復興しようよ没落公爵家!

山椒

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14:ヘタイロス

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「セオの兄貴! ありがとうございやした!」

 ダイアンに続いてダイアンの舎弟たちが一斉に「ありがとうございやした!」と声をあげた。

 冒険者ギルドの前でやるものだからかなり注目されているが人数が人数でそいつらが頭悪そうだから見てみぬフリをする人たちばかりだ。

「あぁ。こっちもお前らと戦えて楽しかった」

 俺は基本一人でやった方が何でも早く終わる。

 だがこの世界は俺だけではなく多くの人間で成り立っているから一人でやることはあまりしない。

 だからダイアンと共にSランクモンスターとタッグで戦ったり集団での驚異を誇るAランクモンスターを舎弟たちと一緒に戦ったりした。

 ちゃんと全員怪我がないように、でも頑張るように支援しながら戦ったから気持ちよく戦えただろう。

 俺としてもいい運動になったからちょうど良かった。

 ディナトス王国はこういう冒険者とか騎士が強いからモンスター災害が全く起きない国としても有名なんだなと隣国と比較する。

 まあ同時に強いモンスターを作ろうとして野に放たれたモンスターがいたりするからな。そのおかげで強さの水準が上がっているのならば結果オーライ。

「兄貴、ちゃんと姉貴たちに連絡してくだせぇ。じゃないと俺そろそろで頭がへこむんです」
「あー……」

 誰がダイアンの頭を殴ってへこませているのは容易に想像がつく。

「分かった。落ち着いたら連絡すると言っておいてくれ」
「いやそれはルーカスさんに言った台詞じゃないっすかぁ! 落ち着くってどのタイミングっすかぁ!?」
「まあ何となく?」
「兄貴ぃ!?」
「分かってるって。ダイアンはちゃんと逃げてろよ」
「それ分かってないっすよ!? あの人俺が逃げようとしたら舎弟たちを先に見つけるんすよ!? そんで俺をサンドバッグにしてるんすよ!?」

 邪悪だな。いや純粋な邪悪だな。あいつのことだからダイアンと遊んでいるのだろうが、その規格がダイアンではいじめにしか思えないのだろう。

「あー、うん。ごめんな? それから舎弟を大切にしているのはいいことだ。これからもその気持ちを忘れるな」
「兄貴……! はいっす!」
「それじゃあ俺は行くぞ」
「はい! ……あれ? 大丈夫だよな……?」

 さすがにダイアンが可哀想だから注意するついでに連絡しよう。

 舎弟たちを背に俺は冒険者ギルドに戻る。

 全員で報酬を分けようとしたらあいつらいらないとごね始めたから外で話をつけたところだ。

「お疲れさま。兄貴は大変ね」
「悪い気はしません」

 見ていたソフィアさんが笑みを浮かべてきた。

「それよりも部屋の子は元気になったみたいよ。行ってみなさい」
「はい。ありがとうございます」

 マヤ様とレイラ様がいる部屋にノックをすればマヤ様から返事が返ってきたことで入る。

「今戻りました」
「はい、ご苦労様です」

 ベッドの横の椅子で座っているマヤ様に労われる。

「この通り稼いできたので服や食料を十分に買えます」
「そう、ですね。本当になんとお礼を言っていいやら……」
「お礼は不要ですよ、マヤ様。自分がやりたくてやったことです」
「それでも、ありがとうございます」
「光栄の極みです」

 土地をいただくと約束しているんだからまあ頑張れる。騎士なのでな。

「レイラ様、お加減はいかがですか?」
「だ、大丈夫! もう平気! それから、ごめんなさい……」
「何を謝っておられるのですか? 自分は全く気にしていないので存分に頼ってください。それが騎士にとって嬉しいことです」
「……うん、分かった」

 いい子だなー。いや家族以外に甘える方法が分からないってことかな?

「それでは参りましょう。今からお嬢様方には女性としての本能を目覚めさせていただき、買い物をしていただきます」

 何か分かっていないレイラ様はまだお目覚めになっていないのだろう。まあ王都に来たことがないのならそうなのかもしれないな。

 ☆

「すごく楽しい!」

 開幕お洋服の買い物をすれば買い物の楽しさを理解したレイラ様はどれにするかすごく悩んでいたが楽しそうにされていた。

 そのお洋服に着替えて次の日用品や雑貨などのお店を見ても楽しそうにされていた。

 俺は何でもお買い上げするつもりだったがそこはマヤ様の監視の下、欲しいものは何個までとか必要なさそうなら理由を聞くとかをして阻止していた。

 お買い上げしたものはフロスト家に転移させておく。

 ジェイダン様たちのお洋服もメモと一緒に転移させたからお分かりになられるだろう。屋敷でまだ寝ている獣人たちの服もあるから大量になる。

 途中、出店でいいにおいをさせていた串焼き肉を買って食べるがレイラ様はあまりお気に召しておられない様子。

「美味しくありませんか?」
「……セオ様が作ったご飯の方が美味しい」
「ありがとうございます」

 そんなにか? 確かに家でもそう言われるが家族の料理だからそう言っているのだと思っていた。

「マヤ様はどうですか?」
「私もセオ様が作った料理が好きです」
「ありがとうございます」

 言わせた感が強く見えるけどたぶん本当だろうな。

「後は武具くらいですか」

 大量の食料も買ってフロスト家に送ったから残りは戦闘服だな。

「どこに行かれるのですか?」
「ヘタイロスです」
「あのヘタイロスに行くのですか?」

 ヘタイロスは会員でしか入ることができないお店だ。

「そもそもヘタイロスはどういうお店なのですか? 紅茶がかなり有名ですが他にも取り扱ってましたよね?」
「何でも屋ですね。ただ一般に流通しているものは取り扱わないやつが商売をしています」
「それで有名になっているのですからすごいですね」
「やはり珍しいものはすぐに話題になりますから」

