう」
「まだまだ余裕だ」
神猿の剣がオートガード、オートカウンターの性能を持っているとは言え、所有者に負担がかかっている。
「チュー」
「……やっぱりそうなんだね」
すぐに王子が時間稼ぎをできないと理解した神子は星宮にその意思を伝えれば何となくだが星宮は理解できた。
「みんな、聞いてくれ。彼は長く持たないみたいだ」
「えっ、なんか戦えているように見えるけど……」
星宮の言葉に信じられないと言う顔をする空門。
「だよね。戦えているみたいだから勝てるんじゃないの?」
さらに加納も同調する。だが黒川は違った。
「いや、完全に受け身だからジリ貧だ」
「そう。だから僕たちは彼の援護に回るよ」
「りょーかい!」
「そっすね。やらないとこの国がヤバイですし」
「はい!」
王子を援護するべく四人は動き始める。
基本四人でパーティを組むプレイヤーたちだが王子を含めた五人でパーティを組むこともあったため今回も王子を主体とした動きをする。
王子が敵と接触している間に戦士である黒川と盗賊である空門が敵の集中を削ぎ、魔法使いである星宮が敵を魔法で攻撃しつつ、踊り子の加納が全体バフをかけるというものであった。
「ハァ!」
王子がデーモンブラッドの攻撃をオートガードをしたところで黒川が斬りかかるが易々と避けられる。
だが神猿の剣がその状況でもうまくオートカウンターを発揮したことで顔に切り傷をつけることに成功した。
「いいぞ真司!」
「はい!」
ほんの一瞬だけでも隙を作り、なおかつ王子の射程にいれば神猿の剣の餌食になると踏んだデーモンブラッドはすぐに回りの人間を片付けることにした。
黒川は王子と近いためその次にデーモンブラッドと近い空門に狙いをつけて斬りかかる。だが、残りのメンバーがいるため狙われた空門に焦りはない。
「ッ!?」
空門に近づく前に地面が割れるほどの重みをデーモンブラッドは感じた。
それをしたものが星宮の肩に乗っている神子だと分かった様子のデーモンブラッド。
「神威……!」
「神子がいるから負けるつもりはないから」
空門はそう言ってデーモンブラッドから距離をとった瞬間に王子が距離と詰める。
デーモンブラッドは魔神の力を使い拘束から抜け出して王子に応戦する。
(これはまずいわね。とにかくあのネズミがヤバい……どうにかしないと袋叩きね)
すぐさま神子をどうにかする方針をとるデーモンブラッド。
デーモンブラッドはわざと神子が力を使う状況を作り出し神子がどう動くかを分析する。
数度したところであることに気が付いてしまった。
(もしかして、間隔を空けないとできない?)
神子の性質は「増殖」であり重力操作はその副次効果に過ぎない。
そのため神子一匹ではできることが限られていた。ただし、神子一匹でできることに限りがあるとしても、無限の神子が集まればその限りではない。
数がいればいるほど神子の力は発揮できる環境にあった。
そのため一匹では意味がないことを神子は理解しており、それをデーモンブラッドに見抜かれつつあった。
(もう何度も喰らえない……から、ここでやるしかないか)
デーモンブラッドはその可能性が正しいと考え行動に移す。
狙いを見せないようにまず王子からの攻撃をかわし邪魔をしてくる黒川も無視する。そして狙うは一番浮いている駒である空門であった。
だがそこへの攻撃はカウンターのように神子の力が飛んでくる。
圧し潰されそうになるデーモンブラッドであるが、ここぞとばかりに魔神の力を全解放することで一瞬のうちに神子の力を解いた。
魔神の適合者であるデーモンブラッドではあるが受けたその力を全解放することは体が壊れてしまう恐れがあった。
数秒間でさえデーモンブラッドの体は破壊と再生が繰り返される。人間の身ではそこに限界が来るが神子を消すことさえできればその後はどうとでもなると考えたからこう行動した。
それを神子はすぐに理解して星宮に危害が及ばないように肩から飛び降りてデーモンブラッドを星宮から引き離そうとする。
「今度は、僕が!」
