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栄転? それとも左遷?
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掲示板にて一枚の紙が張り出されていた。
『以下の者を王国騎士の任から解き、フロスト家への異動を命ずる。
セオ・オースティン』
どういうことだ? どうして俺が異動になるんだ? しかもフロスト家って、あのフロスト家か?
「おいおい、これは何の冗談かな?」
隣で掲示板を一緒に見ていた男が俺の代わりに声を発した。
容姿、剣技、魔法などどれをとっても花がある『百花の騎士』ルーカス。
「冗談でこんなものを張り出さないだろうな」
「しかもよりにもよってあのフロスト家だと!? 冗談じゃない!」
辞令を出された俺よりもキレているルーカスを見て俺はキレる気力が一切なくなる。まあ最初から特にキレているわけではないけど。
「ちょっとあのクソ団長に言ってくるよ!」
「待て待て、少し落ち着け。そして口が悪い」
今にも飛び出しそうになっていたルーカスの腕をつかんで止める。
「なんでそんな冷静なんだよ! これは左遷だぞ!」
「怒ったところで何も変わらないだろ。視野を狭めるだけだ。それにこの辞令が何かを意味するかもしれないだろ」
「……何かって?」
「さぁ?」
「おい」
「でもとりあえず団長からこの辞令がどういうことか聞きに行けばいい。で、落ち着いたか?」
「……あぁ、落ち着いた。よし、聞きに行こう」
ルーカスと並んで団長室へと向かう。
「セオ。聞いておくがフロスト家のことをどこまで知っている?」
「『没落した公爵家』と聞いているな」
「そうだ。公爵家が没落することはまずあり得ないが、あり得ないことが起こってしまったわけだ」
「ただ没落したわけじゃないのか」
ルーカスは頷き、話を続ける。
「フロスト家は元々亜人や魔人に対して友好的な家だった。そこら辺と衝突しそうなら上手く回避してきたくらいには手回しができて友好的だね」
「今時の貴族にしては珍しいな」
「そしてフロスト家は国で禁止されている奴隷の調査にも力をいれていた。他にも色々あるけど、まあお人好しな家ということだ」
「何となく読めてきた」
「そう。それを邪魔に思った貴族たちに没落させられたわけだよ」
フロスト家の話を聞いていて一つ思い出したことがあった。
「そういえばフロスト家と言えば亜人を仕向けて国家転覆を図った、みたいな噂が流れていたよな」
「当時本当に国王を暗殺しようとした亜人がいた。ただそいつはその前にフロスト家にいたってことが分かった。それでその説が出てきたんだ。まあ結局はその亜人はその場で殺されて死霊術で呼び起こせばフロスト家との関係はなかったから嫌疑は晴れた」
「でも、心証は晴れなかったと」
「そういうこと」
さすがこの国の王子。なんでも知っている。
「だからこそ分からない。七聖者である君ほどの騎士がこんな家に送られるのは……いや、いるか」
「何かあるってことか」
「まず七聖者である君を騎士団から出すのはあり得ない。どんな思惑があったとしても、彼女がそれを許さない。……悪い思惑以外にも何かあるな」
ハァ、そんな大きな思惑の中に放り込まれても困るだけだ。
団長に聞いても一切教えてもらえず、むしろ「公爵家へ配属だ。栄転だ喜べ」と言われる始末だった。
団長から急かされたこともあり俺は辞令を下されたその日、必要最低限の荷物を持ち己の足でフロスト家の領土にたどり着いた。
フロスト家のカントリーハウスは王国からかなり離れているから移動手段が限られているなと感じながらカントリーハウス周辺にある施設を見る。
「……静かだ」
人の気配がまるでしない。しかも建物も一年以上放置されているようだ。
ただ何かが暴れた形跡もないしアカシックレコードを遡ってもどうやら自ずからどこかに行ったようだ。
「えー……」
そしてフロスト家のカントリーハウスが見えるところまで来れば、その荒れている現状に驚いてしまう。
「ボロボロすぎだろ……」
美しい庭園は過去の栄光、手入れがされていないため見る影もない。
さらに屋敷も補修がされていない。つい最近壊れたものではなく、長く補修されていないのは劣化面の状態からよくわかる。
そこいらの子爵家よりもひどい屋敷だ。長いこと栄光を誇っていただろうに、こんな屋敷に変わり果てるとは。
貴族の世界は怖いなー。しかも俺の雇用形態はフロスト家からお給金を貰うということだが、これ期待できなくないか?