 まあそれを意図して取り扱っているわけではなく、あれがひねくれているだけだ。

「今より向かう場所はお二人には秘密にしていただきたいです。ヘタイロスは場所すら秘密ですから」

 マヤ様とレイラ様は頷いたことで俺が先頭でヘタイロスに向かう。

 俺は中央の城がある方に歩いていく。どんどんと城に近づいていくから万が一を考えて二人に偽装魔法をかけて誰にも気づかれないようにした。

「えっ」

 マヤ様は驚きの声をあげる。

 それもそのはず、城を囲んでいる壁に隠し扉があったのだから。

 俺は人差し指を立てて口に当てればマヤ様は緊張した面持ちで頷き、レイラ様は少しワクワクした様子で頷いたことで中に入る。

 隠し扉を通ればすぐに隠し扉は最初からそこになかったかのように消えた。つまり俺たちは今閉じ込められていることになる。

 そんなことは気にせずに火魔法で照らせば下に続く階段があった。

「足元にご注意ください」
「うん!」

 すごく元気に返事をしたレイラ様。だが一方のマヤ様は顔色はよくなかった。

「ここって許可されているのですか……?」
「まさか。許可されているはずがありませんよ」
「あぁ、やっぱりそうなのですね……」

 こんなところで商売をしていいわけがない。でも王家で知っているやつは二人いるから大丈夫だろ。

 そして階段を下りきれば頑丈そうな扉があり、その横にはガラスのような黒い板があった。

 それに手をつければ変な音と共に扉が開いた。

「あー、ようこそー」

 机に突っ伏してながらようこそと言ってくる女性は白い頭しか見えない。

「顔くらいあげたらどうだ?」
「えー、だるー」
「ほぉ、俺よりもその机を見たいのか」
「そんなわけないじゃんかー。よっこいしょっと」

 顔をあげるだけなのに掛け声を出して顔をあげる。

 青白い顔色に赤い瞳、気だるそうにしている眼鏡をかけた長い白髪をボサボサにしている女性。

「吸血鬼……!」

 マヤ様がすぐに反応した通り、こいつは吸血鬼だ。

「やぁやぁ、ご覧の通り僕は吸血鬼だ。歯も鋭い」

 あーっとすれば血を吸うための鋭い犬歯があった。

 吸血鬼だと聞いて俺の後ろに隠れるレイラ様に、面白がって素早く動き始める。

「がおー!」
「きゃっ!」
「やめんか」
「ぐへっ!」

 噛みつこうとする真似をする吸血鬼の頭を軽く叩けば地面に伏せるこの吸血鬼の女はシャーロット。

「この吸血鬼はヘタイロスの店主でシャーロットです。一応悪い吸血鬼ではないのでご心配なく」
「……他種族を排斥しているこの国で、しかもこんな城の真下で商売をやっているんですね……」

 この国をよく知っているマヤ様は戦慄しているが今まで獣人と接してきたレイラ様はそれほどでもなかった。

 それどころか少し興味を持たれているご様子だ。

「もー、本当に容赦がないんだからー」
「ん? 容赦しなくてもいいのか?」
「えへ、えへへへへ、冗談ですやーん」
「それなら良かった」

 手加減しているが吸血鬼の丈夫さならもう少しやっても大丈夫そうだな。その方が一周回って普通になるかもしれない。

「なんだか嫌な予感がするなー。てかラブリンク持ってるじゃん。連絡が通じなーいって騒いでるよ」
「さっきダイアンから受け取ったからな」
「へー、それじゃあそっちのラブリンクと連絡先を交換しよー」
「あぁ」

 ラブリンクを受け取っても連絡先を知らなければ意味がないからな。

 俺の目の前にはパネルが出てきてシャーロットの連絡先を追加しますか? と出たからイエスと思念を送ればシャーロットの連絡先が追加された。

「他のみんなに連絡先送ってもいいー?」
「やらなくていいんじゃないか?」
「えー、それまたうるさくない?」
「どうせまたすぐに会えるだろうからな」
「そのよく分からない確信……悪くないねー。それならいっか」
「それで連絡先を知っているシャーロットが何か言われるかもしれないがな」
「おくろー」

 ダイアンのこともあるからな……。

「それでそちらの二人をつれてなんのよー?」
「お二人の戦闘服を作ってほしいんだ。戦闘服じゃなくても身を守れるような防具がほしい」
「りょーかい」

 俺のお願いに快く了解するシャーロット。

「じゃーフロスト家のご令嬢様はこちらへー」
「……私たちを知っているのですか?」
「僕が取り扱うのは商品だけじゃないってことー」

 そう、ヘタイロスは何でも屋。珍しいものなら何でも取り扱うお店だ。

「そいつは大丈夫です。それに何かあればすぐに駆けつけます」
「おー、そう言いながらお嬢様のことを見てるんだー。セオはむっつりだからなー」

 こいつはフロスト家に仕えていると分かっているのにこんなことを言ってくるのか。そんな事実はないのに。

「そうかそうか」
「あっ、待ってください! 今のは冗談です!」

 シャーロットに小指をぶつけた痛さを永遠にアカシックレコードに書き込んでやろうかと思ったが謝ってきたから許すことにした。

「この対価としてこれ解いておいてー」
「あぁ、分かった」

 シャーロットから紙を受け取り、マヤ様とレイラ様はシャーロットに連れられて裏に回った。
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