だが星宮が神子を守るように飛び降りようとする神子を抱きしめる。
デーモンブラッドはすでに神子を補足しているため星宮ごと神子を魔神の力で突き刺そうとした。
その瞬間、屋敷から流星のごとき速さで星宮のもとにたどり着き、星宮を抱っこしてその凶刃から救う。
「ふぅ、間一髪ってところか」
お姫様抱っこをされた星宮は救い出したものを見つめる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……!」
☆
ホント良かったー。最初から戻らないといけない羽目になるところだったー。もう一体のデーモンブラッドの方を見たら今にも殺されそうになっている星宮さんがいたからビックリした。
そして星宮さんを助け出したのはいいけどどうしてこんなにメス顔をしているのか。こういうシチュエーションが好きでときめいているのかもしれない。
「降ろしますよ」
ボーっとしている星宮さんを地面に座らせ、俺はデーモンブラッドの方を向く。
「お前でラストだ」
「……あっちのバカはやられたようね」
「ボコボコにしてやったから面でも見るか?」
「いいわよ。どうせ見れたものではないでしょうし」
「そうだな。半分くらいのめり込むまでボコボコにしたから」
てか何だかボロボロだなー。王子とかがやったのではなくてこれは自滅だな。
「おいアンタ気を付けろ! そいつ強いぞ!」
親切にも黒川さんにそう忠告される。
「大丈夫です。俺、強いですから」
そう言い終えるや否や、デーモンブラッドは斬りかかってくる。
「危ない!」
空門さんの声が聞こえるが俺はあえて受けた。
「そんなものか?」
俺の首筋に当たるナイフは一切俺の肌に傷をつけることができなかった。
「ほら、もっと頑張らないと終わるぞ?」
距離をとったデーモンブラッドに俺がそう言っても全く俺に向かっては来ない。それどころか意識は戦おうとしているのではなく逃げようとしているのが分かった。
「来ないのなら仕方がない。こっちから行くぞ」
「邪魔をしないで……!」
俺が殴りかかればデーモンブラッドはナイフで応戦する。
剣速は執事のデーモンブラッドと同じくらいだが移動速度が速い。これは星宮さんたちがてこずるわけだ。
「これは……!?」
俺の攻撃を直接食らわなくてもオメガの加護は発動する。
ナイフで応戦したとしても力がみるみると消えていくのが分かった様子のデーモンブラッド。
「まさか! アルファの生き残りか!」
「おっ、二人のデーモンブラッドは分からなかったのにお前は分かるのか」
驚いている暇など与えず、デーモンブラッドを蹴り飛ばした。
「くぅっ! ……最悪だ……!」
「そうだ。俺と戦えば戦うほどお前の力は消えていく。だから最初で終わらせなければお前には勝ち目がなかった。まぁ、俺はもとから強いからそれも無理だろうけど」
こうなればもうデーモンブラッドに勝ち目はない。ただ諦めていない様子だからどうするのかと見れば一気に魔神の力を解放させた。
勝負を決める気なのかと思ったが、次の瞬間全方位に魔力の弾が放たれた。
「私を倒したいのなら他は諦めることね」
その隙に逃げるって訳か。俺が星宮さんを助けたから他も助けると踏んだのだろう。
「なめられたものだ」
俺は神牛を顕現させ五人の前に鏡を置き盾にした。
鏡に魔力の弾が着弾した瞬間、その威力が神威が乗りデーモンブラッドに返った。
「ああああぁ!?」
逃げようとしていたデーモンブラッドの動きが止まったことで俺はデーモンブラッドを殴り飛ばした。
地面を転がっていき止まった時にはオメガの加護が効いたようで絶命した様子だった。その証拠にデーモンブラッドが絶命したことで三度出てきた魔神アスタロトの力をオメガの加護で蹴り消した。
「おっ、こいつは十%か」
ロールミッションで魔神アスタロトの魔力を十%消失と出てきた。いつもなら五%だったがこいつだけは多く魔力を受けていたようだな。
さて、これでアナスタシアは満足だろうから俺は帰るか。
「ま、待ってくれないか!?」
俺が踵を返せば星宮さんが話しかけてきた。
「も、もしかして、あなたは……前回の世界で僕を助けてくれた人じゃ……!?」
うーん、どうしよう。裏チートキャラのロールをこなすためにはここで星宮さんたちと合流するのはよくないと思うんだよなー。
でもどうなんだろうか。合流じゃなければ許されるのかってところが分からない。
「チュー、チュチュチュー!」
「えー。それ肩を持ちすぎじゃないか?」
俺が悩んでいれば神子が説教をするようなことを言ってきた。
要するに「あんた前回会っていないんだからきちんと挨拶しなさいよ! 総評なんてどうせチート能力を持っててそれ以上何を欲しがるわけ!? こっちを強くする方が重要でしょうが!」と言われている。
星宮さんと会うまではこんなことはなかったが、星宮さんとかなり親密になっているからこうなった。
「チュー!」
「分かった分かった」
神子にしつこく言われるものだから俺は神鳥の能力を解き素の状態を見せる。
「どうも、初めまして表プレイヤーの皆さん。俺は前回星宮さんと一緒だったプレイヤー、天日晴明です。どうぞこの世界が続く限りよろしくお願いします」
俺は恭しく頭を下げて自己紹介をする。
「プレイヤーとはなんだ?」
あぁ、そう言えば王子にはプレイヤーについて説明していなかったんだったな。でも分からないならそれでいい。
「プレイヤーは俺たちが同郷であることを示す言葉です。特に深い意味はありません」
「そうなのか……」
「あ、あの!」
星宮さんがこちらに歩み寄ってきた。
「前回は、本当にありがとう……僕の、王子様……」
星宮さんが手を伸ばしながらそう言ってきたから俺はその手をとり手の甲に口づけをした。
「お姫様がご無事で何よりです。俺が遣わしたものはしっかりとお姫様のお役に立てているようで嬉しい限りです」
「ふふっ、この子は僕の親友になったんだ。大切な親友を遣わしてくれたこともありがとう」
「いえいえ、とんでもないです」
あー、ようやく星宮さんと話せて満足してしまうなー。
「あー、少しいいか?」
俺と星宮さんが二人の雰囲気を作っていたところで黒川さんが気まずそうに話しかけてきた。
「空気読め、陰キャ」
せっかく意を決した黒川さんに空門さんはそう言って軽蔑の視線を向けていた。
「……今の状況を確認しておきたいんだが」
「構いませんよ。むしろ俺から言わないといけないことがあります」
空門さんの言葉を無視して俺に話しかける黒川さんに俺は応える。
「一先ず俺がデーモンブラッドの死体を証拠にヒェリ家の当主がデーモンブラッドと繋がっていたことを示さなければならない」
やっぱりこういうことは王子にしかできないか。
「デーモンブラッドがいる以上、マギア機関を管理するスィオピ家が必要だと進言してスィオピ家の地位を元に戻すつもりだ。……だからアナスタシアに戻ってくるように伝えてくれないだろうか?」
ま、俺が持ってきた手紙が本物だと判断すればアナスタシアが一緒にいると思うよな。
「無理です。アナスタシアはもう戻らないと言っています」
これは本当に聞いたことだ。ピロートークの時にデーモンブラッドを倒した功績でプネウマ王国に戻らないのか、と。
その解はノー。もう貴族として振る舞うのは飽きたと言っていた。
「そんな馬鹿な! 彼女がそんなことを!?」
「はい。ですがプネウマ王国のデーモンブラッドを殲滅することは協力するとのことです」
「……信じられない。彼女と直接話をさせてくれ……!」
えー、そんなことアナスタシアが承諾するのかー? それに会うとしてもどこで? 一番安全なのはアンゲロスだが、王子は入れないだろ。
まあ聞いてみるかと、俺はポケットからスマホを取り出す。
「えぇ!? どうしてスマホがあんの!?」
そのスマホを見た空門さんが俺に詰め寄ってきた。
「俺が作ったからですね」
「えっ……!? て、天才!?」
「まあそうとも言うかもしれませんね」
「ねー天才ー、あたしにもスマホ作ってー」
空門さんは俺にすり寄りながら上目遣いでお願いしてきた。