それは本当に困る。堅実に騎士団に入って安定した給料で十分に貯金。老後は田舎で暮らそうと思っていたのに。
とりあえずフロスト家の方々に挨拶しなければいけない。
誰も使用人がいない敷地内を歩き、屋敷の扉を開けようとする。
だが扉を突き破って中から俺に蹴りをいれようとして来る者がいたからバックステップでかわす。
「獣人か」
蹴りを放った者は狼の獣耳を持つ褐色肌で麦色のショートカットの獣人の女性だった。
最低限胸と股は布で隠しているが布面積は小さく、鍛え上げられた体はすぐに分かる。
獣人の女性はすさまじい身体能力で俺に攻撃を仕掛けてくる。
獣人なだけあって人間の戦闘スタイルとはまた違って勉強になってしまう。
「ちょっといいか?」
そんな獣人の女性の猛攻を避けながら声をかけてみる。
だが殺意しかない鋭い視線が俺の言葉を許してくれない。
だから一度体制を整えるために女性の腹に掌底を叩き込んで数メートル飛ばす。
「ちょっとでいいから聞いてほしい」
人間の領土、しかも公爵家なのに獣人がいることは普通ならば即座に処理しなければいけない。
だがここがフロスト家であること、そして彼女からは守るという絶対的な意思を感じ取ったから俺は彼女に一切の反撃をしなかった。
それを彼女も分かっているだろう。俺が一切危害を加える気がないことを。
「俺はベオウルフ騎士団より来たセオ・オースティン。フロスト家の敵を払う剣として、降りかかる災いから守る盾として参上した」
腰に携えた剣の柄を持ちながらそう挨拶した。
「セオ・オースティンだと!?」
俺の名前を聞いて驚いた声をあげる獣人の女性。
「……どうか教えてほしい。お前は何を守っている?」
「……本当に、お前はセオ・オースティンなのか? あの最強の七聖者の」
「そうだ。これが俺の神剣ルミナススター」
俺は自身がセオ・オースティンであることを証明するために腰に携えた剣を抜き地面に突き刺した。
七聖者であることを示すには自身の武具を見せるのが手っ取り早い。誰もがそれを分かるからな。
「これが……!」
「理解してもらっただろうか」
少しの迷いが見てとれたがすぐに頷いてくれた。
「……お前がセオ・オースティンであることは分かった。だがどうしてここに来た?」
「フロスト家に剣を捧げるためだ」
「なぜお前が? 七聖者が没落した公爵家に仕えるのか?」
「そんなこと俺の上司に聞いてくれ。俺はただ辞令が出たから来ただけだ」
「……お前のようなものが命令一つでこんなところに来るのか?」
「これでもまだ下っ端なんだ。命令には背けないってことだ」
「……人間は血筋以外にも分からないことをする」
確か獣人は実力至上主義。俺みたいな強者が下っ端であることが信じられないのだろう。
とにもかくにも、俺が提示できることはした。後は彼女の判断を待つだけだ。
「……ついてこい」
「ありがとう」
俺はルミナススターを納めて屋敷へと向かう彼女に続く。
ぶち壊された扉から入るが彼女は毎回こうして相手に先制攻撃を与えているのだろうか。
元の状態を見ても直しているのが分からないくらいに直されていたから慣れているのかもしれない。まあそれができるなら他の屋敷の場所を直しているか。
「おい出てこい! 王国から来た騎士だったぞ!」
彼女は屋敷に響き渡る声を出した。
それにしても……本当にここに住んでいるのか? ありえないくらいに掃除が行き届いていないし壊れた場所もそのままだ。
「本当か!?」
彼女の声で男性が急いで出てきた。
少しヒョロっとして柔らかな雰囲気が印象的な茶髪の男性が俺と彼女に近づいてきた。ただし服はかなりボロボロだ。何回着回しているのかな。
「まさかもう来てくれるとは思わなかったよ!」
「お初にお目にかかります。私はセオ・オースティン、『万象の騎士』の二つ名で呼ばれているベオウルフ騎士団に所属していた騎士です。本日よりフロスト家に仕えるため馳せ参じました」
「これはご丁寧にありがとう。私はフロスト家の当主をしているジェイダンだ。これからよろしく頼むよ」
「はい、この身の限りを尽くします」
ジェイダン様が手を差し出してきたから俺はジェイダン様の手をとった。
「それよりも……こうして七聖者と会えるとは思ってもみなかった。しかも最強だ!」
