205 / 369
第17章 Betrayal
9
しおりを挟む
「もしもし」
数コールの後、電話の向こうから聞こえた声は、一瞬番号をかけ間違えたかと思う程に覇気がなく、どこか沈んでいるようにも感じさせるものだった。
何かあったんだろうか……
そう思ったのはその一瞬、それもおそらく俺の思いすごしで……
「ああ、桜木さんですか。どうもお久し振りです」
次に聞こえて来たのは、普段通り……とまではいかなくとも、不安を感じさせる程ではなかった。
「こちらこそその節はどうも」
電話越しに簡単に挨拶を交わすと、俺は早速会って話が出来るよう約束を取り付け、支配人室を飛び出した。
雅也に後のことを頼み車に乗り込んだ俺は、どこにも立ち寄ることなく約束の場所に向かって車を走らせた。
相手側から指定された喫茶店に着いた俺は、閑散とした店内の一番奥の席に陣取った。
入り口付近でも良かったが、そこだと客の出入りやらなんやらで、落ち着いて話が出来ないと判断したからだ。
相手が中々に多忙を極める男だと知っていた俺は、智樹がいなくなってからこっち、自分でも自覚する程量の増えた煙草とコーヒーを時間潰しに、相手の到着を待つつもりだった……が、到着から五分も経たない内に店のチャイムが鳴り、ざっくりと襟元の開いたTシャツに、ダンガリーシャツを羽織っただけの長身の男が、こちらに向かって軽く頭を下げながら歩み寄ってきた。
「どうもすいません、お忙しいのに急にお呼び建てしてしまって」
「いや、この時間は比較的レッスンに来る生徒さんも少ないし、若い講師陣の方が主婦層の生徒さんには受けが良くて、俺はけっこう暇なんで。なので全然構いませんよ」
そう言って男……坂口は白い歯を覗かせた。
そう、俺が電話で呼び出したのは他でもない、劇場リニューアルオープンの際に智樹のダンスレッスンを頼んだ坂口だった。
「ところで話って言うのは?」
坂口は、オーダーしたコーヒーが到着するのを待って話を切り出した。
「実は見て欲しい物があるんです」
俺は胸ポケットから例の写真を取り出すと、少々手狭に感じるテーブルの上に置いた。
数コールの後、電話の向こうから聞こえた声は、一瞬番号をかけ間違えたかと思う程に覇気がなく、どこか沈んでいるようにも感じさせるものだった。
何かあったんだろうか……
そう思ったのはその一瞬、それもおそらく俺の思いすごしで……
「ああ、桜木さんですか。どうもお久し振りです」
次に聞こえて来たのは、普段通り……とまではいかなくとも、不安を感じさせる程ではなかった。
「こちらこそその節はどうも」
電話越しに簡単に挨拶を交わすと、俺は早速会って話が出来るよう約束を取り付け、支配人室を飛び出した。
雅也に後のことを頼み車に乗り込んだ俺は、どこにも立ち寄ることなく約束の場所に向かって車を走らせた。
相手側から指定された喫茶店に着いた俺は、閑散とした店内の一番奥の席に陣取った。
入り口付近でも良かったが、そこだと客の出入りやらなんやらで、落ち着いて話が出来ないと判断したからだ。
相手が中々に多忙を極める男だと知っていた俺は、智樹がいなくなってからこっち、自分でも自覚する程量の増えた煙草とコーヒーを時間潰しに、相手の到着を待つつもりだった……が、到着から五分も経たない内に店のチャイムが鳴り、ざっくりと襟元の開いたTシャツに、ダンガリーシャツを羽織っただけの長身の男が、こちらに向かって軽く頭を下げながら歩み寄ってきた。
「どうもすいません、お忙しいのに急にお呼び建てしてしまって」
「いや、この時間は比較的レッスンに来る生徒さんも少ないし、若い講師陣の方が主婦層の生徒さんには受けが良くて、俺はけっこう暇なんで。なので全然構いませんよ」
そう言って男……坂口は白い歯を覗かせた。
そう、俺が電話で呼び出したのは他でもない、劇場リニューアルオープンの際に智樹のダンスレッスンを頼んだ坂口だった。
「ところで話って言うのは?」
坂口は、オーダーしたコーヒーが到着するのを待って話を切り出した。
「実は見て欲しい物があるんです」
俺は胸ポケットから例の写真を取り出すと、少々手狭に感じるテーブルの上に置いた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる