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外伝・過去(語り)

『全能の魔法使い』 第一章、第二節。

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 英雄の称号を得た五人の英雄にはそれぞれ己が得意とし選ばれた武器を持つ。

 剣の英雄なら、聖剣。
 弓の英雄なら、聖弓。
 槍の英雄なら、聖槍。
 杖の英雄なら、聖杖。
 衣の英雄なら、聖衣。

 五人の英雄にはそれぞれの逸話がある。

 曰く、剣の英雄は大地を切り裂き、大陸を二つにした。
 曰く、弓の英雄は決して目に見えぬ敵を貫き、一射も外さなかった。
 曰く、槍の英雄は万を超える軍勢を一人で薙ぎ払い、味方の窮地を救った。
 曰く、杖の英雄は人間が逆らえぬ災害を魔法にて打ち消し、多くの民を救った。
 曰く、衣の英雄は不治の病を患った民や一生動けぬ身体になった兵士などを瞬時に元通りにし、多くの人間から感謝された。

 この五人の英雄たちは、最初からこれほどの強力な力を持っていたわけではない。多少の力を持っていたものの、民を救い、魔神王を倒すまでに至ったその力を育て上げたのは、英雄として呼ばれることを嫌った『全能の魔法使い』の彼である。

 彼は英雄として呼ばれるのを嫌ったため、敬意を込めて『全能の魔法使い』の名を授けられた。この称号はこの世でただ一人が持って良い称号であり、何人たりとも彼以外に持って良い称号ではない。
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