「まだ自分は未熟者ですのでその名に恥じぬよう精進する日々です」
獣人の彼女は俺が来たことに驚いていた。でもジェイダン様は驚いた様子がなかったか。
「謙遜もいいことだが素直に受け取ってくれないと困るね!」
「では、自分は最強です。フロスト家の皆様はご安心ください」
実際騎士に失敗は許されない。騎士の失敗はその時点で騎士の資格は剥奪される。
だからこう宣言するのは騎士として正しい。
「ははは! それでこそ七聖者だ! よし、これから私の妻と娘たちを紹介しよう」
「はい」
フロスト家の家族構成はルーカスから聞いた。
フロスト家は婦人がフロスト家の血筋で、ご令嬢が三人いるとのことだ。
それ以上の情報は時間がなくて知ることができなかったし知り合いに転属のことも伝えられずに来たからな。
「おーい、こっちに来なさい」
使用人が呼ぶとかではなく大きな声でご家族を呼ばれるジェイダン様。
近くに隠れてこちらの様子を伺っていたのは分かっていたからすぐにこちらの視界に入ってきたことに驚きはしなかった。
「こんにちは、新しい騎士さん。私はこの人の妻でフレヤ。よろしくね」
ジェイダン様の隣に立つのは白銀の髪を短くしたほんわかとした女性、フレヤ様。
「ほら、あなたたちも挨拶なさい」
「こ、こんにちは。私はレイラ」
「……ルナ」
フレヤ様の後ろでこちらを伺っている少女が二人。十歳は越えているくらいだろうか、双子のように似ている。
白銀の髪を肩まで伸ばしたレイラ様は少し戸惑いながらこちらを見ていた。
白銀の髪をツインテールにしているルナ様はこちらに敵意を向けていた。
「はじめまして、セオ様。私はマヤと申します」
俺と同い年であるマヤ様は凛とした顔つきで白銀の長髪をポニーテールにしていた。
「そういうことなら、お初にお目にかかります。皆様をすべてからお守りするために参りました、セオ・オースティンと申します。騎士の誇りにかけお仕えさせていただきます」
……みんな貴族とは思えない服装をしているし、こんなところで俺は未来設計図を築くことができるのだろうか。
『以下の者を王国騎士の任から解き、フロスト家への異動を命ずる。
セオ・オースティン』
どういうことだ? どうして俺が異動になるんだ? しかもフロスト家って、あのフロスト家か?
「おいおい、これは何の冗談かな?」
隣で掲示板を一緒に見ていた男が俺の代わりに声を発した。
容姿、剣技、魔法などどれをとっても花がある『百花の騎士』ルーカス。
「冗談でこんなものを張り出さないだろうな」
「しかもよりにもよってあのフロスト家だと!? 冗談じゃない!」
辞令を出された俺よりもキレているルーカスを見て俺はキレる気力が一切なくなる。まあ最初から特にキレているわけではないけど。
「ちょっとあのクソ団長に言ってくるよ!」
「待て待て、少し落ち着け。そして口が悪い」
今にも飛び出しそうになっていたルーカスの腕をつかんで止める。
「なんでそんな冷静なんだよ! これは左遷だぞ!」
「怒ったところで何も変わらないだろ。視野を狭めるだけだ。それにこの辞令が何かを意味するかもしれないだろ」
「……何かって?」
「さぁ?」
「おい」
「でもとりあえず団長からこの辞令がどういうことか聞きに行けばいい。で、落ち着いたか?」
「……あぁ、落ち着いた。よし、聞きに行こう」
ルーカスと並んで団長室へと向かう。
「セオ。聞いておくがフロスト家のことをどこまで知っている?」
「『没落した公爵家』と聞いているな」
「そうだ。公爵家が没落することはまずあり得ないが、あり得ないことが起こってしまったわけだ」
「ただ没落したわけじゃないのか」
ルーカスは頷き、話を続ける。
「フロスト家は元々亜人や魔人に対して友好的な家だった。そこら辺と衝突しそうなら上手く回避してきたくらいには手回しができて友好的だね」
「今時の貴族にしては珍しいな」
「そしてフロスト家は国で禁止されている奴隷の調査にも力をいれていた。他にも色々あるけど、まあお人好しな家ということだ」
「何となく読めてきた」
「そう。それを邪魔に思った貴族たちに没落させられたわけだよ」
フロスト家の話を聞いていて一つ思い出したことがあった。