「後でやりますから今は待っててください」
「はーい」
「おい。そいつは今重要な場面なのに余計なことを言っていたんだぞ。だから厳しく黙れと返しておけばいい」
「はぁ? あんたもスマホがほしいからそんなこと言ってんの? ぷぷっ」
空門さんの言葉に青筋を立てる黒川さん。
「まあ今はダメですけど後でならいくらでもしますからね。だからそこまで厳しいことは言いませんよ」
「ほらー」
「でも空門さんも手が空いている時に言ってくれた方がいいですよ」
「はーい。反省!」
「こいつ……!」
「まあまあ、落ち着いて黒川くん」
血管が切れそうなくらいに怒りを露にしている黒川さんを落ち着かせる加納さん。
そして俺はアナスタシアに電話を掛ければすぐにアナスタシアは出た。
『も、もしもし?』
初めての電話であるため緊張した声色を出すアナスタシア。
「もしもし。晴明だが今少しいいか?」
『……なにか問題があったのかしら?』
「いや、デーモンブラッドを二体倒したしヒェリ家が繋がっていたから順調に事は済んだよ」
『当然ね。そんなことを言いたくて電話をしたの?』
「本題はここから。ヒェリ家と一緒にプネウマ王国の王子がいて、アナスタシアに会いたいって言っているぞ」
『なぜ?』
酷く毛嫌いしているような声色で俺に問いかけてくる。
「プネウマ王国に、スィオピ家に戻らないってことを伝えたらそう言い出してね」
『……ハァ、どうして言うのよ』
「悪い。それでどうする? 嫌なら断るぞ」
『……いい機会だわ。その場でしっかりとこちらの意思を伝えることにするわ』
「分かった。それなら一時間後にそっちに向かう」
『えぇ』
アナスタシアとの電話を切り王子にそのことを伝える。
「今から少ししたらアナスタシアたちがいる場所に行きます。ですからそれまでに後処理をしていてください」
「あぁ、感謝する!」
☆
王子が後処理をしている間、俺たちプレイヤーは星宮さんたちが宿泊している部屋で集まっていた。
星宮さんたちは二部屋で借りているようで黒川さんの男部屋と星宮さんたちの女部屋で別れていたようで今は女部屋に集まっている。
「キモいんだけど」
「き、キモくねぇし!」
黒川さんがキョロキョロとして心なしか呼吸が多いことに空門さんはキモいと言い放った。
「ささ、ここに座ってくれ」
「ここは誰が使っていたベッドなんですか?」
「僕だよ」
真ん中のベッドを星宮さんが使っていたようで俺はそのベッドに腰掛け星宮さんは俺の隣に腰かけた。
「なぁ、あれはキモくないのか? 誰が使っていたかを聞くのは」
「うーん……言い方かなぁ」
黒川さんの指摘に加納さんは言いづらそうにそう答えた。
「ちゃんとハッキリ言いなよ円香。お前が気持ち悪いんだって」
「気持ち悪くねぇし!」
「いや、普通にキモい。マジでキモい。きついくらいにキモい」
空門さんの怒濤のキモい攻撃に撃沈した黒川さん。
「そんなことよりも今の状況を話しましょうか」
「そうだね。僕たちから話した方がいいかな?」
「いえ、それは大丈夫です。神子が粗方教えてくれましたから」
「自己紹介も大丈夫なのかい?」
「ちゃんと分かっていますよ、星宮さん。それに黒川さん、空門さん、加納さん」
「本当に分かっているんだね。でも僕のことは輝夜でいいよ」
「そうですか? それなら俺も気軽に晴明と呼んでください」
「あぁ、そう呼ばせてもらうよ。晴明」
輝夜さんたちに俺のやってきたことを伝える前に俺はひとつ確認しなければいけなかった。
「まず、俺たちのクリア条件が一緒かどうかを確認したいです」
「一緒じゃないのか?」
「俺のロールが裏チートキャラなんでもしかしたら違うかもと思ったんです」
「裏チートキャラ!? なんだそのチートキャラの上位互換は……」
「そのおかげで今のところデーモンブラッドにも余裕で勝てていますからね」
輝夜さんは当然だと言わんばかりの表情をしているし何だかんだ他の人もさっきの戦いで納得している。
「魔神召喚阻止とマギア機関の復活。その二つで合っていますか?」
