S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第2章   Frustrating Feeling

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 智樹が目を覚ますまでの間、俺は公演と公演の合間の僅かな時間を、マンションと劇場の行き来の繰り返しに費やした。
 病人を一人で部屋に残しておけるほど、俺は冷たい奴でもない。

 昔っからそうだ。
 俺は捨て猫だとか捨て犬を見つけると放っておけなくなる性質で、拾って帰ってはクローゼットに隠して飼ったりもした。
 でもそれも最初だけで、飽きたら全く未練なんて感じることなく捨てた。


 だから智樹のこともきっと……


 そう思っていたのに、漸く眠りから覚めた智樹の目を見た瞬間、俺コイツ捨てらんねぇ……、そう思った。

 智樹の目が、道端に捨てられていた犬や猫以上に深い悲しみを宿していたから……

 「お前、名前は?」
 「とも……き……、おお……たとも……き……」

 初めて聞いた智樹の声は、ずっと眠っていたせいか酷く掠れていたけど、それでもその声一つで頭の芯が蕩けてしまいそうな、甘くて透き通るような声だと分かった。

 「家は?」

 特に所持品も無かったし、見たところ家出少年のようには見えるけど……

 「それと歳は?」
 「歳は十……七……」

 特に急かすわけでもなく、繰り返される俺からの問いかけに、智樹は一つ一つ迷うことなく、それでもゆっくりとした口調で答えて行く。

 「家は……ない……」


 やっぱりか……


 つか、この童顔だから、当然未成年だとは思ってたけど……そこまで若いとは、余程の訳あり、ってことか。

 「行く当ては?」

 家出少年であることは確実だから、当然無いだろうとは思いながらも、一応聞いてみる。
 すると智樹は瞼をそっと閉じたかと思うと、その端から綺麗な雫を一粒零し、

 「じゅ……いちのとこ……に行きたい……」

 声を詰まらせながらそう答えた。

 その顔が途轍もなく悲しく見えて、

「わ、分かった。ちゃんと連れてってやるから、兎に角今は身体治せ、な?」

 俺はその言葉の意味も深く考えないまま、気付けば際限なく流れ続ける智樹の涙を指の腹で拭っていた。そんなこと、今まで誰にもしたこともなければ、しようとも思ったことだってないのに、ごく自然に……
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