「そういえばフロスト家と言えば亜人を仕向けて国家転覆を図った、みたいな噂が流れていたよな」
「当時本当に国王を暗殺しようとした亜人がいた。ただそいつはその前にフロスト家にいたってことが分かった。それでその説が出てきたんだ。まあ結局はその亜人はその場で殺されて死霊術で呼び起こせばフロスト家との関係はなかったから嫌疑は晴れた」
「でも、心証は晴れなかったと」
「そういうこと」
さすがこの国の王子。なんでも知っている。
「だからこそ分からない。七聖者である君ほどの騎士がこんな家に送られるのは……いや、いるか」
「何かあるってことか」
「まず七聖者である君を騎士団から出すのはあり得ない。どんな思惑があったとしても、彼女がそれを許さない。……悪い思惑以外にも何かあるな」
ハァ、そんな大きな思惑の中に放り込まれても困るだけだ。
団長に聞いても一切教えてもらえず、むしろ「公爵家へ配属だ。栄転だ喜べ」と言われる始末だった。
団長から急かされたこともあり俺は辞令を下されたその日、必要最低限の荷物を持ち己の足でフロスト家の領土にたどり着いた。
フロスト家のカントリーハウスは王国からかなり離れているから移動手段が限られているなと感じながらカントリーハウス周辺にある施設を見る。
「……静かだ」
人の気配がまるでしない。しかも建物も一年以上放置されているようだ。
ただ何かが暴れた形跡もないしアカシックレコードを遡ってもどうやら自ずからどこかに行ったようだ。
「えー……」
そしてフロスト家のカントリーハウスが見えるところまで来れば、その荒れている現状に驚いてしまう。
「ボロボロすぎだろ……」
美しい庭園は過去の栄光、手入れがされていないため見る影もない。
さらに屋敷も補修がされていない。つい最近壊れたものではなく、長く補修されていないのは劣化面の状態からよくわかる。
そこいらの子爵家よりもひどい屋敷だ。長いこと栄光を誇っていただろうに、こんな屋敷に変わり果てるとは。
貴族の世界は怖いなー。しかも俺の雇用形態はフロスト家からお給金を貰うということだが、これ期待できなくないか?
それは本当に困る。堅実に騎士団に入って安定した給料で十分に貯金。老後は田舎で暮らそうと思っていたのに。
とりあえずフロスト家の方々に挨拶しなければいけない。
誰も使用人がいない敷地内を歩き、屋敷の扉を開けようとする。
だが扉を突き破って中から俺に蹴りをいれようとして来る者がいたからバックステップでかわす。
「獣人か」
蹴りを放った者は狼の獣耳を持つ褐色肌で麦色のショートカットの獣人の女性だった。
最低限胸と股は布で隠しているが布面積は小さく、鍛え上げられた体はすぐに分かる。
獣人の女性はすさまじい身体能力で俺に攻撃を仕掛けてくる。
獣人なだけあって人間の戦闘スタイルとはまた違って勉強になってしまう。
「ちょっといいか?」
そんな獣人の女性の猛攻を避けながら声をかけてみる。
だが殺意しかない鋭い視線が俺の言葉を許してくれない。
だから一度体制を整えるために女性の腹に掌底を叩き込んで数メートル飛ばす。
「ちょっとでいいから聞いてほしい」
人間の領土、しかも公爵家なのに獣人がいることは普通ならば即座に処理しなければいけない。
だがここがフロスト家であること、そして彼女からは守るという絶対的な意思を感じ取ったから俺は彼女に一切の反撃をしなかった。
それを彼女も分かっているだろう。俺が一切危害を加える気がないことを。
「俺はベオウルフ騎士団より来たセオ・オースティン。フロスト家の敵を払う剣として、降りかかる災いから守る盾として参上した」
腰に携えた剣の柄を持ちながらそう挨拶した。
「セオ・オースティンだと!?」
俺の名前を聞いて驚いた声をあげる獣人の女性。
「……どうか教えてほしい。お前は何を守っている?」
「……本当に、お前はセオ・オースティンなのか? あの最強の七聖者の」
「そうだ。これが俺の神剣ルミナススター」
俺は自身がセオ・オースティンであることを証明するために腰に携えた剣を抜き地面に突き刺した。
七聖者であることを示すには自身の武具を見せるのが手っ取り早い。誰もがそれを分かるからな。
「これが……!」
「理解してもらっただろうか」
