復興しようよ没落公爵家!

山椒

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04:屋敷の修復

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 パッと目が覚めて瞬時にフロスト家の廊下で寝ていたと理解した。

 もう少しで朝日が顔を見せようとする時間に起きるのはいつも通りだ。

 やっぱり騎士たる者どこでも寝れるのは強みだよな。まあこの強みは冒険者の頃に培った強さだけど。

 周囲のアカシックレコードを閲覧すれば当然だがフロスト家の皆様とマチルダさんは無事にいる。

 俺も家で子供たちの面倒を見ることなくしっかりと寝れたからいつもより体調がいい。

「よし、改修するか」

 とりあえず屋敷の改修作業をすることにした。

 さすがにこの状態で公爵家を名乗られるのは嫌だからな。せめて外見は何とかしておかないと。

 最終手段としてアカシックレコードの情報を上書きして全盛期の綺麗な状態に戻すことはできる。

 アカシックレコードというすべてが書き込まれているこの世界の情報を容易に上書きはできない。だが正直に言えばそんなに疲れるわけではない。

 でも一つの情報体の一部を上書きすることは別の綻びが発生するかもしれない。今までそんなことは起こったことはないけど。

 だからこういう簡単なことはレコード魔法で修復する。まずはまだ直していなかったマチルダさんが壊した扉から始まる。

 魔法陣が刻まれた道具は必要なくアカシックレコードから修復魔法を引き出す。

 そこら辺に散らばっている破片が逆再生するように戻っていき、それでも足りない部分は俺の魔力で補っていく。

 そしてすぐに扉は元通りになった。

「……もっと頑丈にしておくか」

 修復した後に思い出したがマチルダさんにまた壊されるかもしれないから頑丈にするって言っていたんだった。

 頑丈にする方法を考えればチラホラと出てくる。

 一つ目は材料を変える。金属とかな。でもこれは扉が重くなるから却下だな。

 二つ目は強化魔法をかける。だがこれはかけていなければ効果が続くことはないから却下。

 となれば三つ目のアカシックレコードで情報を上書きする。そうすれば材質問題なし、アカシックレコードに書き込んでいるからずっとそのまま。

 さっき最終手段とか思っていたけどそれは嘘だ。元々バンバン使っている。

 そうするのであれば屋敷全体を強くした方がいいな。まずは屋敷を修復魔法で直していく。

 屋敷の壁の汚れやら張り付いているツタは浄化魔法で綺麗にしていく。

 修復魔法で屋敷を直せば綺麗な公爵家のカントリーハウスに戻った。

 そしてアカシックレコードの情報を上書きしたことで外見は完璧なカントリーハウスになった。

「いいね」

 中やら庭園はまだそのままだがカントリーハウスが綺麗ならまあ許されるだろうと厨房に向かう。

 厨房でやるのはもちろん朝食の準備だ。もう朝日が出ているから準備を始めてもいい頃合いだ。

 昨日マヤ様に聞いたがフロスト家は全員朝からガッツリと食べても問題ないとのことだったからしっかりとした朝食を準備する。

 やっぱり食べないことにはやる気だろうが元気が起きないからな。お腹いっぱい食べて寝れば大抵のことはどうでもよくなる。

「もう起きてたのか」

 厨房で顔を出したのはマチルダさん。眠たそうにあくびをしている。

「起こしたか?」
「あぁ。上手そうなにおいがあっちまで届いてきたからな」

 獣人特有の優れた嗅覚だからか。

「それならいつでもマチルダさんを起こせそうだ」
「……起こされるのは嫌だが上手そうなにおいで起こされるのは悪くないな」
「どうする? ちょっと食べるか?」
「いや我慢する。後で何を言われるか分からないからな」
「やっぱりフロスト家は一緒に食べることを重視しているんだな」
「まあそんな感じだな」

 マチルダさんと駄弁りながら手を動かしていれば大半の料理が出来上がった。あとは食べるときに準備する段階だ。

「終わったのならちょっとあたしに付き合えよ」
「トイレか?」
「ちげぇよ! ここにいると体が鈍って仕方がないんだ。あたしの運動に付き合え」
「そういうことならいいよ」

 獣人はあまりある体力があると聞く。だから運動をしないとストレスを感じる者が大半だとか。

 それにマチルダさんと付き合ってマチルダさんを鍛えることができればこの家にとってはプラスだ。

 そう打算的な考えをしつつ俺とマチルダさんは屋敷の外に出た。

「扉直したのか」
「さっき直しておいた。言っておくが屋敷全体を頑丈にしたから壊して出れないぞ」
「うお、確かに直ってる! うん? 頑丈にしておいたってそのままだぞ」

 屋敷全体を見て直っていることに驚いているマチルダさんだが俺の頑丈にしておいたという言葉に引っ掛かりを覚えた様子。

「扉を殴れば分かるよ」
「壊しても知らないぞ」
「壊せれるのなら壊してもいいぞ。無理だと思うけど」
「よし分かった。先輩として洗礼を浴びせてやるよ!」

 俺の挑発に素直に乗ったマチルダさんは勢いに乗って扉に蹴りをいれた。

「か、かったぁ……!」

 轟音が響き渡ったが扉は微動だにしなかった。

「そんなに大きな音を出したらフロスト家の皆様がお目覚めになられるぞ」
「なんだよこれ硬すぎだろ! ふざけんな!」

 よほど力をいれたのかかなり足を痛そうにしているマチルダさん。

「これならは扉を壊して奇襲することはできないから」
「こっちから蹴ってるのになんで開かないんだよ!」
「そういう情報にしたから」

 扉をゆっくりと開ければ開くようになっているがそれ以外なら開かないようにアカシックレコードを上書きした。

「今治す」

 痛そうにしているマチルダさんの足に治癒魔法をかける。

「……治癒魔法も使えるのか」
「一応な」
「……お前のその言葉はあまり信用できないぞ。謙虚に返しているだけで重症でも治せそうだ」
「本職の人には負ける」
「一応じゃないじゃないか」