「うん、合ってるよ。そこは共通みたいだね」
「前回の世界のクリア条件は魑魅魍魎の陣の破壊でしたか?」
「うん、そうだよ」
やっぱりそこは変わらないのか。
「それで晴明は何してたの?」
隣のベッドで横たわって聞いてくる空門さん。
「俺はマギア機関の復活を手伝っていましたよ」
「マジか! マギア機関だけはスィオピ家の人たちがいなくなって詰んだと思っていたから助かった……」
「やっぱり俺と表プレイヤーは別行動をしていた方が効率よくクリアできるみたいですね」
「そうだな。ただ裏チートキャラっていうくらいだからそっちの方が難易度は高そうだ」
「まー、最初は盗賊から女性たちを助けてからその女性たちをまとめて連れて行くことから始まりますからね」
「えっ、そんなことができたのか!?」
「俺の十二神獣は万能ですから」
「神子を出したスキルがそれなのかな?」
「はい」
隠すことでもないし輝夜さんの問いに素直に頷く。
「この子、ずっと僕たちを手伝ってくれているんだけど魔力は大丈夫だろうか?」
「一度顕現させた分しか動くことはできません。なので魔力を使い切れば自ずと消えるようになっています」
「えっ!? ぼ、僕の魔力で回復はできないかな!?」
「無理ですね」
「ど、どうして!? この子は僕の親友だからできることなら僕が回復させてあげたいんだ……!」
「圧倒的な魔力不足です。輝夜さんの魔力が満タンの状態だったとしても神子を回復させることはできません」
「そうなんだー。輝夜さん何人分で神子を回復させれるの?」
空門さんの質問に俺は少し考えてから答える。
「神子の力を一%回復させるのに、輝夜さんが十万人は必要ですね」
「じゅ、十万!? そんなの無理だろ!」
「十万って、絶対言い過ぎでしょー」
「いやそれがそうではないんですよ。そもそもが神の名を冠しているんですから人間ごときが顕現させるにはそれくらい必要だってことです」
「あー、確かに?」
「いやまあそれだけ強い能力は持っているか……」
空門さんと黒川さんは納得している感じだが輝夜さんは納得していない様子だった。
「――どうにかして、僕の魔力を増やすことはできないだろうか?」
「うーん……そう言われてもあまりそっちの知識はないですからね……」
「どうにかならないかな!? 輝夜さんと神子ちゃんってすごく仲がいいからどうにかしてほしいんだ……!」
「うーん……」
輝夜さんと加納さんにどうにかしてほしいと言われて俺は一つの案を思いついた。
「あぁ、デーモンブラッドみたいにすればできるかもしれないですね」
「どういうことだ?」
「デーモンブラッドが魔神から力を授かった存在ってのは分かっていますよね?」
「あぁ、それは王子様から聞いた」
「神子の一部を輝夜さんに授ければいいんじゃないかって話です」
「できるのならしてもらいたい」
即答でグイっと俺に顔を近づけてくる輝夜さん。
「待ってください、星宮さん。なぁ、デーモンブラッドは適合者でなければならないって話じゃなかったか?」
「デーモンブラッドはそうですね。でもそれは魔神が外界の存在だから適合者でなければならないんですよ。この世界とは違い過ぎる存在であるがゆえに、適合者でなければならない。逆に対を成す天使は人間と親密な関係であるので天使の意思と気まぐれと人間の力によって力を与えることができます」
「そうなのか!? ……初めて知った」
「それならあたしも力を受けれるってこと!?」
「できますよ」
「それなら私も!?」
「大丈夫ですよ」
「あたしもほしー!」
「じゃあついでに私もー!」
「心春、円香、待ってくれ。まず最初は僕だよ」
ワイワイと三人が盛り上がっている中、黒川さんがソワソワとした感じでこちらを見ていた。
「黒川さんもいりますか?」
「ほしい!」
即答した辺りやはりそうだったらしい。
「神子以外にも十二神獣がいるので書いていきますね。好きな十二神獣を選んでください」
「……どこから出したの?」
「能力ですよ」