少しの迷いが見てとれたがすぐに頷いてくれた。
「……お前がセオ・オースティンであることは分かった。だがどうしてここに来た?」
「フロスト家に剣を捧げるためだ」
「なぜお前が? 七聖者が没落した公爵家に仕えるのか?」
「そんなこと俺の上司に聞いてくれ。俺はただ辞令が出たから来ただけだ」
「……お前のようなものが命令一つでこんなところに来るのか?」
「これでもまだ下っ端なんだ。命令には背けないってことだ」
「……人間は血筋以外にも分からないことをする」
確か獣人は実力至上主義。俺みたいな強者が下っ端であることが信じられないのだろう。
とにもかくにも、俺が提示できることはした。後は彼女の判断を待つだけだ。
「……ついてこい」
「ありがとう」
俺はルミナススターを納めて屋敷へと向かう彼女に続く。
ぶち壊された扉から入るが彼女は毎回こうして相手に先制攻撃を与えているのだろうか。
元の状態を見ても直しているのが分からないくらいに直されていたから慣れているのかもしれない。まあそれができるなら他の屋敷の場所を直しているか。
「おい出てこい! 王国から来た騎士だったぞ!」
彼女は屋敷に響き渡る声を出した。
それにしても……本当にここに住んでいるのか? ありえないくらいに掃除が行き届いていないし壊れた場所もそのままだ。
「本当か!?」
彼女の声で男性が急いで出てきた。
少しヒョロっとして柔らかな雰囲気が印象的な茶髪の男性が俺と彼女に近づいてきた。ただし服はかなりボロボロだ。何回着回しているのかな。
「まさかもう来てくれるとは思わなかったよ!」
「お初にお目にかかります。私はセオ・オースティン、『万象の騎士』の二つ名で呼ばれているベオウルフ騎士団に所属していた騎士です。本日よりフロスト家に仕えるため馳せ参じました」
「これはご丁寧にありがとう。私はフロスト家の当主をしているジェイダンだ。これからよろしく頼むよ」
「はい、この身の限りを尽くします」
ジェイダン様が手を差し出してきたから俺はジェイダン様の手をとった。
「それよりも……こうして七聖者と会えるとは思ってもみなかった。しかも最強だ!」
「まだ自分は未熟者ですのでその名に恥じぬよう精進する日々です」
獣人の彼女は俺が来たことに驚いていた。でもジェイダン様は驚いた様子がなかったか。
「謙遜もいいことだが素直に受け取ってくれないと困るね!」
「では、自分は最強です。フロスト家の皆様はご安心ください」
実際騎士に失敗は許されない。騎士の失敗はその時点で騎士の資格は剥奪される。
だからこう宣言するのは騎士として正しい。
「ははは! それでこそ七聖者だ! よし、これから私の妻と娘たちを紹介しよう」
「はい」
フロスト家の家族構成はルーカスから聞いた。
フロスト家は婦人がフロスト家の血筋で、ご令嬢が三人いるとのことだ。
それ以上の情報は時間がなくて知ることができなかったし知り合いに転属のことも伝えられずに来たからな。
「おーい、こっちに来なさい」
使用人が呼ぶとかではなく大きな声でご家族を呼ばれるジェイダン様。
近くに隠れてこちらの様子を伺っていたのは分かっていたからすぐにこちらの視界に入ってきたことに驚きはしなかった。
「こんにちは、新しい騎士さん。私はこの人の妻でフレヤ。よろしくね」
ジェイダン様の隣に立つのは白銀の髪を短くしたほんわかとした女性、フレヤ様。
「ほら、あなたたちも挨拶なさい」
「こ、こんにちは。私はレイラ」
「……ルナ」
フレヤ様の後ろでこちらを伺っている少女が二人。十歳は越えているくらいだろうか、双子のように似ている。
白銀の髪を肩まで伸ばしたレイラ様は少し戸惑いながらこちらを見ていた。
白銀の髪をツインテールにしているルナ様はこちらに敵意を向けていた。
「はじめまして、セオ様。私はマヤと申します」
俺と同い年であるマヤ様は凛とした顔つきで白銀の長髪をポニーテールにしていた。
「そういうことなら、お初にお目にかかります。皆様をすべてからお守りするために参りました、セオ・オースティンと申します。騎士の誇りにかけお仕えさせていただきます」
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