S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第26章   Missing heart 

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 何が悲しくて涙が零れるのか……


 俺は理由も分からずに、ただ涙を流し続けた。

 「智樹がステージに立つ前、いつも欠かさずしていたことがあるんだ。何か分かるか?」
 「さあ……」

 当然だ。
 ずっと傍で見ていた俺だからこそ知っている智樹の姿を、コイツは知る筈がない。

 「アイツな、いつもステージに上がる直前に、決まってお前の写真に向かって言うんだ、行ってくる……ってな。それでステージが終わると、またお前の写真に向かって言うんだよ、ただいま……って」

 俺はそんな智樹の姿を、幾度となく見てきた。


 どうして俺じゃないんだと……
 こんなに近くにいるのに、どうして……っ!


 「悔しかったよ。どうやったって死んだ人間には適わねぇからな。どれだけ他の奴に抱かれたとしてもだ」

 それが悔恨の念だったのか、それとも単純に思慕の念だったのか……、それは俺には分からない。


 それでも確かに智樹の心の片隅には、いつだって松下がいた。


 「そん……な。智樹はそんなこと一言も……」


 だろうな……、アイツはそう言う奴だ。
 この俺にでさえ、アイツは本心を曝け出すことはなかったんだから……


 「なあ、松下。教えてくれないか? 智樹は今どこにいる? お前なら何か知ってんだろ?」

 わざわざ俺をこんな場所まで呼び付けたんだ、松下は智樹の行方を知っている筈だ。

 「来たんだろ? 智樹がここに……」

 俺の問いに、松下が無言で頷く。

 「やっぱりか。な、頼む、教えてくれ」

 俺は両手を台に付け、松下に向かって頭を下げた。

 「アイツを……、智樹を失いたくねぇんだ」


 いつからだろう……
 松下がかつてそうであったように、俺にとって智樹がかけがえのない存在になったのは……


 「必要なんだ、智樹が……」

 情けない話だが、智樹と離れてみて初めて気が付いたんだ。


 俺は智樹がいなきゃ、一人では立ってらんねぇって……
 智樹のいない世界では、息をすることすら出来ねぇって……


 「愛してんだ、もう智樹無しじゃ生きてけねぇんだ……」

 こんなにも誰かを想って涙を流したのは、もしかしたら初めてのことかもしれない。

 「負けたよ」
 「えっ?」
 「アンタには敵わないって言ってんだよ」
 「じゃ、じゃあ……?」
 「ああ、教えてやる。但し、絶対に智樹を連れ戻すって約束してくれるならな?」


 当然だ。
 俺は智樹のためなら……
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