加納さんの戸惑った質問にそう答えつつ俺は紙に十二神獣を書いていく。
「そう言えばデーモンブラッドが何体いるかは分かっていますか?」
十二神獣を書きながら四人に聞く。
「分かんなーい」
「まだいるの?」
「さぁ……」
「分からないね。プネウマ王国の彼からはデーモンブラッドが複数いて国を裏から操ろうとしている、としか聞いていないからね」
「それなら教えておきます。残り三体です」
伝えておくことを言えば部屋の中に静寂が支配した。
「……あんなのがまだ三体いるのか?」
「はい。でも今回のと合わせれば三体倒したので半分ですね」
「前にも倒したのか!」
「初日にマギア機関の人たちを狙ってきたので倒しておきました」
「……それを聞けばやっぱり裏チートキャラの天日にしかできないことだったんだな」
確かに難易度が爆上がりだよな。輝夜さんたちにやれって言われたら確実に無理だと言える。
「これが十二神獣のそれぞれの名前ですね」
長々とした十二神獣の真名を紙に書き終えたことで四人は紙を覗く。
「神子、キミ本当は暗黒能源特異神子って言うんだね!」
「チュー」
「名前見ても分かんなーい。晴明、どれがおススメ?」
空門さんの問いかけは非常に難しいものだ。
「空門さんがどういう戦い方をしたいかですね」
「どういう? てかあたしのことは心春でいいよー」
「じゃあ心春さん。心春さんのロールは盗賊でいいですよね?」
「そ。このパーティだと足を使って敵を錯乱させる役割だったけど、もう少し盗賊らしいことをしたいなー」
「それなら神鳥はどうですか?」
「この反転暗転夢幻神鳥ってやつ?」
「そうです。これは幻を司る神獣で、さっき俺の姿を正確に認識できなかったのはこの神鳥のおかげですね」
「それでバレずに侵入ってこと!? いいじゃんそれ!」
「ちなみに神鳥でスマホを作りました」
「どういうこと?」
「この神鳥は現実を幻に、幻を現実に持ってこれる力があります。それでスマホを作りましたね」
「えっ、最強じゃん……あたしそれー!」
まあ俺の神獣はどれも強いが汎用性が高いのは神鳥だ。
「ねぇねぇ、私はどれがいいかな?」
「加納さんは踊り子でしたよね」
「うん、そうだよ。踊りでみんなにいい効果を付けたり悪い効果を打ち消したりすることができるよ
!」
「それなら防御とカウンターを兼ね備えた神牛はどうですか?」
「神牛……あっ、この八咫鏡って書かれている神獣だね」
「三種の神器の一つが名前に入っているって強そうだな……」
「実際強いですよ。デーモンブラッドと戦っている時に出した鏡がそうですね」
「その鏡はどんな効果なの?」
「簡単に言えば攻撃を繰り出した人にその攻撃を返すことができます。どれだけ離れていても物理的に不可能だとしても返すことができる、一種の呪いですね」
「おー、それはいいね! それならその強い神牛にするね」
踊り子だから一瞬神兎がよぎったがあれは協力するわけがないからすぐに除外した。
「最後は黒川さんですね。何か決まりましたか?」
「……いや、もう少しだけ考えてもいいか?」
「はい。それなら輝夜さんから順番に刻んでいきますか」
「あぁ、お願いするよ」
「少しお腹を出してもらってもいいですか?」
輝夜さんはためらうことなく全く贅肉が付いていないお腹を露わにしてくれた。
「ん……」
そんな輝夜さんのお腹に触れれば少しだけ声を出す輝夜さん。
「冷たかったですか?」
「いや……少し嬉しかっただけだよ」
「じゃあ遠慮なく触らせてもらいますね」
「あぁ、存分に触ってくれ。自慢の体なんだ」
遠慮なく輝夜さんの体をお腹をペタペタと触り、少し上に手を持っていけば輝夜さんから艶めかしい声を出た。
「んぅ……こんなところで、やるつもり……?」
「輝夜さんが望むなら」
俺としては三人に見せつけてやるのも悪くはないし輝夜さんから拒否する感じがしないからな。
「ダメダメストーップ!」
だが俺と輝夜さんの間に入って来た加納さんによりストップが入ってそれはできなくなった。