 まあ俺の場合は治癒魔法じゃなくてアカシックレコードに情報を上書きするからな。

「それに精度がいい。これならすぐにでも運動できそうだ」
「それならよかった。言っておくけどお目覚めになられたらやめるぞ」
「分かってる」

 俺とマチルダさんは開けた場所に来た。

「さ、やるぞ」
「ここはちゃんと整備しているんだな」
「そりゃな。庭園や屋敷は勝手が分からないがこっちはただ平らにすればいいだけだからな」
「面倒だからやらないってわけじゃないのか」
「お前、あたしたちを何だと思っているんだよ」

 いやだって掃除が面倒とか言っているようだったからなー。

「運動をするわけだが、俺はマチルダさんの攻撃を受けているだけでいいのか?」
「そんなのつまらないだろ。あたしが負けない程度に手加減しながら戦え」
「分かった」
「……文句の一つ言われるかと思った」
「騎士とはそういう生き物だ」

 こういうのはよくルーカスとかとやっているからな。

「じゃあ先手はどうぞ」
「言われなくても!」

 マチルダさんは俺に急接近して腹めがけて蹴りを放つ。

 それを避けずにお腹に障壁魔法と摩擦魔法の合わせ技を展開すればマチルダさんの蹴りは障壁に当たると横にそれた。

「へ?」

 そしてマチルダさんの片足がついている地面に摩擦魔法をかけることでその場に立つことができずすべってこけるマチルダさん。

「ほら、まだ初手だぞ」

 俺の煽るような表情に怒りを露にしたマチルダさんはすぐに体勢を立て直して俺に攻撃を仕掛けてくる。しかも殺す気でやっている。

 ある程度マチルダさんの発散もさせないといけないからこれは大人しく受け止めたり捌いたりする。

「さっきまでの偉そうな態度はどうしたんだ!?」

 荒々しい攻撃はさらに勢いを増す。だからここらで一発受けてみることにした。

 顔面に向けられた拳を受けたことでマチルダさんは遠慮がないことにさらに追撃をかけてくる。

 それにしてもすごいな。マチルダさんはこの凄まじい身体能力を素で出している。これが獣人ってことか。

 猛攻を仕掛けてくるマチルダさんのその勢いを逆転魔法によって俺とは反対側に向ける。

「ぐひっ!?」

 マチルダさんはかなりの距離後方に吹き飛んでいった。

 あれは俺がやったのではなくマチルダさん自身の力だからまさに自業自得だな。

「くそっ! 変な魔法ばっか使いやがって!」

 飛ばされた先にいるマチルダさんの近くにいけばそう文句を言ってきた。

「変な魔法とは心外だな」
「変だろ! 魔法って言えば属性魔法が一般的だろうが!」
「そんな魔法は威力こそあれど工夫が求められない。だから魔法を上手く使うためにはこういう魔法を使うに限る」
「そうかよ。だけど今はあたしに付き合ってるんだろうが! 素直に殴り合いをしろよ!」
「なんだ、それがお望みだったのか。それなら先に言ってくれよ」
「分かってただろ!」

 分かっていたが騎士の仕事ではないから分からないフリをしていた。そっちの方が反応が面白いし。

「そうとなれば早速殴り合いを始めるか」

 俺がそう言うや否やマチルダさんは殴りかかってきた。

 今度は真面目にインファイトになるようにマチルダさんの攻撃をすべて受け止めていく。

 マチルダさんに隙が出れば腹に掌底を打ち込む。

 だがそれでも獣人のタフさがあるからすぐにインファイトに戻る。

「強いな、マチルダさん」
「嫌味か! あたしの攻撃をすべていなしているだろ! しかも攻撃の隙ができたら攻撃してくるし!」
「いやいや、俺はまあ万象の騎士だからな。接近戦ができませんでした、なんて言い訳をするわけがない」
「腹立つな……! せめて接近戦であたしに負けてろ!」
「それはできない相談だ」

 獣人は体が暖まれば暖まるほど動きがよくなるが、まあそれだけでは俺には勝てない。動きが速くなったり攻撃が強くなったところで俺には勝てないからな。

「ハァ……ハァ……久しぶりに疲れたー」

 マチルダさんは大の字になって天を仰いでいた。

「満足したか?」
「あぁ、体はスッキリした。腹は立ってるがな」
「時間があればいつでも付き合うぞ。俺の運動にも繋がるからな」
「……汗一つかいてないのに運動になるのか?」
「なるなる。だから適当に誘ってくれ」
「……あぁ」

 交友を深めることはいいことだからな。

「水浴びしてくる。お前も来るか?」
「いや俺はいいよ」
「なんだ? 恥ずかしがってるのか?」

 俺が断ればマチルダさんはニタァとした顔を向けてきた。だがそれはカウンターを秘めていると分からないのだろうか。

「汗一つかいていないからな」
「あー! 絶対に吠え面かかせてやる!」

 プリプリと怒っているマチルダさんを見送る。

「いかがでしたか? 自分とマチルダさんの戦いは」

 そしてこっそりと俺とマチルダさんの戦いを見ていたルナ様に声をかけた。
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