「うわぁ……やるのかと思った―。てかあんたなに輝夜さんをガン見してんだよ! キモ過ぎなんだけど!」
「し、仕方ないだろ!?」
輝夜さんをガン見して少し興奮した様子を見せた黒川さんが心春さんに怒鳴られている。
でもこれは好きな輝夜さんを見られてキレているんだろうな。決して黒川さんが他の女を見て、とかではない。
「時間もありませんから今は我慢しましょう」
「ふふっ、そうだね」
今度はきちんと輝夜さんのお腹に手を置き、俺の力を譲渡した。
「これは……!?」
「輝夜さんに神子の力の百分の一を渡しました」
「えっ、そんだけなの?」
輝夜さんは受け取った力を実感している様子だが俺の言葉を聞いた心春さんがそう問いかけてきた。
「これ以上渡そうとすれば人間じゃなくなりますからね」
「どゆこと?」
「この力は人間には過ぎた力ってことですよ。デーモンブラッドでさえ与えられた力を百%使おうとすれば人間性を失われてただの魔物になります。それくらいに使い方を慎重にしないといけないのが神性の力ってことです」
「そ、そんなものを渡されるんだね……」
「リスクはあるがリターンもあるってことだろ。正直言ってこのままだと俺たちはデーモンブラッド相手にすぐに死ぬからな」
さすが黒川さんはよく分かっている。
「でも使い方を間違えなければ大丈夫です。それに力が使い方を教えてくれますから」
「力が?」
「そーそー。ビビりすぎっしょー! 次あたしにして!」
「オッケーです」
迷うことなく俺にお腹を見せてくる心春さん。
「見んなよ」
「見るかよ……!」
背中を向けている黒川さんにドスの利いた声で牽制する心春さん。
「ほい」
「んっ!? ……お、おぉ……!」
神鳥の力を譲渡すればすぐさま効果を実感するのは輝夜さんと一緒だ。
「一つ聞いてもいいか?」
「はい」
心春さんの番が終われば黒川さんが質問してきた。
「この十二神獣の一つを選んだとして、魔力が増えるだけなのか? それとも出せるようになるのか?」
「魔力が増えますし力を引き出すことができます。輝夜さんたちの体が強くなればなるほど力を強く引き出すようになります。そうなれば十二神獣を顕現させれますよ」
「それは俺専用なのか?」
「いえ、同じ個体です。ただ別行動をすれば同期するまでは記憶は別々ですね」
まあ神子はそういうのがない性質を持っている。
「そうか……それなら前衛の俺は攻撃力が高い神獣の方がいいか」
力を引き出すことを考えればそうかもしれない。
「次は加納さんですね」
「うん、お願いね!」
「大丈夫そうですか?」
「うん。よく考えればこんな世界に来たんだからなりふり構ってられないよね」
「まあ死んでもいいとは言えなるべく死なない方がいいですから」
ここで死んでまた最初からってなったらとんでもなく怠いぞ。
少し恥ずかしそうにお腹を出してくる加納さんのお腹に手を当てて神牛の力を譲渡する。
「さ、黒川さん。決まりましたか?」
「三つで悩んでいるんだが……」
「どれですか?」
「犬と猿と虎だ」
「あー、猿はやめておきましょうか」
「なんで? 猿って最初に出した神獣だよな? なんか王子様の宝剣を奪ってたけど」
「最後のが原因ですよ。十二神獣の中には性格に難アリがいましてね。その三体の中では猿がヤバくて犬と虎は大丈夫です」
「じゃあ二択だな。……天日的にはどっちがいい?」
「どっちも捨てがたいですよ。神犬は何だろうと切り裂く能力で、神虎は天候を司る能力。神犬は切るという能力が突出していますけど神虎は万能です。ま、黒川さんの好みですね」
「うーん……!」
「ねー、早くしてくんない? もう王子が来ちゃうんだけどー?」
心春さんの言う通り、俺も口には出さないが王子が来てもおかしくはない。
「うるせぇなぁ……! 分かった! それなら俺は神犬を選ぶ!」
「本当にいいですか?」
「あぁ。この状態だと突出していた方が強いだろ」
「分かりました」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる